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特措法に罰則 「必要」「賛成」過半数~緊急事態宣言下 在京紙報道の記録9:5月7日~11日付

 新型コロナウイルス対策として緊急事態宣言が続くさなか、マスメディア各社が5月に実施した世論調査の結果がいくつか報じられています。後日、あらためて詳しく見て行こうと思いますが、ざっと見たところで目を引いたのは、緊急事態宣言の基になっている特別措置法の改正です。休業要請を受け入れない事業者への罰則を盛り込んだ改正が必要か否かの設問です。
 日経新聞・テレビ東京の調査では「必要だと思う」53%、「必要だと思わない」42%でした。もう一件、JNNの調査では法改正に「賛成」56%、「反対」34%でした。肯定的な回答が過半数ですが、圧倒多数というわけではないようです。
 賛否いずれでもない割合は、日経・テレ東調査では5%、JNN調査では10%です。賛否の意見自体は9割以上の人が持っているようです。

 以下は緊急事態宣言下で東京発行の新聞各紙がどのように報じたのか、1面と社会面の記録の続きです。
【5月11日(月)付】=緊急事態宣言35日目・拡大26日目
▼朝刊
・朝日新聞 28P
「中国式の『目』10億人追う/コロナの時代 デジタル覇権の影」米中争覇 衝突する戦略
「『34県の多く 解除を視野』/緊急事態宣言めぐり西村担当相」
社会面「『どさくさ』審議 反発拡散/#検察庁法改正案に抗議します/2日でツイート470万件」
・毎日新聞 24P
「コロナ大量検査 想定外/政府 13年『行動計画』踏襲」
「未知の病 試行錯誤」明日へ 新型コロナ
社会面「電話で選別『無責任』/入院できず死亡 遺族憤り/自宅待機の80代男性」
・読売新聞 28P
「34県の宣言解除 調整/緊急事態 『特定警戒』一部も」
「保護主義 強まる兆し」変わる世界 新型コロナ 下
社会面「ベトナム公務員に2500万円/現地子会社 追徴税減額求め/東証1部『天馬』」
・日経新聞 28P
「世界企業 守りの資金確保/需要蒸発に対応 過去最高水準」
「窮地が促す学び改革/教室から消えた13億人」コロナ 出口は見えるか 4
社会面「崖っぷちのホームレス/路上販売の収入激減、ボランティアも支援縮小」ドキュメント日本
・産経新聞 28P
「深まる米中分断 最大の脅威/主導国不在 医薬品・食糧奪い合い」米政治学者 イアン・ブレマー氏 コロナ 知は語る
「露、電子戦とサイバー戦一体化/無線遮断 ウクライナ混乱 携帯に誤情報 誘導し攻撃」
社会面「デマ拡散 混乱に拍車/風評被害頻発・買い占め助長/医療妨害ケースも」
・東京新聞 24P
「『看護師の自分は捨て駒』/集団感染の都内病院切迫/続く防護服不足・危険手当 数百円」
「#検察庁法改正案に抗議します 投稿470万件」
社会面「障害児の最後のとりで 守る/都内の放課後デイサービス/親『預けないと自分がパンク』」

▼夕刊
・朝日新聞 10P
「エベレスト 静かな春/日本人 初登頂から50年」
(NEWSダイジェスト「診療所・証病院でもPCR可能に」)
社会面「学び どう取り戻す/学校再開の青森・秋田 分散登校 換気欠かさず/休校続く東京 資料配布 滞在20分」
・毎日新聞 8P
「『フレイル』予防のススメ/自粛中 高齢者は①運動②栄養③社会参加を」
「2次補正『果断に対応』/衆院予算委 首相言及」
社会面「マウンド降り警官/プロ野球元広島党首・池ノ内さん」
・読売新聞 12P
「巣ごもり 熱中症注意/エアコン・換気・水分補給」
「2次補正『今国会で対応』/追加経済対策 首相、成立に意欲」
社会面「鉄道 減便しないワケ/ダイヤ複雑・費用減効果薄く」
・日経新聞 10P
「英、外出規制を一部緩和/まず建設・製造業 小売りは来月」
「企業倒産の防止『優先』/日銀4月会合 状況悪化に備え」
社会面「遮断機ない踏切 進まない撤去/『買い物に使う』反対住民も」
・東京新聞
「医療職へ 届けエール/都内の高校生 ネットでメッセージ募集」
「出勤 やや密?/ステイホーム週間明け月曜日」
社会面「飼い主感染…ペットどうする 業界団体は預かり『お断り』/保健会社が救済乗り出す」

【5月10日(日)付】=緊急事態宣言34日目・拡大25日目
・朝日新聞 24P
「終末期 病院で看取れない/コロナ禍 苦渋の面会制限」
「民間委託 雇い止めトラブル/大阪で学童指導員10人 提訴へ」
社会面「最期、会いたい わがままですか/感染防止『でも電話だけではつらい』」
・毎日新聞 24P
「軽症者ホテル 9割空室/7都府県 制約多く敬遠」
「日中つないだ少女/俳優・荒木由美子さん」ストーリー
社会面「ケア児不安 衛生用品不足/たん吸引チューブ 欠かせぬ消毒」
・読売新聞 28P
「コロナ対応 8000病院DB化/病床・呼吸器・マスク 月内にも適用」
「緊急事態宣言 延長後 初の週末」
社会面「ひとり親『暮らせない』/無収入2カ月 1日1食」
・日経新聞 28P
「新興国感染、先進国抜く/世界に新たなリスク 1日5万人超」
「『事業継続に不安』4割/スタートアップ有力60社」
社会面「消えた内定 救った寺/『導かれた縁』夢諦めない」
・産経新聞 22P
「抗原検査 週20万件態勢/新型コロナ 13日承認、判定15分」
「『生命を守る産業』が主役に/専制国家・中国 超大国化は決してない」仏経済学者 ジャック・アタリ氏 コロナ 知は語る
社会面「都心繁華街 増えた人出/西村担当相『緩み』 自粛訴え」
・東京新聞 20P
「個人事業主 安全網に穴/増えるウーバー配達員/労災対象外・所得補償も不十分」
「医療 自粛ストレス 行政…不安幅広く」ニュースあなた発 アンケート
社会面「深まる困窮 『収入途絶えた』『家賃かさむ』/募る不満 『支援早急に』『判断遅い』」

【5月9日(土)付】=緊急事態宣言33日目・拡大24日目
▼朝刊
・朝日新聞 30P
「PCR すぐ相談を/息苦しさ・強いだるさ・高熱 基礎疾患ある人 風邪症状で/厚労省、目安変更『37.5度以上』削除」
「米就業者2050万人減/4月 失業率14.7%戦後最悪」
社会面「逃げ場が ない/長男内定取り消し 父はうつ病悪化/3月起業 給付金は『対象外』/配車鳴らず 口座は3万円/収入激減 年金だけが頼り」
・毎日新聞 24P
「米就業者2050万人減/戦後最悪 4月 失業率14.7%」
「遠隔授業 悩む大学/『講義の質 保証できぬ』『準備時間5倍』/新型コロナ教員アンケート」
社会面「1人で抱え込まないで/増える自殺相談電話」
・読売新聞 30P
「米中の対立 先鋭化/自国の対応『正当』譲らず」変わる世界 新型コロナ 中
「米失業率14・7%/戦後最悪 就業者2050万人減」
社会面「『医療支える』フル稼働/人工呼吸器 10倍目標/下着技術 マスク転用」
・日経新聞 36P
「公立高 月内再開は16県/授業日数 不足の懸念」
「危機脱出、急がば回れ/財政負担 歴史的水準に」コロナ 出口は見えるか 3
社会面「収入源、ひとり親追い込む/専門家『支援制度の周知を』」
・産経新聞 24P
「米雇用 1カ月で2050万人減/4月 戦後最悪 失業率14.7%」
「グローバル時代は終わった」米歴史学者 エドワード・ルトワック氏 コロナ 知は語る
社会面「10万円申請 3密6時間/整理券求め 役所に130人列 」
・東京新聞 26P
「休業協力金『課税扱い』/収入に算入…支給開始の持続可給付金も」
「相談目安『軽い風邪症状』/厚労省が変更 37.5度以上発熱は削除」
社会面「コロナ失業者を誘う闇/SNSで『受け子のバイト』」

▼夕刊
・朝日新聞 8P
「オンライン授業 大学手探り/参加人数超え入れず・動画教材アクセス集中し障害」
「大道芸人 充電中」photo story
社会面「美容医療『在宅の今なら』/絶えぬ客足『ひげ脱毛 職場にばれずに』」
・毎日新聞 10P
「剣道防具 和柄マスクに/コロナ影響 注文激減で考案」
「『自粛警察』の理不尽」読む 写真
社会面「動植物の世話 先生奮闘/実習再開 心待ち/コロナで休校中 福井の農業高」
・読売新聞 12P
「接触減へ ロボ進出/来院者の受付案内 水族館『分身』が見学」
「はみ出る『新間隔』」写真は語る ※机が教室から廊下にはみ出した大分の小学校
社会面「障害者 職場ピンチ/『生きがい』失い不安」
・日経新聞 8P
「タッチレス化で感染防止/ドアノブ・押しボタン 触らぬ知恵」
「米、雇用最悪水準でも株高/ナスダック5連騰 実体経済と乖離」
社会面「『感染防ぐ』違法広告続出/食品やサプリ、科学的根拠なし」
・東京新聞 8P
「ネット書店 在庫切れ急増/巣ごもり特需 でも 衛生品優先」
「産科現場 感染隣り合わせ/発熱でも受け入れ 閉院恐れ」
社会面「職員の心も むしばまれ/収容者の餓死に涙 『休むか 病むか…』」牛久入管で何が…長期収容される外国人たち ②施設の実態

【5月8日(金)付】=緊急事態宣言32日目・拡大23日目
▼朝刊
・朝日新聞 32P
「1カ月 人も仕事も消えた/収入ゼロ 首相は『長期戦を』」コロナの時代 混迷の1カ月
「宣言解除『17県視野』/1週間 感染者がゼロ 西村担当相」
社会面「感染リスク・罪悪感 でも経済が/緩和の街 にぎわい手探り」
・毎日新聞 24P
「休業要請 8県延長せず/コロナ 18県は業種縮小」
「レムデシビル承認/初の治療薬 申請から3日」
社会面「新しい距離感で再開/映画 会員限定で入場 飲食 飛沫よけを設置/26県要請解除・縮小」
・読売新聞 28P
「健康『監視』新常態に/揺れる個人情報保護」変わる世界 新型コロナ 上
「レムデシビル承認/厚労省 新型コロナ治療薬 重症者対象に」
社会面「店再開 手探りで/ボウリング 間隔十分 歓楽街 客足は少なく 『特定警戒』以外」
・日経新聞 32P
「中小破産回避へ特例/独やインド 倒産基準を緩和」
「第2波防ぐ 総力戦/未踏の『検査1日2000万件』」コロナ 出口は見えるか 2
社会面「営業再開の街 手探りの対象/来店は県内客のみ・塾は『検温・消毒を』」
・産経新聞 26P
「緊急事態解除 14日にも/中小支援 きょう250億円超 首相インタビュー」
「米国のいない国際会議/EUは鎖国の共同体」コロナ 揺れる世界秩序
社会面「営業再開 ならし運転/一部で要請解除『感染防止万全に』」
・東京新聞 26P
「受託費不正 2億円/ホームレス就労講習 国ずさん管理/都内業者 受講者水増し」
「13都道府県も対象/緊急事態解除 国が基準着手」
社会面「ホームレス誘い数合わせ/『講習に行かなくてもいい』 支援業者不正受給」

▼夕刊
・朝日新聞 10P
「人の行動 変えるには/禁止でなく選択肢で『そっと後押し』/帰省控えて→オンライン帰省を 外食しないで→宅配を」
「小さな命守る」
社会面「子ども 車から守れ/大津・園児死傷事故1年 現場で安全訴え」
・毎日新聞 8P
「コロナ理由 児相の訪問拒否/休校・休園 見えぬ子のSOS」
(NEWS FLASH「日米首脳、コロナ防止連携で一致」など5本)
社会面「垣根なし オンライン酒場/癒やし求め 常連も初心者も/席は無限、休業前より売り上げアップ」
・読売新聞 12P
「巣ごもり消費 鮮明/↑ゲーム機・体温計・パスタ ↓旅行・映画・定期代・口紅」
「欧州議会がDV避難所/外出制限で相談急増」コロナ最前線@ブリュッセル
社会面「個人事業 今こそ知恵/筋トレ スマホ指導/飲食業 合同で出前/野菜宅配 家庭好み」
・日経新聞 10P
「米、車利用5割増/中西部や南部回復」
「消費支出6%減/5年ぶり大幅落ち込み 3月」
社会面「在宅就活、学生奮闘/ウェブ面接戸惑い/移動時間を節約/志望見つめ直す機会に」
・東京新聞 8P
「『ロスフラワー』救って/大量廃棄の花に新たな命/ドライフラワーや仲介サイト」
「3月の消費支出6.0%減/6カ月連続マイナス 自粛広がり影響」
社会面「長期拘束絶望 シャンプー飲む/クルド人男性ら 自傷する人続出」牛久入管で何が…長期収容される外国人たち ①自殺未遂

【5月7日(木)付】=緊急事態宣言31日目・拡大22日目
▼朝刊
 ※新聞休刊日のため発行なし

▼夕刊
・朝日新聞 8P
「動けない 静まる大都市『連休で終わりとは思わなかった』/動き出す 開店待つ列『子どもうれしそう』」
(NEWSダイジェスト「感染者、自宅療養2割 入院は6割」など3本)
社会面「救急通報 意識なくても/車載システムで連絡 ヘリで搬送」
・毎日新聞 10P
「ゴム代用 手作りマスク進化/ひもボタン/ストッキング活用」
(NEWS FLASH「緊急事態解除基準 首相『14日までに』」など4本)
社会面「生守るぎりぎりの闘い/感染病棟 報道写真家が見た現場」
・読売新聞 12P
「連休明け そろり始動/百貨店・映画館 再開地域も 緊急事態延長初日」
「コロナ受診目安 見直し/厚労省『37.5度』こだわらず」
社会面「みんな やっとあえた/再開の学校 対策徹底」
・日経新聞 10P
「独、経済再開へ大幅緩和/コロナ規制 大型店営業など」
「PCR、相談目安改定へ/『37.5度以上』は削除」
社会面「長引く非日常に工夫/異例の巣ごもりGWが明けて/在宅日は運動でメリハリ」
・東京新聞 10P
「妊娠看護師 感染おびえ/『発熱者の対応したくなかった』/人手不足の医療現場 休みづらく」ニュース あなた発
「連休明け マスクの人波」
社会面「就活生 三重苦/採用減 日程集中で学業影響 バイトできず」

「#検察庁法改正案に抗議します」の報じられ方~衆院委員会審議入り、在京各紙の記録

 検察官の定年を一律65歳とする検察庁法改正案に対する審議が5月8日、衆議院内閣委員会で始まりました。自民党は今週中にも衆院を通過させる構えだと報じられています。
 国家公務員の定年延長と一括して提出されている、いわゆる「束ね法案」です。検察官については、次長検事、検事長は63歳で検事に「降格」(役職定年)となりますが、内閣の判断次第では検事長などにそのままとどまることができる内容です。この法案に先んじて、東京高検の黒川弘務検事長が2月、安倍晋三政権の閣議決定によって63歳の定年後も検事長にとどまる、という出来事がありました。国会で追及され、安倍首相が突然法解釈の変更を言い出したり、人事院の局長が前言を翻したりしたため、野党のほか日弁連からも批判と撤回の要求が出ています。検察庁法改正案が直接、黒川検事長の定年の取り扱いを左右するわけではありませんが、法改正が実現すれば、今後は内閣の判断で特定の人材を検察幹部にとどめ置くことが可能になります。恣意的な運用の余地が生じてしまえば、刑事司法の公正や安定の確保のために、検察が政治との間に適切な距離を保つことができるのか、疑問です。そういう内容なので、検察庁法改正案にも黒川検事長の定年延長と同じように批判が高まっている、とわたしは受け止めています。
 このブログでも何度か触れてきましたが、わたしも黒川検事長の事例には疑問を持っていますし、国会での政府の説明にも納得にはほど遠いままだと感じています。同じように検察庁法改正案に対しても、その内容自体と、審議の進め方との双方に疑問を感じます。立憲民主、国民民主、社民、共産の4党は、森法相にも答弁させるために内閣委員会と法務委員会の連合審査とするよう求めたのに対し、与党側は拒否。野党4党が欠席する中で、自民、公明、維新の3党で8日の内閣委員会で審議入りしました。法相不在で、果たして十分な審議が可能なのでしょうか。しかも新型コロナウイルスの緊急事態宣言が続くさなかです。
 ちょっと意外な気がしたのは、東京発行の新聞各紙のこの出来事の扱いでした。9日付朝刊の扱いと見出しは以下の通りでした。

・朝日新聞:1面「検察の定年延長 与党が審議強行/法相出席応じず 野党反発」
・毎日新聞:3面「野党が審議欠席/与党の法相出席拒否で 検察官定年」
・読売新聞:3面「『65歳定年』法案 実質審議入り/一部野党欠席」
・日経新聞 ※見当たらず
・産経新聞 ※見当たらず
・東京新聞:3面「検察官対象に反発 野党が審議を拒否/衆院委 国家公務員定年延長法案」

 1面に入ったのは朝日新聞のみ。読売新聞は見出しに「検察官」がなく、日経新聞、産経新聞は記事が見当たりませんでした。問題の大きさ、深刻さに比べて、総じて扱いが小さい、目立たないように感じました。

 テレビを含めても報道は決して大きくはなかったのですが、かと言って、世論は冷ややかだった、というわけではありませんでした。
 ツイッター上で「#検察庁法改正案に抗議します」のハッシュタグを付けた投稿が9日午後から10日にかけてぐんぐん伸びました。わたしが気づいたのは9日午後で、そのときのツイート数は20万台でした。10日朝は120万、お昼前には200万を突破していました。異例の現象として、10日午後には新聞社のサイトにも次々と記事がアップされました。最終的に東京発行各紙が11日付朝刊でどのように扱ったかを書きとめておきます。

・朝日新聞:社会面トップ「『どさくさ』審議 反発拡散/#検察庁法改正案に抗議します/2日でツイート470万件」
・毎日新聞:社会面準トップ「検察定年延長 抗議の渦/『日本に悲劇』『国壊さないで』/著名人も声挙げ/改正案審議入り」
・読売新聞 ※見当たらず
・日経新聞:社会面見出し1段「『検察庁法』抗議 ツイート380万超/改正巡り著名人ら投稿」
・産経新聞:5面「著名人ら一時380万ツイート/#検察庁法改正案に抗議します」
・東京新聞:1面「#検察庁法改正案に抗議します 投稿470万件」

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 ツイッターへのおびただしい投稿を見ていると、「これまで政治的な話題はつぶやかなかったが、今回は黙っていられない」との趣旨のツイートが、いくつもありました。タレントやミュージシャンも少なくない数の方が投稿しています。これまで、そうした立場の人が政治的な意見を表明することには批判がありました。今回も批判はあるようですが、意見表明を当然のことと受け止める声も多く目にします。コロナ禍によって政治への関心が高まり、「政治への意見の表明」に対する社会の視線が変わりつつあるのかもしれないと感じます。
 ひるがえってマスメディアです。社会にどのような情報をどうやって届けるのか。コロナ禍によって社会が変化する中で、いよいよその役割が問われると思います。

外出自粛の日々に~緊急事態宣言下 在京紙報道の記録8:5月3日~6日付

 ことしのゴールデンウイークは、新型コロナウイルスの緊急事態宣言が続く中で日々が過ぎて行きました。5月4日には安倍晋三首相が、緊急事態宣言を5月31日まで延長することを決めました。翌5日付の東京発行新聞各紙も、大半はこのニュースを1面トップ、つまり最重要ニュースとして扱いましたが、東京新聞だけは異なっていました。緊急事態延長は1面の2番手。トップに据えたのは「なに学ぶ? 自分でやりたいこと!」の見出しと、住宅の中で紙飛行機を飛ばす子どもたちの写真が付いた記事。千葉県松戸市で、古民家を活用して開かれる「学童教室」の話題でした(4月半ばからはオンラインになっているとのことです)。見出しの下には子ども3人が輪になって手をつないだイラストに「子どものあした 5・5こどもの日」の文字が入ったカットをレイアウト。この日の紙面の各面に掲載されている「こどもの日」関連の記事も、ここからたどれるようになっています。
 新型コロナ禍は収束を見通すことが依然として難しく、日々の新聞紙面も、どうしても重苦しい記事が並びます。その中で東京新聞の紙面を目にして「そうだった、きょうは『こどもの日』だった」と、外出自粛の単調な生活の中で、ほっと一息つけたように感じました。

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 東京新聞は連休中、もう一つユニークな試みをしています。「シャンシャンが家に来る日」。5月4日「みどりの日」はコロナ禍がなければ、東京・上野動物園が無料開放されていたはずでした。「でも今は、家にいるべき時。だから、動物のほうを、みなさんの家にお届けすることにしました」(東京新聞の公式サイト)。4日付、5日付、6日付の3日間の紙面に、パンダのシャンシャンの実物大の写真を分割して折り込みました。3日分の計6ページをつなぐと、実物大の写真の完成です。ブランケット判の新聞紙の「大きさ」を生かした企画だと感じました。
 ※東京新聞の公式サイトの特集ページからは分割写真をPDFファイルでダウンロードできます(5月6日夜現在)
 https://www.tokyo-np.co.jp/ad/stayhome/
 完成図 https://www.tokyo-np.co.jp/ad/stayhome/img/kansei.png

 一方で、コロナ禍によって新聞広告が激減していることは日々の紙面からも明らかです。朝日新聞の東京発行紙面は、4月30日付朝刊で20ページにまで減りました。かつて、朝日や読売は30ページ台が当たり前で、40ページをうかがおうか、という時代があったことを覚えている身には、いささか衝撃でした。朝日新聞は5月4日付朝刊も20ページでした。記録の意味で、今回から各紙のページ数も題号の横に書きとめることにしました。

 以下は緊急事態宣言下で東京発行の新聞各紙がどのように報じたのか、1面と社会面の記録の続きです。
【5月6日(水)付】=緊急事態宣言30日目・拡大21日目
・朝日新聞 22P
「自粛解除 大阪が独自基準/府知事、15日にも判断」
「PCR相談 目安変更へ/『37.5度以上』削除を検討」
社会面「財政より『大量廃業防げ』/小池氏、慎重論退け追加支給/飲食店『当然だがありがたい』」
※社会面に「パチンコ店休業 対応に差/宮城・秋田 要請を解除 三重は継続」
・毎日新聞 24P
「政府、陽性率把握できず/全国集計基準なし PCR検査」
「ICU『壁』越しの戦い」(総合面へ)崩れる医療 新型コロナ
社会面「『コロナで自殺』はデマ/『みんな疑心暗鬼』/千葉、高知、山口の3件/非難、非寛容 拍車」
※社会面に「パチンコ店座席2メートル間隔空けて/国、34県の制限緩和方針」
・読売新聞 28P
「『特定警戒』休業要請継続/13都道府県 都は協力金追加」
「イージス 秋田候補地断念/新屋 県内軸、再選定へ」
社会面「医師・看護師の心ケア/感染リスク 人出不足 家族も差別/心理士ら面談チーム」医療を守る
・日経新聞 24P
「新常態へ適応力試す/制限緩和でも感染抑止優先/『水面下』経済 長期化も」コロナ 出口は見えるか 1
「都、協力金を追加支給/1店舗50万円 他の自治体 焦点」
社会面「社協貸し付け 申請殺到/週4万件、対応に遅れも/最大20万円、コロナ対策で対象拡大」
・産経新聞 24P
「都、休業協力金を追加支給/緊急事態延長 予算総額1920億円」
「大阪、自粛解除へ独自基準/経路不明10人/陽性率7%/病床使用60%」
社会面「休校さらに 心が折れそう/行事は 受験は 生徒ストレス」「教員も混乱『振り回されている』」
・東京新聞 28P
「都、協力金追加支給へ/月内全面休業を要請」
「買い物困難者 23区で増加/高齢化進み37万人 コロナでさらに深刻化」
社会面「感染研も出勤8割減?/先月中旬5割、『業務に支障出ず』/現場『力出す時に…』疑問も 厚労省指示」

【5月5日(火)付】=緊急事態宣言29日目・拡大20日目 ※宣言延長を決定
・朝日新聞 26P
「緊急事態31日まで決定/全国対象 首相『責任を痛感』」
「食事は横並び・毎朝体温測定/『新しい生活様式』提示」
社会面「不安 負担 まだ続く/飲食店も 町工場も/子どもも 親も/医師らも」
・毎日新聞 24P
「緊急事態 延長決定/全国で月末まで」
「医療に安全保障の視点を」砂間裕之・編集編成局長
社会面「自粛延長 もうもたぬ/再開急ぐ自営業/出口戦略に揺れ」「市民ため息/求人ますます減る/子どもと在宅勤務無理」
・読売新聞 26P
「緊急事態宣言を延長/31日まで 一部で制限緩和」
「大相撲夏場所 中止/名古屋場所 国技館で」
「解除の目安 具体化を」館林牧子・医療部長
社会面「あと1か月も 落胆/生花店『売り上げ1/10』バー『細々と営業』」
・日経新聞 24P
「追加対策、首相『速やかに』/緊急事態31日まで 期間内解除も」
「アビガン承認 月内にも/コロナ治療薬 レムデシビルは週内」
「アナログ行政 遠のく出口」青木慎一・科学技術部長
社会面「コロナの時代 日常模索/公園や博物館、再開容認の可能性/新しい生活様式 戸惑いの声も」
・産経新聞 22P
「感染防止へ『新たな日常』/緊急事態宣言 31日まで延長」
「長期化備え生活指針/横並びで食事/電車 会話控える/テレワークや時差出勤」
社会面「飲食店 瀬戸際の苦悩/『危機の時こそ』工夫で再開も」
・東京新聞 24P
「なに学ぶ? 自分でやりたいこと!/千葉・松戸 古民家の学童教室 探求心育む」子どものあした
「緊急事態 全国延長決定/31日まで 14日めどに評価 解除も」
社会面「不安、我慢 いつまで/街の声『怖いから延長仕方ない』 自営業者『開けるも閉めるも地獄』」

【5月4日(月)付】=緊急事態宣言28日目・拡大19日目
・朝日新聞 20P
「緊急事態延長 31日まで/首相方針 解除に数値基準」
「地域の介護 休業ドミノ/感染施設訪問『ヘルパー他にうつすかも』」
社会面「単身赴任 連休ひとり/帰りたいけどテレビ電話 妻は妊娠4カ月」
・毎日新聞 24P
「陰性でも出られず/82歳 感染死恐れ1カ月/国内最大級クラスター 永寿総合病院」崩れる医療 新型コロナ
「緊急事態 31日まで/政府対策本部 きょう決定」
社会面「コロナ 緊急権焦点/憲法記念日 ウェブ発信/護憲派 火事場泥棒だ 関心の持続を 改憲派 手遅れになる 首相『議論を』」
・読売新聞 28P
「技術狙う中国『千人計画』/軍事転用へ 海外の科学者招致」安保60年 第2部 経済安全保障 1
「感染判明から死亡8.7日/コロナ 東京・大阪100人分析」
社会面「休校 児童の事故注意/安全指導 十分できず」
・日経新聞 24P
「従業員 業種越えシェア/連携し雇用下支え/ヒルトン→アマゾン 外食→アリババ」
「緊急事態延長 31日まで/『特定警戒』以外は自粛緩和も」
社会面「『PCR待ち』なくせ/不安解消へ態勢一歩ずつ」ドキュメント日本
・産経新聞 22P
「緊急事態 31日まで/きょう全国延長決定」
「コロナ重症化 免疫『暴走』が招く/全身の臓器にウイルス侵入」
社会面「市民生活守る闘い/感染リスク・差別…感謝の声/エッセンシャルワーカー スーパー従業員 清掃員 郵便局員」
・東京新聞 26P
「護憲の思い 距離超えて/施行73年 国会前ネット中継」
「緊急事態 今月31日まで/首相きょう決定 経済活動一部容認」
社会面「『7つのゼロ』大半未達成/小池氏 4年前公約」

【5月3日(日)付】=緊急事態宣言27日目・拡大18日目 憲法記念日
▼朝刊 ※は憲法関連の本記
・朝日新聞 28P
「止まった経済『貧困の津波』/突然解雇 150キロ歩いて帰郷」コロナ危機と世界 途上国の危機 上
「経済活動 自粛緩和へ/政府 感染者少ない地域で」
社会面「生活が 見えない/仕事奪われ 住むネットカフェ閉められ/『自分責め限界だった』生活保護に望み」
※1面4番手:「国会での憲法改正議論『急ぐ必要ない』72% 本社世論調査」
・毎日新聞 24P
「専門病院も『マスク不足』/感染症 中核の18機関」
「レムデシビル『1週間で承認』/治療薬候補 政府、申請後の手続き短縮」
社会面「病院『作るしか』/マスクもガウンもガードも」
※1面3番手「憲法に緊急事態『賛成』45%/首相在任中改憲『反対』46% 本社世論調査」
・読売新聞 30P
「社会活動再開 容認へ/特定警戒都道府県 除き」
「戦後型モデル 転換の時 コロナ後の世界」地球を読む 御厨貴・東大先端研フェロー
社会面「運動日和 公園が密/適度な距離 呼びかけ」
※1面3番手:「憲法改正 賛成49%/『緊急事態』関心高まる 本社世論調査」
・日経新聞 28P
「世界の企業、4割減益/1~3月 日欧、7~8割減」
「企業、公益担ってこそ/ステークホルダーと歩む」コロナと資本主義 4
社会面「『教室と同じ』『目配り大変』/オンライン授業導入の都立高」
※5面「改憲論議、コロナで停滞/五輪延期、政治日程も逼迫」
・産経新聞 22P
「レムデシビル承認へ/1週間程度で 初のコロナ薬 政令改正」
「国防任務 制約に縛られ/『自衛隊は災害派遣隊ではない』」戦後75年 第1部 憲法改正②
社会面「避難所『3密』対策急げ/複合災害懸念…教室・旅館活用も」
※2面「改憲で『緊急事態条項を』/首相メッセージ 創設訴え」
・東京新聞 28P
「緊急事態を強調 改憲狙う自民/『条項』国会関与なく私権制限」
「生死の境で医療費券」2020米大統領選 コロナ危機 上
社会面「死亡の店主 将来悲観か/火災のとんかつ店『店閉じる もう駄目かも』」

「審議は論外 即刻撤回を」「これこそが『不要不急だ』」~検察庁法改正案 各紙の社説、論説

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、特措法に基づいて発せられた緊急事態宣言の5月31日までの延長が同4日、決まりました。先行きが見通せない時間が続きます。マスメディアの報道も引き続き、新型コロナウイルス関連のニュースが大きな比重を占めますが、その中でも見過ごすわけにはいかない動きもあります。その一つが国会に上程されている検察庁法改正案の審議です。
 検察官の定年を63歳から65歳に引き上げる内容ですが、63歳以上の検察官は高検検事長や地検検事正などのポストに就けない「役職定年制」を設けた一方で、内閣の判断で役職を延長できる規定が盛り込まれています。安倍晋三内閣が定年年齢の63歳に達した東京高検の黒川弘務検事長の勤務延長(定年延長)を閣議決定し、検察庁法と国家公務員法の解釈を変更したと後付けのように強弁した出来事とリンクしているのではないかと、野党のほか日弁連や各地の弁護士会が厳しく批判しています。
 検事長の定年延長では、安倍内閣と法務省の釈明を明白に支持する論調は新聞には見当たりません。検察庁法の改変に対しても、最近の社説、論説は「審議は論外 即刻撤回を」(北海道新聞)、「これこそが『不要不急だ』」(西日本新聞)など厳しく批判する内容のものばかりです。
 ネット上で読むことができる、この問題を扱った社説や論説をまとめておきます。

【5月2日付】
▼北海道新聞「検察官定年延長 審議は論外 即刻撤回を」
 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/417771?rct=c_editorial

 まさしく時の政権が検察人事に介入できる法案である。
 そもそも政府は立法すべき具体的事実を示していない。
 1月に閣議決定した黒川弘務東京高検検事長の定年延長を後付けで正当化するものではないのか。
 検事長の定年延長は例がなく、安倍晋三政権が首相官邸に近い黒川氏を検事総長に就かせるための布石との疑念はなお拭えない。
 コロナ禍に乗じて成立させることは許されない。政府が撤回するか、国会で廃案にするべきだ。

▼西日本新聞「検察庁法改正案 これこそが『不要不急』だ」
 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/605469/

 国会審議で野党が国家公務員法の定年延長は検察官には適用されないとした1981年の政府答弁を突き付けると、首相は「今般、解釈を変えた」と答弁した。唐突な説明だった。重大な法解釈の変更なのに、それを明確に裏付ける公文書は示されず、口頭で決裁したという驚きの法相答弁まで飛び出した。 
 そして今回の改正案である。内閣法制局がこの法案原案を審査した昨秋の段階では、従来の解釈通り検察官の定年延長はできないことを前提に検討されていたという。そうだとすれば、今回の改正案は黒川氏の定年延長を後付けで正当化する「つじつま合わせ」ではないのか。 
 政府は黒川氏の定年延長を決めた最初の閣議決定を撤回し、検察庁法の改正も一から出直すべきだろう。改正案に国会審議を急ぐ理由は見当たらない。

【4月30日付】
▼琉球新報「検察庁法改正案 独立性を揺るがす改悪だ」
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1115175.html

 政権にダメージを与える捜査には本気で取り組まず、検察がやいばを向けるのは権力を握る者にとって好ましくない相手だけ、ということにもなりかねない。近年の例を見ても既にその兆候はある。強大な権限を持つ検察官が政治権力の手先と化した社会は想像するだけで恐ろしい。もはや民主国家とは言えまい。
 日弁連のほか、全国の多くの弁護士会が会長声明で黒川検事長の定年延長撤回を求め、特例措置を設けた法改正に反対している。検察官の中立性や独立性が脅かされることへの強い危機感の表れだ。
 このまま改悪を許したのでは将来に禍根を残す。

【4月24日付】
▼新潟日報「検察官定年延長 徹底的な審議が不可欠だ」
 https://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20200424539601.html

 官邸のご都合主義や独善、国会軽視など、検察官の定年延長問題には、「安倍1強」の問題点が凝縮されているように見える。感染拡大を巡り、政権と国民意識とのズレを生んだのも、そうした体質ではないか。
 野党は検察官の定年延長撤回を求めている。これに対して、与党は今国会での法案成立を目指すが、「成立ありき」は許されない。
 国民目線で問題点について徹底的に審議することこそ、国会に課せられた責務のはずだ。

▼中日新聞・東京新聞「検察と政治 独立性を担保せねば」
 https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020042402000179.html

 昨年十月段階で法務省が「定年延長は必要ない」とした理由は「公務運営に支障はない」だった。ところが一転、東京高検検事長の定年延長問題が起きると、「定年延長は必要」に変わり、その理由を法相は「国家公務員法に合わせ考え直した」と述べた。立法事実があまりに乏しい。
 東京高検検事長の定年延長を合法化するためではないのか。何しろ国家公務員法の定年延長規定は「検察官には適用されない」とする一九八一年の政府答弁を法相は知らなかった。昨年五月にも同じ内容の通知が人事院から法務省宛てに発出されている。
 正反対の規定になるのに十分な理由が存在しない。かつ検察の独立性を脅かす内容になる-。これでは法案に賛成とはなるまい。むしろコロナ禍でのどさくさで成立させてはならない法案だ。

【4月21日付】
▼朝日新聞「検察庁法改正 政権の思惑を許すな」
 https://www.asahi.com/articles/DA3S14449476.html

 政府はかねて検察官の定年延長は認められないとの立場をとってきた。ところが東京高検検事長について、一般の国家公務員向けの延長制度を適用したと説明し、過去の国会答弁との矛盾を野党に突かれると、「解釈を変えた」と開き直った。
 唯一の立法機関である国会を無視して法律を変えるに等しい行いだ。加えてこの重大な解釈変更を口頭で決裁したとして、検討の経緯をたどれる記録は残されていない。「法の支配」の何たるかを理解せず、暴走を繰り返してきた政権の体質が、ここでもあらわになった。
 昨秋の時点で、法務省は幹部職に役職定年制を導入する場合も特例は必要ないとの立場で、内閣法制局による改正案の審査もほぼ終わっていたという。それがなぜ一変したのか。東京高検検事長の定年延長と関係があるのか。審議を通じて、ゆがめられた法案作成の過程を解明・検証しなければならない。

【4月20日付】
▼信濃毎日新聞「内閣と検察 人事介入の余地をなくせ」
 https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200420/KT200417ETI090017000.php 

安倍政権は森友・加計問題、桜を見る会、カジノ汚職、元閣僚の公選法違反容疑など数々の疑惑にまみれながら、説明責任を果たそうとしない。首相は「政治的な意図を持って(検察)人事に介入することはあり得ない」と反論するが、信頼できない。

 定年延長が明記された今回の改定案が成立すれば、法解釈を巡る争点はなくなる。それが狙いではないか。成立前に従来の法解釈を変えた違法性は拭えない。
 一般の国家公務員とともに、検察官が65歳まで働けるようにする議論はあっていい。まず、黒川氏の定年延長と独断による法解釈変更を取り消し、改めて是非を国会に問うのが筋だろう。
 内閣が検察上層部の処遇を左右する規定を削除しなければならないのは、言うまでもない。

【4月19日付】
▼沖縄タイムス「[検察庁法改正案審議入り]緊急性がなく撤回せよ」
 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/561831 

 審議入りした同じ日に安倍首相は新型コロナの緊急事態宣言を全都道府県に拡大した。政権挙げて新型コロナ対策に取り組まなければならない中で、どさくさに紛れた審議入りというほかない。
 共同通信社が3月に実施した世論調査で黒川氏の定年延長は「納得できない」が60・5%で、「納得できる」を大きく上回った。法改正すれば、検察に対する国民の信頼が失われるのは間違いない。
 改正案は今ほんとうに必要なのだろうか。緊急性はまったくないはずである。法案はもちろん、定年延長を認めた閣議決定も撤回すべきだ。

 

緊急事態条項 批判的論調が多数~コロナ禍の憲法記念日、新聞各紙の社説・論説

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、全国に緊急事態宣言が発せられている中で5月3日の憲法記念日を迎えました。多くの新聞が3日付の社説、論説で憲法を取り上げ、多かれ少なかれ憲法改正に、その中でも危機に際して政府に強い権限を付与する緊急事態条項を加えるかどうかに触れています。全国紙5紙(朝日、毎日、読売、日経、産経)と、ネット上で本文まで読むことができた地方紙・ブロック紙の中では、危機に便乗するように緊急事態条項を持ち出す安倍晋三首相や自民党を批判する論調が多数派です。政府に強い権限を集中させる規定を盛り込まなかったことは、平和主義とともに戦前・戦中の教訓を踏まえた日本国憲法を特徴づける要因であり、その普遍性は尊重されていいだろうと感じます。また、危機に際しては政府に権限を集中させるのではなく、自治体の権限を強めるべきだ、とする意見や、憲法改正よりも緊急事態宣言の検証や権力の監視が重要とする指摘も目を引きました。そもそも憲法は権力を縛るもの、という立憲主義の根本に改めて思いが至りました。
 憲法を改正して緊急事態条項を加えるべきだと明確に主張しているのは読売新聞、産経新聞です。日経新聞は議論に具体性を求めています。地方紙では、北國新聞は「緊急事態法制の整備に真正面から取り組む必要がある」とし、山陽新聞のように、議論は必要としつつ性急さを戒める論調もありました。
 以下に、内容を確認できた各紙の社説、論説の見出しと本文の一部を書きとめておきます。各紙のサイト上で読める場合はリンクを張っています。本文を読めなかったものは見出しのみにとどめています。

【全国紙】
▼朝日新聞「コロナ下の安倍政権 憲法に従い国民守る覚悟を」/まずは生存権の保障/「個人の尊重」と相反/備えは改憲でなく
 https://www.asahi.com/articles/DA3S14464589.html?iref=pc_rensai_long_16_article

 今回の事態を受け、自民党などの一部の議員からは、憲法に緊急事態条項を新設すべきだとの声が出ている。国家的な緊急事態になれば、内閣は法律と同じ効力をもつ政令を定めることができるといった内容だ。
 だが、このように憲法秩序を一時的に停止させる強力な権限を内閣に与えるまでもなく、25条2項をもとに新型インフルエンザ等対策特別措置法や感染症法などの法律がすでに整えられている。必要なのはそれらの法律に不備はないか、適切に運用できる体制は十分なのかを常に点検することだ。
 いま安倍政権がなすべきは、憲法を変えることではない。憲法に忠実に従い、国民の命と生活を確実に守ることである。

▼毎日新聞「新型コロナと憲法 民主主義を深化させよう」/緊急事態条項は「劇薬」/他者を大切にする心を
 https://mainichi.jp/articles/20200503/ddm/005/070/028000c

 緊急事態条項は一歩間違えれば、基本的人権の尊重など憲法の大事な原則を毀損(きそん)する「劇薬」にもなる。
 いまはコロナの特別措置法に基づき、対策を尽くすときだ。その上で、現行法に不備があれば修正し、法令では対応できない場合に改憲論議に進むのが筋である。
 (中略)
 国民の理解を得るには時間を要する。迅速性という点では、権威主義的な国家体制の方が有利であることは否めない。
 しかし、民主主義社会では、民意がいったん形成されれば、人々が自ら協力する姿勢が生まれる。その方が持続性があり、警察力などを使って強制するよりも高い効果が得られる。
 (中略)
 要請が中心の日本の手法に対し、強制力の弱さを危ぶむ声が出た。そこを乗り越えるには、市民の役割が重要になる。
 危機が続いても、利己主義や差別する心にあらがいたい。自発的に他者を大切にし、民主主義を深化させていく必要がある。
 日本の民主主義社会の成熟、強さが問われている。

▼読売新聞「非常時対応の論議を深めよう 権限行使の根拠や手続き定めよ」/緊急事態条項の検討を/国会の機能維持も論点/審査会は役割を果たせ
 https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20200503-OYT1T50002/

 災害や武力攻撃など事態の内容に応じて、個別の法律で具体的な対応策を定めてきた。憲法が危機管理規定を欠くのは、政治の不作為と言わざるを得ない。
 自民党は2018年にまとめた4項目の憲法改正案で、緊急事態条項の創設を提案した。異常かつ大規模な災害で、国会を開けない場合、政府が法律と同じ効力を持つ政令を制定できる内容だ。
 緊急事態には迅速で適切な対応が求められる。憲法に基本原則を規定したうえで、法律で政府権限の内容や手続き、歯止めなどをあらかじめ明記しておくのは、法治国家として当然だろう。
 超法規的な措置で、人権侵害や行き過ぎた私権制限が起きるのを防ぐためにも重要ではないか。
 自民党案では、自然災害が対象で、外国からの武力攻撃やテロ、感染症は想定していない。
 感染症が大流行する事態を、巨大地震などと並んで緊急事態条項の対象として位置づけることは検討に値しよう。

▼日経新聞「緊急事態に関する改憲論議は具体的に」

 有事対応を検討しておくことは有意義であり、与野党の活発な意見交換を望みたい。
 ただ、その際に大事なのは、対象や手順を具体的に想定して議論することだ。「いざというとき」などという曖昧な前提条件で話を先に進める「ムード改憲」的な手法は好ましくない。
 自民党が12年に作成した改憲草案は、緊急事態の例として①地震等による大規模な自然災害②内乱等による社会秩序の混乱③外部からの武力攻撃④その他―を列挙している。
 (中略)
 「社会秩序の混乱」が何を指すのかはわかりにくい。国会を囲んだデモ隊がシュプレヒコールをするのは混乱なのか。政治的なあつれきまで強権的に抑え込む首相が出てこないとも限らない。
 武力攻撃への対処は急を要する。とはいえ、自衛隊が防衛出動するような危機にどう立ち向かうかは、あらかじめ法的に決めておくべきことだ。慌てて政令を出すような備えでは困る。

▼産経新聞(「主張」)「憲法施行73年 緊急事態条項が必要だ 危機を克服できる基本法持て」/首相は論議を主導せよ/審議拒否の野党反省を
 https://www.sankei.com/column/news/200503/clm2005030002-n1.html

 明治憲法には戒厳令や、今の政令にあたる緊急勅令を出す緊急事態条項があったが、用いられたのは関東大震災などの短期間に限られる。先の大戦中でも帝国議会は機能し、法律を審議したり予算を決めたりしていた。
 もし現憲法に緊急事態条項があっても、今回のウイルス禍にすぐさま適用すべきかといえば議論は分かれるところだろう。
 それでも憲法には緊急事態条項が必要だ。前もって法律で具体的に準備しきれないような広範かつ甚大な災害への備えだからである。たとえば自治体の機能が広域で壊滅しかねない南海トラフ巨大地震や首都直下地震、核攻撃を含む大規模な日本有事だ。ウイルス禍の収拾に失敗し国会が開会できないような深刻な事態になれば、それも当たるだろう。
 憲法論議にまず必要なのは、日本が想定外の危機に見舞われるかもしれないという想像力を広げ、備えようとする真摯(しんし)な姿勢だ。立憲民主党など一部野党が「不要ではないが不急だ」といって国会の憲法審査会の審議に応じていないのは無責任極まる。憲法審がウイルス禍に全力対処することを妨げるというのは間違っている。

【地方紙・ブロック紙】
▼北海道新聞「きょう憲法記念日 危機に乗じた改定は論外」/緊急事態条項が浮上/独裁生む危うさ潜む/権力監視を怠りなく
 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/417992?rct=c_editorial

 日本の特措法に基づく緊急事態宣言は非常時の一時的な措置であり、出口の時期が示される。危機対応は常に平時には終了させることが想定されていないと危険だ。
 だが自民党が改憲で目指す緊急事態条項は、一度出した政令の解除手続きに触れていないとの指摘がある。強権が継続していく可能性を示している。
 コロナ禍が長期化してもこの条項実現につなげるべきではない。
 権力者は政策について、情報開示と説明を尽くして、主権者である国民の理解を得ていく。それが国民主権の根本である。
 そんなことはお構いなしに権力が暴走すれば、民主主義は崩れる。憲法が政権を縛る立憲主義が欠かせないゆえんだ。だから国民は監視を怠ってはならない。この非常時に改めて認識したい。

▼河北新報「憲法記念日/危機だからこそ生きる理念」
 https://www.kahoku.co.jp/editorial/20200503_01.html

 人権の尊重と、相反する国家権力からの干渉を、どうやって均衡させていくのか。答えを探り続けてきたのが、戦後日本の民主主義の歩みと言える。
 正体の知れぬ感染症を前に、世論の一部には「もっと国民や経営者の私権を制限し、従わなければ厳しい罰則を」と求める声がある。
 強権をもって従わせる欧州やアジアの国に比して、生ぬるいということだろう。
 しかし、その声は大きなうねりにはならず、広がりを欠く。緊急事態宣言が出たころから、マスクをして外出を控えるのが日常になった。
 要請に対し、程よい付き合い方でこなし、順応しているように見える。政府も、自主的に自重してくれると期待している節がある。
 長い年月の末、「個人の自由」はしっとりと浸透し、いまの社会の力量で難局を乗り越えてみせるという静かなスタイルを身に付けたのではないだろうか。

▼秋田魁新報「憲法記念日 自由と権利、考える機に」
 https://www.sakigake.jp/news/article/20200503AK0009/

 終息がいつになるのかは今のところ見通せない。とはいうものの、終息の先に宣言や要請などの妥当性を検証する必要があることを忘れてはならない。
 宣言の前提となる科学的根拠は十分だったか。対象地域や期間の設定は適切だったか。専門家の意見はどうだったのか。これらを検証するためには、政府や専門家の会議内容を記録した文書がきちんと保存され、公開されなければならない。検証の主体として国会だけでなく、第三者機関を設けることも求められる。
 緊急事態宣言については「緊急事態条項」と混同しないように気を付けたい。自民党の改憲案には、この条項の新設が盛り込まれている。大災害時に限定しているとはいえ、非常に強い権限を内閣に与える内容だ。緊急事態条項の歴史を見れば、恣意(しい)的な運用の危険性がどうしても拭えないだけに、議論を注意深く見ていく必要がある。
 感染拡大に伴う緊急事態宣言は、憲法の保障する自由とさまざまな権利の大切さを再認識する機会となった。自由と権利について12条は「国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」と定める。私たちと憲法との関係を振り返り、この言葉の重さを今こそ胸に刻みつける時だろう。

▼岩手日報「緊急事態と人権 どんな社会を選ぼうか」
▼山梨日日新聞「[緊急事態下「憲法の日」]改憲論議 今は時機ではない」

▼信濃毎日新聞「考とともに 憲法と緊急事態 尊厳を譲り渡さぬために」
 https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200503/KT200502ETI090006000.php

 戦後日本の出発点となった現憲法の基底にあるのは「法の支配」の考え方だ。<権力を法で拘束することによって、国民の権利・自由を擁護することを目的とする原理>(芦部信喜著「憲法」)を言う。緊急権限を排したことは、その徹底と見るべきだろう。
 権力は法の支配を求めない。例外規定を設けて縛りを解くことの危うさを歴史は教える。憲法の根本原則を踏み越える権限を政府に与える理由は見いだせない。
 7年余に及ぶ安倍政権は既に強大な権力を手にしてきた。国会は追認機関と化し、権力分立の根幹が揺らいでいる。今回さらに、特措法による緊急事態宣言で、政府は平時には認められない権限を行使できるようになった。独断専行が暴走につながる危険に注意深く目を向けなければならない。
 不安や恐怖に駆られて強い権限を頼み、自由や人権を譲り渡せば、個の尊厳は守れなくなる。そのことをあらためて確認し、共有して、権力の集中と強化が進む現状を押し戻す力にしたい。

▼新潟日報「憲法記念日 自由の価値を見つめたい」/危うい「便乗改憲論」/同調圧力の息苦しさ/歴史に学ばなければ
 https://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20200503541393.html

 先の大戦の反省から、憲法は9条で戦争放棄を明記した。前文においても平和主義をうたう。そこには、塗炭の苦しみを経験した先人たちの思いが詰まっている。
 新型ウイルスへの対応をめぐり、米国のトランプ大統領が「これは戦争だ」と語るなど、各国の指導者から戦時になぞらえた言葉が聞かれる。
 勇ましさが強調される中で、平和憲法の理念をかみしめたい。
 かつて、私たちの国は道を誤った。国民は自由を奪われ、多くの犠牲を払った。その歴史の上に今の憲法があるということを、思い起こしたい。

▼中日新聞・東京新聞「コロナ改憲論の不見識 憲法記念日に考える」/危機感ゼロだったのに/「非常時」とは口実だ/法律で対応は可能だ
 https://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2020050302000090.html

 それにしても明治憲法にはあった緊急事態条項を、なぜ日本国憲法は採り入れなかったのでしょう。明快な答えがあります。一九四六年七月の帝国議会で、憲法担当大臣だった金森徳次郎が見事な答弁をしているのです。
 <民主政治を徹底させて国民の権利を十分擁護するには、政府一存において行う処置は極力、防止せねばならない>
 <言葉を非常ということに借りて、(緊急事態の)道を残しておくと、どんなに精緻な憲法を定めても、口実をそこに入れて、また破壊される恐れが絶無とは断言しがたい>
 いつの世でも権力者が言う「非常時」とは口実かもしれません。うのみにすれば、国民の権利も民主政治も憲法もいっぺんに破壊されてしまうのだと…。金森答弁は実に説得力があります。
 コロナ禍という「国難」に際しては、民心はパニック状態に陥りがちになり、つい強い権力に頼りたがります。そんな人間心理に呼応するのが、緊急事態条項です。
 しかし、それは国会を飛ばして内閣限りで事実上の“立法”ができる、あまりに危険な権限です。
 ひどい権力の乱用や人権侵害を招く恐れがあることは、歴史が教えるところです。言論統制もあるでしょう。政府の暴走を止めることができません。だから、ドイツでは憲法にあっても一度も使われたことがありません。
 コロナ特措法やそれに基づく「緊急事態宣言」でも不十分と考えるなら、必要な法律をつくればそれで足ります。罰則付きの外出禁止が必要ならば、そうした法律を制定すればよいのです。
 権力がいう「非常時」とは口実なのだ-七十四年前の金森の“金言”を忘れてはなりません。

▼北日本新聞「コロナ対策と憲法/人権尊重の意義新たに」

▼北國新聞「緊急事態と憲法 危機管理の法整備進めねば」

 ただ、平時の法制度で対処できない時、個人の権利、自由をある程度制限せざるを得ない場合があることは世界の共通認識であり、国際人権規約も「国民の生存を脅かす公の緊急事態」の場合、一定の人権制限があり得ることを認めている。忘れられがちであるが、憲法も民法も「公共の福祉」によって制限される場合があることを明記している。
 そうした憲法規定に沿って、2004年に自民、民主、公明の3党が緊急事態基本法の成立を期すとの覚書を交わしたことがある。緊急事態の定義や国、自治体の責務など法案の骨子までまとめた3党合意は、翌年の郵政民営化選挙でほごにされたが、現在に至ってもなお実現していないのは、個人の権利、自由を絶対視する主張が根強いからであろう。
 自民党は4項目の改憲案に緊急事態条項を織り込んでいる。疫病による緊急事態時に国会をどう機能させるかについて、憲法審査会で協議するよう野党側に求めているのは当然であろう。安倍晋三首相も自民党総裁として憲法審での議論に期待感を示した。
 これに対して多くの野党は「危機に便乗した議論」には応じられないと拒否している。が、経済社会が崩壊しかねない未曽有の危機克服に必要な法制度を、補償の在り方も含めて議論し、国民に示すことは国会の使命である。

▼京都新聞「緊急事態と憲法 『強い権力』の意味考えねば」/国民の犠牲は当然?/日常的な備えが重要/権限はむしろ分散を
 https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/236294

 緊急時に国民の権利を制限することは今の憲法下でもありうる。
 災害対策基本法では、国会を召集できない場合に内閣は緊急政令を制定できるほか、医療・輸送関係者を救助業務に従事させ、物資の保管や収集を可能とする。
 ただ、そうした規定が機能するかどうかは、万一の際に対応できる法制定など日常的な備えができているかどうかにかかっている。
 災害発生時には国と自治体が決められた役割に従って動く一応の定めがある。与えられた権限を使って被災者らに手を差し伸べるのは自治体である。憲法に緊急事態条項を設けても、政府ができることは現状とさほど変わらない。
 内閣への過剰な権限集中が、現場を預かる自治体の対応力を阻害する懸念も指摘されている。加えて、極めて強い権限を持つことになる首相の資質が、今以上に問われることも考えておきたい。
 コロナ禍は、知事らの権限に見合う財源を保障し、実際の対応をしやすくする法整備こそ重要というシンプルな事実を浮き彫りにした。権限を政府に集中させるよりも、むしろ首長に分散する仕組みが求められているのではないか。
 危機にさらされたと感じる時、強い指導力に依存したくなるのは人の常かもしれない。だが、その力がもたらす負の側面についても冷静に考える機会を持ちたい。

▼神戸新聞「感染症と憲法/生存権の保障が国の責務だ」/ペストをめぐる論争/手だてを総動員して
 https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/202005/0013315800.shtml

 憲法25条は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を明記する。国に対しては、公衆衛生や社会保障の向上などで国民の生存権を保障するよう義務づけている。
 感染症対策でも公衆衛生と社会保障の両面で施策を総動員し、一人一人の生存権を守らねばならないはずである。強制措置の発動はそれを達成する手段の一つにすぎない。
 感染症を「災害」と捉えれば、災害救助法で生活や仕事に必要な資金・器具の支給や貸与が可能となる。「激甚災害」に指定すれば、対象地域の特例で、休業した会社の従業員に雇用保険の手当が支給できる。災害法制に詳しい兵庫県弁護士会の津久井進弁護士はそう指摘する。
 同弁護士会の永井幸寿弁護士も「今の法制度でもやる気があればかなりの対策が打てる。政府は平常時の感覚から脱するべきだ」と語る。
 科学的な対策を徹底して感染症を封じ込める。影響を受ける国民の生存権は、手だてを駆使して守る。それが憲法が求めている姿だろう。問われているのは、非常時に臨んでの政府の対応能力と、本気度だ。

▼山陽新聞「憲法記念日 性急避け改憲論議深めよ」
 https://www.sanyonews.jp/article/1009396?rct=shasetsu

 共同通信社が3、4月に行った世論調査では、緊急事態条項の新設に賛成51%、反対47%と賛否は拮抗(きっこう)した。非常時を想定した規定を憲法に盛り込むべきかどうか、議論を深めていくのは当然だろう。
 とはいえ、いま国会が取り組むべき課題はまずコロナ禍への対応である。国民の暮らしをどう手当てしていくかを優先し、力を注ぐときだ。
 (中略)
 首相が掲げた今年中の施行はもはや達成不可能な状況となったが、首相は21年9月までの総裁任期中の改憲実現になお意欲を示している。
 だが、改憲という大きな政治課題が、中身が生煮えのまま期限ありきで進められることがあってはならない。与野党は党利党略にとらわれず、じっくりと議論できる環境を取り戻してもらいたい。改憲そのものの是非も含め、国民が納得できるよう論議を深めていく努力が求められる。

▼中国新聞「≪新型コロナ≫改憲論議 不安に便乗、許されない」
 https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=639547&comment_sub_id=0&category_id=142

 私たちの社会は緊急事態宣言の下、外出を自粛し、店舗の営業や出勤を控えてきた。半面、同調圧力の高まりもあって息苦しい思いもある。それでも感染症の封じ込めを願い、我慢に我慢を重ねている。
 力任せの強制ではない、日本の流儀で乗り越えようと努めている。その方策にこそ、今は注力すべきときではないか。
 コロナ禍に心騒ぐ国民の不安に乗じるような格好で、憲法改正をうんぬんしてはなるまい。憲法とは権力を監視、規制するためのものであって、私たち国民を規制するものではない。

▼山陰中央新報「憲法記念日/権利の価値、再確認を」
 https://www.sanin-chuo.co.jp/www/contents/1588472048131/index.html

 安倍首相は宣言発令を報告した衆院議院運営委員会で、自民改憲案の緊急事態条項について「憲法にどう位置付けるかは極めて大切な課題だ。国会の憲法審査会で、与野党の枠を超えた議論を期待したい」と述べた。
 しかし特措法に基づく宣言は対象を感染症に限定し、取れる措置も明示している。一方、自民改憲案の緊急事態条項は「大規模な災害」という曖昧な定義の下で、内閣に法律と同じ効力を持つ政令制定の権限を認めるものだ。権力を内閣に集中させる規定で、新型コロナの宣言と同列に論じることはできない。
 自民党は感染拡大を受けて二つの課題を挙げ野党に議論を促した。国会議員に多数の感染者が出た場合の対処と、衆院議員の任期満了まで事態が終息せず、国政選挙が実施できない事態への対応だ。確かに憲法の規定に関わる課題だが、参院の緊急集会などの対応策も用意されている。
 自民党の狙いは、9条の改正論議に野党を呼び込むことではないか。だが今は新型コロナ対策に専念する時で、国会の憲法審査会は、私権を制限した宣言の妥当性こそを終息後に検証すべきだ。

▼愛媛新聞「コロナ禍と憲法 一人一人の尊厳最大限守らねば」

 政権に求められるのは不急の改憲ではなく、憲法の理念に従って目の前の課題解決へ全力を傾けることである。この瞬間も個人の尊厳に関わる生存権が脅かされている。医療崩壊を防ぐため現場の支援を充実させなければならない。収入が絶たれ、困窮する人にも早く手を差し伸べるべきだ。「教育を受ける権利」も長期化する休校で大きく損なわれた。子ども同士の格差を広げない手当てがいる。
 憲法は主権者である国民が国家権力に歯止めを掛ける性格を持つ。縛られる側の政権が改憲で国民の権利を妨げることがあってはならない。憲法の精神に向き合い一人一人を尊重しながら、困難を乗り越えるために誠実に手を尽くす。首相にはその姿勢を強く求めたい。

▼徳島新聞「憲法改正 コロナ禍に便乗するな」

▼高知新聞「【憲法記念日】非常を口実にしてないか」
 https://www.kochinews.co.jp/article/365088/

 戦前から戦中にかけて「非常時」の名の下に国家総動員体制などが敷かれ、国民の権利や自由が奪われた。敗戦後、新憲法に緊急事態条項が設けられなかったのはその反省からである。当時の金森徳次郎国務相が国会審議で述べている。
 「非常を口実にした政府の自由判断の余地を大きく残しておくと、どんなに精緻な憲法でも破壊される恐れがある」
 今また新型コロナ感染拡大という「非常」や「危機」が口実とされていないか。国民の不安に便乗し、改憲への流れをつくろうとするやり方はやはり認められない。
 人権規定を停止させることもできる緊急事態条項は、国の統治システムを根本から揺さぶる。感染症対策もそうした「劇薬」に頼るのではなく、新型コロナ特措法などの法律によって対処するのが筋である。
 政府の裁量によって私たちの自由や権利が、必要以上に制限されることは決してあってはならない。

▼西日本新聞「憲法とコロナ禍 克服へ今こそ理念生かせ」/弱者を守ってこそ/時代は変わろうと
 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/605640/

 改憲か護憲か。憲法を巡っては、この二者択一的な議論が先行しがちです。今の政治でも、安倍政権の「改憲ありき」の姿勢に野党が待ったをかける図式が続いています。そうした中で叫ばれている言葉があります。 「活憲」です。憲法の条文にこだわるのではなく、憲法に照らして現実の社会をつぶさに見詰め、矛盾や問題を地道に解決していく。そんな営みこそが重要ではないかという訴えです。
 つまり、理念をどう生かしていくのか。現下のコロナ対策は休業要請など私権制限の是非、それに伴う補償の在り方、弱者の救済方策、緊急事態に備える法の在り方など、難しい課題を伴っています。しかし、これらも憲法を物差しに冷静な議論を進め、ウイルスとの闘いを克服していかなければなりません。
 きょうで憲法の施行から73年になります。平時であれば、読み返す人は少ないかもしれません。その点、今年の大型連休は「ステイホーム」が合言葉とされています。多くの人が、歳月を経ても色あせていない憲法にいま一度目を通し、崇高な理念を再確認してみる。そんな時間を共有できればと思います。

▼熊本日日新聞「憲法記念日 権利の価値 再確認したい」/コロナを実験台に/強権求める危うさ/改正議論は丁寧に
 https://kumanichi.com/column/syasetsu/1451673/

 特措法については、当初は私権の制限につながることを警戒し、慎重な適用を求める声が根強かった。ところが、感染が拡大するにつれて緊急事態宣言を求める声が大きくなり、今では「遅すぎた」との見方が大勢を占める。非常時には、より強い権力の発動を求めてしまう、という危うさが露呈してはいないか。
 他人を監視するような社会の「同調圧力」によって、権利の行使が妨げられる事案も出ている。感染拡大を恐れるあまり、県外ナンバーの車やバイクを撮影してSNSに投稿する動きが問題になった。休業要請に応じないパチンコ店への批判が高まり、私権制限をさらに強める罰則規定を追加する法改正も検討される方向だ。
 パチンコ店の対応の是非は別にして、取り締まり強化を安易に認めれば、享受してきた権利を放棄することにもなりかねない。憲法12条は「自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」と定める。すべてを権力に委ね思考停止に陥ることは避けなければならない。
 (中略)
 自民党は、二つの課題を挙げて野党に議論を促している。国会議員に多数の感染者が出た場合と、議員の任期満了まで事態が終息せず、国政選挙が実施できない事態への対応だ。確かに憲法の規定に関わる課題だが、参院の緊急集会で一定の対応は可能とされる。
 何より今は、新型コロナ対策に専念する時である。そして終息後に、憲法審査会がまず検証すべきなのは、宣言により私権を制限したことの妥当性だろう。

▼南日本新聞「[憲法記念日] 緊急事態条項は必要か」/権力乱用への懸念/自治体権限強化を
 https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=119069

 国民はどう考えるのか。
 共同通信社が3~4月に実施した全国世論調査では条項新設に賛成51%、反対47%で拮抗(きっこう)している。年代が高くなるほど反対する傾向が強かった。
 調査時期はちょうど学校の一斉休校や緊急事態宣言発令と重なり、海外では罰則付きの外出禁止といった強力な措置が取られるなど関心が高まっていた。
 それでも賛成がおよそ半数にとどまったのは新型コロナ感染拡大に大きな不安を感じながらも、私権を制限するなど政府の権力が過度に強化されることへの警戒感の表れに違いない。
 (中略)
 安倍首相は2020年の改正憲法施行を提唱し、昨年の参院選の結果を踏まえて「議論は行うべきだという国民の審判は下った」と主張した。国民投票など改憲までの手順を考えれば目標の達成は不可能だが、21年9月までの自民党総裁任期中の改憲に意欲を示している。
 世論調査で憲法改正を巡る国会での議論を「急ぐ必要はない」との回答は6割を超えている。国民の根強い警戒感を考えれば、改憲より新型コロナの終息に向けた議論を優先し、個別の法律の中で対策を講じるべきである。

▼沖縄タイムス「[コロナ禍と憲法]守るべき価値見失うな」
 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/567450

 私権制限を含む緊急事態宣言がさらに1カ月、延長されようとしている今、あらためて憲法の意義を確認し直す必要性を痛感する。
 憲法11条は基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」と定める。13条は「すべて国民は、個人として尊重される」と、個人の尊厳を高々と掲げている。
 13条は後段で、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とも指摘している。
 憲法は、政府に対し、国民の命を守り個人の自由と権利を保障することを明確に求めているのである。だが、この条文が現実の政策に生かされているとは言い難い。
 (中略)
 自民党の中には、今回の緊急事態宣言と憲法への緊急事態条項新設を絡め、憲法改正の機運を高めよう、という動きも目に付く。
 だが、緊急事態宣言と緊急事態条項の新設とは、何の関係もない。実効性のある支援策が一日も早く求められているこの時期に、このような発言を弄(ろう)するとは、公党の見識が疑われる。
 憲法12条は「自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」と定めている。それを念頭に置いたコロナ対策が必要だ。

▼琉球新報「憲法施行73年 政府への強権付与危うい」
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1116800.html 

 国権が最優先され、個人の権利が著しく抑えられた過去があることを忘れてはならない。1938年に制定された国家総動員法だ。「私権」を制限する法制度の下で国家統制が敷かれ、国民の徴用などを国家が自由にできるようになった。行き着いた先は戦争だ。国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を基調とする憲法は、その反省の上に作られた。
 世界で新型コロナが猛威を振るう中で、ドイツのメルケル首相は渡航や移動の自由が第2次世界大戦などの「苦難の末に勝ち取られた」権利だとした上で、私権の制限は「絶対的な必要性がなければ正当化し得ない」と、あくまで命を救うための一時的対応だと明言している。
 先の見えない状況に置かれると、強い権力に従いたいという心理状態になることもあるだろう。こんな時だからこそ自由や平等、人権の価値を再確認する必要がある。
 沖縄戦の教訓を踏まえ、公権力を制限する平和憲法を守り続けたい。

 

「これは戦争ではない」~緊急事態宣言下 在京紙報道の記録7:4月29日~5月2日付

 新型コロナウイルスの感染拡大防止策を検討する政府の専門家会議が5月1日、新規感染者は減少傾向に転じているものの、引き続き、外出自粛などの行動制限が必要だとの提言を発表しました。安倍晋三首相は、5月6日までとしていた緊急事態宣言を1カ月程度延長することを表明しました。東京発行の新聞各紙も5月2日付の朝刊では、そろって1面で大きく扱っています。
 1日夕方、専門家会議の尾身茂・副座長が記者会見で見解を説明するのを聞いていて「おやっ」と感じることがありました。尾身さんは長期間の行動制限が必要になる、という話の中で、「長丁場の(「長期間の」だったかもしれません)の取り組み」という言葉を使いながら、「戦い」という言葉を使う人もいるけれども、わたしたちは別の言葉はないかと考えて「取り組み」と言うことにしている、という趣旨のことを話していました。
 尾身さんや専門家会議のメンバーがどういう理由で「戦い」を使わないのかは定かではありませんが、「戦い」を使わないこと自体にはわたしは賛同します。海外の政治指導者の中には、新型コロナウイルスへの取り組みを「戦争」に例える例が見られます。そういうこともあって「戦い」や「ウイルスに打ち勝つ」といった用法は、知らずのうちに容易に「戦争」に結び付くように思います。そして「これは戦争なのだ」と考えた瞬間から、いろいろな飛躍が始まってしまうことを危惧します。
 今は緊急事態宣言が発令され、私権の制限が可能な状況になっています。しかしそうであっても憲法の諸規定を上回る効力を持つわけではありません。私権を制限するにしても、例えば憲法29条が定めている補償とのバランス、整合性を取る必要があるはずです。そして、日本の現憲法は戦争を放棄しています。それなのに「今は戦争に等しいのだ」と考えると、現憲法に生かされている75年前の敗戦の教訓が忘れ去られることになりかねません。「これは戦争だ」という発想で、例えば憲法に緊急事態条項を加えるような議論が始まると、公権力を憲法によって縛る、という立憲主義の意義が逆転し、非常時を理由にした市民的な権利のはく奪ばかりが規定されていくことになることを危惧します。
 5月1日は令和改元から丸1年でした。在京各紙は現天皇の近況として、皇后とともに4月10日、先述の尾身さんから新型コロナウイルスについて進講を受けたことを紹介しています。尾身さんに天皇は「私たち皆がなお一層心を一つにして力を合わせながら、この感染症を抑え込み、現在の難しい状況を乗り越えていくことを心から願っています」(朝日新聞の記事)と述べたと報じられています。専門家の進講の場での天皇の発言が公になるのは極めて異例なのですが、「戦い」とか「打ち勝つ」などを使わずとも、の一例として書きとめておきます。

 この世界的なコロナ禍で、ドイツのメルケル首相が折に触れ発する言葉に共感が寄せられています。その中で、ドイツのシュタインマイヤー大統領が4月11日に行ったテレビ演説を、在日ドイツ大使館のホームページで読みました。ほんの一部を引用します。

 この感染症の世界的拡大は、戦争ではないのです。国と国が戦っているわけでも、兵士と兵士が戦っているわけでもないのです。現下の事態は、私たちの人間性を試しているのです。こうした事態は、人間の最も悪い面と最も良い面の両方を引き出します。お互いに私たちの最良の面を示していこうではありませんか。

 ※シュタインマイヤー大統領テレビ演説
  https://japan.diplo.de/ja-ja/themen/politik/-/2333154

 以下は緊急事態宣言下で東京発行の新聞各紙がどのように報じたのか、1面と社会面の記録の続きです。
【5月2日(土)付】=緊急事態宣言26日目・拡大17日目
▼朝刊
・朝日新聞
「外出自粛の継続 提言/専門家会議 感染減少『緩やか』」
「大阪、休業要請解除の意向/知事、段階的に『国の方針、問題』」
社会面「パチンコ店に休業指示/兵庫・神奈川『特措法基づき初』」
・毎日新聞
「コロナ自粛 当面継続提言/解除、地域ごとに判断」
「武漢研究所起源の証拠/米大統領 対中報復を検討」
社会面「9月入学 論点整理へ/早期導入、根強い慎重論」
・読売新聞
「コロナ対策『長丁場に』/新規感染は減少傾向 行動制限で3密回避」
「学校再開へ分散登校/小1・小6・中3優先 文科省通知」
社会面「分散登校に戸惑い/『教育の機会 均等か』『感染 避けられるか』」
・日経新聞
「緊急事態 1カ月程度延長/首相『医療、依然厳しい』」
「逆境が決める未来の形/短期志向の罠をこえて」コロナと資本主義 3
社会面「遠のく日常 ため息/飲食店『経営支援急いで』 小学校『学習状況に格差』」
・産経新聞
「全国で延長1カ月程度/首相表明『4日決定』 緊急事態宣言」
「憲法の不備 コロナで露わ/首相『拘束力がない…』」戦後75年 第1部 憲法改正①
社会面「GW後半 第2波警戒/検体数減 都の感染ペース鈍化も」
・東京新聞
「首相『緊急事態 1カ月程度延長』」「交付金 不足確実/37道府県 休業協力金の財源に 本紙集計」
「流行抑制 期待に届かず/専門家会議『自粛継続を』」
社会面「認可外保育 運営の危機/休園続けば収入ゼロ」

※2日付夕刊を追記しました(2020年5月7日22時20分)

▼夕刊
・朝日新聞
「休園 闘う飼育員/出勤抑制 担当外も世話」
「連休 熱中症に注意/高温予想 外出自粛でリスク増」
社会面「『3密』拘置所 募る不安/人権侵害への懸念も/『マスクなし7人部屋』/面会制限」
・毎日新聞
「マスクして笑おう/手描きシール 広がる投稿」
「心つなぐ大空」読む写真 ※台風19号の被災地・宮城県丸森町のこいのぼり
社会面「聖火ランナー店主死亡/練馬 とんかつ店火災 生前苦悩つづる/『料理続けたい』『自問自答し感染予防』『店やめたい』」
・読売新聞
「客船感染に国際ルール/関係国、責任明確化へ 政府方針」
「出番なし ずらり/5連休始まる」※新幹線車両基地
社会面「舞台 待てど踊れぬ/講演中止で収入源 裏方も」
・日経新聞
「『必要な外出』自転車で/混雑避けたい 体動かしたい」
「米、レムデシビル緊急認可/コロナ重症患者へ使用」
社会面「エサ代や人件費 動物園も苦慮/『園内感染』の予防徹底/飼育員は出勤、腹ペコ800頭に月500万円」
・東京新聞
「忍び寄る『自粛警察』/飲食店に匿名嫌がらせ/識者『善意の私的制裁 陰湿』」
「レムデシビル 日本も承認へ/米が緊急投薬を認可」
社会面「虐待避難の子 届かぬ恐れ/世帯主申請原則の10万円給付/住民票移せないケースも『頼れる大人いない』」

【5月1日(金)付】=緊急事態宣言25日目・拡大16日目
▼朝刊
・朝日新聞
「緊急事態 全国で延長へ/首相『7日から日常に戻るのは困難』」
「25兆円 補正予算成立/一律10万円 中小企業に最大200万円」
社会面「1人10万円 いつ届く/町が先払い 独自上乗せも」
・毎日新聞
「『コロナ対策1年以上』/感染者ゼロ当面困難」
「天皇陛下 即位1年」
社会面「『街角マスク』飽和の怪/中国の業者『売り込み』」
・読売新聞
「緊急事態延長 首相が表明/新型コロナ 4日にも正式決定」
「コロナ克服へ『心一つに』/天皇陛下即位1年」
社会面「暮らしに『令和』/校名や企業名 1年で続々」
・日経新聞
「中堅に資本支援1兆円/官民ファンド、月内にも」
「コロナ対策 知財無償で/トヨタやキヤノン 世界に提供」
社会面「在宅狙う詐欺メール/通販・取引先装う/『10万円』かたる」
・産経新聞
「緊急事態延長 5月末軸/10万円給付 補正成立」
「天皇陛下 ご即位1年/11府県訪問 ご公務着実に」
社会面「『困窮学生救え』大学が生活支援/バイト収入喜恵 授業料・通信費どうする」
・東京新聞
「もらうには住民登録必要/一律10万円給付へ/コロナ対策 補正予算成立」
「緊急事態 全国で延長へ/首相意向、今月末まで軸」
社会面「『入院不要』83歳死亡/続いた症状 遺族『放置と同じ』 埼玉」

▼夕刊
・朝日新聞
「コロナ 長期的な対策強調/専門家会議提言案『緩和なら感染再燃』」
「英、制限緩和計画を来週明示」
社会面「3.11伝えたいのに/現地ツアー中止・施設休館 伝承にコロナの影」
・毎日新聞
「『非正規はテレワーク×』/新型コロナ対策でも格差」
「『行動制限継続を』/専門家会議 感染再拡大懸念」
社会面「『夢の国』と共に街眠る/ディズニー休園2カ月」
・読売新聞
「外出自粛維持 提言へ/専門家会議 感染は減少傾向」
「コロナ禍 安寧祈り/陛下在位1年」
社会面「格安民泊へ駆け込み/帰国者、ネットカフェ難民…」
・日経新聞
「米、ワクチン数億本供給/1月までに体制 企業を支援」
「外出自粛 当面維持を/専門家会議提言 制限緩和 地域別に」
社会面「若い女性に駆け込み先/虐待や貧困 外出自粛でも家には…」
・東京新聞
「緊急事態1カ月延長 一致/『全国で行動制限継続』」
「『コロナ難民』防ぎたい/患者の検体採取・電話回診 川崎・千葉の開業医」
社会面「観光列車 苦境/千葉 台風復旧途上 再び一部運休」

【4月30日(木)付】=緊急事態宣言24日目・拡大15日目
▼朝刊
・朝日新聞
「緊急事態 延長で調整/政府 全国対象 1カ月程度」
「『核の傘』維持 米に求める日本/『削減には、事前協議が不可欠』」日米安保の現在地 変容する同盟
社会面「山積みマスク どこから/都心の金券ショップ・レストラン… 『卸売業者』突然売り込み」
・毎日新聞
「緊急事態宣言 延長へ/1カ月前後 全国視野」
「首相、9月入学『選択肢』/補正予算案 衆院通過」
社会面「公園制限拡大に戸惑い/遊具禁止 嘆く親子」
・読売新聞
「緊急事態宣言 延長へ/政府『全都道府県』念頭」
「米成長マイナス4.8%/リーマン以来の低迷 1~3月」
社会面「介護施設 苦悩の休業/高齢者の集団感染 懸念/国『生活に必須』・利用者家族に負担」
・日経新聞
「緊急事態宣言延長へ/全国で1カ月程度」
「9月入学 検討表明/首相、休校長期化を考慮」
社会面「GW静まる返る観光地/にぎわい消えた温泉街」箱根、那覇、札幌
・産経新聞
「緊急事態解除 首相『厳しい』/1カ月程度の延長案 浮上」
「軽症者死亡『こんな急変するなんて』/看護師語るコロナ最前線」
社会面「給食食材 行き場なく/小松菜 販売半減・牛乳 大量廃棄も」
・東京新聞
「抗体検査5.9%陽性/市中感染の可能性/都内の希望者200人調査」
「9月入学『選択肢に』/首相、特措法改正否定せず」
社会面「理容店 苦渋の判断/営業の店『日常続け 安心感を』」

▼夕刊
・朝日新聞
「3日に一度 どう買う/売り場ごとにメモ/レトルト活用/家の在庫把握を」
「緊急事態 延長へ 全国1カ月程度案」
社会面「うちで始めよう 今だからこそ/写真整理・着物リメイク・夫婦で掃除…」
・毎日新聞
「『バーチャル世界』欧州盛況/クラブ・レース観戦・オーケストラ」
(NEWS FLASH「コロナ対策 補正予算午後成立」など4本)
社会面「心の不調 長期化懸念/続く閉塞感 コロナで相談急増」
・読売新聞
「精算・消費 3月低水準/鉱工業3.7%低下」
「補正予算 午後成立へ/緊急事態 首相、解除困難の認識」
社会面「『コロナ犯罪』相次ぐ/『10万円』巡る詐欺 休業店に侵入 窃盗」
・日経新聞
「米経済『復元に時間』/FRB議長 失業急増で停滞」
「鉱工業生産 3.7%低下/3月、7年2カ月ぶり水準」
社会面「在宅勤務『月末の壁』/請求書の電子化進める契機にも」
・東京新聞
「コロナ禍 働くのは社会のため/店員、配達員、医師、保育士」
「緊急事態 全国で延長検討/政府、1カ月程度を軸」
社会面「北ア 静かな春/八ケ岳も自粛『終息したら来て』」

【4月29日(水)付】=緊急事態宣言23日目・拡大14日目
▼朝刊
・朝日新聞
「コロナ危機 疑心デマ増幅」(「みる・きく・はなす」はいま、社会面へ)
「症状把握 全国システム/軽症者ら対象 迅速な対応図る」
社会面「感染恐れ 誰かを責める/陽性20代 名字・地元・父勤務先も拡散/発信者 デマ判明後は追及の矛先に」
・毎日新聞
「レオパレス改修工期虚偽/施工不良 2年半を1年に」
「首相『家賃』支援 検討/立憲など、補正予算案賛成」
社会面「感染拡大 消えゆく職/ハローワーク利用者調査/『大きく影響』3割」
・読売新聞
「学校『夏休み短縮』半数/63自治体 休校分の授業確保」
「日産11年ぶり最終赤字/20年3月期予測 1500億円超下振れ」
社会面「登園自粛 勤務先に陽性/区『親を休ませて』」コロナ最前線@保育所
・日経新聞
「想定外 備えはあるか/ROE偏重経営 もろさ露呈」コロナと資本主義1
「企業 純利益46%下振れ/3カ月前予想比 日産は最終赤字」
社会面「『病院は戦場』医師疲弊/院内感染発生…緊迫の現場/『すでに医療崩壊に近い』」
・産経新聞
「7都府県 感染減進む/死者4倍、予断許さず/緊急事態3週間」
「日朝膠着 動かぬ拉致/北“瀬戸際”に回帰/首相『無条件会談』表明1年」
社会面「コロナ『想定外』結婚式に影/延期 感染防止なのに… キャンセル料相談続々」
・東京新聞
「中小融資相談に影響/金融機関混雑 感染リスク」
「解雇・雇い止め 急増/1カ月2500人、解雇不安鮮明」
社会面「『37.5℃ 4日間』独り歩き/『必要性 医師の判断で』日医が注意促す」

パチンコ店「店名公表」が引き起こしている社会的制裁~期待された「合理的行動」は実現できていない

 新型コロナウイルス感染拡大防止のために、新型インフルエンザ特措法に基づいて休業要請が出ているにもかかわらず営業を続けるパチンコ店に対し、知事が同法45条に基づくより強い「要請」を出して店名を公表する動きが拡大しています。そればかりか、特措法を担当する西村康稔・経済再生担当相は4月27日の会見で、「要請」より強い「指示」にも従わない施設が出てくる場合のこととして「罰則を伴う、より強い強制力のある仕組みの導入など法整備について検討を行わざるを得なくなる」(共同通信の記事)と述べ、特措法改正に踏み込んで発言しました。安倍晋三首相も29日の衆院予算委員会で、特措法改正について「今の対応や法制で十分に終息が見込まれないのであれば、当然、新たな対応も考えなければならない」(同)と述べて、否定しなかったと報じられています。

※47news=共同通信
「休業しないパチンコ店に罰則も 政府、特措法改正を示唆」2020年4月27日
 https://www.47news.jp/politics/4760952.html
「首相、9月入学制『前広に検討』 補正予算案が衆院通過」2020年4月29日
 https://www.47news.jp/politics/4766061.html

 このブログの以前の記事(「相互不信、相互監視社会を危惧~パチンコ店の店名公表で気付いたこと」)でも紹介しましたが、大阪で店名公表後に休業を決めた1店は、大阪府に対し「営業を続けていることに対し、誹謗中傷する電話が相次いだ」と説明したと報じられています。また東京新聞によると、東京で27日まで営業していたパチンコ店関係者は取材に「店名が公表されれば取材なども殺到し、お客さんに迷惑がかかる。経営は厳しいが休業を決断した」「長く続けば倒産を覚悟しないと。たたきやすいところがたたかれたという感じだ」と話しています。西日本新聞は「感染症に対する恐怖や不安感からパチンコ店が標的になっている。まるで魔女狩りだ」とのパチンコ店側の声を紹介しています。
※東京新聞「パチンコ店名公表見送り 都、個別に休業要請→現地確認」2020年4月29日
 https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202004/CK2020042902000122.html
※西日本新聞「パチンコ店『まるで魔女狩り』 店名公表の福岡県は『感染リスク考えて』」2020年4月30日
 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/604629/

 朝日新聞の29日付朝刊にも、神奈川県が店名を公表した6店のうち1店の経営者が取材に対して「店名が公表された後から店にたくさん電話がかかってきたので、従業員の安全のために閉めようと思っている。行政による集団リンチだ」と不平を口にしたと紹介されています。毎日新聞によると、大阪府内で店名公表後も計3店の営業を続けてきた運営会社は、SNS上で「爆弾を仕掛ける」などと投稿され、従業員らに身の危険を感じ、府からの再三の休業要請も踏まえ店を閉めることにしたという、とのことです。
※毎日新聞「『コロナよりパチンコできないストレス強い』 大阪府外へ『転戦』する客も」2020年4月30日

 https://mainichi.jp/articles/20200430/k00/00m/040/208000c

 これまでもこのブログで書いてきたことですが、わたしは特措法45条に基づく休業の「要請」「指示」に従わない施設の公表は、それによって結果的に密集状態の解消が達成されるとしても、多くは店や利用客に非難や中傷が向かい、それに店側が耐えきれなくなること、そうなることを店側が恐れることが主な要因であることが明らかになったと考えています。誹謗中傷は容易に脅迫に行き着くのではないかと心配していましたが、実際にネット上の掲示板にパチンコ店を爆破すると書き込まれる事態にもなっています。

※共同通信「大阪のパチンコ店に爆破予告 ネットに書き込み、府警が警戒」2020年4月28日
 https://this.kiji.is/627752179873268833?c=39550187727945729

 ひと言で言えば、同調圧力が犯罪行為を伴いながらパチンコ店を休業に追い込んでいます。これでは社会に相互不信、相互監視をもたらす副作用の方が大きくなりかねません。すさまじいまでの社会的制裁が現にあるのに、さらに刑罰を科すことまで泥縄で決めようというのでしょうか。この状況で法改正に乗り出しても冷静な議論が保てるのかは疑問で、法改正が必要ならコロナ禍が収束してからにするべきだと思います。45条についての政府のガイドラインでは、施設名の公表によって市民、住民の合理的行動を確保するとの考え方が記されていますが、現実に起きているのは全く逆の事態です。
 以下、わたしなりに問題の整理を試みました。

▽休業に有効なのは補償
 伝えられる限り、営業を続ける店側の事情はどこも同じで、補償がないままに休業しては店の経営も従業員の生活も成り立たない、ということです。経営が破たんしたり従業員が路頭に迷ったりせずに済むだけの補償があれば休業できる、ということになります。営業の継続は、休業要請(指示)と補償がセットになっていない、という特措法の仕組みに起因するとも言えるわけで、仮に特措法改正を検討するなら、罰則による制裁の強化だけでなく、この点も検討対象にするべきだろうと思います。
 私権の制限に対して補償する根拠については、特措法だけでなく憲法29条が根拠になるとの指摘もあります。

 第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。
 2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
 3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

 当然のことですが、特措法は憲法を上回るものではありません。憲法が言う「公共」に新型コロナウイルスの感染拡大防止が該当するなら、「営業自粛」という私有財産にかかわる行為に対して正当な補償が必要という見解も十分に合理性があるように思います。

▽「店名公表」に何が期待されていたか
 もともと改正特措法が成立した際に、西村担当大臣は緊急事態宣言を「伝家の宝刀」と評していました。抜かないから「伝家の宝刀」であって、抜いたらそれまでです。緊急事態宣言が発せられ、しかしパチンコ店の中に休業要請を受け入れずに営業を続ける店がある、いよいよ45条の発動だとなって、政府はガイドラインを作って都道府県に示しました。緊急事態宣言から2週間以上もたった4月23日のことです。あらためて、その内容を見てみました。
https://corona.go.jp/news/pdf/yousei_shiji_0423.pdf
 ここでは以下のように明記されています。
「当該要請及び指示に伴う特措法第45条第4項の公表も、特定可能な個別の施設名等を広く周知することにより、当該施設に行かないようにするという合理的行動を確保することを考え方の基本としている」
 施設名を公表することによって、住民がその施設に行かない、という合理的な行動を取ることを期待しているわけです。しかし、実際に起きたことはまったく逆のことでした。営業店舗を知った人たちが詰め掛け、かえって混雑が増す事態になりました。
 施設名の公表が、一般的には制裁として機能する場合があること、しかし、ことパチンコ店については、はなはだ疑問であることは以前の記事で書いた通りです。法令違反の行為が認定された事業者の名前が公表されれば、市民、住民が消費者として消費行動を決める際の判断材料になります。おかしな商法をしていることが明らかになれば、当然、消費者は利用を避けようとするでしょう。だから制裁としても実効性を持ちます。しかし、営業を継続しているパチンコ店の情報は、パチンコに関心がない市民、住民にとっては、自身の行動を決める上では何の意味もありません。意味を持つのは、緊急事態宣言下でもパチンコをやるとの確固とした意思を持つ愛好者です。
 パチンコ店の店名公表は、政府のガイドラインに即してみても、意味を認めがたいことが明らかだと思います。そのガイドラインにしても、自治体からのプレッシャーを受けて政府が慌ててまとめたとの印象があります。

▽コロナと想定が異なる特措法
 緊急事態宣言が発せられて後に明らかになってきているのは、休業と補償がセットになっていないことを始めとする、大元の特措法自体の問題点です。もともと、私権制限の規定があるのに国会の承認が不要であったり、指定公共機関としてマスメディアが組み込まれた場合に、報道の自由が担保されるかどうかといったいくつもの不備が指摘されていた法律です。
 特措法の立法の経緯(民主党政権下の2012年に成立)を知る意味で興味深く読んだのは、毎日新聞が4月25日付朝刊の3面(総合面、東京本社発行紙面)に掲載した「識者『基本法策定議論を』」の記事です。一部を引用します

 特措法制定当時の議論を知る政府関係者は「国内で感染症がまん延した事例を基に作ったのではなく、『大体こういう措置が必要になるだろう』とイメージしながら作った法律だ」と解説。「行政が講じる措置の大枠を決めることが目的だったので、罰則に関する議論はほとんど行われなかった」と振り返る。国と地方との役割分担についても、詰めた議論はなかった。
 民主党政権幹部として制定に関与した古川元久・国民民主党代表代行はこう振り返る。「『かかったら本当に命に関わる』と見込まれた強毒性の新型インフルエンザを想定した法律で、緊急事態を宣言して外出自粛を求めれば、強制しなくても大丈夫だろうと考えていた。今回のように軽症や無症状の人が町中を動いて感染が広がる状況は想定していなかった」
 (中略)
 日本大の福田充教授(危機管理学)は、首相が宣言を発する点を踏まえ、「一見トップダウン型の建て付けの法律に見えるが、実際に休業要請などをする都道府県がどうすべきかという具体的な枠組みがない」と指摘。「国と都道府県の連携が現実感を持って準備されていなかったのは大きな反省点だ。収束して平時になったら、今後の危機に備えて(時限的な)『特措法』ではなく、(恒久的な)『基本法』の策定を議論すべきだ」と提言した。

 立法の経緯から見ても、今回の新型コロナウイルスは法の想定外の事態を含んでいるわけです。客足が遠のいたからではなく、誹謗中傷や脅迫で、あるいはそうなることを恐れて休業に追い込まれている店がある以上、「店名公表」がそうした行為をあおっていることになります。例え休業という目的を達したとしても、社会に相互不信、相互監視の大きな傷が残ることを危惧します。いくら法に規定があっても、これ以上の「店名公表」には慎重さが必要だと感じます。
 ましてや、緊急事態の中での法改正による強権の拡大は避けるべきだと思います。緊急事態宣言は少なくともあと1カ月前後は続きそうな情勢です。これ以上の休業に耐えかねて、業種を問わず生存のために営業を再開する事業者が生じた時に、補償なき罰則に進むのでしょうか。

▽「店名公開」の報じ方
 先述の4月23日付の特措法45条に関する政府のガイドラインには「公表の内容としては、要請(指示)の対象となる施設名及びその所在地、要請(指示)の内容、要請(指示)を行った理由を含むものとし、幅広く住民に周知するため、各都道府県のホームページ等での公表を基本とする」との記述があります。パチンコ店の具体的な店名は、自治体のホームページに載っていれば十分ということです。
 これまでに店名を公表した事例を見ると、情報をオープンに公開するということなのか、知事の記者会見で店名一覧のパネルを提示したりしています。それはいいのですが、だからといってマスメディアがそのまま、報道でも個々の店名を報じるかどうかは別問題だと思います。
 実態として、パチンコに関心がない市民、住民にとっては何の意味もない情報です。意味があるのはパチンコ店にどうしても行きたい人、そのほかには「営業を自粛しないとはけしからん」と腹を立て、直接の抗議や誹謗中傷、さらには脅迫などの行動に出る人にとってです。報道では「店名は○○県のホームページに記載」とだけ伝える、という選択肢もあっていいと考えています。

コロナ禍と労働組合~緊急事態宣言下 在京紙報道の記録6:4月25~28日付

 少し前になりますが、東京新聞が4月23日付の朝刊1面トップで、個人加盟組合「首都圏青年ユニオン」を取り上げているのが目を引きました。
 立ち食いそばチェーン「名代 富士そば」で、新型コロナウイルス感染拡大防止のために営業時間を短縮したことに伴い、月5日勤務を3日に削られたパート従業員が仲間数人とともに首都圏青年ユニオン傘下の「飲食店ユニオン」に加入し、雇用調整助成金を活用して削減分の給料を補償するよう、団体交渉で運営会社に要求し「全額補償」の回答を得た例などが紹介されています。
 コロナ禍による経済活動の縮小は、雇用問題と表裏一体です。緊急事態宣言が長引けば、影響は非正規雇用の方々だけでなく、正社員にも広がっていくでしょう。コロナ後にわたしたちの社会は今までのようにはいられないはずで、そのことは労働組合も同じではないかと思います。日本では長らく企業内組合がスタンダードで来ましたが、「正社員クラブ」の殻を脱しきれないのが実態です。それで大恐慌並みの不況が不可避ともされるコロナ後に間に合うのか。わたしは最近では、個人加盟組合が持つ可能性を考えるようになっています。

 さて、緊急事態宣言下で東京発行の新聞各紙がどのように報じたのか、1面と社会面の記録の続きです。
【4月28日(火)付】=緊急事態宣言22日目・拡大13日目
▼朝刊
・朝日新聞
「日銀、国債購入の上限撤廃/コロナ対応 社債購入枠も拡大」
「10万円『5月の早い時期』/首相 給付開始目標示す」
社会面「9月始業じゃだめですか/学校再開 見通せぬなら…/学生『これで受験、不公平』」/『学力差生じる』首長らも」
・毎日新聞
「日銀、国債無制限に購入/追加緩和 金利抑制図る」
「『10万円、来月早期に』/首相表明 補正予算案審議入り」
社会面「救急車搬送 北へ200キロ/医師不足 既に限界/『感染拡大ならアウト』」※北海道・士別
・読売新聞
「日銀 社債購入枠3倍に/追加緩和 資金繰り支援/国債は上限撤廃」
「コロナ薬 来月にも承認/レムデシビル 特例で価格審査」
社会面「文化の灯 風前/古書店街 シャッター9割 ミニシアター月100万支出」
・日経新聞
「三井住友FG、SBI提携/スマホ金融で顧客拡大」
「日銀、国債を無制限購入/社債・CP買い入れ枠3倍」
社会面「コロナ専門病院 整備遅れ/特定警戒13都道府県 計画は4府県」
・産経新聞
「日銀、経済対策を下支え/無制限で国債購入 2カ月連続緩和」
「介護 858事業所休業/感染防止、大半が自主的」
社会面「受験生 教育格差が怖い/休校対策・自治体ばらつき」
・東京新聞
「対策 医療より消費/遅れる検査拡充 専門家批判 補正予算案審議入り」
「日銀 国債購入無制限に/追加緩和 『資金調達 万全期す』」
社会面「GW 子どもどう過ごす」※教育評論家、養護教諭、予備校講師、僧侶

▼夕刊
・朝日新聞
「『3密』リスク 銀行ビクビク/窓口混雑 目立つ不急の用件/『古いお札の交換を』『長話をしたかった』」
(NEWSダイジェスト「有効求人倍率1.39倍/3カ月連続悪化」など3本)
社会面「首都高ガラガラ 響く騒音/走りやすい…『ルーレット族』活発化に警戒」
・毎日新聞
「広がるスポーツマスク/ランナーの感染防止 山中教授も推奨、注文急増」
(NEWS FLASH「有効求人倍率低下 3月は1.39倍」など3本)
社会面「『こども弁当』で恩返し/コロナ休校 廃棄免れたコマツナ農家」
・読売新聞
「経済活動 再開兆しも/欧米・NZ 営業制限 一部緩和」
「家賃支援の追加策検討/衆院予算委 首相『この状態延びれば』」
社会面「ウナギ登り 稚魚豊漁/コロナ後 手頃な値段で」
・日経新聞
「求人 3年半ぶり低水準/製造業、新規2割減 3月1.39倍」
「感染者300万人超す/世界185カ国・地域 途上国に拡大」
社会面「外出自粛 飲酒増に懸念/先見えぬストレス…依存リスク」
・東京新聞
「障害者向け910事業所 休業/35都道府県 自主判断が大半」
「求人倍率1・39倍に低下/3月、3年半ぶり水準」
社会面「ネットカフェ難民転々/県支援施設 感染防止に不安」

【4月27日(月)付】=緊急事態宣言21日目・拡大12日目
▼朝刊
・朝日新聞
「ごみ袋の防護服 緊迫の介助/千葉の障害者施設 集団感染との闘い」
「『事前避難地域』未指定6割/南海トラフ 津波被害予想139市町村」
社会面「高校集大成の夏が/選手『頭が真っ白。悔しい』」※高校総体中止
・毎日新聞
「インターハイ 初の中止/高体連『命を守る』」
「中国ハッカー集団関与か/NECへのサイバー攻撃」
社会面「ゴミ収集 感染リスク直面/使用済みマスク 不安」
・読売新聞
「コロナ『水際対策』12道県/空港、駅、拘束で検温 来訪自粛 啓発チラシ」
「オンライン学習 国が開発へ/感染症・災害時に活用」
社会面「過密業務 不休の闘い/壁際ボード 患者情報びっしり」コロナ最前線@保健所
・日経新聞
「配当より雇用維持を/機関投資家が転換」
「コロナと世界『企業、英知集め経済維持』ファーストリテイリング会長兼社長 柳井正氏」
社会面「救急医療 崩壊の足音/搬送時の検査態勢 急務/院内感染恐れ、発熱患者を『たらい回し』」ドキュメント日本
・産経新聞
「五輪 2割でスポンサー離れ/選考方法 半数 見直し『検討』/競技団体 本紙アンケート」
「高校総体 初の中止/新型コロナ 夏の甲子園影響も」
社会面「テレワーク 落とし穴/急いで導入 セキュリティー不十分」
・東京新聞
「不妊治療 支援拡充/21年度にも 助成増額・所得制限緩和へ」
「大田の町工場 苦心/後継者不足 騒音配慮 コロナ受注減」
社会面「外出 同行者なく 視覚障害者 苦境/『ガイドヘルパー』広がる活動自粛」

▼夕刊
・朝日新聞
「住宅 仕事も子守も一大事/いたずら防止 立ってパソコン・声かけられ中断」
(NEWSダイジェスト「日銀追加緩和 国債の購入上限撤廃」など3本)
社会面「犬や猫 保護したのに/飼い主探せず 受け入れ限界」
・毎日新聞
「3密避け自転車通勤 脚光/街乗り用・シェアサイクル増」
「国債購入額の上限撤廃/日銀、連続追加緩和」
社会面「買い占めないで 人工呼吸器 加温の精製水/ネットに『消毒効果』難病患者困惑」
・読売新聞
「日銀、国債購入の上限撤廃/決定会合 社債購入枠も拡大」
「外国人労働者が『盲点』/今月、感染爆発 寮でクラスター」コロナ最前線@シンガポール
社会面「部活 突然の『引退』/『3年間の集大成が…』 大会中止相次ぐ」
・日経新聞
「国債購入の制限 撤廃/日銀会合 追加緩和を決定」
「NY州 経済再開へ準備/新型コロナ まず建設・製造業」
社会面「『スマホ当たりや』暗躍/わざとぶつかり『弁償しろ』」
・東京新聞
「#医療従事者支えたい/浅草橋のホテル、客室無償提供」
「日銀 国債購入の上限撤廃/追加緩和 社債買い入れ3倍」
社会面「揺れる公共交通/『3密』感染の不安 『生活の足』使命感」

【4月26日(日)付】=緊急事態宣言20日目・拡大11日目
▼朝刊
・朝日新聞
「欧州医療者 丸腰の危機/スペイン、コロナ感染者の16%」
「さぁ連休 でも『うちで過ごそう』」
社会面「身を守る連休 始動/湘南や奥多摩ひっそり/『店閉めても家賃が…』/県外ナンバーの車調査/都心の公園 ランナー『密』」
・毎日新聞
「PCR外来 12府県設置へ/新型コロナ 22都府県『検討中』 本紙調査」
「新幹線ガラガラ 大型連休初日」
社会面「PCR検査 病院苦悩/風評被害 外来3割減/感染 恐怖にさらされ/防護服在庫切れ迫る」
・読売新聞
「44都道府県 休業要請/『協力金』支給は濃淡 コロナ対策 本社調査」
「三菱UFJ銀8000人減へ/23年度までに 計画2000人上積み」※コロナ言及なし
社会面「ごみ出しに気遣い/マスク廃棄 袋二重に 詰めすぎ 破れる恐れ」
・日経新聞
「原油貯蔵 猶予は2カ月/価格再びマイナスも 干上がる産油国」チャートは語る
「対面・押印・書面を削減/行政手続き、接触減 首相あす指示」
社会面「『離島に来ないで』/医療脆弱、苦渋の呼びかけ」
・産経新聞
「北、コロナ死者267人/実態隠蔽 すべて『疑い例』処理」
「NY医師『ついに自分が』/味がしない…就寝後、突然の関節痛 続く悪寒…急激な呼吸悪化におびえ」
社会面「屋外でも『密』に注意して/ランナー 前後に飛沫の危険 キャンプ 関心高まり殺到も」
・東京新聞
「単身赴任男性 無念の孤独死/世田谷 発熱6日後検査 死後コロナ判明」
「中小雇用助成10割に/条件付き 休業給付引き上げ」
社会面「中核病院 綱渡り/墨東病院 救命救急を一部停止」

【4月25日(土)付】=緊急事態宣言19日目・拡大10日目
▼夕刊
・朝日新聞
「『巣ごもり』ふるさと納税活況/米・和牛・焼酎…申込額9倍の例も」
「JR宝塚線事故15年 祈りの朝」
社会面「15年 今もあなたと/8丁のハサミ 妻の魂宿る」
・毎日新聞
「生きがい喫茶ウェブ先行/店員は認知症の人たち コロナで実店舗中止」
「医療従事者に感謝の拍手」読む 写真
社会面「祈り 仏壇の前で/コロナで現場訪問かなわず」
・読売新聞
「夏休み短縮・分散登校 提案/文科省 再開方針公表へ」
「『感染怖い』でも働く/外出自粛 貧困層は悲鳴」コロナ最前線@リオ
社会面「ウェブ授業 学校で格差/実施わずか『教員に負担』」
・日経新聞
「ふるさと納税でエール送って!/事業者・病院支援 自治体、制度活用広がる」
「公園遊具使えず 新幹線の客激減/1都3県、『12連休』初日」
社会面「若手社員への伝承課題/尼崎脱線事故15年、慰霊式は中止」
・東京新聞
「発達障害児 窮地/在宅でリズム崩し自傷・親もストレス懸念」
「静寂は いのち守る/G我慢 Wウイーク」
社会面「検査少なく 実態見えず/陽性率 都内で急上昇」

コロナ禍でも何も変わらない辺野古移転~緊急事態宣言下 在京紙報道の記録5:4月22~25日付

 生ニュースは新型コロナウイルス一色の観がある日が続きますが、ほかにも日々、重要なニュースがあります。
 沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の移転問題で防衛省は4月21日、移転先の名護市辺野古地区の沿岸部にある軟弱地盤の改良工事のため、設計変更を県に申請しました。沖縄県の玉城デニー知事は認めない方針とされ、会見で「県民に十分な説明をしないまま埋め立て工事の手続きを一方的に進め、到底納得できない」(東京新聞)と批判したとのことです。
 この新型コロナウイルス禍によって、世界はもう以前のままではいられないはずです。日本を取り巻く安全保障環境や米軍の世界展開も例外ではないでしょう。なのに、ただでさえ沖縄の民意を一顧だにすることなく進めてきた辺野古移設を、情勢の変化を見極めようという姿勢を見せることもなく、以前と何も変わらないまま押し進めようという安倍政権の発想には疑問と危うさを感じます。
 この設計変更の申請を東京発行の新聞各紙がどのように報じたか、翌22日付朝刊での扱いと主な記事の見出しを以下に書きとめておきます。東京新聞の扱いの大きさと社説の見出し「『不要不急』の極みだ」が目を引きます。

・朝日新聞
1面「辺野古 国が設計変更申請/県、認めぬ方針 普天間返還 大幅遅れ」
4面「軟弱地盤 向き合わぬ政権/辺野古申請『不意打ち』」/「強気崩さず 念頭に県議選」

・毎日新聞
2面「辺野古 設計変更申請/政府 沖縄県は応じぬ姿勢」
社説「辺野古の設計変更申請 無理な計画をなぜ進める」

・読売新聞
4面「辺野古 工事長期化へ/国と沖縄県 法廷闘争確実に/設計変更申請 地元が反発」

・日経新聞
4面「辺野古の設計変更申請/防衛省、地盤強化など 県は認めぬ構え」

・産経新聞
2面「辺野古 設計変更を申請 防衛省/地盤改良 沖縄県認めぬ構え」
4面「移設阻止 コロナを利用/沖縄県 辺野古以外では異なる対応」

・東京新聞
1面準トップ「辺野古 国が設計変更申請/軟弱地盤 県は認めない方針」
1面・解説「不都合な事実を無視」
2面・核心「疑義残し 申請強硬/防衛省、軟弱地盤再調査させず」
社会面準トップ「『コロナ感染 防ぐのが先』/辺野古申請 住民『まさか今とは』」
社説「辺野古設計変更 『不要不急』の極みだ」

 

 以下は、各紙の1面、社会面掲載記事の記録の続きです。

【4月25日(土)付】=緊急事態宣言19日目・拡大10日目
▼朝刊
・朝日新聞
「救命救急 制限の動き/コロナ専念・院内感染で停止も 本社調査」
「布マスク未配布分 回収/不良品問題 政府、検品強化し継続」
社会面「夫婦とも陽性なら 子の世話誰が/家庭内感染 身近なリスク」
・毎日新聞
「緊急事態解除 地域ごと/政府 連休後半に判断」
「未配布マスク回収/納入2社 政府『中止はせず』」
社会面「軽症『回復』異なる基準/PCR2回『陰性』 14日間療養 7都府県」
・読売新聞
「『病床8割使用』5都県/本社調査 入院受け入れ切迫」
「緩和策 大恐慌が教訓 ミルトン・フリードマン『資本主義と自由』」経済学×現代 コロナ2
社会面「都内商店街 苦渋の休業/戸越銀座や巣鴨『お客と店の人の命守る』」
・日経新聞
「決算、コロナの影響緩和/引当金や減損 世界で柔軟対応」
「コロナと世界『企業より労働者に支援を』米元財務長官 ローレンス・サマーズ氏」
社会面「自宅療養7府県1100人/軽症で待機中の死亡例も 本社調査」
・産経新聞
「GW 休暇延長を要請/政府、接触8割減徹底へ」
「自宅療養社 ホテル移行/軽症者、死亡相次ぎ転換」
社会面「小1出遅れ 影響大きく/初の学校生活 慣れる教育できず」
・東京新聞
「『ステイホーム週間に』/都知事12日間要請」
「補正予算案に『時期尚早』項目/旅行クーポンや観光地PR」
社会面「急変したら…不安14日/自宅待機中の脂肪 相次ぐ」

【4月24日(金)付】=緊急事態宣言18日目・拡大9日目
▼朝刊
・朝日新聞
「軽症者療養 宿泊施設で/厚労省 自宅より優先に転換」
「スーパー入店 政府『制限を』/混雑回避 知事に要請」
社会面「スーパー 密です/都民の買い物 3日に1回 かご減らし 入店者規制を 高齢者・妊婦ら専用時間を 都が要請」
・毎日新聞
「コロナ休業『指示』に指針/政府 『要請』に応じなければ」
「契機 急速に『悪化』/『リーマン』後以来11年ぶり 4月経済報告」
社会面「母感染 授乳は 添い寝は/自宅『子と距離』難しく」
・読売新聞
「感染者集団125か所/本社調査 31都道府県2698人」
「軽症者はホテル療養/政府方針 自宅併用から転換」
社会面「『買い物 3日に1回に』/小池知事が混雑緩和策」
・日経新聞
「国債購入 制限なく/日銀議論へ 社債・CP倍増」
「コロナ検査 機能不全/結果まで1週間も」
社会面「買い物『3日に1回に』/都、スーパーの『3密』緩和策」
・産経新聞
「商店街 自主休業に奨励金/都知事、密集回避促す」
「海・山の国道規制 要望/知事会、コロナ拡大懸念」
社会面「『客の協力欠かせない』/スーパー 密集対策に限界」
・東京新聞
「買い物『3日に一度に』/都知事 混雑緩和化」
「民間病院6月危機『資金底つく』/全日病会長 コロナ以外 患者減 助成必要』」
社会面「路上 突然の最期/都内の66歳男性 死後に感染判明」

▼夕刊
・朝日新聞
「軽症者ホテル 朝7時の検温から/部屋に隔離生活『ご飯が楽しみ』」
(NEWSダイジェスト『未配の布マスク、回収し検品強化』など3本)
社会面「ネット使えば『今もできる』動く学生/高校生支援・新歓自粛に署名・互いに講座」
・毎日新聞
「公園クラスター心配?/緊急事態 ほかに行き場なく」
(「米のWHO拠出 再開しない可能性も」)
社会面「コロナ情報 障害持つ子に/休校、自粛…分かりやすく 支援団体がイラスト」
・読売新聞
「困窮学生 大学が支援/明治学院 全員に5万円 東北 総額4億対策」
「NY州14%に抗体/3000人検査 推定感染270万人」
社会面「ストレス増大 家庭暴力防げ/在宅勤務、外出自粛…」
・日経新聞
「トヨタ、北米来月4日再開/全工場 生産抑え感染防止」
「抗体13.9%で確認/NY州、3000人コロナ検査」
社会面「面会制限 不安募る家族/家とビデオ通話・ガラス隔て電話 病院・施設」
・東京新聞
「未配布マスク全て回収/不良品問題 政府と興和・伊藤忠」
「快癒へエール 日本橋」※軽症者収容のホテル
社会面「差別なき社会へ 辛抱の時/LGBT情報施設 延期『日本変える好機が』」

【4月23日(木)付】=緊急事態宣言17日目・拡大8日目
▼朝刊
・朝日新聞
「接触8割減へ 10の提言/首相『GWオンライン帰省を』」
「フランス介護崩壊 死者4割が集中/残された遺体 職員は勤務拒否」
社会面「休業協力金 うちは/飲食店 準備着々・『開けた方がまし』」銭湯 休んでも対象外」
・毎日新聞
「大型連休『帰省自粛を』/専門家会議『移動』警戒」
「愛知県、病院に応援金/感染者入院 1人最大400万円」
社会面「PCR現場 綱渡り/機器増でも追いつかず 作業連続で2時間限界」都・健康安全研究センター
・読売新聞
「大型連休『外出自粛を』/専門家会議 首相、協力求める」
「危機乗り越える処方箋 ジョン・メイナード・ケインズ『貨幣改革論』」経済学×現代 コロナ1
社会面「安心求め やまぬ着信」「『会社が…』『味しない気が…』」コロナ最前線@相談窓口
・日経新聞
「綱渡りの中小支援/33都道府県が協力金 資金難なお深刻」
「スーパー入店 少人数で/専門家会議 接触8割減へ提言」
社会面「『助かる』『額が足りない』/申請窓口に経営者ら列 都の協力金 受け付け開始」
・産経新聞
「接触8割減『不十分』/専門家会議 スーパー入店制限提言」
「帰国希望の邦人1100人/アフリカから 手続き複雑」
社会面「帰国者待機 自覚頼み/コロナ感染者 3週間で倍以上」
・東京新聞
「非正規窮状 声上げる/休業手当 組合で勝ち取る」
「首相、来月初旬に延長判断/一律解除 慎重意見も」
社会面「単身高齢者 孤立不可まる/急病や感染怖い・憩いの場は閉鎖 新宿・戸山ハイツルポ」

▼夕刊
・朝日新聞
「マスクポイ捨て 潜む感染リスク/回収は行政に連絡 拾う祭は手袋を」
(NEWSダイジェスト「群馬ヘリ墜落 不適切整備原因か」など3本)
社会面「『生身の語り合い』大切さを/コロナ禍生きる手がかり 歌や踊りで 文化人類学者・今福龍太さん『最終講義』」
・毎日新聞
「適度な運動 リスク忘れず/自粛対象外 屋外ゴルフ練習場盛況」
(NEWS FLASH「連休中の国道通行規制 知事会が提言」など4本)
社会面「ホームレス『感染怖い』/路上、ネットカフェに布マスク届かず… 支援団体も在庫不足」
・読売新聞
「巣ごもり 配送大忙し/4月以降 荷物が倍増 『置き配』感染対策も」
「本人確認の徹底 要請/厚労省通知 保険証・免許証で オンライン診療」
社会面「コロナ苦狙う『裏バイト』/『1日10万円』『お金受け取るだけ』」
・日経新聞
「インターン採用 一部解禁/就活ルール見直し コロナ受け通年採用促す」
「米7割の州 収束方向示す/1人がコロナうつす人数『再生産数』」
社会面「バイト先休業 学生ピンチ/専門家『学費免除など支援を』」
・東京新聞
「1人で初産『不安と恐怖』/産科 立ち会い・面会制限」
「コロナ以外の入院 陽性6%/慶大病院 地域状況反映か」
社会面「結婚式 挙げられない/延期・中止 カップル『仕方ない』」

【4月22日(水)付】=緊急事態宣言16日目・拡大7日目
▼朝刊
・朝日新聞
「休業要請32都道府県/8割超が支援策・9県 要請せず」
「米原油 初のマイナス価格/世界の景気悪化 深刻」
社会面「浸水想定 岩手だけ非公表/『不安与える』沿岸市長が要請」※M9超地震・津波想定
・毎日新聞
「人出8割減届かず/緊急事態2週間 解除に慎重論」
「岩手・北海道 津波30メートル級/日本・千島海溝地震『東日本』超えも」
社会面「巣鴨 閑散と混雑と/客9割減 商店休業できず 大手スーパー 家族で行列」
・読売新聞
「銀行間手数料 見直し/公取委、引き下げ要求 来年4月から」
「診療や手術 制限拡大/都内の全15特定病院 新型コロナ感染回避」
社会面「2週間 耐える日々/居酒屋『赤字覚悟で』 医師『マスク底つく』」
・日経新聞
「経済再開 3つの条件/感染拡大鈍化 検査拡充 医療体制」※米独
「コロナと世界『科学信じ「新常態」に備え』WHOシニアアドバイザー 進藤奈邦子氏」
社会面「混雑・罵声…『心折れそう』/スーパーやドラッグ 感染リスクも重圧に」
・産経新聞
「7都府県 感染疑い鈍る/緊急事態2週間 今後も警戒必要」
「『正恩氏 手術後に重体』/米報道、韓国政府は否定」
社会面「『親から子』感染増/出勤で外出、家庭内に拡大」
・東京新聞
「生活困窮 相談を/緊急事態宣言2週間 経済打撃」
「辺野古 国が設計変更申請/軟弱地盤 県は認めない方針」
社会面「『保健所経由の検査 限界』/診療所 24時間PCRで奮闘」

▼夕刊
・朝日新聞
「生活必需品 働き手疲弊/コンビニ店主「感染明日は我が身」
(NEWSダイジェスト「米、経済対策52兆円積み増し」)
社会面「フェースシールド 不足なら僕が作る/小6、3Dプリンターで自作 病院へ寄贈」
・毎日新聞
「感染覚悟 障害者ケア/福祉施設閉鎖 2週間 3職員に『託すしか』…」
(NEWS FLASH「NY原油続落 1バレル11ドル」など4本)
社会面「『病』は『のりこえろ』/五輪モチーフ 作品展延期に/難病の男性 創作文字に奮闘」
・読売新聞
「働く理由『使命感』/日系スーパー収入9割減 外出制限1か月」コロナ最前線@NY
「米4800億ドル追加経済対策/与野党合意 中小企業支援が柱」
社会面「『コロナうつ』解消のコツ/1日2時間日光浴・電話でおしゃべり」
・日経新聞
「抗体検査 NY市民の列/1日2000件 精度向上カギ」
「NY原油、6月物も急落/一時6ドル台 貯蔵余地 不安消えず」
社会面「感染者へ強まる偏見/『行動履歴を教えろ』抗議 『従業員も感染』デマ拡散」
・東京新聞
「悩む保育園/気づかずうつしたら・布団間隔2メートル困難」
「PCR検査センター開設/江戸川にドライブスルー方式」
社会面「野菜の通販 急増/店頭の混雑避け ネットで安心 福島の農園から首都圏へ」

 

相互不信、相互監視社会を危惧~パチンコ店の店名公表で気付いたこと ※追記 「中傷の電話相次ぎ」1店休業

 大阪府の休業要請を受け入れずに営業を続けたパチンコ店の店名公表の対応に関連して、一つ前の記事(「パチンコ店の店名公表と特措法の危うさ」)の補足です。
 法令違反の行為が認定された事業者の名前が、法令に基づいて官公庁や自治体から公表されることは珍しいことではありません。その情報は市民、住民が消費者として消費行動を決める際の判断材料になります。おかしな商法をしていることが明らかになれば、当然、消費者は利用を避けようとするでしょう。だから制裁としても実効性を持ちます。
 ひるがえって、新型コロナウイルスの特措法に基づくパチンコ店の店名公表です。パチンコに関心がない市民、住民にとっては、自身の行動を決める上では何の意味もない情報です。意味を持つのは、緊急事態宣言下でもパチンコをやるとの確固とした意思を持つ愛好者です。どこの店が営業しているかを知る有益な情報になってしまいました。

 では店名公表によって何が期待されるのでしょうか。つまるところは「皆がいろいろ我慢しているのに、けしからん」という感情が広くかき立てられることではないかと思います。しかし、それだけでは「休業=密集状態の解消」という目的にはつながりません。その感情を基に、営業を続ける店へ直接、間接に抗議が向かい、抗議に耐えきれずに店が休業すれば、制裁措置が機能して目的を達した、ということになります。あるいは抗議はパチンコ店の客へも向かい、その同調圧力に耐えかねて客がパチンコ店を行くのを見送れば、それも目的達成につながるかもしれません。
 この構図はパチンコ店に限ったことではないように思います。平時に「事業者名の公表」が機能しているので、特措法に同じような規定があること自体にわたし自身、あまり留意していませんでした。しかし緊急事態宣言下では、休業要請を受け入れずに営業を続ける施設の名前は、ほとんどの市民、住民にとって直接意味のある、役立つ情報ではありません。今思うのは、この施設名公表の措置は、社会で憎悪の感情をあおる機能しかないのではないか、ということです。仮にそれで「休業=密集状態の解消」という目的が達せられたとしても(目的が達せられないのならほとんど意味がない規定ですが)、社会で市民、住民同士の相互不信、相互監視が強まっていく「副作用」を危惧します。特措法が持つ危険性の一つだと思います。
 重要なのは「密集状態の解消」という目的の達成のはずです。大阪で店名を公表されたパチンコ店1店の運営会社は、休業しても救済措置がないことを訴えたと報じられています。まずは、営業を続けている個々の事情を丁寧に把握し、現実的な救済措置を探ることではないかと思います。どういう条件が整えば休業に入るのか。「私権の制限」という事の重大さに鑑みれば、手続きは丁寧に進めるべきです。

 「施設名公表」に実効性がないから、特措法に改正を加えて「営業停止」の強制力を備える、という発想もあるかもしれません。その場合でも厳密な手続きの規定と厳格な運用が必要だと考えていることは、前記事で触れた通りです。そもそも特措法には不備が少なからずあります。

※追記 2020年4月26日22時50分
 店名が公表された後の25日も営業していた大阪府枚方市のパチンコ店が26日、休業しました。読売新聞の記事によると、「店舗側は府に対し、『営業を続けていることに対し、誹謗中傷する電話が相次いだ』と説明したという」とのことです。

読売新聞オンライン「大阪府公表のパチンコ店、新たに1店舗休業『中傷の電話相次ぎ』」=2020年4月26日
 https://www.yomiuri.co.jp/national/20200426-OYT1T50123/