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「大阪都構想」投票1週間前、「反対」が「賛成」上回る

 大阪市を廃止し五つの特別区を新設する「大阪都構想」について、大阪市民に賛否を問う住民投票が5月17日に実施されます。投票まで1週間のタイミングで、大阪市民を対象にした世論調査の結果が、東京発行の11日付の新聞紙面でもそろって紹介されました。反対が賛成を上回ることで一致しています。しかし、大阪都構想を掲げる橋下徹大阪市長の地元での人気は、ほかの地域ではみられない独特のものがあります。あと数日間、予断は禁物だと思います。
 記録の意味で、マスメディア各社の世論調査結果を書きとめておきます。

朝日新聞朝日放送:9、10日実施 反対43%、賛成33%
毎日新聞:9、10日実施 反対47・8%、賛成39・5%
▼読売新聞:8―10日実施 「反対が賛成を上回った」 ※「区割り案について」は反対50%、賛成34% 


 この構想はもともとは、大阪市ばかりでなく堺市も解体して特別区を設置し、東京都のような組織に再編するとの内容で、大阪府知事時代からの橋下氏の持論でした。この構想の実現を旗印に、大阪府議会や大阪市議会、堺市議会の自民党議員らが離党し、橋下氏の下に集まって立ち上げたのが地域政党である「大阪維新の会」です。そして、地元・大阪での圧倒的な人気を背景に、国政進出のために「日本維新の会」が発足し、曲折の末に今日の「維新の党」へ連なっています。橋下氏は「維新の党」では最高顧問の肩書で、国政とは距離を置き大阪都構想の実現に専念するとしていますが、党内に強い求心力を持つことには異論がないでしょう。仮に大阪都構想住民投票で否決されるならば、橋下氏の政治家としての信条が大阪市民に拒否されたも同然となります。そのことは大阪維新の会の存在意義、拠って立つ価値観そのものを揺るがすことになり、ひいては維新の党にも大きな影響を与えることになるだろうと思います。
 勤務先の人事異動で昨年春に大阪を離れるまでの3年間、わたしの仕事の上での最大関心事の一つが橋下氏と大阪維新の会の動向であり、大阪都構想の帰趨でした。わたし自身は、この構想は堺市の離脱が確定的になった時点で、本来の内容と趣旨から変質していたのではないかと考えています。目指していたのは、大阪全体の統治構造を変革して、東京に匹敵し、国際都市間でも競争力を持つ広域自治体に大阪を作り変えることだったのではないかと、わたしなりに理解しています。ひと口に「大阪都構想」と言っても、政策としてまとまる以前のアイデアの段階から、今回の住民投票の対象になっているいわば「確定案」「最終案」の段階まで、その内容にも幅があるのだとは思いますが、世に知られるようになったもともとの段階では、大阪市堺市という二つの政令指定都市、さらには場合によってはその周辺のいくつかの都市も含めての特別区への再編構想だったはずです。ダイナミックな発想でした。しかし2013年9月の堺市長選で、構想に明確に反対を掲げた現職の竹山修身氏が大阪維新の候補を大差で破って再選され、現実には大阪市のみの解体・再編案にとどまることとなりました。
 昨年春に東京に移ってからは、当然のことですが、大阪都構想や橋下氏、大阪維新の会について、わたしが接する情報量(街を行きかう人々の会話といったものも含めて)も、日々手に取る新聞紙面に載る記事の量も減りました。大阪市の廃止と特別区の設置だけで、当初描かれたような大阪の活性化は実現可能なのかどうか。そうした点も含めて、大阪市民がどんな判断を示すのか、また可否どちらの結果にせよ、マスメディアがどのように報じるのか、どんな分析と解説を示すのか、注目しています。