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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

「落としどころ報道」「発表ジャーナリズム」をどう超えるのか〜憲法メディアフォーラムのシンポ報告アップ

 新聞労連民放労連出版労連などマスメディア産業関連の産別労組9団体でつくる日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)と日本ジャーナリスト会議(JCJ)が共同で運営しているwebサイト「憲法メディアフォーラム」の開設4周年を記念して、5月9日に開かれたシンポジウム「自衛隊・米軍報道を検証する」の詳報が、憲法メディアフォーラムにアップされました。
 東京新聞編集委員の半田滋さんの講演や、フリージャーナリスト三宅勝久さん、琉球新報記者の松元剛さんが加わったパネルディスカッションの詳しいやり取りが、サイトのトップページからそれぞれPDFファイルでダウンロードできます。

憲法メディアフォーラム
http://www.kenpou-media.jp/

自衛隊・米軍報道を検証する」
▽講演
ソマリア沖の海賊対策」─繰り返される海上自衛隊の「駆けつけ警護」
東京新聞編集委員 半田 滋氏
▽特別報告
憲法を凌駕する安保 日米軍事融合をどう報じるか」
−沖縄からの報告−
琉球新報記者 松元剛氏
▽パネルディスカッション
東京新聞編集委員 半田 滋氏
琉球新報記者   松元 剛氏
ジャーナリスト  三宅勝久
<コーディネーター>
MIC議長・新聞労連委員長 豊 秀一氏

 それぞれに現場で自衛隊や米軍の取材を続けてきた半田さん、松元さん、三宅さんの3人が共通して指摘しているのが、マスメディアの事実を検証する力が、今や弱くなっていることです。
 例えば半田さんは、ソマリア沖の海賊対策として海上自衛隊護衛艦が派遣されたことに関連して、事前の政府の説明と違って実際に護衛を受ける船舶が非常に少ないことを指摘し、こう話しています。

 もう一つは、報道姿勢の誤り。「明日逮捕へ」とか「近く強制捜査へ」といった前打ち原稿の取材に、かなりの労力が割かれていることが多いんですが、いちばん大事なのは、そういう報道ではありません。
 ソマリア沖への(海自護衛艦の)派遣でも、本当に政府に説明したとおりの活動が行われているのかという、事実を検証する取材には人員を割かない。待っていれば発表される記事を書くために労力が割かれ、決まってしまったら、読者や視聴者の関心は次に移っているはずだと思い込み、事実の検証を怠る。その結果、国民には実態が知らされないままになる。これが連鎖しているわけですね。

 「読者や視聴者の関心は次に移っているはずだと思い込み」の部分は、必ずしも「思い込み」ではないと思うのですが、しかし事実の検証ができていないとの指摘は、その通りだと思います。「事態がどう進み、どこに落としどころを求めるのか」に最大の関心と労力を注ぐ一方で、その「落としどころ」の結果の検証を欠いているのが今のマスメディアのありようです。この根深い「落としどころ報道」の体質、それはまた広い意味で「発表ジャーナリズム」とも言えるのですが、そうした体質をどう変えていくかは、わたし自身にとってもこの数年来の大きな課題です。
 このほかにも松元さんは沖縄の新聞の立場から、三宅さんはフリーランスの立場からそれぞれ日本(本土)のマスメディアの問題点と課題を指摘しています。
 ダウンロードすると全文でA4版30枚余り。かなりのボリュームがあり読み応えがあります。だれよりもまず、現役の新聞記者らマスメディアで働いている人に読んでほしいリポートです。