ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

復帰37年、沖縄の基地と日本国民の総意

 日付が変わって3日遅れのエントリーになりましたが、5月15日は37年前の1972年に沖縄が日本に復帰した日でした。沖縄で今年で32回目を数える「平和大行進」のニュースが伝えられています。

※沖縄復帰37年で「平和行進」 「基地のない島」求め2千人参加(47news=共同通信
http://www.47news.jp/CN/200905/CN2009051501000304.html

 行進は17日まで3日間。地元紙の琉球新報沖縄タイムスは初日だけではなく、行進2日目の様子もていねいに伝えています。

※1400人「基地ない沖縄を」 平和行進スタート(琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-144593-storytopic-1.html
※「新基地造らせないぞ」 5.15平和行進、きょう県民大会(琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-144631-storytopic-1.html

※基地強化に抗議の拳  平和行進あすまで(沖縄タイムス
http://www.okinawatimes.co.jp/news/2009-05-16-M_1-001-1_002.html
※不戦の誓い新たに 「基地のない沖縄」訴え/5・15平和行進に2500人(沖縄タイムス
http://www.okinawatimes.co.jp/news/2009-05-17-M_1-023-1_001.html

 共同通信の記事は一例ですが、県外メディアが「本土復帰」と呼ぶのに対し、地元紙が「日本復帰」としたり単に「復帰の日」としていることに、県外メディアは注意を払っていいのではないかと思います。 
 新聞労連委員長だった3年前の2006年、この平和大行進に1日だけでしたが沖縄のマスメディア労組の方々と一緒に参加しました。当時のブログにリポートや感想を書いています。

※沖縄で歩き考えた「戦争と平和」(ニュース・ワーカー)
http://newsworker.exblog.jp/3913147/

 新聞労連委員長時代、何度も沖縄を訪ねました。沖縄と日本の関係史、住民被害を生んだ沖縄戦、戦後の米軍基地の存在と基地被害など、それまでも沖縄のことは知識として一通りは知っていたつもりでした。しかし現場を見たり、集会やデモに参加したりして、いかに自分の知らないことが多いかがよく分かりました。地元紙労組の方から「沖縄は何度来ても、そのたびに新しい発見がありますよ」と言われましたが、その通りでした。
 東京に沖縄タイムス論説委員の方を招いて学習会を開いたこともありました。「沖縄には憲法がない」という言葉が印象に残っています。憲法が国民に保障している数々の権利が、米軍基地があるための日米地位協定や特別法によって制限されている、という内容の話でした。「県民の総意として9条がある憲法の元への復帰を選び取ったはずだった」との言葉もありました。
 沖縄に米軍基地があるのは日本の国家政策のためです。政権交代論議されても、この国家政策に別の選択肢が具体的に提示されている訳ではありません。政府や政策を批判するのはたやすいことですが、別の選択肢をどうやって用意していけばいいのか。沖縄を繰り返し訪ね、そのことを考えるうちに、例えば「本土」なのか「日本」なのか、用語の違いにも意味を感じるようになりました。沖縄で起きていること、とりわけ基地があるために起きていることは、沖縄という地域に意義が限定される問題ではない、とも考えるようになりました。
 沖縄の基地をどうするかを考えることは、日本という国家の政策をどう考えるかということです。米軍基地に対する別の選択肢が出てこないのは、日本国民の総意として基地を現状のままにしておくことを国家政策として選び取っているから、と見ることもできます。民主主義の多数決原理とはそういうことではないでしょうか。主権者たる国民の一人として、国家政策に反対することとは別の問題だと思います。
 沖縄の米軍基地に疑問を感じるなら、別の選択肢を形にしていくための最初の一歩は、日本国民の一人として自身の身の回りでできることは何かを考えてみることだと思います。沖縄で今何が起きているかが沖縄以外の地域に住む人々に知られることが必要ですし、沖縄県外のマスメディアが負うべき役割は大きいと思います。

※旧ブログではしばしば沖縄のことを書いていました。現在は考え方が変わった部分もないわけではありませんが、わたし個人の考察の記録として、今もそのまま残しています。
 ニュース・ワーカー カテゴリー「平和・憲法〜沖縄」
 http://newsworker.exblog.jp/i13/

【追記】2009年5月18日23時10分
 平和行進最終日の17日に、宜野湾市で開かれた締めくくりの県民大会の様子も地元2紙はていねいに伝えています。
※基地なき未来願い/5・15行進 県民大会/3500人、平和実現訴え(沖縄タイムス
http://www.okinawatimes.co.jp/news/2009-05-18-M_1-001-1_001.html
※5・15県民大会 「基地の島、脱却を」3500人が思いひとつに(琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-144688-storytopic-1.html
 琉球新報が紹介している参加者の声を引用します。

 10回目の参加という川畑ひとみさん(28)=沖縄市、会社員=は「全国からの参加者に感動した。基地があるからこそ、起こる事件や事故がある。全国の人に、もっと知ってほしい」と話した。