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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

働き方改革法成立の在京紙報道~「高プロ」に懸念の一方で、改革に前向きも

 当座の備忘メモです。

 働き方改革法案が6月29日の参院本会議で可決され、成立しました。30日付の東京発行新聞各紙は6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)とも1面トップの扱い。本記(事実を伝える中心的な記事)を中心とする1面掲載の記事の見出しを比べてみるだけでも、各紙のスタンスの違いが感じ取れるのではないでしょうか。以下に書きとめておきます。
・朝日「高プロ・残業規制 来春から/働き方改革法が成立/長時間労働なお懸念」
・毎日「高プロ来年4月導入/働き方改革法成立」
・読売「残業上限越えに罰則/働き方改革法成立」
・日経「迫られる生産性革命/遠い欧米の背中 時間より成果 重きを/働き方改革法が成立」
・産経「残業革命 見切り発車/働き方改革法成立 『高プロ』創設/賃下げ懸念くすぶる/TPP関連法も」
・東京「残業代ゼロ『過労死増える恐れ』/『働き方』法 成立」「『長時間労働指導できない』/元監督官 違法適用の摘発も『困難』」

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 社説では東京新聞以外の5紙が取り上げています。見出しには各紙ごとの違いがより直接的に出ているようです。
・朝日「働き方法成立 懸念と課題が山積みだ」
・毎日「『働き方改革』法が成立 健康と生活を守るために」労基署は監督の強化を/多様な労働実現しよう
・読売「働き方改革法 多様な人材の活躍促す契機に」
・日経「『個の力』引き出す労働改革をさらに前へ」
・産経「働き方改革法 残業代削減の還元考えよ」

 働き方改革法はいくつかの法改正を一つに束ねたものです。当初は4本柱と言われ、残業時間の罰則付き上限規制、同一労働同一賃金、裁量労働制の適用拡大、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル(高プロ)制度」創設の四つで構成されていました。厚生労働省の労働時間データのずさん処理が明らかになり、裁量労働制の適用拡大は切り離された結果、立憲民主、国民民主、共産、社民の野党各党の反対は高プロ制度創設に集中しました。柔軟な働き方が実現できるどころか、過労死を招きかねないとの理由です。過労死した方の遺族の方々のグループからも、反対の表明がありました。
 そうした経緯から、最大の焦点は高プロ制度の新設が認められるかどうかに絞られていたと感じます。朝日、毎日、東京はこのスタンスで、野党や過労死遺族の反対にもかかわらず高プロ制度創設が決まったことに重きを置いています。
 一方で、批判はあるものの改革を前向きに受け止めるスタンスもあり、日経がもっとも顕著なように感じます。読売も本記の見出しに「高プロ」は取っておらず、残業規制を主見出しにしています。産経が1面で「賃下げ懸念くすぶる」とし、社説でも「残業代削減の還元考えよ」と掲げているのは、ある意味、ざん新に感じます。
 過労死した方の遺族の方々の各紙の報じ方も書きとめておきます。
 東京新聞は1面に遺影とともに参院本会議を傍聴した遺族の方々の写真を掲載しました。朝日は社会面トップで遺族の方々の思いを紹介し、毎日も遺族の方々の記者会見を独立の記事で紹介しています。朝日、毎日とも写真付きです。
 産経は社会面に遺族の会見を独立の記事で掲載。主な過労死の表を付けていますが、写真はありません。
 読売は社会面トップに高プロ制度に対する歓迎と懸念の双方の声を紹介する記事を掲載。その末尾に22行のコマ立てて遺族の声を紹介しました。写真はありません。
 日経は記事が見当たりませんでした。