ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

19日付の在京各紙朝刊の記録

 前回の記事(「民意の支持を欠いた安保法制は発動されていいのか」)の続きです。
 9月19日未明に安全保障関連法案は参院本会議で採決に進み、可決されました。新たな安保法制の成立で、集団的自衛権の行使や他国軍への後方支援などが国家の仕組みとして可能になりました。
 可決は午前2時15分を回っていたようで、19日付朝刊に「可決」が入ったのは一部の地方紙に限られるようです。手元で確認した東京発行の19日付朝刊各紙(14版ないし15版)は以下の写真のように、みな「成立へ」にとどまりました。新聞には朝の配達時間を考慮し、制作工程に原稿の入稿の締め切りが設定されています。前夜(19日未明)は通常とは異なる特別の措置として、締め切りをふだんより伸ばしましたが、それでも午前1時50分で終わりでした。ただ、その時刻には参院本会議は法案の採決手続きに入っており、可決するのはほぼ確定していたので、掲載されている記事、特に論評系の記事には「成立」を前提として読んでも違和感はないものが多くあるようです。

 各紙の主見出しの紹介は写真に譲るとして、以下に各紙の主な署名論評記事や社説の見出しを書きとめておきます。

朝日新聞
「民意軽視の政治 問い続ける」長典俊・ゼネラルエディター
社説「安保法案と国会 熟議を妨げたのはだれか」抵抗に理はある/何でも決めていいか/社会の骨組みの危機
毎日新聞
「国家の過ちに謙虚であれ」小松浩・論説委員
社説「安保転換を問う 安全保障法案成立へ 憲法ゆがめた国会の罪」言論封じる言論の府/安倍手法を自公後押し
東京新聞
「不戦の遺志貫こう」深田実・論説主幹
社説「『違憲』安保法制 さあ、選挙に行こう」公約集の後ろの方に/『奴隷』にはならない/民意の受け皿つくれ


【読売新聞】
「戦渦を防ぐ新法制」田中隆之・政治部長
社説「安保法案成立へ 抑止力高める画期的な基盤だ 『積極的平和主義』を具現化せよ」国際情勢悪化の直視を/国民への説明は続けよ/防衛協力を拡充したい
産経新聞
「中国の脅威 抑止力強化」(視点・峯匡孝記者)
※関連の社説(「主張」)なし


日経新聞
社説「どう使うかで決まる安保法の評価」求められる国際貢献/対話も同時に進めよ



 沖縄の琉球新報のサイトには電子号外がアップされています。沖縄でも18日午後、安保法案の廃案を訴えようと、那覇市の県庁前で県民集会「戦争法案廃案! 辺野古新基地建設断念! 安倍政権退陣! 9・18沖縄集会&国際通りデモンストレーション」が開かれ、主催者発表で1500人が集まったと同紙は報じています。
 ※琉球新報「安倍政権に絶望 県庁前、安保法案反対に1500人怒りの声」=2015年9月19日
 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-249123-storytopic-3.html
 その沖縄では、米軍普天間飛行場の移設問題をめぐって、沖縄県内世論の支持を受けて名護市辺野古への新基地建設に反対する翁長雄志知事と、建設を強行する安倍晋三政権との対立がいよいよ深まっています。今回成立した安保法制と沖縄の基地問題は根がつながっています。沖縄の過剰な基地負担を前提に日米の軍事同盟は築かれており、その機能強化を図ったのが新たな安保法制です。本土に住む日本国の有権者は今後一層、この二つの問題を一つの視野に入れて考えていくことが必要だと思います。そのために本土マスメディアは、沖縄で何が起こっているかを今まで以上に伝えていかなければならないと思います。