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丁寧な政治 安倍政権に求める~沖縄2紙は新基地反対を強調 参院選 地方紙の社説・論説

 参院選の結果について、地方紙・ブロック紙の7月22日付の社説・論説をネット上の各紙サイトでチェックしてみました。やはり、与党の改選過半数獲得と、改憲勢力が参院の議席の3分の2を割り込んだことに言及した内容が目立ちます。改選過半数を獲得したとしても、有権者が安倍晋三政権に全面的に信任を与えたわけではないとの指摘もあり、丁寧な政治を求めている点がおおむね共通しています。
 沖縄選挙区では、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古での新基地建設への反対を前面に打ち出した無所属候補が、自民党公認候補を破りました。「安倍政権が民意を無視して強行する新基地建設に『ノー』の意思を繰り返し繰り返し示しているのである」(沖縄タイムス「新基地反対の民意再び」)、「今回の参院選は駄目押しとも言える結果だ。これ以上、民意を無視した埋め立てを続けることは許されない」(琉球新報「新基地反対は揺るぎない」)との主張は、日本本土でも広く知られていいと思います。日本本土にある安倍政権の「安定」評価とは、まったく異なった情景です。
 以下に、ネット上でチェックできた各紙の社説・論説の見出しを記録しておきます。一部は、重要と感じた部分を引用して書きとめました。23日夜現在、サイト上で読めるものはリンクも張っています。

【7月22日付】
▼北海道新聞「参院選改憲勢力後退 暮らしの不安解消が第一」/年金の将来像議論を/問題多い首相の狭量/野党は一体感足りぬ/
 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/327456?rct=c_editorial

 安倍政権での改憲を国民が信任したとは言えまい。何よりも、幅広い国民合意が必要な改憲を一方的に押し通してはならない。
 首相が取り組むべきは老後資金2千万円問題に象徴される国民の将来不安に正面から向き合うことであり、山積する外交の難題に解決の道筋を付けることだ。
 (中略)
 狭量とも言うべき首相の政治姿勢にも苦言を呈しておきたい。
 首相は街頭で「あの民主党政権の時代に逆戻りするわけにはいかない」と野党批判を繰り返し、立憲民主党の枝野幸男代表について「民主党の枝野さん」と呼んだ。
 民主党政権の負の印象をすり込むのが有効な戦術とみたのだろう。公党をおとしめるような攻撃は宰相としての品格が問われる。
 自民党は政権に批判的な人たちのやじを警戒し、首相の遊説日程を事前に公表しなかった。
 指導者に必要なのは異なる意見に耳を傾けつつ、自身の考えに理解を求める対話の姿勢だ。にもかかわらず、街頭で語りかけるのは支持者だけで反対者は遠ざける。
 こうした態度の先に待ち受けるのは社会の分断と亀裂ではないか。そう憂慮せざるを得ない。

▼河北新報「参院選自公勝利/おごらず底流の声を聞こう」
 https://www.kahoku.co.jp/editorial/20190721_02.html

 選挙の焦点は全国に32ある1人区の行方だった。全体で自民が制したとはいえ、東北では6選挙区のうち岩手、宮城、秋田、山形で野党統一候補が勝利した。
 輸出産業がひしめき、円安の恩恵を受ける関東以西の工業地帯に比べ、東北の有権者は「地方にまで及んでいない」と中央偏重の政策に疑いの目を向けている。株高など与党が言うほどの実感はない。
 農業政策への不信も影を落とす。8月には米国との貿易交渉が再開され、農産物輸入を押し付けてくるとの見方は根強い。前回選挙で示された環太平洋連携協定(TPP)に対する反発が、今も底流で渦巻いているのは確かだ。
 出口調査によると、宮城では「支持なし層」の3分の2が野党候補に投票している。秋田では、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」問題が影響した。出直しを求めた意味は重い。
 3年に1度の参院選は「権力をチェックし、戒める機会」とされる。一連の問題発言など緊張感のなさへの怒り、東北からの厳しいシグナルを軽視してはならない。

▼秋田魁新報「参院選与党過半数 白紙委任とは言えない」
 https://www.sakigake.jp/news/article/20190722AK0011/

▼山形新聞「参院選、与党過半数 政権はおごることなく」
 http://yamagata-np.jp/shasetsu/index.php?par1=20190722.inc

▼岩手日報「<’19参院選>与党が改選過半数 『安定』を誇るのならば」
 https://www.iwate-np.co.jp/article/2019/7/22/60418

 岩手選挙区は激戦の末、野党統一候補の新人・横沢高徳氏が自民現職の平野達男氏を破った。知名度不足を解消して27年ぶりの自民勝利を阻み、野党地盤の強さを改めて見せつけたと言える。
 野党は秋田、山形などでも自民候補を下し、東北では共闘により与党と渡り合えることを示した。だが、全国では現政権による政治の「安定」が選択されている。
 街頭で安倍晋三首相が唱えたのは、まさに「安定」だった。民主党政権時の「混乱」を批判し、政治の安定が経済の強さをもたらす-と叫ぶのを定番としていた。
 だが「安定」か「混乱」かに訴えを単純化し、対立軸がぼやけたことは否めない。選挙戦が盛り上がりを欠いた原因は、政策の争点化を政権が避けたことにある。

▼福島民報「【改憲3分の2割れ】丁寧な政権運営を望む」
 https://www.minpo.jp/news/moredetail/2019072265488

▼福島民友「参院選・与党改選過半数/信任におごらず政権運営を」
 http://www.minyu-net.com/shasetsu/shasetsu/FM20190722-398728.php

▼茨城新聞「参院選 ゆがむ三権分立の修復を」
▼神奈川新聞「与党大勝 参院の検証機能発揮を」
▼山梨日日新聞「[参院選 与党が勝利]政権運営 謙虚な姿勢で臨め」

▼信濃毎日新聞「7.21参院選 与党が勝利 『安倍改憲』に民意ない」/政策すり替えるな/議論を避ける姿勢/国民代表の自覚を
 https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190722/KP190721ETI090002000.php

 安倍首相は街頭演説で9条に自衛隊を明記する必要性を何度も主張。改憲案を紹介する冊子も各地で配布した。
 首相は「憲法を議論する政党か、議論を拒否する政党か」と繰り返した。これに対し、野党は「結論ありきで、強引に議論を進めようとする自民党の姿勢に問題がある」などと反論した。選挙戦が抽象的な主張の応酬に終始する中で、改憲の必要性など本質的な論議は深まらなかった。
 有権者は改憲を支持したとはいえない。共同通信社が12、13日に実施した世論調査では、安倍政権下での改憲には半数超が反対し、賛成は3割強だった。6月下旬の調査より、むしろ反対の割合は増えている。
 本社が16日にまとめた参院選に関する世論調査でも、投票で重視する政策や課題(三つ以内)で、「憲法改正への姿勢」は6位で16%だった。一方で「景気・雇用などの経済対策」「医療・福祉・介護」がほぼ半数を占めている。有権者が求める政策をすり替えてはならない。
 改憲は国会が発議する。主権者である国民が求めていないのに、首相の信条に基づく改憲論議を進めることに無理がある。

▼新潟日報「与党改選過半数 全面的な信任とはいえぬ」/忖度発言に強い不信/批判に耳を傾けねば/改憲最優先ではない
 https://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20190722484183.html

 新潟選挙区は全国屈指の激戦区となり、野党統一候補で無所属新人の打越さく良(ら)氏が、自民党現職の塚田一郎氏を小差で下した。
 県外で生まれ育ち、知名度でも劣る打越氏に現職の塚田氏が敗れた要因に、国土交通副大臣時代の道路整備を巡る「忖度(そんたく)」発言があったことは明らかだろう。
 失言は政治家としての資質を疑わせるとともに、安倍政権のおごり、緩みの象徴と受け止められたのではないか。
 首相や菅義偉官房長官がそれぞれ2回も本県入りするなど自民党はテコ入れを図ったが、有権者は厳しい判断を下した。不信が強かったことの表れだろう。
 選挙終盤には、週刊誌報道で新潟1区を地盤とする自民党の石崎徹衆院議員(比例北陸信越)の暴行疑惑も発覚した。「政治家の質」がより問われることになったに違いない。
 残念だったのは、「落下傘」「忖度」などの批判合戦が目に付き、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働問題など重要課題を巡る論戦が深まらなかったことだ。

▼北日本新聞「【19参院選】与党大勝/積極支持によるものか」

▼北國新聞「参院選で与党勝利 改憲の推進力にできるか」

 安倍首相はこれから自民党総裁任期の後半に向かう。参院選で得た政治基盤を生かして難局を乗り越え、日本の針路を定めていけるのか。とりわけ手腕が問われるのは自民党の公約に掲げた憲法改正であろう。参院選の結果を改憲の推進力にできるのかどうかは、選挙後の焦点となる。
 今回は「改憲勢力」の議席数が国会発議に必要な3分の2以上を維持するのかが注目された。憲法改正に前向き、もしくは反対しない勢力は3分の2を下回ったが、選挙後の国会は議論を避けて通ることはできない。
 安倍首相は公示前の党首討論会で、「国民民主党の中にも改憲に前向きな人がいる」と述べて、合意の形成に意欲を示した。改憲を目指す首相の決意が変わらなければ、選挙結果を受けた合意形成の働き掛けを通じて、与野党の改憲論議を促す可能性がある。
 ただし、憲法改正の議論を進めていくためには、与党が選挙戦で強調したように安定した政治基盤を保つ必要がある。そのためには、何より経済が好調であることが欠かせない。景気が失速し、目の前に暗雲が広がるような状態に陥れば、国会で腰を据えた議論を進めることも、国民の理解を深めていくことも難しくなる。

▼福井新聞「改憲勢力3分の2届かず 首相は前のめりを改めよ」/滝波氏、公約に注力を/国民投票議論が前提/長期政権の度量示せ
 https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/899525

 改憲勢力が3分の2に届かなかったことで、首相の軌道修正は必至だ。野党に秋波を送り多数派の形成を目指すことも想定される。一方で、改憲勢力の間でも具体的な改憲案で一致していない。自民党は9条と緊急事態対応、参院選の合区解消、教育充実の4項目を掲げている。
 特に首相は9条への自衛隊明記というレガシー(政治的遺産)づくりに前のめりだが、公明党は公約で「多くの国民は自衛隊を違憲の存在とは考えていない」と指摘、「慎重に議論されるべきだ」としている。各種世論調査でも国民が重視する項目の中で「改憲」の順位は低いのが実情だ。
 首相は「改憲を議論する政党を選ぶのか、審議を全くしない政党を選ぶかを決める選挙だ」と主張してきた。13年の選挙で大勝したため、議席維持のハードルは高かったこともあるが、そうした首相の居丈高な姿勢に国民が危うさを感じたのも一因だろう。
 立憲や国民など野党も議論自体は否定していない。とりわけ野党が指摘する国民投票法の問題点、CM規制の議論を進めるべきであり、改憲論議の前提として建設的な議論を求めたい。

▼京都新聞「参院選与党勝利  安倍政治は信任されたのか」/選挙の勝利が目的化/改憲への関心度低く/負担先送りは避けよ
 https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20190722.html

 長期政権の継続は、行政を監視すべき国会との関係をいびつにしている。選挙での勝利による政権の維持が目的化し、国会での説明や議論より優先されていることが、今回の参院選で露骨に表れた。
 直前の通常国会で、政府・与党は3月に本年度予算が成立すると、国政チェックの主舞台である衆参の予算委員会開催を拒み続けた。老後に2千万円の蓄えが必要とする金融庁金融審議会の報告書も政府は受け取らず、なかったことにして与党も議論を封じた。
 とりわけ年金問題では、政府が給付水準を点検して過去6月に公表していた「財政検証」を選挙前に出さなかった。データの裏付けを欠いたことで、与党が訴える年金制度の持続性と野党の批判がかみあわず、有権者の抱く将来への不安に応える議論が深められなかったことは否めない。
 都合の悪い事実を隠し、説明責任を果たそうとしない政府を、与党の数の力で国会が下請けのように追認し、法案を通過させていく。立法府の存在意義が問われる事態の進行は民主主義を危うくしかねない。
 そこまで政権維持にこだわる安倍氏が見据えるのが、宿願の憲法改正であることは疑いない。
 安倍氏は、事前情勢で「与党堅調」とみるや訴えの柱の一つに改憲を押し出し、衆参両院の憲法審査会がほとんど開かれないことに「憲法を議論しない政党を選ぶのか」と野党に批判を浴びせた。
 改憲勢力の維持を目指しつつ、国民民主党にも協力の秋波を送っており、3分の2割れを受けて野党側の対応も注目されよう。

▼神戸新聞「自公改選過半数/本当に強い政権がなすべきこと」/混迷を抜け出したか/議論重ね合意形成を
 https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201907/0012537663.shtml

 この6年半、政府、与党が多弱野党の足元を見て丁寧な議論をしようとせず、数の力で法案成立を強行する国会運営が定着してしまった感がある。
 安倍首相は選挙戦で「議論する政党を選ぶのか、まったくしない政党を選ぶのか」と野党への挑発を繰り返した。憲法論議が進まないことを批判した発言だが、まず改めるべきは政権側の国会軽視の姿勢である。
 森友・加計(かけ)学園を巡る疑惑、統計不正問題などでは、野党が求める臨時国会召集や予算委員会開催をはねつけてきた。都合の悪い議論を避けてきたのはむしろ与党側である。
 世論調査では、安倍政権下での改憲への反対が賛成を上回る状況が続いている。首相は改憲論議に支持を得られたとの考えを示したが、数の力で強引に押し切る手法を国民が懸念していることを忘れてはならない。
 安倍政権が直面するのは、簡単に答えが出ない難問ばかりだ。さまざまな意見の対立が予想されるが、異なる意見を調整し、議論を尽くして合意を見いだすのが政治の役割である。
 本当の強さは、異論を敵視して排除するのでなく、批判勢力を含めた国民全体を包み込むものだ。自分の思いを遂げるためでなく、持続可能な未来へのビジョンを描き困難を打開するために生かしてもらいたい。

▼山陽新聞「改憲3分の2割れ 拙速な議論避けるべきだ」
 https://www.sanyonews.jp/article/921274?rct=shasetsu

▼中国新聞「与党改選過半数 『1強』信任とは言えぬ」
 https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=554941&comment_sub_id=0&category_id=142

▼山陰中央新報「参院選でかすんだ地方創生/実効性ある具体的施策を」
 http://www.sanin-chuo.co.jp/www/contents/1563758827214/index.html

▼愛媛新聞「与党勝利 強引な政権運営改め課題対処を」

 だが、主な争点となった改憲や老後資金2千万円問題、消費税増税についての論戦では、有権者の疑問や不満に十分答えておらず、消化不良だった感は否めない。6年半にわたる安倍政権のおごりや緩みも顕著となっており、「白紙委任」でないことは明らかだ。政権与党は数の力を頼りに異論を封じ、強引に物事を進める従来の姿勢では国民の支持は遠のくと肝に銘じ、山積する課題に対応してもらいたい。
 安倍晋三首相は「憲法について議論をする政党を選ぶのか、責任を放棄して議論しない政党を選ぶか」などと野党への批判をむき出しにして主張を展開した。しかし、これまでさまざまな議論に背を向けてきたのは政権与党にほかならない。加計・森友学園問題の疑惑には正面から答えず、国論を二分するような法案で採決を強行してきた。先の通常国会では重要な論戦の場である予算委員会の開催要求を拒むなど、不誠実な国会運営を繰り返してきた。
 改憲に関しては、共同通信社の世論調査で安倍政権下での憲法改正に半数以上が「反対」だった。自民党は憲法9条への自衛隊明記を掲げるが、集団的自衛権の行使容認など、安倍政権が推し進めた安全保障政策への懸念は依然として根強い。選挙戦で公明党は改憲について争点化自体に疑問を呈すなど、与党でも認識が食い違っていた。選挙結果を受け、首相は改憲議論を加速させたい考えだが拙速は許されない。

▼徳島新聞「19参院選 合区で自民勝利 野党共闘は機能したか」
 https://www.topics.or.jp/articles/-/233166

 残念だったのは、徳島の投票率がまた低下したことだ。過去最低の38・59%に沈み、都道府県別では全国最下位となった。これほどの棄権は民主主義の危機と言える。
 高野、松本両氏とも地元が高知のため、県内の有権者になじみが薄かったのは確かだ。合区の弊害にほかならない。ただ、選挙が盛り上がらなかったのは、県内野党の低迷が大きく影響したのではないか。
 平成以降の県内の参院選を見ると、自民政権時に野党が勝利した際の投票率は、1989年が65・59%、98年は56・91%、2007年は58・47%と高い。
 これは無党派層が動いた結果だ。支持層の厚い自民候補を相手に、野党候補が勝機を見いだすには、浮動票を取り込む必要があることを示している。

▼高知新聞「【参院選徳島・高知】合区解消の責任より重く」
 https://www.kochinews.co.jp/article/294850/

 今回とは逆に前回は高知が「地元候補不在」となり、投票率は全国最下位だった。合区で広がった選挙区を候補者はくまなく回ることができず、訴えを浸透させるのは難しい。今後も合区が続けば、選挙離れに拍車が掛かる恐れは強まろう。
 高野氏は「合区解消をうたうのは自民だけ」と胸を張る。しかし自民は前回参院選でも合区解消を前面に打ち出していた。それが2度続いた以上、「公約違反」と言われても仕方ない。
 確かに自民の憲法改正案には、参院選の選挙区で、改選ごとに各都道府県から1人以上選出できる規定がある。ただし、「投票価値の平等」を求める憲法14条を損なう懸念などが指摘されている。
 衆参両院で多数派が異なる「ねじれ国会」では、参院が国政を止めるほど強い権限を発揮したこともあった。たとえ投票価値の平等が損なわれても議員の選び方を変えるというのなら、参院の権限は今のままでいいのか。
 参院の選挙制度改革は、衆院と参院の役割分担にまで立ち返った抜本的な論議が要る。6年間の長い任期を持ち、解散の心配もない参院議員自身が本来、それを担わなければならない。にもかかわらず出てきたのは、合区や特定枠といった緊急避難的な弥縫(びほう)策ばかりだ。

▼西日本新聞「岐路の選択 『改憲』より『暮らし』こそ」/何のための「安定」か/国民的合意の道筋を
 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/529016/

 自民党は「公明党を含む与党で改選議席の過半数」「非改選も含めて与党で過半数」など、あらかじめ勝敗ラインを低く設定していた。自公が圧勝した6年前の反動減を意識せざるを得なかったからだ。与党は「政治の安定を訴え、国民に信任された」と言うが、手放しで喜べる結果ではあるまい。
 そもそも「政治の安定」は何のために必要か。与野党で意見が鋭く対立し、世論も二分する憲法改正を短兵急に進めるためではない。「国民生活の安定」のためにこそ必要なのではないか。私たちが首相に問いたいのはここだ。
 「老後2千万円」の問題は、その象徴だろう。公的年金以外に2千万円の蓄えが必要-とした金融庁の審議会報告書である。国民の「老後資金」の将来に警鐘を鳴らす一方、報告書の受け取りを拒んだ政府や与党の姿勢がかえって年金不信を増幅してしまった。
 年金の問題は同時に少子高齢化と人口減少を考えることであり、社会保障と税の在り方を不断に検証することだ。それは大局的な観点と中長期の時間軸で、この国のかたちを論じることに通じる。
 厳しい現実や困難な予測を踏まえ、たとえ国民に痛みや負担が生じるとしても、逃げずに率直に訴えるのが政治本来の役割である。

▼大分合同新聞「参院選開票 もろ手挙げた信任ではない」

▼宮崎日日新聞「参院選 政治への信頼回復急ぎたい」/不祥事頻発し失望感/将来の安心が最優先
 http://www.the-miyanichi.co.jp/shasetsu/_39977.html

 近年、公文書の改ざんや公的データの不正などが頻発し、民主主義の土台を崩しかねない事態が続いた。忖度(そんたく)風土や組織的隠蔽(いんぺい)のまん延も、安倍晋三首相の1強体制によってあぶり出された問題点だ。
 その体質や政治手法に対する審判を下す選挙だったが、宮崎選挙区の投票率は41・79%で、過去最低となった。
 前回2016年の選挙区での自民、公明の与党の得票数は全有権者の25・3%。「1強」とは言うものの、低投票率が続く国政選挙で、全有権者の4分の1程度にとどまる得票で圧倒的多数の議席を占めているのが実態だ。今参院選でも同様で、これでは健全な民主主義の姿とは言えない。
 有権者の側も、意思を表明する貴重な機会を生かし切れなかった。不祥事の解明や信頼回復に積極的に動かず、逃げの姿勢ばかりが目立つ政治。その貧困さに有権者は「またか」と失望感を膨らませ、諦めの境地に至った人が多いのではないか。
 地方組織が弱体化し、候補者擁立に手間取った野党は受け皿になれなかった。負託を受けた新議員は現状を認識し、向き合っていかなければならない。

▼佐賀新聞「参院選 ゆがむ三権分立の修復を」(共同通信)
 https://www.saga-s.co.jp/articles/-/403594

▼熊本日日新聞
「2019参院選・県内 多様な声聞く『受け皿』に」
 https://kumanichi.com/column/syasetsu/1124617/

 しかし、3年前の参院選と比べ、野党の足並みの乱れは明白だった。前回の選挙戦を主導した民進党は立憲民主党と国民民主党に分裂。その立民県連は阿部氏擁立を巡り内部対立し、国民県連も支援にとどめた。さらに、いったんは阿部氏推薦を出した連合熊本が後に取り消す事態も生じた。県内の非自民系の地方議員らが地域政党「くまもと民主連合」を設立して支援したが、野党共闘への疑問符は消えず、無党派層の取り込みも不発に終わった。
 その結果、投票率は47・23%にとどまり、過去最低だった前回の51・46%をさらに4・23ポイント下回った。有権者を投票に動かす選択肢を提供できない政党や政治家の責任は重い。

「2019参院選・全国 慢心戒め広く合意形成を」
 https://kumanichi.com/column/syasetsu/1124613/

 選挙戦で、与野党は年金制度や消費税増税、憲法改正、安保政策などを争点に論戦を繰り広げた。いずれも日本の針路を左右する重要な課題だが、論議は深まらなかった。
 象徴的だったのが年金問題だ。政府与党は、年金財政の健全性をチェックする「財政検証」の公表を参院選後に先送りした。有権者は判断材料を奪われた形で、与野党の政策の違いを見極めることができなかったのではないか。
 そうした選挙戦への影響を回避する選挙戦術が功を奏し、結果として消去法での与党の支持に結び付いた印象も否めない。前回2016年参院選の54・70%を下回る低い投票率はその表れとも言える。有権者がもろ手を挙げて政権を信任したと判断するのは早計だろう。

▼南日本新聞「[2019参院選・与党過半数] 批判票の重み自覚せよ」/年金不安の解消を/緊張感を欠く政治
 https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=108181

 2012年12月の第2次安倍政権発足以来、6年半が過ぎた。この間、都市部を中心に雇用環境が改善し、株価も上昇するなど経済は上向いた。
 だが、地方は景気回復を実感できない。東京への一極集中が拡大、人口減少や人手不足は深刻で、明るい展望が開けないままである。
 比例代表や鹿児島など改選1人区で少なくない政権批判票が投じられた。その背景には、こうした地方の不満や、たびたび露呈した「安倍1強」体制といわれる長期政権のおごりがあるのではないか。
 論戦から逃げて、数の力で押し切る政治を国民は望んでいない。反対意見にも真正面から向き合い、議論を尽くすのが政権与党に課せられた使命である。

▼沖縄タイムス「[高良鉄美氏が初当選]新基地反対の民意再び」
 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/448319

 今回の参院選は第2次政権発足から6年半におよぶ「安倍政治」を総括する選挙である。2014年11月に翁長雄志前知事が新基地反対を掲げ、初当選した以降とほぼ重なる。
 全国では自民、公明両党が早々と改選過半数の議席を獲得し、安倍晋三首相は引き続き「1強体制」の政権基盤を手に入れた。ところが沖縄では全く逆である。
 沖縄ではこの間、知事選2回、衆院選2回、衆院3区補選、参院選2回が実施されている。自民党が獲得した選挙区の議席はわずか衆院4区だけである。
 新基地に反対する「オール沖縄」勢力が12勝1敗と圧勝。安倍政権が民意を無視して強行する新基地建設に「ノー」の意思を繰り返し繰り返し示しているのである。
 民主主義の根幹である選挙結果の意味は重い。

▼琉球新報「参院選高良氏当選 新基地反対は揺るぎない」
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-957908.html 

昨年9月の県知事選で玉城デニー氏、今年4月の衆院3区補欠選挙で屋良朝博氏、そして参院選で高良氏と、新基地建設反対を掲げた候補者が立て続けに当選した。2月の県民投票では投票者の7割超が埋め立てに反対している。
 今回の参院選は駄目押しとも言える結果だ。これ以上、民意を無視した埋め立てを続けることは許されない。
 政府に求められるのは辺野古に固執する頑迷な姿勢を改めることだ。今度こそ、沖縄の声に真剣に耳を傾け、新基地建設断念へと大きくかじを切ってほしい。県内移設を伴わない普天間飛行場の返還を追求すべきだ。