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大飯原発「臨時稼働」の橋下市長発言の報じ方

 前回のエントリー(「原発ゼロ」の中で決まった「節電の夏」〜再稼働問題の推移に注目)の続きになります。週末の19日土曜日に、関西の府県などでつくる関西広域連合の会合が大阪市でありました。新聞各紙の20日付朝刊(全国紙は大阪本社発行の最終版)の報道をみると、ニュース性は二つあったようで、新聞によってどちらをメインの記事にするか、扱いが分かれました。
 一つは、関西電力がこの夏の節電対策を自治体側に説明した上で、企業や一般家庭に2010年比で15%以上の節電を要請することを発表し、関西広域連合も同じように15%以上の節電を要請したことです。関西電力は一般家庭に対し、7月から9月にかけ、昨年比でどれだけ電気の使用を抑えたかに応じて、買い物に使えるQUOカードを出すなどの対策も決めており、生活に密着したニュースでした。
 もう一つは、この日の会合に政府が細野豪志原発事故担当相を派遣し、大飯原発3、4号機の再稼働へ向けて理解を取り付けようとしたことです。首長らは納得せず、話し合いは平行線のまま終わりました。その中で大阪市橋下徹市長は「需給問題で(安全対策の確立に)時間がかかるなら、臨時に1カ月、2カ月、3カ月という動かし方もある」(朝日新聞記事より引用)と述べ、期間を決めた臨時稼働を提案したと報じられました。ただ、橋下氏は会合後、記者団に「(政権が)再稼働をもう腹に決めていると分かってきた。このタイミングで(全面的な再稼働より)まだましということを言いたかった」(朝日記事)と本意を説明したと伝えられています。いずれにせよ、高い支持を持つ橋下市長の言動は、今後の原発再稼働論議に少なくない影響を与えるでしょうし、この日の発言も後に尾を引くと思います。
 備忘を兼ねて、新聞各紙が20日付け朝刊に掲載したメインの記事の見出しを書き留めておきます(全国紙は大阪本社発行最終版)。橋下氏の発言をいちばん大きく取り上げたのは産経新聞で、見出しに盛り込んだのはほかに読売新聞でした。日経新聞も掲載は1面ではないものの、メインの記事は橋下氏の発言です。原発再稼働に対する各紙の社論と対比すると興味深いのではないでしょうか。

朝日新聞:1面準トップ「国・関西 大飯巡り平行線」「原発相説明、首長ら批判」
毎日新聞:1面トップ「広域連合 15%節電了承」「関電、生産調整要請も」
▽読売新聞:1面トップ「大飯再稼働 議論平行線」「原発相説明 広域連合納得せず」「橋下市長は『臨時運転』言及」
産経新聞:1面トップ「橋下氏 限定稼働を提案」「大飯『臨時か1〜3カ月』」「広域連合に細野氏説明」
日経新聞:3面「夏だけ再稼働 言及」「橋下大阪市長大飯原発で」
京都新聞:1面トップ「節電目標15%以上」「関電 1500円券配布、促進」「大飯再稼働 慎重論相次ぐ」(共同通信配信ではなく自社記事)
神戸新聞:1面トップ「関電新料金7〜9月に」「午後1〜4時 単価2倍程度」「節電家庭に商品券」(共同通信の配信記事)