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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

沖縄で何が起きているかを伝える試み、共同通信那覇支局の「辺野古から」

 新聞労連は毎年、全国紙、地方紙を問わず優れた記事を評価し、取材者を激励することを目的として「新聞労連ジャーナリズム大賞」を選んでいます。今年の大賞、優秀賞、特別賞などが13日、発表されました。
 以下は新聞労連ホームページ http://www.shinbunroren.or.jp/ よりの引用です。

<大賞 2件>
(1)共同通信横浜支局 川南(かわみなみ)有希さんによる震災避難生徒いじめ問題をめぐる一連の報道
(2)毎日新聞東京本社中国取材班による連載企画「チャイナ・センセーション」

<優秀賞 1件>
時事通信社編集局 森拓馬さん 纐纈(こうけつ)啓太さんによる防大生の任官拒否2倍に25年ぶり卒業生1割超ー安保法制影響も

<特別賞 2件3作品>
(1)中国新聞米大統領広島訪問取材班による オバマ米大統領広島訪問に関する一連の報道
(2)・沖縄タイムス基地問題取材班による高江・辺野古基地問題をめぐる一連の報道
   ・共同通信那覇支局による「辺野古から」
 2作品セットで1件として特別賞を受賞しました。

疋田桂一郎賞 1件
徳島新聞石井支局土井良典(よしのり)さんによる神山町長取材拒否問題

 新聞労連ジャーナリズム大賞は今回で21回。以前は「新聞労連ジャーナリスト大賞」と呼んでいました。加盟組合から推薦があった報道を対象に、外部の方4人に選考を委嘱しています。現在の選考委員は鎌田慧(ルポライター)、柴田鉄治(元朝日新聞社会部長)、北村肇(週刊金曜日発行人)、青木理(元共同通信記者、ジャーナリスト)の各氏です(肩書は新聞労連の表記に拠ります)。
 今回の選考で目を引くのは、沖縄タイムスの報道とセットで1件ということですが、特別賞に共同通信那覇支局の「辺野古から」が選出されたことです。これは、沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の移設先として、日米両政府が合意した沖縄県名護市辺野古で何が起きているかを、共同通信那覇支局の記者たちが毎週1回、土曜日に交代で書きつづっているリポートです。新聞掲載用の記事ですが、昨年2月からは編集の上、インターネット上の「47news」でも掲載しています。
 共同通信那覇支局のフェイスブックページに、各記事のあらましとリンクがあります。
 ※共同通信社那覇支局のフェイスブックページ・トップ
  https://www.facebook.com/kyodo.naha/


 このブログで常々つづっていることですが、沖縄の基地集中の問題は沖縄という一地域の問題ではありません。日本国の安全保障全般に関わる話であり、沖縄以外の日本本土に住む日本国民が無関心、無関係ではありようのないことです。しかし実際には、沖縄で選挙のたびに、普天間飛行場の県内移設を訴える民意がいくら示されても、辺野古への新基地建設は止まらず、沖縄には住民の自己決定権は存在しないかのようです。この状況の要因には、日本政府の強硬、強圧的な姿勢だけではなく、この問題に対する本土の日本国民の関心の低さがある、との指摘がしばしばなされます。本土の日本人が、沖縄の基地集中の問題の当事者であることを自覚するためには、まず沖縄で何が起きているかが広く知られることが必要です。本土のマスメディアが本土の日本人に何を伝えているのか(あるいは何を伝えていないのか)が問われています。
 その中で、共同通信那覇支局の「辺野古から」は、本土マスメディアが沖縄で今何が起きているかを伝えようと続けている取り組みの一つとして、その意義は小さくないと思います。日本本土に住む人たちに、ぜひ知ってほしい報道の一つです。