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争点に識者が賛否、企画記事で「争点掘り起こし」も:25〜26日の大阪ダブル選挙紙面

 10月25日から26日にかけての、大阪ダブル選挙をめぐる新聞各紙の主な記事について、備忘を兼ねて書き留めておきます。

25日付朝刊
【朝日】「民主 倉田氏擁立へ加速」「自民 維新と対決ムード」「府知事選候補者選び大詰め」(第2社会面、全7段)▼「論 大阪ダブル選」3回続きの(上)「大阪の公務員改革案どう見る?」=自治労委員長の徳永秀昭さん、元経産省官僚の古賀茂明さん(第3社会面、全8段)
【毎日】「倉田氏『支援不可欠』」「民主と自民、検討開始」(第2社会面、全7段)
【読売】「民自、倉田氏支援へ」「公明との連携急ぐ」(1面トップ、全5段)▼「大阪の陣 政党苦悩の秋」(政治面、全7段)▼「知事独断くすぶる不満」「維新内部『いつ決めた…』」「外部擁立→『松井氏』・教育条例 修正表明」(社会面トップ、全7段)
【産経】「民・自 決まらぬ統一候補」(2面、全5段)▼「『教育の政治利用』批判も」「反橋下集会に200人」(第2社会面、全5段)
【京都】2面に「民自、倉田氏擁立を検討」(全4段)/サイド「手堅い人物に白羽」(全3段)/「大阪で『反橋下』集会」(1段)
【神戸】「倉田氏擁立を民自検討」(第2社会面、全6段)

 朝日新聞が3回続きで、選挙戦で大きな争点になりそうな橋下徹氏の政策や公約を取り上げ、2人の識者に賛否を語ってもらう企画記事を掲載しています。初回のテーマは、橋下氏が代表の大阪維新の会が提案した「職員基本条例案」。大阪市議会では否決されましたが、維新の会が単独過半数府議会では継続審議となっています。条例案の内容は「職員を5段階で相対評価し、2年続けて最低のDランク(5%)で指導後も改善困難なら処分対象に、同一の職務命令を3回違反すると原則免職になる」(朝日新聞の記事から引用)など、相当に厳しい内容です。記事に登場する古賀茂明氏は一時、維新の会が知事選出馬を打診していました。記事ではそのいきさつについても古賀氏自身が語っています。
 読売新聞は社会面トップで、維新の会の内幕をリポート。会の方針決定の際に、橋下氏が「維新メンバーに十分に諮らずに独断で決めるケースが目立ち、内部から不満が漏れ始めている」という内容で、興味深く読みました。
 目を引いたのは、産経新聞の第2社会面の記事。橋下氏の政策に反対する市民集会のリポートで、「『橋下』主義(ハシズム)を斬る」との集会のタイトルも紹介。中島岳史・北海道大准教授の講演や、作家の雨宮処凛さん、寺脇研・京都造形芸術大教授が加わった座談会の様子も写真付きで紹介しています。市民集会の紹介記事としては大きな扱いです。この集会は共同通信も記事を配信。京都新聞に掲載されています。

25日夕刊
【毎日】1面に「高齢者の1割 生活保護」「選挙控え 課題山積 大阪市」(トップ、全9段)/「予定の4人 ラジオ討論」(全3段、写真)▼「大阪ダブル選 これはどうする」(1)歯止めかからぬ生活保護費増加(社会面、全7段)
【読売】「4氏『初戦』は朝ラジオ」(社会面トップ、全4段、写真)
【産経】「4人の議論 平行線」(1面、2段、写真)▼「橋下vs平松 非難応酬」「大阪市長選候補予定者ラジオ出演」(社会面トップ、全4段)
【日経】「倉田氏態度表明『27日までに』」(社会面1段)

 ダブル選挙では橋下氏のキャラクターや政策ばかりが話題になりがちですが、その中で毎日新聞は報道による独自の「争点掘り起こし」とも呼べそうな企画記事「大阪ダブル選 これはどうする」をスタートさせました。25日夕刊は1面トップで、生活保護受給者が全国最多の大阪市で09年度、65歳以上の高齢者の保護率が9・2%に上ったことを、ストレートニュースとして報じました。その上で社会面で企画記事を展開しています。企画記事の狙いについて、記事は次のように書いています。「経済の低迷を背景に、大阪では社会の矛盾や大都市特有の問題が噴出している。11月27日投開票される大阪府知事大阪市長のダブル選。何が問われるのかを考える」。

26日付朝刊
【朝日】第2社会面に「お茶の間へ 4氏訴え」(3段)/「倉田氏 きょう判断」(2段)など▼「論 大阪ダブル選」3回続きの(中)「大阪都構想 どう見る?」=立命館大教授の森裕之さん、慶応大教授の上山信一さん(第3社会面、全8段)▼「5委員 対案拒否表明」(教育基本条例案で大阪府教委、第3社会面3段)
【毎日】「倉田氏 出馬見送りへ」「首長賛同集まらず」(1面4段)▼「維新の会 素通り」「平松市長 恒例のあいさつ回り」(社会面トップ、5段)▼「教育条例案可決なら辞任」「対案提出も拒否 府教育5委員」(社会面3段)
【読売】「倉田氏『やりたい気持ちある』」「きょう態度表明」(1面3段)▼第2社会面に「平松氏支援 自民が決定」(3段)/京都知事の会見(1段)▼「教育基本条例可決なら辞職」(1段)
【産経】「倉田・池田市長 立候補見送りも」(1面3段)▼社会面に「どうする倉田市長」(トップ、全4段)/京都知事・滋賀知事会見(1段)など
【京都】2面に「可決なら府教委 総辞職」(4段)/「倉田氏きょう態度表明」(2面3段)

26日夕刊
【毎日】「倉田氏『28』の呪縛」(一面トップ、全5段)▼「大阪ダブル選 これはどうする」(2)疲弊進む中小企業(第2社会面、全7段)
【産経】「倉田市長『厳しい状況』」(第2社会面2段)

 26日は朝刊も夕刊も、大阪府池田市長の倉田薫氏の動向に注目が集まりました。倉田氏は最終的に26日夜の記者会見で、出馬を表明。大阪府知事選、大阪市長選とも選挙戦の構図が固まりました。27日付の朝刊は、各紙ともこのニュースを大きく扱うことと思います。
※「倉田氏が大阪知事選へ出馬表明」(47news=共同通信
http://www.47news.jp/CN/201110/CN2011102601000706.html

【追記】2011年10月27日午前7時45分
 倉田氏の26日夜の出馬表明記者会見のやり取り(一問一答)が産経新聞のサイトにアップされています。
 【大阪ダブル選】倉田氏会見の質疑応答詳報「葛藤したすえに、決断した」
 http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/111026/waf11102623220030-n1.htm
 ちなみにこの産経ニュースwestは「関西事件史」など読み応えのあるコンテンツがあり、わたしの最近のお気に入りの一つです。