ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

「共謀罪」法案 在京紙の報道の記録(3) 6月7―11日

 「『共謀罪』法案 在京紙の報道の記録(2)」の続きです。
▽6月7日(水)
 朝日新聞毎日新聞は朝刊の社会面にそれぞれ「問う『共謀罪』」(朝日)、「『共謀罪』私はこう思う」(毎日)のタイトルのコーナーを設けて、様々な分野の人たちの意見を断続的に紹介してきています。この日も朝日は国際政治学者 三浦瑠麗さん、毎日は企業法務に詳しい弁護士の意見を掲載しました。東京新聞は反対運動や集会をこまめに取材して紹介しています。一方の読売新聞、産経新聞は、国会の動き。一般紙5紙のそれぞれの特徴がよく分かる朝刊でした。

◎6月7日(水)
【朝刊】
朝日新聞=記事2本
・4面「『共謀罪』審議 会期末へ攻防 小幅延長か 焦点」
・第3社会面(29面)問う「共謀罪」学問の世界から「安全と自由の両立、議論足りない」国際政治学者 三浦瑠璃さん(36)

毎日新聞=記事2本
・2面「『共謀罪』与党に強硬論 野党 内閣不信任案を検討 参院法務委」
・社会面(27面)「共謀罪」私はこう思う・反対「企業活動の停滞 懸念」弁護士 山中真人氏(43)

▼読売新聞=記事1本
・4面「会期末へ 民進徹底抗戦 参院法務委 委員長解任決議案」

産経新聞=記事1本
・5面「民進、テロ準備罪遅延戦術 参院法務委員長 解任決議案提出」

東京新聞=記事5本
・1面「『共謀罪』広がる音読 『国会審議は不条理』 再現劇 6・11全国一斉開催」/「反対署名144万人」
・3面「審議日程が窮屈に 『共謀罪』法案 『加計』問題 与党、延長に慎重」
・6面「『日本は国連から心配される国に』 『共謀罪』反対集会」
・特報面(24・25面)「強硬あおるネット世論 『内政干渉だ』擁護する声 国連特別報告 政府が猛反発 重なる『リットン調査団』対応/書き込み 実は少数派 『炎上』参加わずか1% 目立つ『1人が何度も』 国内と世界 視点の溝 深まる」

日経新聞=記事2本
・4面「国会 大幅延長見送り 加計問題、早期幕引き図る 政府・与党方針 受動喫煙法案の成立断念」/「内閣不信任案を検討 野党、週内にも党首会談」


【夕刊】
朝日新聞=記事1本
・2面「委員長の解任決議案を否決 参院本会議『共謀罪』審議巡り」

毎日新聞=記事1本
・1面「法務委員長解任案 否決 『共謀罪』与党審議急ぐ 参院本会議」

▼読売新聞=記事1本
・3面「法務委員長の解任案を否決」

東京新聞=記事1本
・1面「法務委員長解任案 否決 参院

日経新聞=記事1本
・3面「参院法務委員長 解任案を否決 『共謀罪』の審議再開へ」

▽6月8日(木)
 朝日新聞の夕刊の文化面に、「共謀罪」法が成立した後の近未来を描いた演劇の紹介記事が載りました。主見出しは「『共謀罪』の怖さ 笑いで描く」。東京新聞は社会面に、映画の専門誌「キネマ旬報」が戦前の治安維持法の特集を組む、との記事を載せています。「多様な意見や情報を紹介しているか」という命題は、政治だけではなく文化の面の報道でも存在するように感じます。

◎6月8日(木)
【朝刊】
朝日新聞=記事2本
・4面「『共謀罪』きょう審議再開 参院 委員長解任案を否決」
・第2社会面:問う「共謀罪」学問の世界から「空気読まない者に疑いの目が向かう」文学者 小澤俊夫さん(87)

毎日新聞=記事1本
・5面「会期小幅延長へ 与党『共謀罪』法案成立期す」

▼読売新聞 ※見当たらず

産経新聞=記事2本
・1面「国会会期延長 不可避 テロ準備罪優先 与党、1〜2週間」
・5面「与野党攻防 最終章へ 自民 刑法改正案成立を重視 民進 審議遅延戦術ちぐはぐ」

東京新聞=記事1本、社説
・2面「『共謀罪』きょう審議再開 参院 廃案へ野党党首会談」
・社説「『共謀罪』と条約 政府の説明は崩れた」

日経新聞=記事1本
・4面「党首討論 初のゼロ 政治主導へ改革遠く 通常国会、野党が予算委優先」/「民進などの野党 きょう党首会談 内閣不信任案など協議」


【夕刊】
朝日新聞=記事3本
・1面「加計巡り内閣不信任検討 野党4党『共謀罪』の審議再開」
・3面(文化)「『共謀罪』の怖さ 笑いで描く 劇団チャリT企画が新作」
・社会面(15面)問う「共謀罪」・「疑問4コマで迫る 横浜の漫画家 SNS拡散」

毎日新聞=記事1本
・8面(総合面)「内閣不信任案の提出視野に協力 野党4党首一致」

▼読売新聞=記事1本
・3面「4野党が党首会談 内閣不信任も視野」

東京新聞=記事2本
・2面「『共謀罪』廃案へ連携 4野党党首『内閣不信任案も視野』」
・社会面(9面)トップ「『共謀罪』に危機感反映 治安維持法キネマ旬報』が特集 学問の自由を弾圧 思想犯として摘発 『黒沢監督ら先人の思い今こそ』」

日経新聞=記事1本
・1面「政府・与党、会期小幅延長へ 内閣不信任案検討 野党4党首が一致」

▽6月9日(金)
 朝日、毎日、東京の3紙が、そろって国会の質疑の詳報を掲載しました。質疑の詳報は、その作業を担当する記者が必要になりますし、紙面上も大きな紙幅を割きます。そうしてでも、読者に伝える必要がある、意味があると新聞社が判断しています。対して、読売新聞は政府見解のみ、産経新聞は記事自体が見当たりません(見落としの可能性はありますが)。この日も新聞の「2極化」がよく表れた各紙紙面だったと感じます。

◎6月9日(金)
【朝刊】
朝日新聞=記事5本、質疑詳報
・3面「『共謀罪』条文あいまい 『2人以上で計画した者』処罰対象 説明変転 『準備行為』何が該当 審理不足」/「国連報告者の懸念『追って対応』」
・4面「国会会期末へ 攻防激化 『共謀罪』対向の構え 野党4党、内閣不信任案を検討」/焦点採録参院法務委員会「労組への配慮規定 あえて置かず 刑事局長」※質疑詳報
・第2社会面(30面)問う「共謀罪」学問の世界から「時間切れの多数決 やっちゃいけない」教育評論家 尾木直樹さん(70)/「国内外の142団体 法案に反対表明 平和問題NGOら」

毎日新聞=記事2本、質疑詳報
・2面「『共謀罪参院委審議再開 民進・共産 攻勢強める」
・25面(第3社会面)「共謀罪」私はこう思う・反対「監視社会 さらに加速」元北海道警釧路方面本部長 原田宏二氏(79)/「『共謀罪』廃案を環境団体ら声明 14カ国142団体賛同」/参院委『共謀罪』法案 論戦ポイント ※質疑詳報

▼読売新聞=記事1本
・3面「『継続的な結合体』に適用 政府見解 参院法務委で審議再開 テロ準備罪」

産経新聞 ※見当たらず

東京新聞=記事4本、質疑詳報
・2面「周辺社も処罰対象 法相見解 一般人と協会曖昧 『共謀罪』」/「法案英訳 国連報告者に未提供 外務大臣『追って対応』」
・6面:参院法務委 論戦のポイント ※質疑詳報
・特報面(24、25面)「80年前 信念が罪に 末永敏事 『思想犯』にされた医師 拙者は反戦主義 治安維持法下の犠牲 『普通の市民』一変/痛恨の過去学ばぬ政府 拡大解釈の捜査横行『共謀罪』でも懸念 『維持法は適法』法相発言に反発も」
・第2社会面(26面)「『市民運動萎縮する』 『共謀罪』に反対声明 NGO4団体」

日経新聞 ※見当たらず

【夕刊】 ※見当たらず

▽6月10日(土)
 各紙とも天皇退位の特例法成立で大展開の朝刊でした。その中で「共謀罪」関係では、国連特別報告者のケナタッチ氏が日弁連のシンポにスカイプで参加したことを朝日、毎日、東京の3紙のほか、産経新聞もごく短く報じました。東京新聞は見出しが丁寧です。

◎6月10日(土)
【朝刊】
朝日新聞=記事2本
・第3社会面(37面)問う・「共謀罪」学問の世界から「科学者の思想 裁かれた歴史も」宇宙物理学者 池内了さん(72)/「『共謀罪』法案は『非常に危険』 国連報告者、シンポで警鐘」

毎日新聞=記事1本
・第3社会面(28面)「警察の監視活動 監督必要と提言 共謀罪国連報告者」

▼読売新聞=記事1本
・4面「参院委 テロ準備罪 自民来週採決提案」

産経新聞=記事1本
・第3社会面(24面)「国連報告者『政府は質問答えるべきだ』」※短信

東京新聞=記事2本
・2面「『共謀罪』で自民 来週の採決提案」
・社会面(27面)「『共謀罪』プライバシー保障措置を 国連特別報告者ケナタッチ氏 日弁連シンポ 電話参加」

日経新聞 ※見当たらず

 10日付朝刊は重要なニュースが多い紙面でした。その中で、各紙がどのニュースを、どんな見出しで、どんな優先順位で伝えたか、各紙それぞれの1面掲載の記事の見出しを書きとめておきます。

◎6月10日付朝刊
朝日新聞
1「象徴天皇 初の退位へ/来年12月か19年3月軸/特例法が成立」
2「加計文書 職員の報告放置/当初の調査後『省内に保管』/文科省再調査」
3「英与党 過半数割れ/総選挙 メイ首相は続投を表明」

毎日新聞
1「陛下退位 実現へ/特例法が成立/皇太子さま 来年末にも即位」
2「英総選挙 与党過半数割れ/メイ首相続投へ」
3「内閣府は行わず/加計文書 文科省再調査へ」

▼読売新聞
1「元号選定 本格化/天皇退位特例法 成立」
2「英保守党 過半数割れ/総選挙 EU離脱 影響必至」
3「柔道・卓球混合など追加/全339種目が決定/東京五輪
4「加計文書 再調査結果 会期中に」

日経新聞
1「英総選挙、与党が敗北/EU強行離脱に影/メイ首相、続投表明」
2「天皇退位時期 2案軸/18年2月末 19年4月1日/来年通常国会後に判断」
3「WD、日米連合入り協議/東芝と再会談、なお平行線」※WD=ウエスタンデジタル社

産経新聞
1「譲位 200年ぶり 上皇/特例法成立 今夏に皇室会議天皇誕生日 2月23日」
2「英与党 過半数割れ/総選挙 メイ首相続投表明」
3「柔道混合団体など新種目/東京五輪 バスケ3人制、卓球混複も」
4「領収書改竄 指示認める/除染費不正 安藤ハザマ社長謝罪」

東京新聞
1「天皇陛下 上皇に/退位 来年末にも/特例法 成立」
2「文科省『加計再調査』、内閣府は『行わず』/認定前 今治市と再三協議/獣医学部新設で特区担当」
3「英与党 過半数割れ/総選挙 メイ首相 続投に意欲」


▽6月11日(日)
 新聞各紙とも日曜日の朝刊には読書面を設け、新刊書の書評や話題の本の紹介記事を載せています。地方紙も含めて、多くの新聞に共通しています。朝日新聞はこの日、読書面でも「共謀罪」の特集記事を掲載。京都大の高山佳奈子教授が「共謀罪」法案を批判する立場から何冊かの本を紹介しました。

◎6月11日(日)
【朝刊】
朝日新聞=記事3本
・1面「辺野古も『共謀罪』もNO」※国会周辺の辺野古移設・「共謀罪」反対集会・写真
・読書面(11面)ひもとく「共謀罪京都大学教授(刑法)高山佳奈子「監視拡大 民主主義の危機」/テロとは無関係/背景に米の圧力
・第2社会面・問う「共謀罪」学問の世界から「政府の狙いは隣人を密告するマインド」哲学者 内田樹さん(66)※学者たちに聞くシリーズは終わり

毎日新聞=記事1本
・2面「政府、国連と溝 特別報告者見解 相次ぎ反論 『共謀罪』、秘密保護法 日韓合意見直し」

▼読売新聞=記事1本
・4面「会期延長幅 悩める自民 『加計』問題 批判集中を懸念 与野党攻防 最終盤へ」

産経新聞 ※見当たらず

東京新聞=記事1本
・1面・声 国会前「『共謀罪』廃案へ訴え」※国会周辺の辺野古移設・「共謀罪」反対集会、写真も

日経新聞 ※見当たらず

■6月7日〜6月11日の掲載記事数(朝刊のみ)と5月30日からの累計

朝日新聞:記事14本、質疑詳報1本 累計・記事26本、質疑詳報3本、社説1本

毎日新聞:記事7本、質疑詳報1本 累計・記事16本、質疑詳報3本

・読売新聞:記事4本 累計・記事10本

産経新聞:記事4本 累計・記事8本

東京新聞:記事13本、質疑詳報1本 累計・記事43本、質疑詳報4本

日経新聞:記事3本 累計・記事11本