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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

「もう『人ごと』では済まされない」〜普天間ゲート民衆が封鎖 ※追記:県警が座り込み排除

 欠陥機の疑いが指摘されている米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイ配備される予定の沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場で台風17号通過の29日、車両が出入りする3カ所のゲートがすべて、オスプレイ配備反対を訴える市民団体などによって『封鎖』されました。ゲートでの抗議行動は26日から始まっていました。日本本土のマスメディアの報道は活発とはいいがたい状況ですが、大変な意味を持つ沖縄の民衆の直接抗議行動だと思います。
 オスプレイ配備に対しては、仲井真弘多知事をはじめ島ぐるみの強い反対が続いています。このブログでも紹介しました(9月23日のエントリーをご参照ください)が、沖縄政界で保守派の重鎮である翁長雄志(おなが・たけし)那覇市長までが日米両政府と沖縄の間で信頼関係がないと明言するほどです。9月30日午前の段階でも、普天間飛行場周辺では事態は動いており、仮に週明けとも伝えられている山口県岩国基地からのオスプレイ移駐が強行されれば、日米両政府への怒りはさらに大きくなるでしょう。
 本土メディアの報道のありようも含めて思うところは多々あるのですが、事態が動いていることもあり、ここでは備忘も兼ねて、沖縄タイムス琉球新報が30日午前にサイトにアップしたいくつかの記事を紹介しておきます。

 ▼何が起きているか
 沖縄タイムス普天間主要3ゲート 市民ら車両横付け封鎖」
  http://article.okinawatimes.co.jp/article/2012-09-30_39616
 沖縄タイムス普天間ゲート封鎖 法の隙間突く」
  http://article.okinawatimes.co.jp/article/2012-09-30_39628
  ※封鎖の民衆は米軍と直接対峙しているようです 
 
 琉球新報普天間3ゲート、車で封鎖 米兵、市民引っ張る」
  http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-197491-storytopic-1.html

 ▼両紙の社説
 沖縄タイムス「[ゲート前抗議]マグマが噴出し始めた」
  http://article.okinawatimes.co.jp/article/2012-09-30_39617
 琉球新報配備阻止行動 非暴力的手段を徹底しよう」
  http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-197485-storytopic-11.html

 ▼森本敏防衛相が講演
 琉球新報辺野古移設 防衛相、振興策と一体で推進」
  http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-197490-storytopic-3.html
  ※森本防衛相の講演は3ゲート封鎖の1日前の28日のことですが、それにしても今も旧態依然の「振興策とのリンク」論には、驚きを禁じ得ません。現政権は尖閣国有化で読み違いを犯し、今また沖縄の民意を読み違えようとしているように思えます。本土メディアは違うと言い切れるでしょうか。


 沖縄タイムスの社説の結びの段落は以下の通りです。

 政府が本気で県民に寄り添うならば、今の「嵐」が一過性で収まらないことに気付くはずだ。オスプレイ配備を強行すれば抵抗運動の先鋭化や規模の拡大も予想される。運動に直接参加していない県民多数の共感を背に、運動参加者は「普天間」を譲れない一線として刻印し、後戻りしない決意を固めている。

 県民のマグマに火を付けたのは、対米従属の呪縛にはまり、沖縄の民意を踏みにじる日本政府だ。それを黙認してきた多くの国民ももう「人ごと」では済まされない。そう気付く日が刻々迫っている。

 「黙認してきた多くの国民ももう『人ごと』では済まされない」。それでも「わがこと」ととらえない、とらえられないのなら、やはり日本本土の国民として、例え無意識・無自覚にせよ「差別」に加担し助長していると言わざるを得ないのではないか―。そういうことを考えています。

※参考過去エントリー
「なぜ沖縄」の疑問に応えていく報道を〜ヤマトメディアに起きた無自覚の変化=2010年5月30日
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20100530/1275180587
 日本本土(ヤマト)の日本人は、無意識・無自覚に沖縄差別に加担しているのではないか、ということを考えるようになったきっかけは、新聞労連の専従委員長だった当時の2005年に、沖縄で開催した集会に講師として参加いただいた沖縄出身の社会学者、広島修道大教授の野村浩也さんのお話をうかがったことでした。そのときのことを記した過去記事です。読んでいただければ幸いです。野村さんの問い掛けは広く知られていいと思います。

無意識の植民地主義―日本人の米軍基地と沖縄人

無意識の植民地主義―日本人の米軍基地と沖縄人

 

【追記】2012年9月30日16時
 9月30日午後1時ごろから、普天間飛行場のメインゲートである大山ゲートで、座り込んでいた住民らを沖縄県警が排除し、車両をレッカー移動させました。

沖縄タイムス「県警、大山ゲート座り込み排除 車両を移動」
 http://article.okinawatimes.co.jp/article/2012-09-30_39641
msn産経ニュースオスプレイ抗議の封鎖車両をレッカー移動 普天間ゲートで沖縄県警」(共同通信配信記事とみられます)
 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120930/plc12093014290007-n1.htm


【追記】2012年10月1日7時35分
 9月30日夜までに、沖縄県警は普天間飛行場のゲート2カ所で、住民や車両を排除。米軍はゲートの使用を再開したようです。
msn産経ニュースオスプレイ反対住民の封鎖車両を撤去 普天間ゲート前で沖縄県警」
 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120930/plc12093014290007-n1.htm


【追記】2012年10月2日1時05分
 山口県岩国基地から10月1日、オスプレイ6機が沖縄県普天間飛行場への移動を強行しました。大阪の新聞各紙も1日夕刊で大きく報じました。ただ、住民らによる前日の普天間飛行場ゲート封鎖と、沖縄県警による強制排除のことは、一部の新聞が報じただけでした。この報道は後日、あらためて記録を残したいと思います。