ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

8月の「記者体験プログラム」募集開始です


 以前のエントリーでお知らせしていた通り、5日午後、東京・早稲田大で開かれたスイッチオン・プロジェクトの夏イベント「記者体験プログラム」説明会に参加しました。プログラム・ディレクターの藤代裕之さんがスイッチオン・プロジェクト全体の狙いやこれまでの活動を説明。今回のプログラムの立案を担当しているグロービス経営大学院准教授の川上慎市郎さんが、2泊3日のプログラムの概要を説明しました。わたしは、東海大学文学部広報メディア学科教授の河井孝仁さん、山陰中央新報東京支社記者の田中輝美さんとともにトークセッションに登壇。実際に参加してみて感じたプロジェクトの意義などを話しました。昨年参加したプロジェクトの「卒業生」2人も、体験談を披露してくれました。
 「記者体験プログラム」は8月6日(金)から8日(日)までの2泊3日、東京・代々木のオリンピック記念青少年総合センターで行われます。大学生、大学院生の応募受け付けも始まりました。
 1日目は取材と記事の書き方のワークショップで、2日目はグループに分かれての取材体験と取材結果のプレゼンテーション、3日目は修了式です。1日目の夜からグループごとに現役の記者や編集者らが合流、2日目の「バーチャル取材」に一緒に取り組みます。RPG(ロール・プレーイング・ゲーム)の要素を取り入れた仕掛けが用意されており、参加者はオリンピック総合センターに散らばる取材ポイントを駆け回ります。実際に新聞記者やジャーナリストが行っている取材の臨場感を味わえそうです。
 宿泊や食事の実費のほか会場を借りる経費などもあり、参加費は1人3万円ですが、6月18日までの早期申し込みなら2万5千円です。
 プログラムの詳しい説明は運営委員会のブログにアップされています。応募もブログの「申し込みフォーム」からお願いします。
 ※スイッチオン・プロジェクト「この夏、記者になる。スイッチオンPJ『記者体験プログラム』募集開始!」
  http://blog.goo.ne.jp/321switchon/e/101ebc50e53908cbbedbf84b3103105e

 さて、5日の説明会でのトークセッションの模様は、藤代さんが自身のブログにまとめています。わたしの主な発言もコンパクトに収録していただきました。
 ※ガ島通信「夏の記者体験プログラム説明会を開催しました」
  http://d.hatena.ne.jp/gatonews/20100605/1275758416

 わたしが身を置く新聞メディアに関して言えば、新聞記者は「=ジャーナリスト」と見なされることも多いのですが、実態をより正確に言うなら「新聞記者=会社から『記者職』の肩書きを付与された新聞社の社員」に過ぎないと思います。ジャーナリストが新聞社に勤めているのならば、新聞社を辞めてもジャーナリスト足りうるかもしれません。会社員である新聞記者は会社を辞めれば肩書きを失います。そのときにジャーナリスト足りうるかどうかはスキル次第でしょう。新聞社が行う記者教育が、今も基本的にはOJT(オンザジョブトレーニング)に終始しており、さらには企業の社員教育の枠を出ていないことを考えれば、企業組織の枠外でジャーナリスト・スキルを考え、実践していく取り組みには大きな意義があると思います。
 また、ネット登場以前の社会ならいざ知らず、だれもが情報発信できる社会になって、ジャーナリズムは新聞や放送、雑誌など既存のマスメディアの専有物ではなくなっています。ジャーナリズムの担い手は、ノンプロフィット(非営利)やアマチュア(別に生計を維持する仕事を持っている)を含めて、今後も広がっていくでしょう。

 そもそも、人が社会で生きていく限り、他人との意思疎通は不可避です。伝えるスキルが低ければ、身の回りにトラブルが絶えないことになるでしょう。そう考えれば、ジャーナリストのスキルの基本は、人として社会で生きていくことに通じます。仮にジャーナリズムや表現活動を仕事に選ばなかったとしても、どんな仕事にも「伝える」スキルは必要ですし、前述のように今は仕事とは別に表現活動をすることもできる社会です。
 わたし自身は、昨年来このプロジェクトに参加してきて、職種や立場を超えて(参加してきた学生も含めて)「伝える」ことをともに考え語り合うことができる「場」があることが、もっとも意義深いと考えています。「ジャーナリズムを担うのは誰か」という今日的な命題の答えをわたしなりに考えていく上で、この「場」が持つ役割はとても重要です。今後もスイッチオン・プロジェクトを通じて、さらに多くの方と出会うことを楽しみにしています。
 ※「記者体験プログラム」については、今後もミニ説明会が順次開かれます。東海大学(6月8日)、国際基督教大学(6月9日)、立教大学(6月11日)、慶応大学(6月12日)、東京大学(6月15日)です。詳細は運営委員会のブログをご覧ください。
 「東海・ICU・立教・慶応・東大で『記者体験プログラム』でミニ説明会を開催!」
 http://blog.goo.ne.jp/321switchon/e/9dd1350db84dd9d263d7bebc398db95f