だれが、だれの利益を守ろうとしたのか~天網恢恢疎にして漏らさず、森友学園公文書改ざん

 急な展開に「天網恢恢疎にして漏らさず」という言葉が頭に浮かびます。大阪の学校法人森友学園へ国有地が大幅に値引きして売却されていた問題のことです。安倍晋三首相の妻昭恵氏の介在の有無が昨年来、焦点になっていました。その中で財務省が3月12日、土地売却に関する決裁文書から「昭恵氏」の名が出てくるくだりを削除するなど、公文書を昨年書き換えていたことを認めました。ばれないと思っていたのでしょうか。この改ざんによって、だれが、だれの、どんな利益を守ろうとしていたのでしょうか。

 ※天網(てんもう)恢恢(かいかい)疎にして漏らさず=《「老子」73章から》天の張る網は、広くて一見目が粗いようであるが、悪人を網の目から漏らすことはない。悪事を行えば必ず捕らえられ、天罰をこうむるということ。(デジタル大辞泉)

 発端は3月2日付の朝日新聞が、決裁文書に書き換えがあったと報道したことでした。財務省は、書き換えがあったともなかったとも認めず、国会では野党はもちろんのこと、与党からも不信の声が上がりました。9日(金)になって、書き換えがあったとされる時期に財務省の理財局長を務め、国会答弁でも森友学園への特別な扱いを否定していた佐川宣寿氏が国税庁長官の職を辞任しました。理由は、国会を混乱させたことの責任を取ったとのことです。麻生太郎財務相は佐川氏の辞職を認める一方で、減給処分にしています。こちらの理由は、行政への信頼を損なった、ということのようです。この日は、近畿財務局でこの土地売却に関わっていた男性職員が、7日に神戸市内の自宅で死亡していたことも明らかになりました。自殺と報じられています。
 10日(土)夜、共同通信が「財務省が決裁文書の書き換えを認める方針」と報じ、各社が追随。週明けの12日(月)に、麻生財務相が記者団の取材に対して、決裁文書に書き換えがあったことを認めました。いまだ調査は終わっていないとしつつ、自らの進退は「考えていない」と言明しました。それで済むのでしょうか。
 この間、新聞各紙は朝日新聞の報道を引用しながら、財務省の対応や与野党の反応を報じ、佐川前理財局長の国税庁長官辞任以後は連日、推移を大きく報じています。
 以下に備忘を兼ねて、東京発行の新聞各紙の10日付朝刊(佐川前理財局長が国税庁長官を辞任)、11日付朝刊(財務省が書き換え認める方針)、12日付朝刊、13日付朝刊(財務省が正式に書き換え認める)の各本記(事実関係を報じる中心的な記事)や1面掲載記事の見出しを書きとめておきます。

【3月10日付朝刊】
・朝日新聞:1面トップ「佐川国税庁長官 辞任/森友問題巡り引責/前理財局長 文書調査結果12日公表」/「政権 かばい続け打撃」
・毎日新聞:1面トップ「佐川長官が辞任/書き換え関与か/『国会審議 混乱招いた』/森友文書/調査結果12日公表」/「佐川氏 特捜が聴取へ」
・読売新聞:1面準トップ「佐川国税長官 辞任/森友問題 国会混乱で引責」
・日経新聞:1面中「佐川国税庁長官 辞任/森友で混乱、政権打撃」
・産経新聞:1面トップ「佐川国税庁長官が辞任/森友答弁・文書疑惑で引責」/「売却関与の職員自殺」/「沈静化図るも政権に打撃」
・東京新聞:1面トップ「佐川国税庁長官 辞任/森友問題 国会混乱で引責/麻生氏『進退考えず』」/「政権、幕引き許されず」

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【3月11日付朝刊】
・朝日新聞:3面「首相『財務省が全力を』/森友文書 解明へ対応委ねる」
・毎日新聞:1面トップ「財務省 書き換え認める/佐川氏が指示/森友文書 答弁に合わせる/あす国会報告」
・読売新聞:1面トップ「森友文書 書き換え認める/財務省 あす調査結果」
・日経新聞:1面「決裁文書は複数存在/『森友』書き換えの疑い濃く/財務省、処分拡大へ」
・産経新聞:1面トップ「森友文書 書き換え認める/あす国会報告 麻生氏 辞任せず/財務省」
・東京新聞:1面トップ「森友文書 書き換え認める/財務省、あす報告/麻生氏 進退に波及も」/解説「行政が国民を欺く行為」

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【3月12日付朝刊】
・朝日新聞:1面準トップ「財務省、複数文書認める/書き換え疑惑 きょう国会報告」
・毎日新聞:1面準トップ「複数職員 書き換え関与/森友文書 財務省きょう報告」
・読売新聞:1面トップ「複数政治家の名 削除/森友14文書 書き換え/財務省主導/内閣支持率下落48% 本社世論調査」/「書き換え前文書 検察が写し提供」
・日経新聞:1面準トップ「書き換え『佐川氏関与』/財務省、森友文書きょう報告」
・産経新聞:1面トップ「森友14文書 書き換え/1つは開示請求後/財務省理財局職員が関与/きょう国会報告/政治家関連記述も削除」/「『内閣全体の責任』野党追及へ」
・東京新聞:1面準トップ「書き換え 財務省本省支持/きょう報告 複数の政治家名削除/森友文書」

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【3月13日付朝刊】
・朝日新聞:1面トップ「財務省 公文書改ざん/森友『特例』経緯 削除/14件 理財局指示 昭恵氏の名前も/『佐川氏答弁に合わせた』説明」/「首相謝罪『責任を痛感』/麻生財務相 与党にも辞任論」
・毎日新聞:1面トップ「森友14文書改ざん/答弁と整合性図る/麻生氏『佐川に責任』/財務省報告」/「麻生氏の辞任否定/首相『国民に深くおわび』」
・読売新聞:1面トップ「森友文書15ページ分削除/理財局指示 佐川答弁に合わせ/首相陳謝 麻生氏続投の考え」
・日経新聞:1面トップ「答弁に合わせ書き換え/森友14文書 首相『責任を痛感』/財務相辞任要求は応じず」
・産経新聞:1面トップ「森友書き換え 理財局指示/14文書200カ所以上/財務省 佐川答弁と整合性図る」/「首相陳謝『麻生氏は職責果たす』」/「虚偽公文書作成罪の可能性」/「『最強官庁』の呆れた隠蔽工作」石橋文登・編集局次長兼政治部長
・東京新聞:1面トップ「森友14文書改ざん/『首相』『昭恵氏』削除/財務省公表『佐川氏に最終責任』/麻生氏の名も」/「民主主義の根幹揺らぐ/『私や妻が関与なら首相も議員も辞める』」/「『昭恵夫人から いい土地だから進めて』」

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 13日付朝刊では各紙の違いが鮮明になったことがあります。財務省の公文書たる決裁文書に手を加えていたことに対して、朝日、毎日、東京の3紙はそろって「改ざん」を見出しに取りました。地方紙に配信記事が掲載されることが多い共同通信も「改ざん」を取っていますので、それにならった地方紙の紙面も多かったのではないかと思います。対して産経新聞、日経新聞は「書き換え」のまま。読売新聞は「削除」を使っています。
 現在のところ、「書き換え」は佐川氏の国会答弁の内容に合わせて行われたと財務省は説明しています。本来は、佐川氏は公文書に即して国会で答弁しなければいけなかったはずです。つじつま合わせのために、公文書の方に手を加えたことは改ざんにほかならないように思います。
 
 最大の焦点は、この改ざんによって、だれが、だれの、どんな利益を守ろうとしていたのかだろうと思います。今後を注視します。

【追記】2018年3月16日8時30分
 3月16日朝の時点で、産経は「改竄(ざん)」の表記に、読売は「書き換え」になっています。NHKも「書き換え」です。「改ざん」=朝日、毎日、産経、東京(共同通信、時事通信も)。「書き換え」=読売、日経、NHK。「改ざん」が多数派です。