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9条改憲:8人のうち7人「○」〜京都新聞・候補者アンケート ※追記 自衛隊派遣の与那国島・沖縄タイムスリポート

 11日付の朝刊各紙は、在阪全国紙、京都新聞神戸新聞とも、日本原子力発電(日本原電)の敦賀原発について、原子炉直下の断層が活断層である可能性が高いとした原子力規制委員会の調査団の見解を1面トップで伝えました。敦賀原発が立地する福井県敦賀市は、全国紙では大阪本社の管内です。全国的なニュースであると同時に大きな地元ニュースとの側面もあります。原発は各紙とも、衆院選の争点として頻繁に取り上げており、この日の紙面でも朝日が選挙戦に絡めたサイド記事を総合面に掲載しました。
 衆院選に関連した記事では、毎日新聞産経新聞が全国電話調査に自社取材の結果を加味した選挙戦の中盤情勢を掲載しています。ともに主見出しは「自公300議席超す勢い」。先週の公示直後に他紙に掲載された序盤情勢と基本的には同じで、やはり自民が強い傾向に変わりはないようです。こうした情勢調査に比べると、先週末から行った朝日新聞や読売新聞の継続調査、共同通信のトレンド調査は回答数が多くありません。文字通り、トレンドを確認するのが主な目的です。
 この日の紙面では、外交や日米同盟、集団的自衛権、そして憲法改変に触れた記事を比較的多く目にしました。朝刊では朝日の「公約を問う」の7回目が「外交・安保」、産経は領土問題。京都新聞神戸新聞も、それぞれ憲法を取り上げています。印象に残ったのは京都新聞の候補者アンケートでした。「憲法9条は改正すべきか」の問いに、京都1区から6区までの候補者30人の回答を○と×で表した表がついています。このうち京都4区は8人が立候補した全国でも有数の激戦区ですが、回答は○が7人、×は一人でした。これでは憲法をめぐる論戦はなかなか深まらないだろうと感じます。

※以下は各紙の主な記事の記録です。全国紙は大阪本社発行の最終版です。選挙関連の記事は、1面と社会面の記事2本ずつを原則とし、そのほかに目を引かれた記事を書き留めています。

▼12月11日付朝刊
【朝日】
1面トップ「敦賀原発 廃炉の公算大」※選挙記事なし
第2社会面「原発ゼロ かけ声は遠く」(あした、どこへ 課題の現場で5 再稼働の城下町)※福井県大飯町
※3面「『脱原発』政党 歓迎」「選挙終盤戦アピール」※敦賀原発
※3面「『同盟重視』強まる恐れ」「尖閣 自民の強気後押し」「沖縄 触れられず」(公約を問う7 外交・安保)
※4面「公約の違い『分かりにくい』71%」「多党化選挙『よくない』54%」(本社連続調査)比例区投票先は自民22%、民主14%、維新8%

【毎日】
1面トップ「敦賀原発 廃炉不可避」
1面準トップ「自公300議席超す勢い」「衆院選中盤情勢 民主80割れも」「本社総合調査」※4、5面に関連記事、14〜19面に小選挙区、比例情勢 ※調査方法 8〜10日実施、全国の有権者7万7051人から回答
第2社会面「乱立誰が得する?」「有権者『多すぎて…』」(焦点区から 京都4区)

【読売】
1面トップ「敦賀原発 再稼働認めず」
1面「自民29%に上昇」「衆院選継続調査 民主12% 維新11%」
第2社会面「高齢者政策 置き去り」「医療・年金『安心させて』」

【日経】
1面トップ「敦賀原発、再稼働困難に」※選挙記事なし
社会面「『雇用訴える』『判断は尊重』」「福井3区選挙戦に影響?」(敦賀原発
※4面(政治面)「政策論争深まらず」「党首、他党批判に軸足」「衆院選 後半戦に」

【産経】
1面トップ「敦賀原発 廃炉の公算」
1面準トップ「自公300議席超す勢い」「終盤情勢 民主激減 80割れも」「本社・FNN合同調査」※3〜4面に関連記事 ※調査方法 6〜9日実施、サンプル数は4万3273
第2社会面「不安募る『国境の島』」「尖閣竹島『外敵から どう守るのか』」(「争点」をゆく5 領土)

【京都】
1面トップ「敦賀2号 廃炉濃厚」
1面「民主と維新ほぼ並ぶ」「比例投票先 トップ自民は21%」※共同通信トレンド調査 維新10・6%、民主10・3%
第2社会面「9条軸に争点化の動き」(単答直入・候補者アンケート5 改憲)Q憲法9条は改正すべきですか
※3面「争点を斬る3 集団的自衛権」京都憲法会議代表幹事・上田勝美氏「9条守り国連中心に」/京都大法学研究科教授・中西寛氏「国際連携の幅広がる」
※30面「復興と帰郷 1票に託す」「京滋の避難者 候補者見極め」「きょう震災1年9カ月」

【神戸】
1面トップ「敦賀2号 廃炉濃厚」
1面準トップ「無党派の風 維新に吹くか」落下傘(激流ひょうご師走決戦4 4区)
第2社会面「各党主張 目立つ右傾化」「改憲反対派、募る危機感」「自民『国防軍』明記 支持者にも戸惑い」(一票力 憲法・安全保障)
※2面「『首相に安倍氏』39%」「野田氏に8・5ポイントの大差」「衆院選動向調査」※共同通信トレンド調査

▼社説
【朝日】「敦賀原発 脱・安全神話の時代へ」
    「公務員と政治 過剰な縛り解く判決」
    ※選挙社説なし
【毎日】「衆院選こう考える 消費増税 軽減税率で自公を評価」
    「敦賀原発活断層 規制委の判断は当然だ」
【読売】「衆院選 教育政策 子どもの将来見据えた論戦を」
    「原発活断層 科学的な安全性の判断を貫け」
【日経】「主要国は温暖化交渉を進める責任がある」
    「敦賀原発への重い規制委判断」
    ※選挙社説なし
【産経】「教育と衆院選 踏み込み不足で物足りぬ」
    「COP18 地球環境から目そらすな」
【京都】「京都議定書 継続に日本不参加とは」
    「衆院選 地方分権改革 将来像も併せて議論を」
【神戸】「師走選挙 エネルギー政策 国づくりの基調となる改革を」※1本のみ

▼12月11日付夕刊
【朝日】
1面トップ「総選挙 ブレーンの今」「復帰なるか注視」(安倍内閣)「逆風の戦い 励まし役」(民主党)「複数の政党へ助言」(日本維新の会みんなの党
1面「原発ゼロ 同床異夢」「再稼働への賛否に温度差」(朝日東大・候補者共同調査)
第2社会面「釜ケ崎『政治は遠い』」「大阪・西成 超高齢化・貧困 論戦素通り」
第2社会面「減災への姿勢 見て」災害・復興 関西大教授河田恵昭さん

【毎日】
1面・写真囲み「党首として4度目」共産・志位委員長(東奔西走)
第2社会面「文字反転白黒つけて」「グラフも鮮明HP読みやすく」「5党が弱視者向け公約」
※2面「『右傾化ニッポン』なぜ」「公約に『国防軍』『尖閣常駐』」「『核武装』に言及も」「75年前、第三極躍進→日中戦争へ」「『今回の衆院選に類似』」(特集ワイド)

【読売】
1面「ネット選挙 解禁なの?」「党首ら『つぶやき』・メールで演説日程」
第2社会面「演説3分間でジャッジ」詩人 楠かつのりさん(語る5)
※8面に社会保障・各党公約のQ&A

【日経】
1面「人繰りに四苦八苦」公明党・山口代表、国民新党・自見代表(師走の決戦5)
社会面「東北の再起へ 誰を選べば…」「被災者ら『分かりづらい』」「宮城2区 6人乱立の激戦区」

【産経】
1面「無党派 振れ幅極端」「小選挙区制の影響鮮明に」
第2社会面「おばちゃん目線 政治に喝」「ネットで“結党” 賛同者1000人超」※全日本おばちゃん党
第2社会面「劇的変化は現実的でない」関西大教授・河田恵昭さん(私の視点)
※2面「橋下氏が沖縄入り」「普天間視察、地元集会を開催」

▼10日付夕刊
【京都】
9面(総合面)「領土問題で舌戦」「選挙サンデー 党首街頭演説」
9面「公選法抵触の恐れ」「首相ビデオ街頭放映」/「橋下氏『逮捕されるかも』」「公示後ツイッター継続で」
社会面トップ「20代低投票率 返上を」「合同演説会を模索」「電車内で呼び掛け」「京の学生取り組み」
社会面「原発ゼロ社会 支持訴え」「未来・嘉田代表 湖国での第一声」

【神戸】
1面「首相『領土問題冷静に』」「安倍氏『侮られている』」「第三極『官僚支配打破』」「選挙サンデー」
1面・写真囲み「商店街も路地裏も 自転車行脚」(走 3)
社会面トップ「期日前投票 出足鈍る」「『政党多く迷う』」「県選管中間集計 前回比25%減少」
第2社会面「唯一の日曜“大物”兵庫へ」「互いに批判繰り広げる」「自民、公明、共産代表ら」
―――――――――
※追記 2012年12月12日午前8時
 (1)京都新聞憲法をめぐる候補者アンケートについて言及した京都4区の詳しいレポートが、京都新聞のサイトで読めます。
 「混戦8人、終盤奔走 京都4区・候補者数全国2番目」
 http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20121211000143

 衆院選(16日投開票)も終盤にさしかかり、京都4区で大混戦が続いている。全国300小選挙区で東京1区の9人に次いで2番目に多い8人が立候補した。民主、自民、共産の3党に加え、第三極勢力も参戦。6党の各候補と諸派、無所属の2候補が存在感を出そうと走り回っている。

 これだけの混戦でありながら、9条改憲の是非を尋ねると8人の候補のうち7人は「是(○)」と答える。憲法を論じても他候補との違いを打ち出すことができない、そういう状況なのだろうと察しています。
 (2)沖縄の新聞2紙で、11日付紙面で目に留まった記事を2本紹介します。
琉球新報 社説「12衆院選 外交・安保政策/軍事大国になるのか」
 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-200142-storytopic-11.html

 各党に強調したい。領有権問題は軍事力ではなく、あくまで外交で解決すべきだ。東アジアで「外交の敗北」を意味する武力衝突を引き起こしてはならない。不幸な戦争の教訓にしっかり学ぶべきだ。
 戦後日本の外交・安保政策は、国連中心、自由主義諸国との協調、アジアの一員としての立場堅持の「外交三原則」と、専守防衛、軍事大国にならない、非核三原則文民統制確保の「国防の基本方針」を両輪に展開してきた。
 国是を守るのか破棄するのか、軍縮・平和外交を強化するのか。各党は選択肢を明示すべきだ。

沖縄タイムス 衆院選:「国防軍」戸惑う与那国
 http://article.okinawatimes.co.jp/article/2012-12-11_42634

【与那国】衆院選の公約で、自衛隊の「国防軍」への改称、集団的自衛権の行使など、憲法の枠を超える主張が目立っている。自衛隊誘致に揺れる与那国町。推進派の町長も含め、強硬路線には戸惑いを隠せない。(阿部岳)
 「『軍』には違和感がある。ついていけない」。外間守吉町長は言い切った。「沖縄戦を経験した沖縄の人間として、軍命、総動員とくれば行政が成り立たないことは知っている」
 自衛隊誘致の旗振り役を務め、「呼ぶのはあくまで専守防衛自衛隊」と、住民を説得してきた。「軍が来たら、反対派に『案の定』と言われるでしょう。軍になるなら出て行けとも言えないし…。困ったね」とぼやく。

 北朝鮮のミサイル発射に備えて現在、自衛隊が派遣されている与那国島のリポートです。自衛隊誘致を表明している島としてしばしば紹介されますが、誘致推進の町長は「『軍』には違和感がある。ついていけない」と言い切っているのが強く印象に残りました。