安倍晋三首相の悲願「9条改憲」に民意は冷ややか

 ことしも5月3日の憲法記念日を迎えました。安倍晋三首相は昨年のこの日、読売新聞の紙面に掲載されたインタビューや、改憲派の集会に寄せたビデオメッセージで、憲法9条の現行条文はそのままに、自衛隊の明記を加える改憲案を唐突に掲げました。その後、自民党の党内論議では反対意見を押し切って、自民党案として位置づけられるに至りました。自民党はさらに、教育の充実、緊急事態条項の新設、参院選「合区」解消の3項目も改憲を目指すとしています。ただ、安倍首相の悲願という意味で、現在の改憲論議の本丸は9条であり、他の3項目は、多々ある9条改憲の問題点から目をそらさせたり、野党の一部を改憲論議に誘い込んだりするのが目的であるようにも感じます。改憲問題の焦点は9条であると、わたしは考えています。

 そういう中で、ことしの憲法記念日を前に、改憲問題を巡るマスメディアの詳細な世論調査の結果が報じられました。共同通信(4月26日付朝刊用の配信)、読売新聞(4月30日付朝刊)、朝日新聞(5月2日付朝刊)の3件の調査結果からうかがえるのは、9条改憲に世論の理解は深まっているとは言えず、機運も高まってはいない現状です。

 例えば、読売新聞の調査では、自衛隊の存在を明記することに55%が賛成と答えています。しかし朝日新聞の調査では、憲法9条の条文を示して、次に単に9条を変える方がいいかどうかだけを尋ねると、「変えるほうがよい」は32%にとどまる一方、「変えないほうがよい」はほぼ倍の63%に上っています。それぞれ、問いと回答は以下の通りです。

 読売:憲法第9条について、戦争の放棄や戦力を持たないことなどを定めた今の条文は変えずに、自衛隊の存在を明記する条文を追加することに、賛成ですか、反対ですか。

 賛成 55%

 反対 42%

 続いて朝日です。

 朝日:以下は、憲法第9条の条文です。(憲法9条条文は省略)憲法第9条を変えるほうがよいと思いますか、変えないほうがよいと思いますか。

 変えるほうがよい   32%

 変えないほうがよい  63%

 さらに朝日新聞は安倍首相が主張する9条改憲への賛否を尋ねています。結果は反対が過半数です。 

朝日:安倍首相は、憲法第9条の1項と2項をそのままにして、新たに自衛隊の存在を明記する憲法改正案を提案しています。こうした9条の改正に賛成ですか。反対ですか。

 賛成 39%

 反対 59%

 本質的には同じ「9条の改正」について賛否を尋ねているのに、尋ね方が変わっただけで、こうも結果が異なるのは、世論の理解が深まっていないことの反映だと感じます。この点は、最近の各マスメディアの定例電話世論調査でも同じ傾向が続いていました。

 そもそも、自衛隊を合憲と考えるか違憲と考えるかでは、読売新聞の調査では76%もの人が合憲と答え、朝日新聞の調査でも65%の人が「(憲法に)違反していない」と答えています。安倍首相が言うように「自衛隊の違憲論に決着をつける」というようなことの必要性がどこまであるのか、少なくとも民意を見る限り必要性を見出しがたいように感じます。

 何より、安倍政権のもとでの憲法改正への賛否では、朝日新聞の調査では賛成30%に対し反対58%、共同通信調査でもそれぞれ38%、61%の結果が出ています。民意は安倍氏の宿願の憲法改正を冷ややかに見ているように思います。 

 共同、読売、朝日とも、調査対象は無作為抽出した3000人。3月から4月にかけて実施されました。毎月の定例の電話調査に比べて調査対象者の母数が大きく、郵送で丁寧に質問を重ねていることもあって、民意をかなり的確に反映しているのではないかと思います。有効回収率はそれぞれ共同64・1%、読売65%、朝日65%でした。
 
 以下は、共同通信の5月2日の記事(新聞紙面では3日付朝刊用)です。国会の政治力学の面でも、改憲発議はそうそう簡単には行かない状況です。
※47news=共同通信「改憲発議、年内は困難/政権不祥事で機運低下」

https://this.kiji.is/364357734004638817?c=39546741839462401 

 日本国憲法は3日、1947年の施行から71年を迎える。安倍晋三首相(自民党総裁)は2020年の改正憲法施行を掲げて今年中の改憲発議も視野に入れていたが、一連の政権不祥事で国会論議は停滞し、国民の機運も低下していることから困難な情勢だ。自民党の改憲条文案を巡って連立を組む公明党は慎重姿勢を崩さず、野党第1党の立憲民主党は批判を強める。首相はなお発議を模索するものの、具体的な時期は見通せない。