ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

表現の自由

五輪組織委「報道の自由への威圧だ」(信濃毎日新聞)、「市民に顔向けて仕事を」(朝日新聞)~ことは週刊文春だけの問題ではない

一つ前の記事の続きです。 週刊文春が東京五輪パラリンピック組織委員会の内部資料を入手して報じた記事に対し、組織委が業務妨害や著作権侵害を主張して、4月1日発売号の回収やネット記事の削除を求めました。一つ前のわたしの記事では、著作権侵害との主…

東京五輪組織委が「著作権の侵害」を主張することへの違和感~著作権法は、場合によっては著作者の権利を制限し、公共性の高い情報が社会に流通することを担保しようとしている

4月1日発売の週刊文春が、「森・菅・小池の五輪開会式“口利きリスト”」とのタイトルの記事を掲載し、この中で週刊文春側が東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の内部資料を入手したとして、その内容を報じていることに対し、組織委員会が文芸春秋に抗…

新型コロナ特措法は厳格に運用されているか~「緊急事態宣言 全国拡大」の手続きに感じること

新型コロナウイルスに対応する特別措置法に基づく緊急事態宣言は、私権の制限が可能な「劇物」です。その手続きは、法に基づいて厳格に進められなければならないはずです。安倍晋三首相は4月16日、緊急事態宣言を、それまでの7都府県(東京、千葉、埼玉…

「緊急事態宣言下での市民の『知る権利』を守るために」「『新型コロナ』を理由にした批評の封殺に抗議する」 新聞労連が声明

新聞労連(日本新聞労働組合連合)が4月7日、新型コロナウイルスの感染拡大に関連して2件の声明を発表しました。新インフルエンザ特措法に基づく緊急事態宣言が発せられている中で、いずれも「知る権利」と「表現の自由」、あるいは「報道の自由」の観点…

残る報道規制への危惧~特措法を安倍政権が運用 新型コロナウイルス対策

新型コロナウイルスへの対策として安倍晋三政権が国会に提出した新型インフルエンザ等特措法改正案が3月13日、国会で可決されました。このブログの一つ前の記事で触れたように、ひとたび緊急事態宣言が発せられれば、国民の私権が制限され、また「表現の…

「表現の自由を理解しない公権力に、自由を制約するための強力な道具を与えることは、あまりに危険」~新型コロナウイルス 特措法への危惧

新型コロナウイルスへの対策として安倍晋三政権は3月10日、新型インフルエンザ等特措法の改正案を閣議決定し、国会に提出しました。13日に成立の見通しと報じられていますが、緊急事態宣言が発せられた場合には国民の私権が制限され、また「表現の自由…

「大本営発表」報道の今日的教訓~東京大空襲から75年

第2次世界大戦末期の1945年3月10日未明、東京の下町一帯は米軍B29爆撃機の大編隊による空襲を受け、一夜で10万人以上が犠牲になりました。東京大空襲からことしは75年です。このブログでは毎年この日は、努めて何かを書きとめるようにしてい…

MICが声明「『公益性』を追加した助成金ルールの撤回を求める」

新聞労連や民放労連、出版労連などメディアや文化関連の産業別労働組合でつくる「日本マスコミ文化情報労組会議」(略称・MIC)が10月28日、声明「『公益性』を追加した助成金ルールの撤回を求める」を発表しました。 「公益性」を追加した助成金ルール…

「展示再開」も論点に~「表現の不自由展」中止 新聞各紙の社説・論説の記録 ※追記:実行委対応にも疑問提示 追記2:読売新聞「主催する側にも甘さがあった」

「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が中止になった問題に対して、いくつかの新聞が社説・論説で取り上げています。ネット上のサイトで確認できたものを記録しておきます。 企画展の中止が発表されたのは8月3日でした。わ…

「表現の不自由展・その後」中止、情報量に開き~続・在京紙の報道の記録

一つ前の記事の続きです。「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が中止になった問題です。 トリエンナーレの実行委員会会長である大村秀章・愛知県知事は8月5日の記者会見で、あらためて「表現の不自由展・その後」の中止に…

扱いが分かれた「表現の不自由展・その後」の中止~在京紙の報道の記録 付記・MIC声明「『表現の不自由展』が続けられる社会を取り戻そう」

名古屋市など愛知県で8月1日に始まった芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の中の企画展「表現の不自由展・その後」の中止が3日、発表されました。この企画展には韓国の彫刻家が制作した慰安婦を象徴した「平和の少女像」が出展されており、2日に視…

安倍首相演説にヤジの市民排除 警察に忖度はなかったか~新聞各紙の社説

7月21日に投開票が行われた参院選では、札幌市で安倍晋三首相の街頭演説中に「安倍辞めろ」などと大きな声を上げた市民が警察官に強制的にその場から排除されたり、年金問題への疑問を書いたプラカードを掲げようとした市民がやはり警察官に阻止されたり…

「自公過半数」「改憲勢力2/3割れ」参院選結果、在京紙報道の記録~付記 軽視できない街頭演説からの市民強制排除

第25回参院選は7月21日投開票が行われました。自公の与党が改選過半数を占めたほか、自民、公明に日本維新の会など改憲に前向きな「改憲勢力」は、改憲の発議に必要な参院全体の議席の3分の2を割り込みました。東京発行の新聞6紙(朝日、毎日、読売…

「不偏不党」と「ペンか、パンか」~故原寿雄さんが問うた組織ジャーナリズムの命題

一つ前の記事「『不偏不党』の由来と歴史を考える~読書:『戦後日本ジャーナリズムの思想』(根津朝彦 東京大学出版会)」を読み返しながら考えたことを書きとめておきます。組織ジャーナリズムと「ペンか、パンか」の命題のことです。 「ペンは剣よりも強…

「不偏不党」の由来と歴史を考える~読書:「戦後日本ジャーナリズムの思想」(根津朝彦 東京大学出版会)

著者の根津朝彦さんは立命館大産業社会学部メディア社会専攻の准教授。戦後ジャーナリズム史の研究者であり、本書は学術専門書です。しかし、というか、であるからこそ、と言うべきか、新聞や放送のマスメディア企業の中に身を置く記者、デスク、編集幹部か…

官邸前で記者と市民が抗議/「記者会と協力」政権が強調~記者会見の質問制限5

菅義偉官房長官の記者会見をめぐる東京新聞記者の質問制限問題で、最近の二つの動きを書きとめておきます。 ▼首相官邸前の抗議集会に600人超 新聞労連や民放労連、出版労連などマスメディアや文化情報産業関連の9産業別労組でつくる日本マスコミ文化情報…

日本ペンクラブが声明~記者会見の質問制限4

菅義偉官房長官の記者会見での東京新聞記者の質問制限問題で、日本ペンクラブが3月1日に声明を発表しました。 日本ペンクラブ声明 「首相官邸記者会見の質問制限と回答拒否問題について」 – 日本ペンクラブ ※日本ペンクラブ http://japanpen.or.jp/ 直接は…

東京新聞が「検証と見解」を掲載~記者会見の質問制限3 ※追記あり 「追記3」まで更新

首相官邸が記者会見での東京新聞記者の質問を巡り、事実上、質問を制限するような内容の申し入れを記者クラブに行った問題で、東京新聞が2月20日付の朝刊に、紙面1ページを丸ごと使った「検証と見解」を掲載しました。 首相官邸の上村秀紀報道室長が昨年…

新聞労連が声明発表 「CNN記者の早期復帰を求める―CNNやホワイトハウス記者協会と連帯する― 」

新聞労連が11月14日、声明「CNN記者の早期復帰を求める―CNNやホワイトハウス記者協会と連帯する― 」を発表しました。 「今回のホワイトハウスでの出来事は、日本で働く私たちにとっても他人事ではありません」ーその通りだと思います。 「今こそ私…

5千人が参列した「新聞の葬式」~自由民権運動の高知で

明治15(1882)年、高知市で「新聞の葬式」がありました。明治維新後、憲法制定や議会開設など国民の政治参加を求めた自由民権運動の中で、民権派の「高知新聞」が同年7月14日、政府から発行禁止処分の弾圧を受けます。既に5回の発行停止処分を受…

辺野古ゲート前に新たな柵、「表現の自由を保障せよ」(琉球新報社説)

沖縄県名護市辺野古では、米軍普天間飛行場の移設先となる新基地の建設を日本政府が進めています。工事車両は辺野古の米軍キャンプ・シュワブを出入りします。工事車両用ゲート前では連日、新基地建設に抗議する市民らが工事車両の進入を妨げようと座り込み…

「暴言3佐、懲戒せず」に抱く危惧

防衛省の統合幕僚幹部に所属する3等空佐が4月16日夜、東京・永田町の参院議員会館付近で小西洋之参院議員に暴言を吐いた問題で、防衛省が5月8日、最終報告を公表し、3佐を訓戒としたことを明らかにしました。訓戒は内規に基づく措置で、自衛隊法が定…

東京都迷惑防止条例改正に残る懸念~マスメディアにも当事者性

東京都に「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」という条例があります。耳慣れない名前ですが「東京都迷惑防止条例」の方が通りがいいようです。新聞などマスメディアの報道でも、こちらが一般的なようです。その迷惑防止条例の改…

3月10日「東京大空襲」の再現紙面~伏せられていた被害の実相

3月10日は第2次世界大戦末期の1945年、東京の下町地域が未明に米軍のB29爆撃機の大空襲を受け、一夜で10万人以上が犠牲になったとされる東京大空襲から73年の日でした。戦争体験の風化の指摘も目にする中で、東京発行の新聞各紙がどのように…

追悼 原寿雄さん~市民と足並みをそろえるジャーナリズムへ

悲しい知らせに接しました。元共同通信編集主幹のジャーナリスト、原寿雄さんが11月30日、死去されました。92歳でした。以下は共同通信の新聞用の配信記事です。 「デスク日記」や「ジャーナリズムの思想」の著者で、報道の在り方を問い続けた元共同通…

危機の実相に報道は見合っているか~「ミサイル再び日本越え」は有事ではないし、災害と同列ではない

北朝鮮が9月15日朝、平壌から弾道ミサイル1発を発射しました。前回の8月29日に続いて、北海道の上を飛び太平洋に落下。飛行距離は前回より1000キロ伸びて約3700キロ、最高高度も前回の約550キロに対し今回は約800キロだったと伝えられ…

マスメディアに「準有事」の自覚あるか~北朝鮮ミサイル報道巡るいくつかの懸念

北朝鮮が8月29日早朝、弾道ミサイル1発を発射しました。 備忘として書きとめておくと、午前5時58分に発射され、北海道・襟裳岬付近の上を高度約550キロで通過して、襟裳岬の東約1180キロの太平洋上に午前6時12分に落下したと伝えられていま…

黙らない、語り続けることができる社会のために~「共謀罪」施行の朝に

犯罪の実行ではなく計画段階で処罰の対象とする「共謀罪」の趣旨を含んだ改正組織犯罪処罰法が7月11日午前零時、施行されました。とうとう「共謀罪」がわたしたちの社会に導入されました。 振り返ってみると、「共謀罪」に対しては、マスメディア、中でも…

朝日阪神支局事件から30年〜「反日朝日は五十年前にかえれ」の1937年と今日

ここ数年、毎年のように書いていることですが、5月3日は憲法記念日であるのと同時に1987年、兵庫県西宮市の朝日新聞阪神支局が襲撃された日です。事件では小尻知博記者=当時29歳=が殺害され、記者1人が重傷を負いました。今年は30年の節目にな…

立法の必要性に具体例の説明なく、理解も不十分な「共謀罪」―世論調査は逆転、「反対」が「賛成」上回る

過去3回廃案になった共謀罪の構成要件を変えた組織犯罪処罰法改正案が21日、閣議決定され国会に提出されました。政府は2020年東京五輪を前にテロ防止のために必要と強調し、呼び方も「テロ等準備罪」と変えています。菅義偉官房長官は21日の閣議決…