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安倍改造内閣、なお「不支持」が「支持」上回る傾向~殊勝な首相、いつまで

 安倍晋三首相が8月3日に自民党役員人事と内閣改造を行ったことを受けて、マスメディア各社が3日から4日にかけて実施した世論調査の結果が報じられています。内閣支持率は各調査とも前回に比べて最大で9ポイントのアップ。内閣改造が一定の評価を得たと言えそうですが、4件の調査結果のうち3件は不支持が支持を上回っています。残り1件も良くて拮抗といったところです。 

・毎日新聞 「支持」35%(9P増) 「不支持」47%(9P減) 「関心がない」17%(±0)

・読売新聞 「支持」42%(6P増) 「不支持」48%(4P減)

・日経新聞 「支持」42%(3P増) 「不支持」49%(3P減)

・共同通信 「支持」44・4%(8・6P増) 「不支持」43・2%(9・9P減)

※カッコ内は前回比、Pはポイント 

 7月の世論調査での内閣支持率の急落、続落は、安倍首相自身への評価の低下が最大要因でした。そのことは安倍氏自身が重々承知しているようで、最近は低姿勢で殊勝な受け答えが目立ちます。8月3日の内閣改造後の記者会見でも、冒頭、森友学園、加計学園を巡る問題や防衛省のPKO日報問題で国民の不信を招いたとして「改めて深く反省し、おわび申し上げたい」と、約10秒間にわたって頭を下げました。そうした安倍首相を世論はどう評価したか、各世論調査の個別の設問への回答状況を見ると、まだ厳しい評価は続いているようです。

 例えば、内閣を「支持しない」と答えた人にその理由を尋ねたところ、毎日新聞調査では「安倍さんが首相だから」と答えた人は、前回の22%から33%に上昇しています。読売新聞調査では「首相が信頼できない」が54%に上りました。共同通信の調査でも、「首相が信頼できない」が前回比4・4ポイント増の56・0%に上っています。

このほか以下に、各調査の回答状況で目に付いたいくつかを書きとめておきます。

【内閣改造への評価】

・毎日新聞

 「(内閣に)期待が高まった」19% 「変わらない」48% 「期待できない」27%

・共同通信

 「評価する」45・5% 「評価しない」39・6%

【安倍首相について】

・毎日新聞 安倍首相の後任の自民党総裁について

 「安倍首相のままでよい」20% 「石破茂氏がふさわしい」21% 「岸田文雄氏がふさわしい」11%

・日経新聞 次の政権の首相にふさわしい人は

 「石破茂氏」22% 「安倍晋三氏」17% 「小泉進次郎氏」11% 「小池百合子氏」9% 「岸田文雄氏」9%

・日経新聞 来年9月の自民党総裁選で安倍晋三氏が3選され首相を続投することには

 「賛成」36% 「反対54%」

・共同通信 安倍首相の下での憲法改正に

 「賛成」34・5 「反対」53・4%

 さて、3日の会見で安倍首相は「安倍内閣はこれからも経済最優先だ」と強調しましたが、それよりも重要だと思ったのは、憲法改正について「スケジュールありきではない」と明言したことです。これまでは今年秋の臨時国会に自民党の改憲案を提出し、2020年に新憲法を施行するとの目標を掲げていましたが、修正しました。東京発行の新聞各紙も4日付朝刊では「改憲日程 首相が軌道修正」(朝日新聞)、「改憲日程ありき 否定」(毎日新聞)などと、この発言を4紙が1面トップの見出しに取りました。中でも産経新聞は脇見出しに「秋の提示方針 先送り」と踏み込みました。産経の記事によると、安倍首相側近の萩生田光一・自民党幹事長代理は3日夜、安倍首相の発言について記者団に「軌道修正した」と明言したとのことです。共同通信の配信記事も「秋の改憲案提示先送り/首相、日程ありき否定」と産経と同様に踏み込んだ見出しを取っており、地方紙の紙面に掲載されています。ひとまず、自民党の改憲案提出は先送りになったと受け止めていいように思います。

 しかし、だからといって安倍首相が改憲を自分の手で行うことをあきらめたわけではないでしょう。改憲勢力が衆参両院で、改憲発議に必要な3分の2超の議席を占めている状況は今も変わりはありません。何としても、自民党総裁3選を果たし、改憲を成し遂げたいはずです。だから今は、内閣支持率を回復させ、「安倍1強」の求心力を回復させることを全てに優先させるつもりなのでしょう。手堅い政権運営に努め、殊勝さを最大限にアピールするつもりなのだろうと思います。会見で10秒間、頭を下げたのはその手始めでしょう。それもこれも、自民党総裁選で3選を果たし、憲法改正を自分の手で実現させるためだと思います。その殊勝さが一時的なものか、そうでないのか。問われているのは、以前の数をたのんだ傲慢な政治姿勢が本当に変わったのかどうかでしょう。 

 以下に東京発行各紙の4日付朝刊での1面の本記(事実関係を書いた、中心になる記事)と、各社の政治部長らの署名記事、および社説の見出しを書きとめておきます、各紙が今回の内閣改造をどう受け止めているかがうかがわれるのではないかと思います。(いずれも東京本社発行の最終版)

 ▼朝日新聞

1面トップ本記「改憲日程 首相が軌道修正/自民原案『秋提出こだわらず』」

1面「首相自身は変われるのか」佐古浩敏・政治部長

社説「内閣改造 強肩と隠蔽の体質正せ」

▼毎日新聞

1面トップ本記「改憲 日程ありき否定/首相 原点回帰を強調/第3次改造内閣発足/『不信招きおわび』」

1面「首相の心構え一つだ」佐藤千矢子・政治部長

社説「安倍首相が窮余の内閣改造 政治姿勢も手法も変えよ」許されない疑惑隠し/アベノミクスの検証を

 ▼読売新聞

1面トップ本記「経済再生を最優先/首相 改憲『日程ありき』否定/第3次改造内閣」

1面「拝啓 安倍晋三様/信無くんば立たず」橋本五郎・特別編集委員

社説「安倍内閣改造 『経済最優先』で原点回帰せよ/堅実な布陣で負の連鎖断てるか」政策テーマの整理を/防衛省再建を急ぎたい/異論聞く度量が大切だ

 ▼日経新聞 ※1面トップは「トヨタ、マツダに出資」

1面本記「首相『最優先は経済再生』/第3次改造内閣発足」

3面「アベノミクス最後の機会」内山清行・政治部長

社説「改造内閣への注文(上) 政権への信頼回復こそが急務だ」政権のおごりへ批判/北の脅威、待ったなし

 ▼産経新聞

1面トップ本記「改憲『日程ありきでない』/秋の提示方針 先送り/首相、防衛大綱見直し指示」

社説(「主張」)「内閣改造 憲法改正へ歩み止めるな/北の脅威から国民を守り抜け」政権基盤の再構築急げ/暮らしの安定に注力を

▼東京新聞

1面トップ本記「首相が改憲姿勢 修正/『スケジュールありきではない』/第3次安倍第3次改造内閣発足」

「変わるのか、変わらないのか」金井辰樹・政治部長

社説「改造内閣が始動 憲法守る政治、今度こそ」真相の解明が先決だ/民主的手続きを軽視/政治姿勢改める必要

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