ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

沖縄慰霊の日に考える戦争体験の継承

 きょう23日は沖縄慰霊の日です。第2次世界大戦末期の沖縄戦で、日本軍の組織的戦闘が終結したことにちなんで、沖縄県が制定しています。生活の場が戦場になり、おびただしい住民の犠牲を生んだこと、その延長に今日の米軍基地問題があることを、わたし自身、本土(ヤマト)に住む日本人の一人として、あらためて考える日にしています。
 日本の敗戦からことしで67年です。社会の中で戦争体験を継承していくことの重要さと難しさを感じます。戦争を直接体験した世代と同じ体験を後の世代ができるわけではありませんが、その体験を記録として社会の中で引き継ぎ、後続の世代が記録に触れることで追体験を試みることは可能です。
 日本のマスメディア、特に本土のマスメディアは時に「8月ジャーナリズム」と揶揄されるように、8月6日と9日の広島、長崎への原爆投下、15日の終戦記念日敗戦の日)の前後には、あの戦争を振り返り平和について考える報道が増えます。例年、どこのメディアでも担当記者はそれなりに時間と手間をかけて準備し、取材を進めます。「戦争体験の継承」を今日的な課題ととらえるなら、かつて日本社会が経験した戦争と住民被害、日本による対外加害の取材を、期間を限ってのことではなく通年のテーマに据えて恒常化する必要があるのではないかと感じます。
 1945年4月から沖縄では激しい地上戦がありました。8月6日には広島に、9日には長崎に原爆が投下されました。さかのぼれば3月10日未明には東京に大空襲がありました。その間、ほかにも全国各地に空襲があり、住民が犠牲になりました。日本による加害の面も含めて、そうした戦争の実相を重層的に伝え続ける工夫が必要だと思います。記者個々人にとっては、そうした取材経験を積むことで、沖縄の基地の問題など今ある「戦争と平和」の課題に対しても、視野に広がりを得ることができるでしょうし、そうした経験は取材だけではなく、例えば労働組合の活動でも可能です。
 8月につながる6月23日の報道が、とりわけ本土のマスメディアに必要だと思います。

【追記】2012年6月23日午後5時
 沖縄の新聞、沖縄タイムス琉球新報が、慰霊の日のPDF速報版をサイトにアップしています。
 沖縄タイムス http://www.okinawatimes.co.jp/article/2012-06-23_35458/
 琉球新報 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-192968-storytopic-1.html
 
 琉球新報のサイトには、慰霊の日と沖縄戦の過去記事を集めた特集ページがあります。
 http://ryukyushimpo.jp/news/storytopic-145.html