証言拒否56回、佐川前国税庁長官の不誠実

 少し時間がたちましたが、備忘を兼ねて書きとめておきます。大阪の学校法人森友学園への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざん問題で、佐川宣寿・前国税庁長官の証人喚問が3月27日、衆参両院の予算委員会で行われました。国有地が不当に安く森友学園に売却された疑惑が昨年2月に表面化し、国会でも取り上げられた当時の財務省理財局長。麻生太郎財務相からは、改ざん問題の責任者と名指しされる立場でしたが、決裁文書に関わる質問に対しては証言拒否を連発しました。その一方で、安倍晋三首相や妻の昭恵氏、首相官邸の指示はなかったと断言しました。最後は「国民が知りたい真相が解明されたと思うか」と問われ「どういう経緯でだれがやったか答えていないので、満足できないだろう」と答えざるを得ず、この証人喚問では疑惑は解明されていないことを自ら認めるありさまでした。各マスメディアは証言拒否の回数を独自にカウントしました。共同通信が報じた「56回」が最多のようです。

 安倍晋三政権や自民党は以前から、全ての責任を佐川前長官に押し付けようとする姿勢を示していました。例えば15日の参院財政金融委員会では、安倍首相に近い西田昌司自民党参院議員は「『佐川事件』の真相解明が第一だ」と「佐川事件」と言い、麻生財務相は前長官を呼び捨てにして「この一連の佐川の件」と呼んだと報じられていました。その中での証言拒否の連発は、自ら進んで政権と自民党が描く構造を受け入れようとするかのようにも感じます。

 もとより証言拒否は、議院証言法で認められています。憲法38条が「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」と定めていることに鑑みれば、刑事訴追を受ける恐れがあることを理由とした証言拒否権もまた、誰であれ認められてしかるべきものでしょう。しかし、そのことを踏まえてもなお、この乱発としか言いようのない証言拒否にわたしは釈然としません。それは、佐川前長官に証言が求められた事柄が、公務員が手掛けた公務そのものだからです。

 一方で憲法は15条2項で「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」と定めています。既に職を辞したとはいえ、公務員として手掛けた公務のことについて、全体の奉仕者としての自覚が残っているのであれば、包み隠さず話すべきではないのかと思います。ましてや、舞台は主権者である国民の負託を受けた国会です。もちろん、証言拒否は法で認められた権利ですので、この「包み隠さず話すべきだ」というのは、公務員としての職業倫理のような論点にとどめるべきなのかもしれません。しかし一方で、証言拒否は自分や近親者が刑事訴追や有罪判決を受けるおそれがある場合にしか認められていません。財務省の局長だったキャリア官僚が、それを国会で話してしまえば自分が罪に問われるかもしれないということを理由に挙げて、自らが手掛けた公務について国会の場で口を閉ざしてしまうことは、つい最近まで「全体の奉仕者」だった者として、少なくとも「立派な態度」とはわたしには思えません。あくまでも公務員の道義上、倫理上の観点からの個人的な感想ですが、不誠実としか言いようがないように思います。 

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 写真は3月28日付の東京発行の朝刊各紙です。

 朝日、毎日、東京、日経は前長官の「証言拒否」を主見出しに取りました。読売は、前長官が、改ざんは理財局の中で行ったと話したことを、産経は首相官邸から改ざんの指示はなかったと証言したことを、それぞれ主見出しにしました。

 ニュースバリューは証言拒否か、首相や官邸の指示を否定したことかで、各社の判断が二つに分かれました。