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「働き方改革」法案 とサッカーW杯

 6月28日は大きなニュースがありました。
※47news=共同通信「働き方法案、参院委で可決 29日に本会議で成立へ」
 https://this.kiji.is/385021644025988193?c=39546741839462401

 安倍政権が今国会の最重要課題に位置付ける働き方改革関連法案は28日夜の参院厚生労働委員会で、与党などの賛成多数で可決された。29日の参院本会議で可決、成立する方向となった。これに先立ち、参院議院運営委員会は立憲民主、共産などの野党が提出した島村大厚労委員長(自民)の解任決議案を本会議では取り扱わないと決めた。

 参院厚労委は午後の理事会で、参院野党第1党の国民民主党と28日中に働き方法案を採決することで合意し、29日の可決、成立の方向がバタバタと決まりました。
 法案に含まれる「高度プロフェッショナル(高プロ)制度」の創設に対しては、国民民氏、立憲民主、共産、社民の野党各党は、長時間労働を助長し過労死を招くとして反対してきました。必要性についても、厚生労働省のヒアリング対象はわずか12人で、制度設計前に実施したのはわずか1人だけだったことも明らかになって、内容、立法の手続きともにずさんだと批判を受けていました。過労死遺族も反対を表明していました。
 報道によると、その中で国民民主が採決に応じたのは、廃案に追い込むことは不可能と判断し、留意事項を盛り込んだ付帯決議をせめて可決させるため、との指摘があります。
 29日付の東京発行の新聞各紙朝刊は予想通りでした。朝日、毎日、読売、産経、東京の5紙は、サッカーW杯で日本代表が決勝トーナメント進出を決めたことが1面トップ。日経も1面に入っています。働き方改革法案は朝日、毎日、読売、東京は1面で準トップの扱い。日経、産経は3面でした。

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 それでも新聞は、総合面などには各紙とも働き方改革法案の関連記事を掲載しています。新聞を手にする習慣がない人たちにこのニュースはどう届いているのか、ふと、気になりました。試みにスマホに入れているニュースアプリを見てみると、「トップ」にはこのニュースはなかなか出てこず、ジャンル別の「政治」でようやく、テレビ局や新聞社のサイトからの関連記事を目にしました(29日午前8時現在)。「政治」ジャンルを見る習慣がなければ、どうなるのでしょう。

 以下は私見です。高プロ制度は働く者にとって、柔軟な働き方ができるようになる方向には進まないと思います。むしろ、仕事がある限りは働くことをやめられなくなる恐れがあります。「きょうは○○時間働いたから」というのは、仕事を切り上げる動機、理由にはなりません。この制度の最大のメリットは、経営者が残業代を支払う必要がない、という点です。財界に待望論があるのは、多様な働き方によって労働者の健康を守ることができるからではなく、残業代の心配をせずに済み、人件費を一定額に抑制できるからです。この制度の下では、過労死が自己責任にされかねません。実際に過労死した方の遺族の方々が「反対」を声に出して訴えていることには大変な重みがあるのですが、与党だけでなく、採決に応じることとした一部の野党にも、過労死遺族の声は届かなかったと言わざるを得ず、とても残念です。