ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

そして6月12日、米朝首脳会談へ~文在寅大統領に感じる平和への強い意志 ※追記:焦点は「非核化」「体制保証」

 5月26日にアップした記事の続きになります。
 韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長は26日に板門店で会談。27日になって南北双方から、北朝鮮が6月12日の米朝首脳会談を目指すことに変わりはないことが公式に表明されました。共同通信によると、北朝鮮中央通信は金委員長が文大統領に「6月12日の米朝首脳会談開催への『確固たる意志』を表明した」と伝えています。トランプ米大統領もホワイトハウスで記者団に、文大統領と金委員長の会談の結果を高く評価し、いったんは中止と発表したシンガポールでの米朝首脳会談を予定通りに開催することを目指す考えを示したとのことです。

※47news=共同通信「米朝首脳、6月12日会談へ意欲 正恩氏『確固たる意志』を表明」2018年5月27日
 https://this.kiji.is/373206036188054625?c=39546741839462401

 【北京、ソウル、ワシントン共同】北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は26日、韓国の文在寅大統領との南北首脳会談で、朝鮮半島非核化の実現へ努力していくことで一致、6月12日の米朝首脳会談開催への「確固たる意志」を表明した。朝鮮中央通信が27日伝えた。トランプ米大統領は26日、ホワイトハウスで記者団に南北会談の結果を高く評価、自ら中止を発表したシンガポールでの米朝首脳会談の当初予定通りの開催を目指す考えを示した。米朝は近く実務協議を行う見通しだ。
 文氏は27日、記者会見し、金氏が4月の南北首脳会談に続いて「朝鮮半島の完全な非核化」の意思を明らかにしたと発表した。

 やはり水面下では様々なレベルで駆け引きが続いているのでしょう。ひとまずは元のレールに戻りましたが、実際に米朝首脳が顔を合わせるまでは、何が起きるか分からない、予断を許さない状況が続きそうです。

f:id:news-worker:20180527174130j:plain

 写真は朝日、毎日、読売の東京発行3紙の27日付朝刊1面です。毎日と読売が掲載した写真は、満面の笑みで抱き着いてくる金正恩委員長を苦笑しながら文在寅大統領が受け止めているように見える構図です。この両首脳の抱擁写真から感じるのは、朝鮮半島に二度と戦火は起こさせないという文氏の強い意志です。そのために、頓挫しかけた米朝首脳会談を何としても実現させようと、金委員長の申し出に応じて手を差し伸べ、再びトランプ米大統領との橋渡し役を担いました。日本の報道の中で紹介された韓国の識者のコメントに「文在寅は米朝首脳会談の仲介者から推進者に変わった」との指摘があったことが印象に残ります。

 思い起こせば昨年秋、トランプ大統領が北朝鮮への軍事力行使も含めて「すべての選択肢がテーブルの上にある」と繰り返し口にし、日本でも安倍晋三首相が「国難突破解散」などと危機を喧伝し、河野外相が北朝鮮との断交を他国に要求したりしていたときでも、文大統領は「決して再び朝鮮半島で戦争は起こさせない」と訴えていました。その平和への信念は、今日に至るもいささかの揺るぎもないと感じます。朝鮮半島の完全な非核化を成し遂げるためにも、南北がいつでも対話できる関係にあることはプラスの要因なのだと、今回の2度目の南北首脳会談をみて感じます。
 日本にとって北朝鮮の核放棄、そして拉致問題の解決が最重要の課題であることは明白です。それとともに、朝鮮戦争の名実ともの終結と朝鮮半島の永続的な平和も重要な課題だとわたしはとらえています。南北分断以前、日本が植民地統治していた現代史に即して、世代が変わっても日本人の1人として、朝鮮半島の平和に当事者性があることを意識しながら、今後の推移を注視していきたいと思います。

※追記 2018年5月28日8時30分

f:id:news-worker:20180528081218j:plain

 5月28日付の東京発行新聞各紙の朝刊1面です。トップは北朝鮮情勢でそろいました。見出しはそれぞれですが、6月12日の米朝首脳会談開催へ向けて事態が再び動き出したことを各紙とも伝えています。焦点は「非核化」と「体制保証」「経済協力」です。
 各紙の1面本記の見出しを書きとめておきます。
 ・朝日「米朝首脳、会談へ意欲/『正恩氏、完全非核化の意志』/文氏、南北会談を説明」
 ・毎日「6・12会談 米朝前向き/非核化の意思焦点/南北会談 正恩氏要請」
 ・読売「正恩氏が非核化意思/文氏明かす 体制保証を『心配』/南北再会談」
 ・日経「米朝、非核化を協議/トランプ氏 6・12会談視野/金正恩氏 実現へ強い意欲」
 ・産経「米朝 6月12日会談意欲/駆け引き、トランプ氏主導/正恩氏、文氏に『非核化意思』/元駐韓米大使、北朝鮮入り」
 ・東京「米朝会談開催へ再調整/金正恩氏『会談に向け確固たる意志』/文在寅氏『非核化なら米は経済協力』/トランプ氏『南北の交渉うまくいった』」

 毎日、日経は週末の世論調査結果も掲載。安倍晋三内閣の支持率は落ちずに横ばいですが、不支持が支持を上回る状況は続いています。