「共謀罪」法案 在京紙の報道の記録(2) 6月4―6日

 以前の記事「『共謀罪』法案 在京紙の報道の記録(1)」の続きです。
 ▽週明け6月5日の月曜日、東京新聞は1面トップで、国際組織犯罪防止条約TOC条約)を巡って各国が立法作業をする際の指針とする国連の「立法ガイド」を執筆した刑事司法学者ニコス・パッサス氏のインタビューを掲載しました。日本政府はTOC締結のため「共謀罪」が必要と主張していますが、パッサス氏は「条約はテロ防止を目的としたものではない」と明言。また「テロは対象から除外されている」「非民主的な国では、政府への抗議活動を犯罪とみなす場合がある。だからイデオロギーに由来する犯罪は除外された」とも述べています。これは重要な指摘だと思います。自民党石破茂氏はかつて、特定秘密保護法案に対する国会周辺でのデモ活動を指して「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます」とブログに書きました(その後、撤回)。沖縄・辺野古では、政府への抗議活動が物理的に抑圧され、微罪で長期にわたって身柄が拘束される事態が起きました。

 ▽6日から朝日新聞が朝刊社会面で「問う『共謀罪』」の新しいシリーズを始めました。さまざまな専門分野の学者に受け止め方を聞く、としています。6日は「それでも日本人は『戦争』を選んだ」の著者、歴者学者の加藤陽子さん。国連特別報告者のナカタチ氏に日本政府が反発していることを、戦前の満州事変と国際連盟リットン調査団になぞらえ、「共通するのは『偽りの夢』と、国民の『人気』」と指摘しています。
 あまり大きなニュースにはなっていませんが、安倍晋三内閣と国連の確執・反目はほかにもあります。5月27日に安倍首相がグテレス国連事務総長と懇談した際のこととして、事務総長が慰安婦問題の日韓合意への「賛意」を示したと日本政府は発表しました。しかし、事務総長は翌日、これを否定。韓国政府の問い合わせにはグテレス氏は「(懇談では)いかなる特定の合意も指していない」と回答したと報じられています(4日の共同通信出稿記事)。何をやろうとも内閣支持率が高止まりしたままの国内状況に、安倍首相はさぞや万能感に包まれているのではないでしょうか。その感覚が国連に対しても向けられているのだとすれば、極めて危ういと感じます。

 ▽毎日新聞夕刊の特集ワイドは、いつも読みごたえがあります。6日の夕刊では「共謀罪」を取り上げました。記事の中で、通算36年を捜査部門の第一線で過ごした元兵庫県警刑事の飛松五男さんは「政府は次に、盗聴法(通信傍受法)の改正に着手するでしょう。電話やメールの盗聴をより広範囲に、合法的にするためです」と指摘。さらには「新しい法律ができたら、息が詰まるような監視社会の始まりです。警察はいったん法律が通ったら、それに向かってまい進する。冤罪がどんどん出ますよ」と断言しています。盗聴の拡大は、かつての共謀罪法案が3回目の廃案になった当時から指摘されていたことです。電子メールをはじめ、私信の検閲容認の流れに進むことも想定できます。憲法が保障する通信の秘密、検閲の禁止は有名無実化するのではないでしょうか。

◎6月4日(日)
【朝刊】※見当たらず

◎6月5日(月)
【朝刊】
朝日新聞 ※見当たらず

毎日新聞 ※見当たらず

▼読売新聞=記事1本
・4面「与党 法案審議急ぐ テロ準備罪、性犯罪厳罰化 18日の会期末にらみ」

産経新聞=記事1本
・4面「守る与党 攻める野党 党首討論 めど立たず 国会最終盤」※「テロ等準備罪」に言及

東京新聞=記事3本
・1面トップ「『条約 テロ防止目的でない』 『共謀罪』崩れる政府根拠 国連の立法指針執筆 ニコス・パッサス氏 『新法導入の正当化に利用してはならない』」/「国際組織犯罪防止条約TOC条約)」※用語説明
・3面「金銭目的の国際的犯罪が対象 現行法対応可能なら新法不要 組織犯罪防止条約 指針執筆 パッサス氏一問一答」

日経新聞=記事1本
・2面「終盤国会 攻防激しく 『加計』『共謀罪』野党が追及 与党、成立法案見極めへ」

【夕刊】※見当たらず

◎6月6日(火)
【朝刊】
朝日新聞=記事2本
・第2社会面:問う「共謀罪」学問の世界から「怒りの抗議 重なるリットン調査団歴史学者 加藤陽子さん(56)/「国際ペン 反対声明」

毎日新聞=記事1本
・第3社会面「国際ペン、『共謀罪』法案に反対声明」※短信

▼読売新聞=記事2本
・4面「テロ準備罪法案 きょう6時間質疑 参院法務委」
・第3社会面「国際ペン会長が反対声明」※短信

産経新聞 ※見当たらず

東京新聞=記事2本
・1面「世界の作家も『共謀罪』NO 国際ペン『表現の自由侵害』」
・2面「きょう審議、職権で決定」※短信

日経新聞=記事1本
・4面「民進きょうにも解任決議案提出 参院法務委員長巡り」

【夕刊】
朝日新聞=記事1本
・2面「委員長の解任案提出 民進、参院共謀罪』審議」

毎日新聞=記事2本
・1面「委員長解任決議案 民進提出 『共謀罪』審議8日以降 参院法務委」
・2面:特集ワイド「改めて問う『共謀罪』 成立させていいのか 『次は通信傍受拡大』 揺らぐ憲法理念」

▼読売新聞=記事1本
・1面「委員長解任決議案を提出 民進 テロ準備罪審議で反発 参院法務委」

東京新聞=記事1本
・1面「委員長解任案を提出 参院法務委『共謀罪』審議 民進」

日経新聞=記事1本
・3面「参院法務委員長 解任案 『共謀罪』めぐり民進提出」


■6月4日〜6月6日の掲載記事数(朝刊のみ)と5月30日からの累計

朝日新聞:記事2本 累計・記事12本、質疑詳報2本、社説1本

毎日新聞:記事1本 累計・記事9本、質疑詳報2本

・読売新聞:記事3本 累計・記事6本

産経新聞:記事1本 累計・記事4本

東京新聞:記事5本 累計・記事30本、質疑詳報3本

日経新聞:記事2本 累計・記事8本