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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

二階俊博氏「『産まない』は勝手な考え」「食べるのに困る家ない。こんなに素晴らしい幸せな国はない」

 自民党の二階俊博幹事長が6月26日に行った講演がマスメディアに報じられています。

 ※47news=共同通信「二階氏『産まない』は勝手な考え 都内で講演、少子化問題巡り発言」
 https://this.kiji.is/384253021293397089

 自民党の二階俊博幹事長は26日、東京都内で講演し、少子化問題を巡り「この頃、子どもを産まない方が幸せじゃないかと勝手なことを考える人がいる」と述べた。子どもを持たない家庭を批判したようにも受け取れ、波紋を広げそうだ。
 (中略)
 貧困問題に関しては「今は食べるのに困る家はない。こんなに素晴らしい幸せな国はない」と言及した。

 ※朝日新聞デジタル「『子ども産まない方が幸せ、勝手なこと』自民・二階氏」
 https://www.asahi.com/articles/ASL6V5WRYL6VUTFK01T.html?iref=comtop_8_08

自民党の二階俊博幹事長は26日、東京都内で講演し、「子どもを産まない方が幸せじゃないかと勝手なことを考えて(いる人がいる)」「皆が幸せになるためには子どもをたくさん産んで、国も栄えていく」などと述べた。子どもを持たない家庭を批判したとも受け取れる発言だ。
 二階氏は、講演参加者から少子化対策について問われ、「食うや食わずの戦中、戦後、子どもを産んだら大変だから産まないようにしようと言った人はいない」とした上で、「子どもを産まない方が幸せ」というのは「勝手だ」とした。 

 ※毎日新聞「自民・二階氏 『産まない幸せ』は勝手 講演で発言」
 https://mainichi.jp/articles/20180627/k00/00m/010/113000c 

 自民党の二階俊博幹事長は26日、東京都内での講演後の質疑の際に、少子化対策に関連して「このごろ、子供を産まないほうが幸せに(生活を)送れるんじゃないかと、(一部の人は)勝手なことを自分で考えてね」と述べた。子供のいない家庭への配慮を欠く発言と受け取られる可能性がある。
 (中略)
 また二階氏は「食べるのに困るような家はもう今はない。今晩お米が用意できないという家はない。こんな素晴らしいというか、幸せな国はない」とも話しており、貧困問題への認識が低いとの批判も浴びそうだ。 

※産経ニュース「自民・二階俊博幹事長『子供を産まない方が幸せだと勝手なこと考える人がいる』」
 https://www.sankei.com/politics/news/180626/plt1806260029-n1.html 

 自民党の二階俊博幹事長は26日、東京都内で講演し、少子化問題をめぐり「この頃、子供を産まない方が幸せじゃないかと勝手なことを考える人がいる」と述べた。「みんな食うや食わずの戦中・戦後の時代に『子供を産んだら大変だから、産まないようにしよう』と言った人はいない」とも語り、「子供をたくさん産み、国が栄え、発展していく方向にしよう」と呼びかけた。 

 読売新聞も27日付の朝刊紙面では「『産まない方が幸せ』は勝手/二階氏が講演会で発言」の見出しで記事を掲載しています。朝日、毎日、読売、産経とも、朝刊紙面では国民民主党の玉木雄一郎共同代表が「特定の家族観、価値観を押しつけるのは間違っている」などと批判したことを紹介しています。

 「子どもを産まないほうが幸せじゃないか、というのは勝手な考え」と言えば、「子どもを産む、産まないは個人の選択の問題だ」との批判が出るのは当たり前です。二階氏は「皆が幸せになるためには子どもをたくさん産んで、国も栄えていく」とも話したと報じられており、批判に対しては「本意はこっちの方にある」と主張するのかもしれません。仮にそうだとしても、わざわざ「勝手な考え」と批判的、攻撃的な言葉遣いをする必要はないはずです。
 もう一つ、驚くのは「今は食べるのに困る家はない。こんなに素晴らしい幸せな国はない」との発言です。報道を総合して考えると、「食うや食わずの戦中、戦後、子どもを産んだら大変だから産まないようにしようと言った人はいない」との文脈から派生した発言なのではないかと推測しますが、もはや日本社会に貧困の問題はない、との認識でしょうか。この発言に対して、貧困の問題に詳しい尊敬するジャーナリストの知人は、「『日本は幸せな国なんだから起こる全ては自己責任なんだよ』と言っているのに等しい」と指摘しています。
 巨大与党の第一党の幹事長の発言です。広く知られるべきでしょう。民主主義社会では、有権者が投票権を行使する際の判断材料になります。
 なお、今回の二階氏の発言を巡っては、紙面とサイトで、発言のどの部分を紹介しているかで相違がある例もあるようです。例えば毎日新聞の紙面(東京本社発行14版)では「食べるのに困るような家は~」の発言部分は見当たりません。