ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

「伝える」ことの楽しさと難しさを体験〜仙台キャラバン無事に終了

 日付が変わって昨日のことになりましたが、28日(土)はスイッチオン・プロジェクト仙台キャラバンに参加。日帰りの慌しい日程でしたが、「1日取材体験」でわたしが取材と記事執筆の指導を担当した大学生3人もそれぞれに「伝える」ことの楽しさと難しさの両面を感じ取ってくれたようで、彼らととともに楽しく、かつ充実した時間を過ごすことができました。キャラバン全体のリポートはいずれプロジェクトのブログにアップされると思いますので、ここでは主にわたしの個人的な感想を書き記しておきます。
 ※スイッチオン・プロジェクトのブログ http://blog.goo.ne.jp/321switchon

 「1日取材体験」の参加学生は14人。午前中はプロジェクト第1期に参加し取材・執筆を経験済みの学生が講師になり、記事の書き方をレクチャー。正午からデスク1人に学生2〜3人でチームを組み、取材の企画に入りました。おおむね4カ月の時間をかけた第1期とは違って、わずか1日のワークショップです。わたしとしては、取材することは想像以上に難しいということだけでも体得してくれれば、まずは上出来だろうと思って臨みました。

 取材テーマは「仙台の街と若者の居場所」。「仙台」「若者」「居場所」の3題話です。昼食に近所のコンビニでおにぎりを買い込んで来て、さっそく企画会議をスタート。ホワイトボードはみるみるうちに取材のキーワードや矢印でいっぱいになっていきました。
 わたしが繰り返し強調したのは、「取材する自分」と「取材を受ける相手」と「記事を読む読者」の3者の関係。特にだれに読んでもらうのか、読者が意識されていなければジャーナリズム足りえず、記事はただの日記になってしまう、ということです。これはプロジェクトのデスクを通じてわたし自身があらためて学んだことでした。こういう相手を取材すれば、こういう人が読んでくれるだろう、ということであり、またこういう人が読者なら、こういう相手を取材してみればいいのではないか、ということでもあります。一応の取材方針が決まり、午後2時過ぎ、取材がスタート。3人は仙台の街に出て行きました。

 わたしたちデスクはシンポジウムの傍聴へ。途中、何度か取材の経過を知らせる電話があり、午後5時ごろ、取材を終えた3人と合流しました。取材結果をポストイットを使って整理。一問一答ごとに1枚のカードに書き込んだ取材結果を、ホワイトボードに張りながら「仕分け」をしてみました。結果は歴然。「この点をもっと知りたい」ということがいくつもいくつも出てきました。夢中になって質問し、たくさんのことを聞き出したつもりだったけど、分かったことはこれだけだったのか―。しかし、だれでも最初から完璧な取材ができるわけではありません。そのことを身を持って体験できたことは、3人にとって大きな収穫だったと思います。
 ワークショップの全日程が終わったのは夜の8時。デスク6人がそれぞれ感想を述べました。わたしは「わたしが受け持った3人は多分達成感は得ていないと思うが、次に取材するときにはこんな風にやってみようとか、いろいろ考えていることと思う。その先に、伝えることの喜びが待っている。次はこうやれば、その喜びに出会えるだろうという手ごたえは、3人は感じることができたと思う」という趣旨のことを話しました。
 お茶やジュースで懇談しながら、あらためて3人に感想を聞きました。「伝える」ことの難しさを痛感した一方で、人の話を聞く事に面白さを感じ、相手が取材に答えてくれたことが嬉しかったようです。記事の仕上がりはともかくとして、ジャーナリズムを考える、スキルを身につける、その最初の1歩という意味で、わたしとしてはまずは合格点と総括したいと思います。

 キャラバンの運営に当った皆さん、ご苦労さまでした。参加者の皆さんもお疲れさまでした。会場には見学や取材の方も来ました。ありがとうございました。

【追記】2009年11月30日午前1時10分
 トラックバックをいただきましたが、スイッチオン・プロジェクトのプログラム・ディレクター藤代裕之さんが自身のブログ「ガ島通信」で、仙台キャラバンの1日を写真で振り返っています。この企画は運営委員の学生の皆さんの奮闘なしには成功はおぼつかなかったことが、あらためてよく分かりました。みなさんお疲れさまでした。

 「伝わるうれしさ、伝えずにいられない」仙台でのライティングワークショップ×シンポジウム無事に終了しました(「ガ島通信」)
 http://d.hatena.ne.jp/gatonews/20091129/1259475608

【追記】2009年12月1日午後10時10分
 学生運営委員会のブログに、仙台キャラバンの運営を担った学生たち自身のリポートがアップされました。ぜひご覧ください。
 ※シンポジウム編
 http://blog.goo.ne.jp/321switchon/e/77508d8406922c7647dfeaf8cdbe767c
 ※ライティング・ワークショップ編
 http://blog.goo.ne.jp/321switchon/e/0cd8af58799374566541ef6c3a4a2057
 仙台キャラバンは、彼らの奮闘なしには実現できなかったとあらためて感じます。本当にごくろうさまでした。