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琉球新報「沖縄の痛み共有する契機に」〜オスプレイ初訓練と本土メディア

 在日米海兵隊は3月6日から8日までの3日間、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ3機を沖縄県普天間飛行場から山口県岩国基地に移し、沖縄以外の日本上空では初めての低空飛行訓練を四国で行いました。報道によると、初日の6日(水)は3機が午後1時10分ごろに普天間飛行場を離陸し、午後3時15分ごろから約20分間、高知県本山町や愛媛県新居浜市別子山の上空を東から西へ飛行する姿を住民や記者が目撃しました。7日は夜間訓練を行い、午後7時48分に3機が岩国基地を離陸し、約40分で基地に戻りました。愛媛県西条市新居浜市別子山では午後8時ごろ、プロペラ音や尾翼の赤いライトを記者や県職員が確認しました。3機は8日午後、岩国基地を離れ、普天間飛行場に戻りました。
 オスプレイは欠陥機の疑いが指摘され続けています。今回の訓練はいったん、九州上空で実施することが通告された後、直前になって四国上空に変更になりました。軍事訓練の性格上、事前に詳しいスケジュールが明らかになることもなく、関係自治体や住民が不安とともに訓練期間の日々を過ごしたことは容易に理解できます。本土での訓練は今後も予定されており、日本全国で同じようなことがあるでしょう。


 この訓練について、沖縄の琉球新報は7日付紙面の社説で取り上げ「沖縄の痛み共有する契機に」の見出しを取っています。前半の部分を引用、紹介します。

 米海兵隊普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが初めて本土での飛行訓練を始めた。山口県岩国基地に降り立つ前、和歌山と四国3県を通る飛行経路下にある高知県の山間地などで、低空飛行が確認された。 レーダーによる捕捉を避けるため、谷間を縫うように飛ぶ訓練形態は、危険性が高い。徳島県飯泉嘉門知事は「不安や懸念が払拭(ふっしょく)されない中での訓練強行は遺憾」とコメントした。本土でも自治体を中心に不安の声が高まるのは当然だ。
 だが、沖縄県民の思いは複雑だ。今回の訓練は3日間だが、沖縄では年中、オスプレイが傍若無人に飛び交い、住民生活に深刻な影響を及ぼしている。この日も県内ではオスプレイが訓練飛行した。
 本土での訓練は、本土の国民が、安全保障の負担を負う当事者意識を持つことができるかを問い直している。岩国基地前では、市民団体が「岩国にも、沖縄にもオスプレイはいらない」と訴えた。
 過重に基地が集中する沖縄の痛みを共有し、日本全体で分かち合う機運が高まり、撤収要求のうねりにつながることを望みたい。

琉球新報 3月7日社説「本土で初訓練 沖縄の痛み共有する契機に」
 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-203645-storytopic-11.html

 琉球新報の同じ紙面には、普天間飛行場の県外移設を求めている沖縄県仲井真弘多知事が、この訓練について「沖縄で日常茶飯事に飛んでいることを考える何か(機会)になれば、もう少し沖縄の基地問題について、他県の理解をいただけるのではないか」と述べたことを伝える記事も載っています。
 このブログではこれまでにも、沖縄の過重な基地負担に対する沖縄と本土のマスメディア間の意識の段差、落差に触れてきました。琉球新報の社説の中にある「本土の国民が、安全保障の負担を負う当事者意識を持つことができるかを問い直している」という指摘は、マスメディアのありように置き換えれば、本土のマスメディアが沖縄の過重な基地負担と国家全体の安全保障の関係をどう報じるのかが問われている、ということでもあるのだろうと、わたしは受け止めています。
 そうしたことも念頭にわたしは、この訓練のことを本土マスメディアがどう報じたか、とりわけ「沖縄」にどう言及したか(言及しなかったか)に留意して、報道を見ていました。備忘を兼ねて、わたしが住む関西の新聞各紙の主な記事を書き留めておきます(全国紙は注記のない限り、大阪本社発行の最終版です)。訓練空域になった和歌山から四国は、全国紙はいずれも大阪本社のエリアになっています。岩国基地のある山口県は九州と同じ西部本社のエリアです。

朝日新聞
▽7日付朝刊
1面囲み・全5段「オスプレイ四国上空に」「本土初 低空訓練」写真3段
第2社会面見出し3段「四国の空 不安飛び交う」「オスプレイ『夜間・低空やめて』」写真、地図
第2社会面2段「90年代 2度墜落事故」(オレンジルート)
▽8日付朝刊
社会面3段「愛媛で夜間低空訓練か」「オスプレイ2機、岩国から」
▽9日付朝刊(最終版の前の13版)
第2社会面3段「『頭上の脅威』本土も」「オスプレイ初訓練終了 情報不足懸念」写真2段

毎日新聞
▽7日付朝刊
1面見出し3段「オスプレイ四国横断」「本土初訓練 高知・愛媛で目撃」写真4段
第2社会面囲み・全7段「『とにかく情報を』」「四国の自治体職員監視」
▽8日付朝刊
2面(総合面)4段「オスプレイ本土夜間訓練」※写真は1面題号下の「NewsClick」

【読売新聞】
▽7日付朝刊
1面見出し3段「オスプレイ四国飛行」「本土初訓練」写真4段
第2社会面3段「詳細分からず困惑」「オスプレイ訓練 四国自治体など」
▽8日付朝刊
社会面2段「オスプレイ夜間訓練」「本土初 愛媛・西条で目撃」

日経新聞
▽7日付朝刊
社会面囲み全6段「オスプレイ低空飛行訓練開始」「自治体、情報収集急ぐ」写真2段
▽8日付朝刊
社会面2段「オスプレイが本土夜間訓練」写真2段

産経新聞
▽7日付朝刊
第2社会面見出し横1段「オスプレイ本土初訓練」「四国など低空飛行」写真1・5段
▽8日付朝刊
第2社会面2段「オスプレイ初の夜間訓練」「岩国基地、離着陸繰り返す」

京都新聞
▽7日付朝刊
1面見出し4段「オスプレイ 四国で低空訓練」写真4段
3面(総合面)囲み・全6段「負担軽減まやかし『まやかし』」「沖縄、政府に不快感」「飛行ルート住民 日常化に募る不安」写真2段
5面(政治面)3段「政府、詳細把握せず」「米に安全運航要請」
社会面4段「低空飛行『安全なのか』」「ルート住民、表情曇る」写真2段(岩国の抗議行動)
▽8日付朝刊
2面(総合面)4段「初の本土夜間訓練」「オスプレイ 愛媛で確認」写真3段、地図

神戸新聞
▽7日付朝刊
第2社会面見出し4段「オスプレイ 初の本土訓練を開始」「岩国で住民ら抗議行動」写真3段
▽8日付朝刊
第2社会面2段「オスプレイが本土夜間訓練」「愛媛で飛行確認」写真3段、地図
社説「オスプレイ 不信募るなし崩しの訓練」