ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

沖縄の不条理から目をそらす最高裁~辺野古移設の根源的な疑問は解消していない

沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の移設をめぐり、沖縄県が日本政府を相手に、名護市辺野古沿岸部の埋め立て工法変更の手続きの適否を争った訴訟の上告審判決で、最高裁は9月4日、沖縄県の上告を棄却しました。辺野古移設で県と政府が争った13件の訴訟…

「壁」を突破したストライキの意義~そごう・西武売却と権利としての労働組合

「そごう」「西武」の二つの百貨店を運営する株式会社「そごう・西武」の米投資ファンドへの売却を巡り、従業員の雇用継続に危惧を持つ「そごう・西武労働組合」が8月31日、基幹店の東京・西武池袋本店でストライキを決行しました。会社側は急きょ、同店…

「問われているのは民主主義の在り方」(琉球新報)~処理汚染水放出 地方紙の社説、論説の記録

一つ前の記事の続きです。 東京電力福島第1原発で生じた汚染水を処理した水の海洋放出に対し、多くの地方紙も社説、論説で取り上げています。全国紙各紙と同様に、23日付に掲載した新聞が多いようです。放出の開始日が決まったのが8月22日だったことか…

実現されるべきは地域の「自己決定権」~処理水放出 「将来に禍根残す」(共同通信配信の論説)

東京電力は8月24日、福島第1原発の処理水の海洋への放出を始めました。破損した原子炉を冷却するために注入した水や、原子炉に流れ込んだ地下水、雨水は放射性物質に汚染されています。放射性物質を取り除く処理をし、除去できずに残っているトリチウム…

敗戦から78年に感じる節目と危惧~新聞は戦争の教訓の当事者 ※8・15社説・論説の記録

1945年8月の日本の敗戦から78年がたちました。70年、80年、あるいは100年といった切りの良さという意味では、節目ではありません。しかし、時間の比較の軸を少しずらして眺めてみると、日本の現代史の中で極めて大きな節目の時期を過ごしてい…

軍需工場やインフラへのすさまじい攻撃~旧日立航空機変電所とJR高尾駅の銃撃痕

78年前の1945年8月、アジア全域でおびただしい犠牲を出した果てに、日本の敗戦で第二次世界大戦は終結しました。戦争の末期は日本国内で生活の場が戦場と化しました。米軍のB29爆撃機による主要都市への無差別爆撃、沖縄の地上戦、広島と長崎への…

「核抑止」を否定する新聞、肯定する新聞~G7後の広島原爆の日 「被爆国の新聞」の報道の記録

1945年8月6日に広島に原爆が投下されてから78年。広島市のことしの平和記念式典では、「核抑止論」が焦点になりました。松井一実市長は「平和宣言」で、核抑止論が破綻していることを直視するよう各国の指導者に対し求め、為政者に核抑止論から脱却…

この夏 「現場」のススメ~関東大震災100年、敗戦から78年、 私家版 史跡ガイド

東京近郊の大学で昨年春から週に1回、非常勤講師として「文章作法」の講座を受け持っています。本年度前期の授業が先日、無事に終了しました。履修生たちの文章力はそれぞれに上がっており、講師としてうれしい限りです。 前期は作文の指導が中心でした。自…

旧統一教会と自民党 関係解明を求める地方紙~安倍元首相銃撃から1年の社説、論説

安倍晋三元首相が奈良市で参院選の応援演説中に撃たれ、死亡してから7月8日で1年がたちました。8日前後に東京発行の新聞各紙がどのような報道を展開したかを、このブログの以前の記事に書きとめました。続いて、地方紙が1年の節目をどのようにとらえて…

【メモ】産経新聞も8月から500円値上げ~全国紙5紙の動き出そろう

産経新聞社は7月12日付の産経新聞紙面に、月ぎめ購読料改定の社告を掲載しました。朝刊のみ発行の東京本社では、8月1日から現行の3400円が500円値上がりして3900円になります。大阪本社の朝刊、夕刊のセット価格も同じく500円上がり、4…

安倍元首相と「安倍政治」の評価に差異~銃撃、殺害から1年、在京各紙の報道の記録

安倍晋三元首相が奈良市で参院選の応援演説中に撃たれ、死亡したのは昨年、2022年の7月8日でした。選挙演説の安全の確保と要人警護のありよう、旧統一教会と政治、中でも自民党との関係、教団の詐欺的商法や「宗教2世」の救済、国葬のありよう、そし…

夏に処刑された二・二六事件の反乱将校たち~渋谷のビル街にたたずむ慰霊像

87年前の1936(昭和11)年2月26日、陸軍の若手将校らがクーデターを企図して約1500人の下士官、兵を率いて決起し、高橋是清蔵相、斎藤実内大臣、陸軍の渡辺錠太郎・教育総監らを殺害し、永田町や霞ヶ関などの一帯を占拠しました。しかし4日…

海員組合の前組合長 6億円未申告の際立つ悪質さ~外国人船員のための基金流用、フィリピンでリベート

日本では労働組合の形態は、企業別に組織され、その企業の従業員をメンバーとしているのが一般的です。産業ごとに組織される「産業別労働組合」(産別)も、そうした企業内労組(単組)の連合体の形態が主流です。連合(日本労働組合総連合会)は、そうした…

「政府の意図と県民の思いに大きな開き」(琉球新報社説)~沖縄戦から78年、軍拡の中で迎えた「慰霊の日」

第2次世界大戦末期の1945年6月23日、日米両軍の間で激しい地上戦がたたかわれた沖縄戦は、日本軍守備隊の司令官、参謀長の自死により、日本軍の組織的な戦闘が終結したとされます。沖縄県はこの日を「慰霊の日」と定めています。沖縄戦から78年の…

「ジェンダーギャップ報告」の報道に大きな差異

世界経済フォーラム(WEF)6月21日、各国の男女平等度を順位付けした「男女格差(ジェンダーギャップ)報告」を公表しました。日本は対象146カ国のうち125位。2019年公表時の121位を下回り、過去最低とのことです。先進7カ国(G7)で…

岸田軍拡と自衛隊組織の本質を深く広く洞察する地方紙~候補生が上官3人殺傷 各紙の社説

自衛官候補生が訓練中、小銃で上官を撃ち3人が殺傷された事件は、原因究明は当然のこととして、自衛隊という軍事組織の疲弊を疑い、これ以上の負荷を避けることが必要だと感じていることを、一つ前の記事に書きました。上官に銃口を向けることは、指示命令…

この自衛隊の現状で軍拡を進めるのは危うい~候補生が上官銃撃2人死亡 在京紙の報道の記録

一つ前の記事で、日本の軍事組織の危うさについて書いたばかりでした。その直後、考えもしなかった惨事が起きました。 岐阜市にある陸上自衛隊の射撃場で6月14日午前、実弾を使った射撃訓練に来ていた18歳の自衛官候補生の男性が、射撃の指導を担当する…

辺野古新基地への抗議行動に防衛局職員が暴言~市民に向けられる敵意への危惧

沖縄県名護市辺野古の新基地建設への抗議運動を巡って、看過できない出来事が報じられているのが目にとまりました。少し時間が経っていますが、書きとめておきます。 最初に報じたのは6月7日付の琉球新報です。 ◎防衛局職員 市民に暴言/本部塩川 新基地抗…

日経新聞は600円値上げで月5500円に~「世界で最も信頼されるメディア」を強調 ※追記:朝日新聞メディア指標

日経新聞が6月9日付の朝刊に掲載した社告で、7月1日から購読料を値上げすることを公表しました。朝刊夕刊のセットでは、現在の月ぎめ4900円が5500円と600円の値上げになります。朝刊のみでは、4000円から4800円と800円の値上げで…

ガーシー元参院議員逮捕の報道の記録~目立つ警察捜査の詳報 ※追記「ドバイ発・ガーシー逮捕の一部始終」

一つ前の記事と関連する内容ですが、別の記事にします。ガーシー(本名・東谷義和)元参院議員が6月4日、成田空港着の航空機で帰国し、警視庁に逮捕状を執行されたことを、5日付の東京発行の新聞各紙がどのように報じたか、その記録です。 本記を1面に掲…

ガーシー元議員を巡る情報の公益性とボツ原稿の扱い~新聞記者の働き方と著作権 その3

動画投稿サイトで芸能人らを脅迫したとして、警視庁が、暴力行為法違反(常習的脅迫)などの疑いで逮捕状を取り、国際手配していたガーシー(本名・東谷義和)元参院議員が6月4日、成田空港着の航空機で帰国し、警視庁に逮捕状を執行されました。 アラブ首…

「殺傷武器の供与」「負傷兵受け入れ」「軍拡」へ疑問投げ掛ける地方紙

このブログの以前の記事でも触れた通り、5月に広島市で行われたG7サミットは、ロシアの侵攻を受けているウクライナのゼレンスキー大統領が広島を訪問し対面で討議に参加したこともあって、準軍事同盟の色彩が強まったと感じています。議長国の日本が、G…

「週刊朝日」休刊の口惜しさ、やるせなさ 追記・吉永小百合さんの怒り

「週刊朝日」が5月30日発売号で休刊になりました。朝、新聞の広告に「週刊朝日は今号をもって休刊します」と書いてあるのを見て、「ああ、そうだったな」と思い出しました。 その広告ですが、「休刊します」の後に「またね!」と入っています。これで終わ…

米軍基地、NATOへの接近、負傷兵受け入れ、原爆投下の責任と謝罪~広島G7サミット報道の追記

非常勤講師を務めている大学の授業で先日、広島市で開催されたG7サミットを巡る新聞各紙の報道について話をしました。一貫して「核廃絶」を焦点に報じた地元紙の中国新聞から、ウクライナ支援の強化などを通じてG7の結束の固さを証明していくべきだとして…

沖縄復帰「51」年と「50」年の報道量の落差は何を意味するか~変わらない「『基地なき島』遠く」の見出し

ことし5月15日で沖縄の施政権返還、日本復帰から51年でした。15日当日は新聞休刊日のため、沖縄の地元紙2紙(沖縄タイムス、琉球新報)のほかには、新聞発行がありませんでした。休刊日明けの16日付朝刊で、東京発行の各紙が「復帰51年」をどの…

津波で100人が犠牲になった40年前の「日本海中部地震」~新人記者の記憶と災害報道の役割

40年前の1983(昭和58)年5月26日午前11時59分、秋田県沖の日本海を震源とするマグニチュード7.7の地震が発生しました。秋田県と青森県で震度5を観測。直後から日本海岸に津波が押し寄せました。気象庁の記録によると104人が犠牲にな…

「唯一の被爆国のメディア」が記録に残すべき広島サミットの「意義」~「声明からは体温や脈拍を感じなかった」(サーロー節子さん)

広島市で開催されていたG7サミット(主要7カ国首脳会議)は5月21日、閉幕しました。翌22日付の東京発行新聞各紙の朝刊は、そろって1面で大きく扱いました。それぞれの1面トップの記事の見出しを書きとめておきます。 【朝日新聞】「『戦争なくさね…

「抑止論肯定は許されない」「『広島ビジョン』と言えるのか」(中国新聞)~被爆地のサミット開催の意義を問う地元紙

G7広島サミットをめぐる日本メディアの報道についての続きです。 5月19日に発表された「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」(「広島ビジョン」)が、米英仏3カ国が保有する核兵器について、事実上、抑止力として有用であることを認め正当化したこと…

「唯一の被爆国のメディア」の報道が問われる~核抑止を正当化したG7「広島ビジョン」

G7サミット(主要7カ国首脳会議)が広島市で5月19日、開幕しました。被爆地での開催であり、核兵器廃絶に向けて具体的な前進が見られるかどうか、人類史的な意義が問われます。19日には広島市を選挙区にしている岸田文雄首相が、各国の首脳を案内する…

要塞化が進む中での復帰51年~「平和こそ島んちゅぬ宝」(沖縄タイムス) 「原点は『基地のない島』」(琉球新報)

1972年5月15日、沖縄の施政権が米国から返還されました。ことしはそれから51年です。 例年、日本本土の新聞も15日付朝刊には、沖縄の基地の現状などに焦点を当てた記事を掲載します。ことしの5月15日は新聞休刊日で、本土の新聞では朝刊の発行…