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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

新聞労連の就活支援〜朝日「Journalism」3月号にリポート

 朝日新聞社ジャーナリスト学校が編集、発行している月刊誌「Journalism」の3月号が、特集「メディア企業の採用と育成 2013」の中で、新聞労連の就職活動の学生向けの取り組みを紹介しています。新聞労連書記の加藤健さんが7ページのリポートを寄稿しています。わたしのコメントも載っています。
※Journalism 2013年3月号
 http://www.asahi.com/shimbun/jschool/report/1303.html
 新聞労連が現在行っている大学生、大学学院生向けの就活支援の取り組みは、わたしが委員長を務めた2004〜05年当時に原型が固まりました。柱は2つで、現役の新聞記者らが仕事や生活をビビッドに語る「新聞業界就職フォーラム」と、現役のデスク級の記者が講師になる作文ゼミナールです。フォーラムはわたしの前任者の時代の2004年2月に第1回を開催。作文ゼミは、2004年12月の第2回フォーラムの運営をボランティアで手伝ってくれた学生たちに、日当代わりにわたしがゼミナール方式の作文教室を受け持ったのが始まりです。
 労働組合がなぜ就活支援かについて、わたしは当時、まず第一に職業選びのミスマッチをなるべく減らしてあげたいと考えていました。加藤さんのリポートでも紹介されているのですが、当時、全国紙、地方紙を問わず若い新聞社の社員が早々に退職する事例が目につくようになっていました。記者が別の新聞社に移る例は以前からあったのですが、そうではなく全く新聞とは関係がない仕事に転職していくケースが相次いでいました。可能性の一つとして、就職前に抱いていた新聞の仕事のイメージと、実際の仕事や日々の生活との間の落差が大きいのではないかと考えました。就職活動に際して、実際に第一線で働いている組合員(新聞社の社員)のナマの体験談に接することで、新聞の仕事に、過剰な期待を排した等身大のイメージを持ってもらえるのではないか。そしてそのことが、ひいてはやる気のある若い仲間をわたしたちの職場に迎えることにつながるのではないか、と考えて、就活支援にはかなり力を入れて取り組みました。
 作文ゼミナールのことは、以前にこのブログでも紹介しました。わたしの後任の委員長の当時に、引き続きわたしもお手伝いすることにして複数クラスになり、その後も発展を続けて、加藤さんのレポートによると現在では東京で8クラス、学生54人が参加し、別に大阪でも学生24人が参加しているとのことです。
 ※参考過去エントリー
 「作文ゼミ同窓会」=2012年3月19日
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20120319/1332085816
 過去エントリーでも触れましたが、この作文ゼミの場が記者という職能を考え、議論する場として発展していけばいいなと思います。現状の新聞産業の中での記者の育ち方、育てられ方は、新聞社という企業の社員教育の中で行われています。その結果として、日本の新聞記者の働き方は、新聞社に所属しているジャーナリストと言うよりは、新聞社の社員が会社から記者の肩書をもらっている色彩が強いとわたしは考えています。これに業績反映型の人事考課制度や賃金制度が組み込まれると、記者の働き方は企業の経営方針次第という傾向がいよいよ強まっていくでしょう。
 作文ゼミに今後も期待するのは、記者として働く前に、記者の仕事についていろいろと考え、議論した経験が、所属する新聞社やマスメディア企業の違いを超えて、同じ職能という意味での同僚として記者同士がつながっていける可能性を生むと思うからです。組織人、企業人として、所属する組織や企業の中で規律に従うのは当然としても、その一方で「ジャーナリスト」たらんことを追求する、その裏打ちとなる原体験の場として、今後も期待しています。
 また、結果的に新聞の仕事や記者の仕事に進まなかったとしても、将来にわたって良き新聞の読み手、情報の受け手になってくれると思います。そのことはわたしたちの社会のジャーナリズムのありようにとっても、意義深いことだと思います。