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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

「平成」最後の在京紙紙面の記録~朝日はネット企業広告でラッピング

 4月30日は元号「平成」の最後の日。5月1日に新天皇が即位し「令和」になります。東京発行の新聞各紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)はいずれも30日付朝刊でこの話題を1面トップに据え、総合面や社会面にも関連記事を展開しています。これも一つの歴史の記録と思い、各紙がどのような構成にしたか、主な記事の見出しを後掲します。対象は1面、総合面の長めの読み物、社会面、社説・論説です。すべての記事を網羅しているわけではありません。
 各紙の紙面に目を通しての感想を少し書きとめておきます。

 いろいろな意味で朝日新聞は独自色が目立つように思いました。
 1面トップは「元号案 首相指示で追加/『令和』3月下旬に提出/6原案 皇太子さまに事前説明」の見出しで、新元号の決定過程を巡る独自取材記事を掲載しました。他紙が「天皇陛下きょう退位」(毎日新聞)、「陛下きょう退位」(読売新聞)などの見出しをそろって掲げている中で、「元号、天皇制と政治」という問題に焦点を当てた点が際立っています。社説でも安倍晋三政権による天皇代替わりの政治利用という論点に触れており、やはり他紙と一線を画しているように感じました。
 もう一つ、朝日新聞の独自色は、新聞本紙を広告が大きなスペースを占める別紙でそっくり包み込むラッピング紙面にしたことです。広告主はネット企業の「NETFLIX」。社会の情報流通の今後を様々に考えさせられるように感じます。思い出したのは、昭和から平成に変わったころのこと。東京で発行されていた日刊の一般新聞は、現在の6紙に加えもう1紙、朝刊単独紙の「東京タイムズ」がありました。ウイキペディアを見たところ、1992(平成4)年7月に廃刊となっています。今後、紙の新聞はどう推移し、マスメディアの組織ジャーナリズムはどう変わっていくのか(あるいは変わらないのか)。そんなことも考えさせられます。
 社説・論説を掲載したのは朝日、毎日、読売、日経、東京(中日新聞と同一)の5紙。退位する現天皇と象徴天皇制を論じる内容と、平成という時代の振り返りと今後の社会の課題を展望する内容とに、大きく二分されるように感じました。産経新聞はふだん論説の「主張」が掲載されている2面に、「陛下、ありがとうございました」との熊坂隆光・産経新聞社会長の署名記事が掲載されています。
 以下に、各紙の主な記事の見出しを書きとめておきます。社説・論説はサイト上で読めるものはリンクを張っておきます。

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◎2019(平成31)年4月30日付朝刊
【朝日新聞】
・1面
トップ「元号案 首相指示で追加/『令和』3月下旬に提出/6原案 皇太子さまに事前説明」
「天皇陛下、きょう退位」カット・平成最後の日
・2面
時時刻刻「新元号 濃い政治色」「首相『他も検討しよう』/万葉集 政策重ね好感」「事前説明 違憲の指摘も/保守派に配慮 交換条件」
・社会面(31面)
「30年の思い 次代へ」カット・平成最後の日/「子どもを守る備えを」東日本大震災/「はるか、私お母さんになったよ」阪神大震災 ※ほかに「ボランティア」「サリン被害者」「沖縄少女暴行」「バリアフリー」
・第2社会面(32面)
「思考停止 変える力を」作家・高村薫さん寄稿
■社説「退位の日に 『象徴』『統合』模索は続く」/支持された30年の旅/判断するのは主権者/政治が機能してこそ
https://www.asahi.com/articles/DA3S13996599.html?iref=editorial_backnumber
※ラッピング(NETFLIX)

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【毎日新聞】
・1面
トップ「天皇陛下きょう退位/202年ぶり 憲政史上初」
「継がれ吹く 新たな風」玉木研二・客員編集委員
・3面
CUクローズアップ「特例退位 国民が共感/異なる天皇像の間で」
・社会面(23面)
「平成 歩みに感謝」「被災者『勇気もらった』/ゆかりの人ら感慨」※ほかに「被爆地」「沖縄慰霊」
・第2社会面(22面)
「退位後も心寄せ」「両陛下交流絶やさず/仮住まい後『仙洞御所へ』」
■社説「天皇陛下きょう退位 国民と共にあった長い旅」/象徴であり続けるため/戦争の記憶風化を懸念
https://mainichi.jp/articles/20190430/ddm/005/070/088000c

【読売新聞】
・1面
トップ「陛下きょう退位/平成終幕へ/夕刻 儀式で最後のお言葉」
「被災地訪問37回」
・3面
スキャナー「退位後の活動範囲 模索」「『二重権威』回避に配慮」「高輪に仮住まい後 赤坂へ」
・社会面(29面)
「陛下へ感謝尽きず/苦難の日々『励まされた』」※「戦没者慰霊」「拉致問題」「国際貢献」
・第2社会面(28面)
「平成 名残惜しむ/『最後の饅頭』・顔出しパネル」
「象徴の旅路 重責と笑顔」沖村豪・編集委員
■社説「天皇陛下退位 国民と歩み象徴像を体現した/健やかに過ごされることを願う」/一人ひとりと目合わせ/安定的な継承が課題
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20190429-OYT1T50219/
※13~20面:抜き取り特集「平成グランドフィナーレ<下>」「両陛下の歩み」「識者座談会」など

【日経新聞】
・1面
トップ「天皇陛下 きょう退位/平成、30年余りで幕/一代限り、特例法で実現」
・3面
「平成終幕 最後のお言葉は/政府 憲法と伝統 両立に配慮/天皇陛下きょう退位」
・社会面(27面)
「令和へ準備万全に/警視庁 皇居周辺を捜索/宮内庁 儀式の予行練習」
・第2社会面(26面)
「平成の天皇、皇后と国民」井上亮・編集委員
■社説「未完の成熟国家だった平成の日本」/人口減という試練/日本の強み次の時代へ

【産経新聞】
・1面
トップ「天皇陛下きょう譲位/退位の例で最後のお言葉」
「譲位 祝賀ムードに包まれ」
「真直なる天皇の大きなる道」平成の終わりに:平川祐弘・東京大学名誉教授
・2面
「陛下、ありがとうございました」/果てしない道歩まれた/ご長寿こそ国民の願い:熊坂隆光・産経新聞社会長
・社会面(27面)
「陛下『国民と一体』望まれる/『象徴』ご活動意義 元側近語る」※元宮内庁参与、元宮内庁長官、元侍従長
・第2社会面(26面)
「非正規雇用や過労死/進む『ひずみ』の修正」平成その先へ「働」
※「主張」なし、3面に連載企画「象徴 次代へ 両陛下の願い」(下)

【東京新聞】
・1面
トップ「天皇陛下 きょう退位/終わる平成 30年4カ月」
「終身在位からの大転換」吉原康和・編集委員
・2面
核心「政治劣化・停滞の30年」「小選挙区で勝つことに目を奪われ、日本の進路を示せなくなった。」「激動の平成 田中秀征さんに聞く」
・社会面(27面)
「家族のきずなに包まれ」私の平成のことば ※「極楽って今のこと」「ユズリハのように」など
・第2社会面(26面)
「過労死、格差 残った課題」 ※「社員悪くありません」「聖域なき構造改革」など
■社説「『当たり前』をかみしめて 平成のおわりに」/原発に制御されている/何でもないことの平安/「戦後」を脱却させない
https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019043002000112.html