ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

「秋晴れ」「笑顔」「祝福」の祝賀パレード~平穏に進む代替わり

 令和の新天皇の即位を披露するパレード「祝賀御列の儀」が11月10日、東京都心で行われました。沿道には11万9千人が集まり、警戒に当たった警察官は約2万6千人に上ったと報じられています。10日は新聞休刊日のため、東京発行各紙の11日付の朝刊はなく、このニュースの掲載は11日の夕刊になりました。各紙とも、1面で大きく扱っています。見出しには「秋晴れ」「笑顔」「祝福」といった言葉が目立ちました。
 毎日新聞の記事によると、このパレードは、即位した5月1日からの国事行為である「即位の礼」の最後の行事でした。テロやゲリラ事件もなく、平穏のうちに、平成から令和への代替わりは進んでいるように感じます。令和への代替わりの最大の特徴は、この「平穏」ということになるのかもしれません。昭和から平成への時は、必ずしもそうではありませんでした。

f:id:news-worker:20191111232010j:plain

 

 以下は平成3年(1991年)の警察白書の一節です。「極左暴力集団」は新聞では「過激派」と表記しています。

 極左暴力集団は、平成2年初頭から、「90年天皇・三里塚決戦」路線の下、皇室闘争に対する取組を一段と強め、127件の皇室闘争関連のテロ、ゲリラ事件を引き起こした。とりわけ、「即位礼正殿の儀」当日には、都内での34件を含め6都県下で40件、「大嘗宮の儀」当日にも7府県下で11件のテロ、ゲリラ事件を引き起こした。
 特に中核派は、全国各地において、新型迫撃弾、設置式爆弾、時限式発火装置等により、JR、地下鉄等の運行を妨害したり神社等を焼失させるなど、皇室関係施設以外にも攻撃対象を拡散した「無制限・無制約」のテロ、ゲリラを集中的に引き起こした。
 一方、革労協狭間派は、即位の礼・大嘗祭に向けた前段闘争において、時間をおいて爆発するなどのトリックを用いた爆弾で警視庁独身寮をねらい、警察官1人を殺害し、一般市民を含む7人に重軽傷を負わせる残忍なテロ事件を引き起こした。
https://www.npa.go.jp/hakusyo/h03/h030700.html

 11月10日は日曜日で、わたしも休日でした。思い立って、東京都中野区沼袋にある氷川神社を訪ねてみました。警察白書の中にも記述があるように、昭和から平成への代替わりでは神社もテロ、ゲリラの標的になりました。沼袋の氷川神社はその一つです。
 当時の報道によると、平成2年3月19日午前3時すぎ、本殿付近から出火し、木造平屋の本殿と倉庫計113平方メートルを全焼しました。けが人はいませんでした。ほぼ同時刻に、世田谷区船橋の神明神社、墨田区東向島の白髭神社でも出火し、本殿を全焼しました。いずれの神社の焼け跡からも乾電池、リード線などが見つかり、警視庁公安部は、時限発火装置を使った同時多発放火ゲリラ事件とみている、と報じていました。氷川神社と白鬚神社の宮司2人は、東京都神社庁が大嘗祭に向けて設けている「御大典奉祝特別委員会」の常任委員を務めていたとのことです。
 氷川神社はその2年前の昭和63年、昭和天皇の即位60年記念事業として、本殿を建てたばかりでした。それをゲリラ事件で失ったのですが、翌平成3年8月には再建します。それが現在の社殿です。

f:id:news-worker:20191111232111j:plain

 折しも七五三の時期で、神社には晴れ着の子どもを連れた家族らが次々に訪れていました。30年近く前のゲリラ事件を思わせるものはなく、警備の警察官の姿もありませんでした。平穏そのものの秋の1日の光景でした。

 平穏のうちに進む、平成から令和への代変わり。そのひとコマのスケッチとして、書きとめておきます。

f:id:news-worker:20191112075625j:plain