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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

「沖縄基地」「改憲」「集団的自衛権」いっそう重要に

 衆院選の開票結果が出る前の最後の更新です。
 16日の投票日を控えて15日付の朝刊各紙には「あす投開票」の見出しが並びました。ここまでの選挙戦報道を振り返って、何を選び取る選挙なのか、象徴的な争点をマスメディアも定めきれないままとの印象を持っています。2桁もの政党が並び立ち、各党が掲げる争点が多岐にわたりました。各党の党首らは、他党に対する政策面以外の批判にも多くのエネルギーを注いでいました。15日付朝刊でも、政策論争が深まらなかったことを指摘している記事があります。強いて言えば、「民主党中心」から政権の枠組みがどう替わるのかが問われているのかもしれませんし、その意味では序盤から一貫して「自民党優位」が伝えられています。ただ、前回の政権交代時の民主党のような強い追い風が自民党に吹いているとも感じられず、「民主党中心」への批判が割れて、相対的に自民党が浮上しているだけなのかもしれません。
 報道の中では、沖縄への基地集中とオスプレイ配備強行に代表される本土からの押し付けが衆院選と絡めてどう扱われるかを、意識的に注視してきました。報道がなかったわけではないが散発的だったと感じています。9条を中心とした憲法改変や、集団的自衛権の行使容認の論議は、支持する立場からの論評が目立つように感じました。対抗すべき護憲の立場からの論議が薄かったと言ってもいいと思います。右傾化を強めた自民党のさらに右側に日本維新の会が現れたことや、選挙期間中に北朝鮮の事実上のミサイルの発射や尖閣諸島の領空侵犯が起きたことも要因でしょう。15日付朝刊でも、読売、産経両紙が社論である改憲を社説に据えています。選挙戦で終始優勢と伝えられた自民党は、改憲集団的自衛権の行使容認を掲げていますが、ただ、その点が本当に支持を受けているのかどうかは検証の必要があると思います。沖縄への基地押し付けや改憲集団的自衛権容認の論議は、その報道のありようも含めて選挙後ますます重要になってくると受け止めています。
 政党の党首や代行を務める自治体首長が現れ、地元を離れて遊説に駆け回ったことも今回の選挙の特徴の一つです。日本維新の会の代表代行である橋下徹大阪市長と、日本未来の党の党首の嘉田由紀子滋賀県知事の2人には、市政、県政のかじ取りを負託されながら国政選挙で奔走したことの是非論議が残ります。2党が国会にどの程度の議席を持つのかにもよるのでしょうが、地方自治地方分権、さらには道州制の問題は、政府との関係や国家像を考える上で新たな段階に進むのかもしれません。関西に身を置く私なりの視点で注視していこうと思います。


※以下は15日付朝刊各紙の主な衆院選の関連記事の記録です。今回は全国紙のみ、いずれも大阪本社発行。朝日、毎日は13版、読売、日経、産経は最終版です。
▼12月15日付朝刊
【朝日】
1面トップ「政策で選ぶ」「衆院選 あす投開票」/「原発 ゼロか慎重か」「社会保障 公助か自助か」(公約を問う)
2面「政権枠組み 駆け引き」「公明 安倍路線の修正狙う」「民主 自公との連携 悲観論」「維新 広がる自民との距離」
3面「原発是非 もう一度考える」「支え方と財源見極め」(1面から、公約を問う 原発・税と社会保障
4面「語られぬ核燃サイクル」「民主と未来、青森では推進論」/「つぶやき数『自民』最多」
5面「年金 支えになるか」「将来、実質減額の恐れ」(政策点検くらし4)/「『痛み』を含めた政策を」有田哲文編集委員
13面(オピニオン)「たそがれの『脱官僚』」
33面(生活)「若者に届く言葉で話して」「19歳、就業体験後に正社員」(10代私の声聞いて 5雇用)
第2社会面「期日前投票 伸び悩む」

【毎日】
1面「衆院選あす投開票」/「地方発 可能性と限界」(橋下大阪市長、嘉田滋賀県知事)砂間裕之・大阪本社社会部長
2面「『右傾化』vs『公約違反』」「民自が批判合戦 政策論争深まらず」「つぶし合う第三極」
4面「景気後退の影」「民自公に温度差」消費増税
5面「自民 そろり政権準備」「幹部『参院選まで経済対策に特化』」
13面「くらしと政治 1票に託す思い」
28面(メディア)「『公平』求める政党 苦悩するテレビ局」
第2社会面「大阪 終盤の決戦場」「維新おひざ元 党首級続々」/争点 政党乱立 わたしは思う「『市民』生かす党どこ」=NPO職員「選挙後見えず不安」=税理士

【読売】
1面トップ「政権選択 あす投票」「衆院選 各党追い込み」
1面準トップ「明日を誰に託すか」「拝啓 有権者の皆さんへ」橋本五郎・特別編集委員
2面「道州制 自・公積極姿勢」「民主『中長期的な視点で』」(政策点検 地方分権)/「共産・社民 懸命な訴え」(衆院選ドキュメント)
3面「党首戦 クライマックス」「首相『決断力』アピール」「安倍氏は『実現力』強調」「石原、嘉田氏 国の仕組みに矛先」
4面(政治)「自民 参院で『部分連合』模索」「自公 過半数まで16人」/「自民と連携?維新 路線に悩む」「衆院選後、党内対立も」
第2社会面「『私の1票』縮まぬ格差」

【日経】
1面「衆院選 あす投開票」「首相『30年代原発ゼロ』」「安倍氏『強い外交を展開』」
3面「外交・安保 強硬論じわり」「民主 現実路線に転換」「自民 『安倍色』前面に」/「日米同盟 強化で足並み」「具体策の優先順位を」
4面(政治)「選挙後日程 大忙し」「予算編成に空白」「外交課題も山積」
5面(経済)「円高是正策 違い鮮明」「自民 外債基金を創設」「民主 急騰時のみ介入」/「農業の新陳代謝促進を」坂ノ途中社長 小野邦彦氏29歳(U−40私の視点)
社会面トップ「君の一票 将来決める」「若者の関心向上へ 取り組み活発」/「『活動、維新のためでない』」「橋下氏発言に懸念表明」「大阪府市エネ戦略会議」

【産経】
1面「あす投開票 自民 優位保つ」
3面「議員定位数削減 語らぬ民自公」「『身を切る改革』どこへ」
4面(政治)「負担増必至の社会保障 議論深まらず」「来夏には参院選 耳障り話題封印」
13面(経済)「『脱原発』理念より実効性は」(経済政策の焦点 4エネルギー)
第3社会面「原発ゼロ 年限示さず」「『維新と無関係』声明で中立性強調」「大阪府市エネルギー戦略会議」
社会面トップ「第三極の因縁激突」「維新に反感あらわ/減税→未来も苦境」愛知5区(乱戦のゆくえ4)

▼社説
【朝日】「総選挙 議員の特権 甘えの姿勢いつまで」
【毎日】「衆院選こう考える 参院改革 選挙後すぐ検討始めよ」
【読売】「衆院選 あす投票 ネット利用が課題として残る」「憲法改正 『3分の2』要件緩和を糸口に」
【日経】「衆院選政策を問う 被災地の生活再建と産業再生に全力を」「主体的に参加したい国民審査」
【産経】「衆院選あす投票 再生託す担い手はだれか 憲法を軸に国家観見極めよ」