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安倍内閣支持率は下落局面に~「佐川事件」では済まない森友文書改ざん ※追記・内閣支持率30・3%(NNN)、31%(朝日新聞)、33%(毎日新聞)

  3月に入って、安倍晋三内閣支持率の下落傾向がはっきりしています。要因は、森友学園への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざん問題です。16日に報じられた時事通信の調査(9~12日実施)結果では、支持率は前月と比べて9・4ポイント減の39・3%でした。時事通信は「支持が3割台だったのも、不支持が支持を上回ったのも、昨年10月以来5カ月ぶり」と報じています。
※「内閣支持急落39%=不支持5カ月ぶり逆転-森友文書改ざんが打撃・時事世論調査」=2018年3月16日
 https://www.jiji.com/jc/article?k=2018031600837&g=pol

 時期が重なった読売新聞、産経新聞・FNNの調査でも支持率は6ポイントのマイナスでした。改ざん問題を最初に朝日新聞が報じた直後に共同通信が実施した調査では、2・7ポイントのマイナスでした。
 以下に、改ざん問題の経緯と並べて、まとめて書きとめておきます。

・時事通信 3月9~12日実施
  支持39・3%(9・4P減) 不支持40・4%(8・5P増)
 ※3月12日 麻生太郎財務相が決裁文書書き換えを正式に認める
・読売新聞 3月9~11日実施
  支持48%(6P減) 不支持42%(6P増)
・産経新聞・FNN 3月10、11日実施
  支持45・0%(6・0P減) 不支持43・8%(4・8P増)
 ※3月10日 財務省が決裁文書書き換えを認める方針と共同通信が報道、他メディアも追随
・共同通信 3月3、4日実施
  支持48・1%(2・7P減) 不支持39・0%(2・1P増)
 ※3月2日 森友学園への国有地売却を巡る財務省の決裁文書が書き換えられていたことが分かったと朝日新聞が報道

 ▼麻生財務相「辞任すべきだ」が7割
 世論調査の個別の設問で、森友学園の文書改ざんに触れたものを分かる範囲でピックアップしてみました。国会で「売却は適正だった」「公証記録は廃棄した」と答弁していた佐川宣寿・前財務省理財局長、前国税庁長官に対しては、圧倒多数が国会招致に賛成しています。また、政府や麻生財務相への厳しい見方からは、民意は今回の問題が財務省の官僚だけの問題ではないとみていることがうかがえるように思えます。

【読売新聞】
・学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、財務省内で決裁文書が書き換えられた疑いが指摘されている問題について、政府は、適切に対応していると思いますか、そうは思いませんか。
  適切に対応している 11%
  そうは思わない 80%
 ・森友学園を巡る問題で、国会は、財務省内に存在する文書を「廃棄した」と答弁していた佐川宣寿・前国税庁長官を呼んで、説明を求めるべきだと思いますか、その必要はないと思いますか。
  説明を求めるべきだ 71%
  その必要はない 20%
【産経新聞・FNN】
 ・ 財務省の担当局長として、「売却は適正」、「交渉記録は廃棄した」などの答弁を繰り返した、佐川国税庁長官が辞任しました。佐川氏は、辞任後も、国会に呼ばれれば、国会で説明すべきだと思いますか、思いませんか。
  思う 88・0%
  思わない 8・7%
 ・一連の財務省の対応に関し、麻生財務相の責任をどのようにお考えですか。
  麻生財務相は、即刻辞任すべきだ 17・9%
  決裁文書の書き換えが事実だった場合は、大臣を辞任すべきだ 53・1%
  大臣を辞任する必要はない 26・1%

 ▼「佐川事件」なのか
 麻生財務相は12日の報道陣への対応では、改ざんを主導したのは財務省理財局の一部であると繰り返し、最終的な責任は佐川前長官(前理財局長)と強調しました。自らの進退を問われると即座に「考えていない」と言い切りました。その後の国会審議でも、前長官を呼び捨てにして「この一連の佐川の件」と言っています。自民党も呼応するように、3月15日の参院財政金融委員会では、安倍首相に近い自民党の西田昌司参院議員は「『佐川事件』の真相解明が第一だ」と「佐川事件」と呼んだと報じられています。安倍晋三首相も副総理として政権の屋台骨の1人である麻生財務相は徹底的にかばうつもりなのでしょう。政権や自民党は、全ての責任を佐川・前国税庁長官に押し付けようとしているかのようです。
 世論調査結果からは、佐川前長官への民意の厳しい視線が明らかですが、一方で政府や麻生財務相の責任も同じように厳しくとらえているようです。「佐川事件」と呼んで、すべての責任を佐川前長官に帰結させようとする安倍政権や自民党と民意の間にはかい離があります。そもそも、森友学園への国有地売却を巡る本質的な問題は、安倍首相の妻の昭恵氏が森友学園に肩入れしたことで、国有地売却の手続きがゆがめられたのではないか、という点にあります。そのことを離れて、決裁文書の改ざんだけが問題になるということはあり得ないように思います。改ざんの経緯を解明するためには、あらためて土地売却の経緯を検証していく必要があります。
 仮に、麻生財務相が自らの責任を軽く考え「この佐川の一連の件」などと言い続けた場合に、民意はどのように受け止めるか。今後の世論調査結果を注視しようと思います。

 

※追記1 2018年3月17日19時45分
 3月9~11日実施のNHKの世論調査結果です。
 内閣支持率は43・8%(前月比2・6ポイント減)、不支持率は38・1%(3・8ポイント増)でした。

※追記2 2018年3月17日21時
 MIC(日本マスコミ文化情報労組会議)とJCJ(日本ジャーナリスト会議)が合同で運営しているサイト「憲法メディアフォーラム」のコラム「今週のひと言」から。
「すべてを明らかにしよう、佐川さん」http://www.kenpou-media.jp/?p=2827

※追記3 2018年3月18日20時10分
 今週末にマスメディア各社が実施した世論調査の結果の速報が18日夕方からネット上で報じられています。
 内閣支持率は毎日新聞調査では33%で、前回2月調査から12ポイント減、共同通信調査は38・7%で2週間前の前回調査から9・4ポイント減、NNN(日本テレビ系列)調査では30・3%で前回2月比13・7ポイント減でした。
 不支持率は毎日47%、共同48・2%と支持を大きく上回り、逆転しました。NNNは53・0%と過半数です。
 毎日の調査は選択肢に「関心がない」があり、その分、他社の調査よりも支持、不支持ともに低く出る傾向があります。「強いて言えば支持(あるいは不支持)」という層が入らないので、支持の実態をより詳しく反映していると見ることができるかもしれません。

mainichi.jp

this.kiji.is

www.news24.jp

※追記4 2018年3月18日22時40分
 朝日新聞の調査結果もアップされました。安倍晋三内閣の支持率は前回2月の44%から31%に急落。第2次安倍内閣では昨年7月の33%を下回って最低とのことです。不支持率は48%。
 タイトルにも朝日新聞調査の数字を入れて改題しました。

www.asahi.com