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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

「『植民地支配』怒る沖縄記者──全国紙は『ひとごと報道』か」琉球新報米倉外昭さんの問いかけ

 琉球新報記者で前新聞労連副委員長の米倉外昭さんの寄稿「『植民地支配』怒る沖縄記者──全国紙は『ひとごと報道』か」が日本ジャーナリスト会議(JCJ)のブログ「Daily JCJ」に掲載されています。
 米軍普天間飛行場名護市辺野古地区への移設計画をめぐり、3月12日に日本政府が辺野古沖のボーリング調査再開を強行して以降、沖縄県の翁長雄志知事がこの作業の停止を指示し、さらに農水相がその指示を無効とした、一連の沖縄県と日本政府の間の動きは、本土のマスメディアでも大きく報じられています。しかし、辺野古の現地で今も続く市民らの抗議行動の報道は、本土ではわずかです。沖縄の地元紙の沖縄タイムス琉球新報は連日、現地取材を続け、何が起きているのかを紙面のほかツイッターでも発信し続けています。
 以下に米倉さんの報告の一部を引用し、書きとめておきます。普天間飛行場辺野古への移設計画をめぐって今起きていることは、日本の民主主義のありようを問うのと同時に、本土マスメディアにとってはジャーナリズムのありようが問われていると、あらためて感じます。問題としてより深刻なのは、組織体としての各マスメディアがその自覚をどこまで持ち得ているか、なのだと受け止めています。  

 誰のために何を書くのか。そう自問しながら、沖縄の地元メディアの記者たちは名護市辺野古の現地で、国家権力のむき出しの暴力に目を凝らし続ける。
 琉球新報沖縄タイムスは2紙とも一線記者のほぼ全員がローテーションで連日現地に張り付く。抗議船団のうちの取材団を乗せるいわゆる「メディア船」は、通常記者1人、カメラマン1人。24時間態勢で監視を続けるキャンプシュワブのゲート前にも1人以上。写真部はさらに潜水取材や空撮取材もこなす。
 記者たちはそれぞれの持ち場のルーティンをこなしながら、当番の日は未明の真っ暗な中、自らハンドルを握って現地へと向かうのである。

 この1カ月だけを振り返っても、辺野古をめぐってあまりにも多くの出来事が起きた。
 大半の全国メディアは、工事の進捗、行政上・法律上の手続き、特に政府と沖縄県の対決とその行方など、いわゆる「落としどころ報道」にのみ向いている。「人ごと報道」と言ってもいいだろう。

 戦後70年の今、沖縄で日本政府が行っていることの重大さを自らのこととして考え、取材し、報道することができるのか。戦争への反省から出発したはずの日本の戦後ジャーナリズムは、いま崖っぷちに立っている。

※Daily JCJ「『植民地支配』怒る沖縄記者──全国紙は『ひとごと報道』か=米倉外昭」=2015年4月1日
 http://jcj-daily.seesaa.net/article/416605339.html


※参考過去記事
辺野古の今を伝える沖縄2紙のツイッターアカウント」=2015年3月4日
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20150304/1425401054
 ▽沖縄タイムス辺野古取材班 @times_henoko https://twitter.com/times_henoko
 ▽琉球新報辺野古問題取材班 @henokonow https://twitter.com/henokonow