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カジノ法成立し国会閉会~行政不祥事、まるで他人ごとの安倍首相

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法案は7月20日、参院本会議で可決、成立しました。22日までの通常国会はこれで事実上、閉会しました。
 安倍晋三首相は20日夕に記者会見し、今国会の会期中、行政を巡るさまざまな問題が明らかになったとして、「国民の信頼を損なったことについて行政のトップとして深くおわびする」と述べ、森友学園、加計学園の問題を巡っても「首相の立場が周囲に与えうる影響を常に意識し、慎重な上にも慎重に政権運営に当たる」と述べたと報じられています。いずれも他人ごとのような物言いだと感じました。「行政のトップとして深くおわび」とは、国民の信頼を失った責任は官僚にあると考えているようで、首相として自身が責任の当事者であるとの自覚はまるで伝わってきません。森友学園、加計学園の問題についても「これで終わり。逃げ切った」と考えていることが明白です。

 東京発行の新聞各紙のうち日経新聞を除く5紙(朝日、毎日、読売、産経、東京)は21日付朝刊で、「カジノ法」成立を1面トップにすえました。しかし「通常国会閉会」を巡っては、新聞によって論調に差異が出ました。朝日、毎日、東京の3紙は、今国会を通じて与党が強引だったのはカジノ解禁に限ったことではないことを強調し、数の力をたのむ安倍晋三政権と与党に批判的なトーンを打ち出しています。一方の読売新聞には政権、与党批判は見当たらず、産経新聞は逆に野党批判を交えた紙面展開でした。カジノ解禁自体に対しては、産経新聞が社説(「主張」)で「不安払拭し地域に貢献を」としているのが目を引きました。
 以下に、各紙の主な記事の見出しを書きとめておきま

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▼朝日新聞
1面トップ「カジノ法強引取引■森友・加計解明せず/政権応えず 国会閉幕」
1面「首相、来月3選出馬表明へ/自民総裁選 石破氏も準備」
2面・時時刻刻「強引国会 最後まで」「昭恵氏・加計喚問 拒否貫く/森友・加計・日報・文書改ざん」「対立法案 数の力で次々成立/働き方改革・カジノ・参院6増」
3面「公明、選挙にらみ賛成/カジノ法 早めの成立を重視」
3面・焦点採録「県政史上最悪の国会になった 立憲・枝野氏/政権は人の命より賭博優先だ 共産・志位氏」
13面(オピニオン面)耕論「政治家 空疎な言葉」/「平和日本 甘い国民の評価」オフェル・フェルドマン同志社大教授/「失言の背景 有権者にも」著述家 古谷経衡さん/「いちいちギョッとしよう」時事芸人 プチ鹿島さん
第2社会面(32面)「『国会 誰の方向いている』/森友・加計、公文書、カジノ 怒りの声」/「カジノ誘致へ『一歩』■『反対運動続ける』」
社説「カジノ法成立 賭博大国への危うい道」

▼毎日新聞
1面トップ「カジノ法成立/通常国会 事実上閉会」
1面「自民総裁選『改憲争点』/首相会見 出馬表明、来月下旬以降」
2面「国会立て直そう」佐藤千矢子・政治部長
3面・クローズアップ「政府強引 国会に禍根/森友・加計 疑惑解明至らず」「重要法 熟議なく/働き方・参院6増・カジノ」
5面「行政の監視 疑問符/通常国会 事実上閉会」「予算委集中審議/不祥事追及に長時間」「党首討論/1回45分 深まらぬ議論」「合同ヒアリング/野党連携に一定の成果」
5面「開業 20年代前半視野/カジノ法成立 施設、具体像示されず」
5面「公正ルール作り放棄」ギャンブル依存症患者の支援に取り組む井上善雄弁護士(ギャンブルオンブズマン事務局長)/「雇用増など波及効果」各国のカジノ事情に詳しい美原融・大阪商業大教授
社会面(27面)「カジノ法『政治はどこ向く』」/「国会の周辺では市民ら抗議集会」
社説「通常国会が事実上閉会 骨太の議論は乏しかった」

▼読売新聞
1面トップ「カジノ法 成立/23年にも国内開業」
1面「国会 事実上閉会」
2面「依存対策 置き去り/入場回数、貸付金…課題続々/カジノ法」「経済成長期待 名乗り/北海道、大阪、長崎 効果に疑問も」
4面「カジノ法 公明に同調/来年選挙への影響 抑制/自民、今国会成立固執」
4面「総裁選出馬 検討加速へ/『ポスト安倍』候補ら 心境語る」/「首相の記者会見要旨」
4面「『災害よりギャンブル解禁優先』/抵抗延々2時間43分/枝野氏演説 衆院延長」
7面・1ページ特集「基礎からわかるIR実施法」

▼日経新聞
1面「首相、来月出馬表明へ/自民総裁選 国会が事実上閉幕/カジノ法成立」
4面「開業早くて20年代半ば/カジノ法成立 誘致本格化」/「依存症対策 疑問の声残す」
4面「自民総裁選へ号砲/首相『憲法改正、大きな争点』/国会が事実上閉幕」
4面「枝野氏演説 最長2時間43分/不信任案で政権批判」

▼産経新聞
1面トップ「IR実施法 成立/カジノ 2020年代半ば最大3カ所/不信任案否決 国会、事実上閉会」
1面「首相 政権続投に意欲/改憲『総裁選の焦点』」
2面「IR誘致 自治体過熱/選定方針『国は早く策定を』」「地方、投資・雇用に期待」「経済効果5兆円/民間シンクタンク試算」
3面「役所不祥事 国会振り回す/法案成立92%も議論低調/事実上閉会」「野党『18連休』で失速/立民と国民 路線対立露呈」
3面「『野党不信任案』を提出したい」阿比留瑠偉・論説委員兼政治部編集委員
5面「総裁選 せみ時雨聞き 考える」首相会見要旨
第3社会面(24面)「ギャンブル依存 対策これから/『弱さ持った人の逃げ場所』」/「警察当局 暴力団介入を警戒」
社説(「主張」)「IR法成立 不安払拭し地域に貢献を」

▼東京新聞
1面トップ「カジノ法 成立/依存症 懸念残し/制度運用331項目 政省令任せ」
1面「森友・加計 解明なく実質閉会/佐川氏偽証 告発なし」
2面・核心「カジノ 結局疑問だらけ/週6日入場可 業者が客に融資 そもそも合法か 経済効果示さず」
2面「改憲『総裁選の焦点』/首相会見、出馬明言せず」/「枝野氏演説2時間43分 内閣不信任案」
社説「国会あす閉会 政権の横暴が極まった」
社会面(27面)「『首都圏にカジノ』様子見?/横浜市 住民二分、市長『白紙』/東京都 小池氏『慎重に検討』」/「3枠を巡り激戦/大阪府・市、和歌山県など名乗り」