情報量多かったのは安倍政権に批判的な朝日、東京~沖縄県知事選をめぐって①選挙期間中の在京紙報道

 9月30日に投開票が行われた沖縄県知事選挙について、いくつか書きとめておきます。
 まず知事選投開票までの本土マスメディアの報道についてです。このブログでは、東京発行の新聞各紙が沖縄県知事選や米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設問題をどのように報じるか、一般紙5紙(朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、産経新聞、東京新聞)について8月30日付から知事選投開票日当日の9月30日付まで、掲載記事の記録を続けました。最終的に以下の表にまとめました。一見して、朝日新聞、東京新聞の記事の多さが目を引きます。
 辺野古への新基地建設をはじめとして、沖縄の基地集中の問題に対しては、朝日、毎日、東京の3紙は日本政府と安倍晋三政権の政策や方針に批判的な一方で、読売、産経両紙は日本政府と安倍政権に好意的です。一般に記事本数の差がそのまま情報量の差に必ずしも直結するわけではありませんが、この朝日、東京両紙とほかの3紙との報道量の差は、明確に情報量にも差があったことを示していると思います。
 日本政府と安倍政権に対して批判的、懐疑的な新聞の方が、政権を支持する、ないしは好意的な新聞より情報量が多い、とまでは一般化できないにせよ、朝日、東京両紙の情報量が豊富だったことは、沖縄で何が起きているかを日本本土の読者に伝えようとした両紙の意志の表れだろうと思いますし、実際に、読者に沖縄の基地集中について考える材料を多く(相対的にですが)提供したと言えると考えています。

  朝日 毎日 読売 産経 東京
記事 59 33 27 33 53
社会 34 8 4 2 10
短信 2 2 4 10 0
写真 39 11 13 12 44
7 3 2 5 7
図表 7 4 4 4 7

 表にまとめた項目のうち、「記事」は文字通り、沖縄県知事選と基地問題に関連した記事の本数です。総合面の長めの読み物などは、執筆記者が異なる2本の記事で構成されていれば1本と数えたりしています。
 「社会」は「記事」のうち社会面に掲載された記事の本数です。社会面に掲載されるということは、政治の表面的な動きの報道にとどまらず、文字通り、社会の深層や人々の感情に分け入ったリポートもあると考えていいと思います。ただ今回は、沖縄出身の歌手安室奈美恵さん引退を巡る記事も5紙それぞれ、含まれています。
 朝日新聞は連日、社会面に「沖縄2018」のタイトルロゴを付けた記事を掲載していました。東京新聞は社会面記事はさほどではないのですが、同紙の大きな特徴である特報面にしばしば、読み応えのあるリポートが載っていました。表のうち「写真」が朝日、東京両紙が他3紙よりも多いのは、社会面や特報面の記事におおむね写真が付いたためです。
 選挙期間中の記事は公正公平さが必要なため、あまりバリエーションの余地がなく、往々にして各候補の主張を対比することになりがちです。しかし、朝日新聞にせよ、東京新聞にせよ、候補者の主張ということではなく、全体として沖縄社会の様々な側面を伝えようとの意志が感じられる紙面展開だったように思います。
 なお、個々の記事については主な見出しをこのブログの過去記事に書きとめています。以下に列記しておきます。 

沖縄知事選と辺野古の在京紙報道の記録①~玉城氏が出馬表明/埋め立て承認撤回 - ニュース・ワーカー2

沖縄知事選と辺野古の在京紙報道の記録②~県民投票求め署名9万提出 - ニュース・ワーカー2

沖縄知事選と辺野古の在京紙報道の記録③名護市議選、市長支持と不支持が同数に - ニュース・ワーカー2

沖縄知事選と辺野古の在京紙報道の記録④知事選告示/安室奈美恵さん引退 - ニュース・ワーカー2

沖縄知事選と辺野古の在京紙報道の記録⑤朝日は社会面に「沖縄2018」 - ニュース・ワーカー2

沖縄知事選と辺野古の在京紙報道の記録⑥知事選終盤、辺野古移設「賛成」は4分の1 - ニュース・ワーカー2

沖縄知事選と辺野古の在京紙報道の記録⑦~国が基地迷惑料拒否、漏れ出す住民の本音(東京新聞) - ニュース・ワーカー2

 最後に、知事選投開票日の翌日、10月1日付けの東京発行各紙朝刊について、日経新聞も含めて関連記事の主な見出しを書きとめておきます。読売新聞、産経新聞には社会面に関連記事がないことが目を引きました。

【朝日新聞】
▽1面
・トップ「辺野古反対 玉城氏当選/沖縄知事選 佐喜真氏破る/全面支援の政権に打撃」写真
・「『辺野古が唯一』再考の時」伊東望・那覇総局長
▽2面
・時時刻刻「辺野古『ノー』再び/玉城氏大勝 移設反対の継承訴え/佐喜真氏、『経済優先』届かず」「限られる件の対抗策/政権、工事再開目指す構え」図表
・「玉城氏に無党派層70%/『基地問題重視』の83%投票/本社出口調査」図表3枚
・ひと「元ラジオDJから沖縄県知事に 玉城デニーさん(58)」写真
▽3面
・「政権誤算 参院選に暗雲/首相周辺『3選直後、厳しい』」
▽社会面
・トップ「翁長氏の遺志継ぐ/玉城氏、『辺野古阻止』で結束」「『沖縄が一つに』託されたバトン」「対話強調の佐喜真氏 響かず」写真2枚
 ◇第2社会面
・「声聞かぬ政権に反感■迷って『生活優先』/有権者の思いは」
・「県民の危機感示す」江上能義・琉球大名誉教授(政治学)/「政権、ボールどう返す」遠藤乾・北海道大教授(国際政治)
・「宜野湾市長は自公系が制す 前副市長の松川氏」
▽社説
「沖縄知事選 辺野古ノーの民意聞け」

【毎日新聞】
▽1面
・トップ「沖縄知事に辺野古反対派/安倍政権に痛手/玉城氏初当選」写真、顔写真
・「宜野湾市長選は自公系新人当選」
▽3面
・クローズアップ2018「自公総力戦落とす/『弔い合戦』に押され」写真、図表
・「『経済』より『基地問題』 出口調査」図表
▽4面(オピニオン)
・「『虚偽』出回った沖縄知事選/地元紙、情報を検証し記事化」写真
▽社会面
・トップ「辺野古再びノー/『翁長さん遺志』共感/沖縄知事に玉城さん」「佐喜真さん 争点隠し失敗」写真2枚
・ミニ論点「米兵が父 多様性くむ」熊本博之・明星大准教授(地域社会学)/「ヤマトンチュへの怒り」仲地博・沖縄大学長(行政法)・顔写真2枚
 ◇第2社会面
・「平和な沖縄託す/『政府に声届けて』」図表
▽社説
「沖縄知事に玉城デニー氏 再び『辺野古ノー』の重さ」

【読売新聞】
▽1面
・トップ「沖縄知事に玉城氏/辺野古反対を継承」写真
・「『承認撤回』無効化 今月上旬にも訴訟 政府」
・「宜野湾市長は与党系に」
▽2面
・「玉城氏 無党派取り込む/出口調査 争点『基地』43%」
・「移設問題 停滞させるな」高橋宏平・那覇支局長
▽3面
・スキャナー「移設 混迷深まる/辺野古 法廷闘争継続へ」「与党痛手 態勢立て直し」図表2枚
▽4面
・「野党、内閣と対決姿勢/『沖縄の選択に向き合え』」
▽社説
「沖縄新知事 普天間の危険性除去を進めよ」

【産経新聞】
▽1面
・トップ「沖縄知事に辺野古反対派/翁長氏後継・玉城氏が当選」写真、顔写真、図表
・「宜野湾市長は自公系」
▽2面
・「辺野古 泥沼化の恐れ/玉城氏、工事阻止を明言/政府、あくまで移設推進」
▽社説(「主張」)
「沖縄知事に玉城氏 国と県の関係正常化図れ」

【東京新聞】
▽1面
・トップ「沖縄知事に玉城氏/辺野古反対を前面/2代続き 政権派破る」写真
・解説「新基地 県民再び拒否」
▽2面
・核心「辺野古阻止 勢い/政府は強硬崩さず 続く対立」写真、図表2枚
・「無党派層 7割取り込む/自公層も4分の1流れ」
・「宜野湾市長選は松川氏が初当選 自公系候補」
▽3面
・「総裁3選直後 首相痛手/目指す改憲 行程に影響も」「『残念だが仕方ない』」
▽社会面
・トップ「沖縄の声 伝える/玉城さん『結束』訴え/県民に尽くす覚悟強調」「佐喜真さん『訴え届かず』」写真
 ◇第2社会面
・「負担『もう許せない』/県民 1票に託した思い」
▽社説
「沖縄知事選 辺野古基地は白紙に」

【日経新聞】
▽1面
・「沖縄知事に玉城氏/政権支援の佐喜真氏破る」
▽2面
・「辺野古移設 対立深刻に/知事選 与党系連敗、政権に痛手」「参院選 野党共闘に弾み/政党色抑えた戦術結実」写真、図表
▽社会面
・「翁長氏の遺志継ぎ勝利/玉城氏、伝統舞踊で喜び」
※関連社説なし

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