ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

沖縄

沖縄のオスプレイ飛行再開、全国メディアに報道を要請~日本本土の主権者に当事者性

米軍オスプレイの飛行再開をめぐる重要なニュースがありました。以前の記事と合わせてお読みください。重要なことだと思い、別記事にしました。 沖縄県の玉城デニー知事は、米軍普天間飛行場の米海兵隊所属のオスプレイが飛行を再開した翌15日の定例会見で…

オスプレイ飛行再開、防衛相発言のグロテスクさ~「日米同盟の犠牲拒否する」(琉球新報)、「住民無視の暴走行為だ」(沖縄タイムス)

鹿児島県屋久島沖で昨年11月29日、米空軍横田基地(東京)所属の輸送機CV22オスプレイが墜落し、乗員8人が死亡しました。その後も沖縄の米海兵隊普天間飛行場所属のMV22オスプレイはしばらくの間、飛び続けていました。米軍が海兵隊、海軍の所…

「中立」の壁を越えるジャーナリズムへ~MBS「記者たち~多数になびく社会の中で~」(視聴を推奨します)

大阪市に本社を置く民放準キー局のMBS(毎日放送)は毎月1回、日曜深夜の0時50分から自局制作のドキュメンタリー番組「映像‘24」を放送しています。1980年4月に「映像‘80」で始まって以来、40年以上も続いており、質の高さで知られます。…

「沖縄の訴えを足蹴にするような暴挙」(琉球新報社説)~代執行訴訟、最高裁が上告不受理で終結

米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐり、軟弱地盤の改良工事の設計変更を承認するよう、日本政府が沖縄県の玉城デニー知事に求めた代執行訴訟で、最高裁第1小法廷は、玉城知事側の上告を受理しない決定をしたと報じられています。2月29日付と…

辺野古の工事強行 本質は「地域の自己決定権」~問題意識共有する地方紙の社説、論説

沖縄の米軍普天間飛行場の移設計画をめぐり、米映画監督のオリバー・ストーン氏らが辺野古の新基地建設に反対し、建設の中止を求める声明を1月6日に発表したとのニュースが目にとまりました。琉球新報の報道によると、声明には「沖縄の自己決定権、民主主…

辺野古工事強行 「乱暴で粗雑」(玉城知事)~東京発行の新聞各紙の報道は二分

沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題で、日本政府は1月10日、名護市辺野古沖の軟弱地盤の改良工事に着手しました。工事計画の変更に対する沖縄県知事の承認の権限を奪い、国土交通相による代執行を経ての着手強行です。沖縄県の玉城デニー知事は10日の記…

「法治をゆがめたのは政府と司法」(琉球新報)~辺野古代執行、沖縄の地元紙の社説

米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡り、軟弱地盤の改良工事の設計変更の承認の代執行を岸田文雄政権が強行したことに対し、沖縄の地元紙の琉球新報は12月26日付から29日付まで4日連続で社説で取り上げ、「歴史に刻まれる愚行だ」(29日付)と激しい…

辺野古移設で代執行「苦難の歴史に一層の苦難」(玉城沖縄県知事)~対話拒絶、「普天間の危険性除去」置き去り

暗澹たる気持ちの年の瀬です。 米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡り、斉藤鉄夫国土交通相は12月28日、辺野古沖の埋め立て工事の設計変更を沖縄県に代わって承認する代執行を行いました。これに先立つ代執行訴訟の12月20日の判決では、福岡高裁那覇支…

辺野古の代執行 自治の根幹揺るがす~普天間の危険性除去につながらない可能性も危惧、地方紙の社説、論説

沖縄の普天間飛行場移設を巡り、沖縄県の玉城デニー知事は12月25日、辺野古沖の軟弱地盤改良工事の設計変更を承認しないことを表明しました。代執行訴訟の判決で福岡高裁那覇支部は20日、承認するよう命じ、期限をこの日に指定していました。斉藤鉄夫…

「相互理解に向けて対話を重ね、抜本的解決が図られること」こそ結論ではないのか~辺野古設計変更、信を失った政権の下で代執行へ ※追記・地方自治法の規定

地域の住民の総意と言いうる民意を「公益」と認めず、国策の強行にお墨付きを与える司法判断が示されました。沖縄の米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡り、軟弱地盤改良工事の設計変更を玉城デニー沖縄県知事が承認しないことを不服として国が争い、代執行に…

軍事最優先の下で人命は軽視される~オスプレイ墜落と82年前の日本の戦争の底流に共通すること

昨年の春から2年間の予定で、東京近郊の大学で「文章作法」の講座の非常勤講師を務めています。いい文章を書くには、日ごろから社会とのかかわりを意識しておくことが大事だとアドバイスしており、その一助として授業では毎回、時々のニュースを1件取り上…

飛行停止、日本政府は明確に要求したのか~オスプレイ墜落から1週間余、ようやく米軍が決定  ※追記 “あいまい要請”官房長官も

一つ前の記事の続きです。米軍は12月6日、輸送機V22オスプレイ全機の飛行を停止することを発表しました。日本では翌7日午前中に報じられました。鹿児島県・屋久島沖に11月29日、東京・横田基地所属の米空軍CV22が墜落してから1週間以上も経…

危険は沖縄も東京も変わらない~オスプレイ墜落、焦点は配備撤回と日本の主権

開発段階からトラブル続きで安全性に疑念がある軍用機が、運用段階に入っても各地で墜落事故を起こし、とうとう日本国内でも墜落して死者が出た。日本中いつ、どこで市街地に墜落するか分からない。そんな事態ではないのか―。 11月29日午後、鹿児島県・…

「日本本土の国民に伝えたい」(琉球新報) 安全保障の負担は日本全体の問題~辺野古埋め立て・代執行と本土メディアの報道

米軍普天間飛行場の辺野古移設計画をめぐって先週来、重要な動きが続いています。 埋め立て予定地にマヨネーズ状とも指摘される軟弱地盤があるために、防衛省は当初の設計を変更せざるをえなくなりました。その変更の申請を沖縄県の玉城デニー知事が承認しな…

続・沖縄県知事はなぜ国連で訴えざるを得ないのか~「ゆがみ際立つ政府の反論」(信濃毎日)「日本の知事の資格疑う」(産経)

一つ前の記事の続きです。 沖縄県の玉城デニー知事が、国連欧州本部で開かれた人権理事会に出席し、基地負担の現状などを訴えたことに対し、日本本土の新聞では信濃毎日新聞と産経新聞が社説で取り上げているのが目に止まりました。 信濃毎日新聞の社説は9…

沖縄県知事はなぜ国連で訴えざるを得ないのか

沖縄県の玉城デニー知事が9月18日(日本時間19日未明)、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で開かれた人権理事会に出席し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設への反対などを訴えました。人権理事会で都道府県知事として初めて演説したのは同じ沖縄県…

沖縄の不条理から目をそらす最高裁~辺野古移設の根源的な疑問は解消していない

沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の移設をめぐり、沖縄県が日本政府を相手に、名護市辺野古沿岸部の埋め立て工法変更の手続きの適否を争った訴訟の上告審判決で、最高裁は9月4日、沖縄県の上告を棄却しました。辺野古移設で県と政府が争った13件の訴訟…

「問われているのは民主主義の在り方」(琉球新報)~処理汚染水放出 地方紙の社説、論説の記録

一つ前の記事の続きです。 東京電力福島第1原発で生じた汚染水を処理した水の海洋放出に対し、多くの地方紙も社説、論説で取り上げています。全国紙各紙と同様に、23日付に掲載した新聞が多いようです。放出の開始日が決まったのが8月22日だったことか…

実現されるべきは地域の「自己決定権」~処理水放出 「将来に禍根残す」(共同通信配信の論説)

東京電力は8月24日、福島第1原発の処理水の海洋への放出を始めました。破損した原子炉を冷却するために注入した水や、原子炉に流れ込んだ地下水、雨水は放射性物質に汚染されています。放射性物質を取り除く処理をし、除去できずに残っているトリチウム…

「政府の意図と県民の思いに大きな開き」(琉球新報社説)~沖縄戦から78年、軍拡の中で迎えた「慰霊の日」

第2次世界大戦末期の1945年6月23日、日米両軍の間で激しい地上戦がたたかわれた沖縄戦は、日本軍守備隊の司令官、参謀長の自死により、日本軍の組織的な戦闘が終結したとされます。沖縄県はこの日を「慰霊の日」と定めています。沖縄戦から78年の…

岸田軍拡と自衛隊組織の本質を深く広く洞察する地方紙~候補生が上官3人殺傷 各紙の社説

自衛官候補生が訓練中、小銃で上官を撃ち3人が殺傷された事件は、原因究明は当然のこととして、自衛隊という軍事組織の疲弊を疑い、これ以上の負荷を避けることが必要だと感じていることを、一つ前の記事に書きました。上官に銃口を向けることは、指示命令…

辺野古新基地への抗議行動に防衛局職員が暴言~市民に向けられる敵意への危惧

沖縄県名護市辺野古の新基地建設への抗議運動を巡って、看過できない出来事が報じられているのが目にとまりました。少し時間が経っていますが、書きとめておきます。 最初に報じたのは6月7日付の琉球新報です。 ◎防衛局職員 市民に暴言/本部塩川 新基地抗…

沖縄復帰「51」年と「50」年の報道量の落差は何を意味するか~変わらない「『基地なき島』遠く」の見出し

ことし5月15日で沖縄の施政権返還、日本復帰から51年でした。15日当日は新聞休刊日のため、沖縄の地元紙2紙(沖縄タイムス、琉球新報)のほかには、新聞発行がありませんでした。休刊日明けの16日付朝刊で、東京発行の各紙が「復帰51年」をどの…

要塞化が進む中での復帰51年~「平和こそ島んちゅぬ宝」(沖縄タイムス) 「原点は『基地のない島』」(琉球新報)

1972年5月15日、沖縄の施政権が米国から返還されました。ことしはそれから51年です。 例年、日本本土の新聞も15日付朝刊には、沖縄の基地の現状などに焦点を当てた記事を掲載します。ことしの5月15日は新聞休刊日で、本土の新聞では朝刊の発行…

「地域」に立脚した確固とした視点~ブロック紙・地方紙39紙の年頭の社説、論説を読む

非常勤講師を務める大学で先日、今年最初の授業がありました。手元にあった東京発行の新聞各紙の元日付け紙面を教室に持ち込み、それぞれの特徴などを解説しました。ロシアのウクライナ侵攻が続く中での新年であり、各紙の紙面を通じたキーワードが「戦争」…

那覇市長選の本土メディアの報道に危惧~自公系勝利は辺野古移設容認ではない

沖縄県の県庁所在地、那覇市の市長選が10月23日に行われ、国政与党の自民、公明両党が推薦した前副市長の知念覚氏が、玉城デニー知事が支持する元県議の翁長雄治氏を破って初当選しました。この選挙結果を伝えた日本本土のマスメディアの報道ぶりに危惧…

沖縄の苛烈な戦後史を知る~「ドキュメント〈アメリカ世〉の沖縄」(宮城修、岩波新書)

ことし、2022年は、1972年5月に沖縄の施政権が米国から日本に返還されて50年の節目の年です。現在、日本にある米軍専用施設の70%が沖縄に集中し、米軍普天間飛行場の移設問題では、名護市辺野古沿岸部の埋め立てと新基地建設を巡って、沖縄県…

日本政府に重なるキャラウェイ「沖縄の自治は神話」発言~玉城知事大差で再選の意味 ※改題しました

沖縄の日本復帰から50年のことし、沖縄県知事選の投開票が9月11日に行われ、玉城デニー氏が再選されました。この選挙結果が持つ意味は、玉城氏が訴えた米軍普天間飛行場の辺野古移設反対が、今も変わらない沖縄の民意として示されたことにとどまらない…

「『ノーモア戦争』の声を」(沖縄タイムス)、「『前夜』を拒絶する日に」(琉球新報)~沖縄慰霊の日の地元紙社説

参院選公示の翌日、6月23日は沖縄の慰霊の日でした。第二次世界大戦末期の沖縄戦で、日本軍の組織的戦闘が終わったとされる日です。ロシアによるウクライナ侵攻のさなか、23日付の沖縄タイムス、琉球新報の社説は、新たな戦争への危惧と、歴史から学ぼ…

参院選の争点は「物価高」「安保」「改憲」、根底で問われるのは「非戦の国是」

参議院議員選挙が6月22日、公示されました。 折しも、2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻は終わりが見えず、ロシアへの経済制裁は原油の高騰、物価高となって日本の社会にも跳ね返ってきています。ロシアは日本の隣国でもあり、不安を感じる人は…