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在京紙の報道ぶりが報じられることの意味〜「辺野古で本体工事着工」の扱いを沖縄タイムスが記事化

 沖縄の米軍普天間飛行場移設問題で、日本政府が10月29日、名護市辺野古の新基地計画の予定地で埋め立て本体工事に着手しました。沖縄県の翁長雄志知事は「強権的だ」と激しく反発したと伝えられています。この出来事を東京発行の新聞各紙がどう報じたか、沖縄タイムスが31日付で報じています。ネットにもアップされています。

 ※沖縄タイムス辺野古本体着工、在京4紙が1面トップ」=2015年10月31日
 http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=139475

【東京】名護市辺野古の新基地建設で、政府が29日午前に埋め立て本体工事に着手したことを受け、在京の全国紙などは同日夕刊と翌30日朝刊で大きく扱った=写真。29日夕刊は朝日、毎日、読売、東京新聞の4紙が1面トップで、日本経済新聞も1面に掲載した。30日朝刊も産経新聞を含む全6紙が1面などで扱った。

 よく指摘されるように、沖縄の米軍基地をどうするかは日本国の安全保障の問題であり、沖縄という地域の固有の問題ではありません。辺野古への新基地建設を強行しようとしている安倍晋三政権は、日本国の主権者たる国民が選挙制度と議会政治を通して成り立たせている政権です。ですから、沖縄の人々の意に反して基地負担を続けさせようとしていることに対しては、個々人が安倍首相や政権を支持しているか否かにかかわらず、主権者たる国民一人一人が他人ごとのように無関心であることは許されない問題だろうと考えています。だから、沖縄以外のマスメディアが日本本土に住む日本国民に対して、基地をめぐって沖縄で何が起きているかを伝えることには大きな意味があります。
 沖縄タイムスが在京紙の報道ぶりを記事化していることは、日本本土のマスメディアの報道ぶりは、沖縄の人々からもチェックされているということです。沖縄の基地負担の問題をどうするのかを、本土の日本人がどう考えるのか、そのために本土のマスメディアはどんな情報と言説を発信していくのか。それらが沖縄の人々からも見られている、恐らくは厳しいまなざしを向けられていることを、本土のマスメディアで働く一人として忘れないようにしようと思います。
【写真説明】10月29日の東京発行夕刊各紙の1面(筆者撮影