ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

「値上げしません」読売新聞が異例の社告~組織ジャーナリズムと商業主義の限界

日がたってしまいましたが、少なからず驚く出来事であり、記録と備忘の意味も兼ねて書きとめておきます。 読売新聞は3月25日(土曜日)付の朝刊1面と2面に、新聞の購読料を値上げしないとの社告を掲載しました。少なくとも1年間とのことです。手元で確…

「政治的公平」は番組全体で判断と総務省が確認~高市氏への忖度みられず

一つ前の記事の続きです。メディアで明快な報道が見当たらなかったのですが、放送法の「政治的公平」の解釈を巡って、総務省が重要な答弁を行っていました。政治的に公平かどうか、単独の番組の内容だけで判断することもある、との総務相当時の高市早苗氏の…

放送法「政治的公平」の新解釈 民意も疑問視が多数~高市氏「捏造」主張に「納得できない」62%(朝日新聞調査)

3月18日~19日の週末に実施された世論調査の結果が報じられました。放送法の「政治的公平」の解釈を巡る総務省の行政文書についても、いくつかの設問が含まれています。国会の審議を通じて、この文書が捏造でないことが総務省によって明らかにされた一…

備忘メモ:用紙代の値上げによる新聞社の負担増の規模感

会員制の月刊誌「選択」の3月号に「新聞界が絶望する紙価格『暴騰』~読売新聞が狙う業界再編『焦土作戦』」というタイトルの記事が掲載されています。新聞社は「新聞」という印刷物の商品を製造、販売しているメーカーの側面があります。用紙を始め原料価…

追悼 大江健三郎さん~平和、護憲、反核、脱原発の視点、視線を共有する

ノーベル文学賞を受賞した作家の大江健三郎さんが3月3日、死去されていたことが報じられました。享年88歳。わたしにとって大江さんは、作品になじんだ作家と言うよりは、平和、護憲、反核、脱原発など、同じ方向を見ていた同時代の羅針盤のような存在で…

行政文書の「記録」と高市元総務相の「記憶」~放送法の解釈レク「あった可能性高い」と総務省局長

このブログの以前の記事でも触れた放送法の「政治的公平」の解釈を巡る総務省の行政文書について、3月13日の参院予算委員会で、興味深いやり取りがありました。この文書が明らかになって以来、文書作成当時に総務相だった高市早苗氏は文書に記録された解…

焦土を軍服の天皇が視察、終戦までさらに5カ月~東京大空襲から78年の教訓

第2次世界大戦末期の1945年3月10日未明、東京の下町地区は米軍B29爆撃機の大編隊による空襲を受けました。大量の焼夷弾の投下で木造家屋の密集地帯は焼き尽くされ、一夜で10万人以上が犠牲になったとされます。以後、米軍は日本中の主要都市の…

放送法「政治的公平」の新解釈は、特定番組を念頭に置いた「表現の自由」への攻撃~総務省行政文書が「捏造」なら責任を問われるのは高市元総務相自身

放送の表現の自由の根幹を巡る総務省の内部文書が明らかになりました。 2015年5月12日の参議院総務委員会で、当時の高市早苗総務相が自民党議員の質問に答える形で、放送法が定める放送の政治的公平性について、「一つの番組でも、極端な場合は政治的…

「オフレコ取材」と「オフレコ破り」自体の報道が少ない~「約束は守るべき」の原則論だけで理解を得られるか

一つ前の記事の関連です。 荒井勝喜元首相秘書官の同性婚を巡る差別発言は、発言自体のひどさとは別に、マスメディアの政治報道の観点からは「オフレコ取材」のありようを考えさせる出来事でした。「オフレコ」とは「オフ・ザ・レコード」のこと。「記録にと…