「それが分かれば苦労せんのです」で済むのか~公文書改ざん、麻生太郎財務相の政治責任

 森友学園の国有地売買を巡り、財務省は6月4日、公文書改ざんの調査報告書を公表しました。共同通信の出稿記事によると、改ざんは当時の佐川宣寿理財局長(前国税庁長官)が方向性を決め、理財局総務課長が中核的な役割を担ったと認定。国会審議の紛糾を恐れ、回避するのが動機だったとしています。関係者20人の処分も発表しました。
 ※47news=共同通信「改ざんで佐川氏停職、20人処分 財務省調査報告、首相忖度に含み」2018年6月4日
 https://this.kiji.is/376242795201152097?c=39546741839462401 

 財務省は4日、学校法人「森友学園」を巡る決裁文書改ざんの調査報告書を発表した。改ざんは当時理財局長だった佐川宣寿前国税庁長官が方向性を決め、中村稔理財局総務課長が中核的な役割を担ったと認定。国会審議の紛糾を恐れ、回避するのが動機だったと説明した。佐川、中村両氏の停職をはじめ関係者20人の処分も発表。森友との交渉記録廃棄は安倍晋三首相が夫妻の関与を全面否定した昨年2月の国会答弁などがきっかけだとし、首相への忖度を読み取れる内容となった。
 麻生太郎財務相は記者会見し「極めて不適切だった」と陳謝。一方で「進退は考えていない」と述べ、続投を表明した。 

 麻生財務相が職にとどまることに疑問を感じます。
 公文書改ざんは民主主義社会の土台を破壊する行為です。主権者が国のありようにかかわることを知ることも、検証することもできなくなります。それを理財局長が主導しながら、仮に大臣がそのことをうすうすでも知りながら放置していたとすれば論外。逆にまったく気付きもしなかったとすれば、それだけでも省内の最高責任者としての資質や能力が問われる事態です。
 佐川前理財局長は麻生財務相も出席していた国会の場でぬけぬけと事実に反した答弁を行い、役所ではせっせとつじつま合わせの改ざんを行っていました。答弁の不自然さに対する批判は、麻生財務相も国会で直接、耳にしていたはずです。仮に、大臣が省内を厳格に掌握していれば、不正が進行していたまさにその時に、不正に気付くことができたかもしれないし、不正があればそれを見抜くことも大臣たる者に期待されて当然のはずです。麻生財務相は4日の会見で、何が不正の動機なのかを問われると「それが分かれば苦労せんのですよ」と言い放ちました。真相を解明できないままであることを認めているのです。この期に及んで、そんなふうに開き直ってしまっている麻生財務相のままで、再発防止を期して綱紀粛清が進むことが期待できるでしょうか。

 5日付の東京発行新聞各紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)朝刊は、日経を除く5紙が1面トップに据えました。日経は3面(総合面)でした。

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 1面トップ5紙の見出しの取り方をみると、二極化とは言わないまでも二つに大別できます。
 一つは「なぜ改ざんなどの不正行為が起きたか」の観点です。以下の3紙です。
 ・朝日「国会紛糾恐れ改ざん」
 ・毎日「首相答弁が契機」
 ・東京「廃棄 首相答弁が契機」
 もう一つは「だれが不正行為を主導したか」の観点です。以下の両紙です。
 ・読売「佐川氏 改ざん主導」
 ・産経「佐川氏が改竄主導 認定」
 ちなみに日経新聞の主見出しは「政官の統治不全 露呈」で、いずれとも異なるトーンでした。
 これまでの安倍晋三政権に対する各紙の論調を踏まえると、安倍政権擁護が色濃い読売、産経2紙は佐川前国税庁長官の責任を強調し、安倍政権に批判的な朝日、毎日、東京3紙はそうしなかったとみることができます。5日付社説や編集幹部の署名記事などでは、朝日、毎日、東京の3紙は、安倍政権が政治責任を軽んじているとして厳しい言葉で批判し、麻生財務相が責任を明確にして辞任するよう求めています。
 以下は5日付の朝日、毎日、東京各紙の社説の見出しです。
 ・朝日「森友問題と政治責任 社会のモラルを掘り崩す」一部官僚に押しつけ/麻生氏は即刻辞任を/1強長期政権の弊害
 ・毎日「森友文書改ざんの調査結果 居座った財務相の不実さ」背信を生んだ組織防衛/政治道徳の堕落を招く
 ・東京「財務省の処分 佐川氏独断の不可解」

 読売、産経の社説の見出しは以下の通りです。引責辞任を求めているとまでは読み取れません。ただ佐川前長官らに安倍首相への忖度があったかどうかなど、麻生財務相の認識の甘さは両紙とも批判しています。朝日など3紙との間には一線があるように感じますが、2極化というほどでもないように思います。

 ・読売「財務省処分 再発防止で信頼回復を急げ」
 ・産経「文書改竄報告 財務省も首相も猛省せよ」

 ちなみに日経の社説は「地に落ちた財務省の信頼は回復できるか」の見出しで、「麻生氏は『政治家の美学』を大切にするという。時機をみて決断することを求めたい」と、今後、辞任することを求めています。

 いずれにせよ、各紙とも、麻生氏の認識の甘さと政治責任に対して厳しい見方を示していることは共通しています。

 財務省の調査結果を巡ってもう一つ思うのは、佐川前理財局長が安倍昭恵夫人の名前を削除せず、文書を廃棄することもなく、仮に、この国有地売却の問題が取り沙汰され始めた当初から、改ざん前の文書が国会に提出されていたら、この問題はどんなふうに見え、その後、どんな風に推移していただろうか、ということです。そこは、この国の主権者の側が想像力を使う必要があるのですが、今こそ、その想像力を働かせてみる時であるように感じます。まだまだ、「モリカケ」の真相は解明できていません。
 「ジャーナリズムはマンネリズムとの戦い」とは故原寿雄さんの言葉です。モリカケ、財務省セクハラ、防衛省の日報隠蔽など、これでもかと出てくる安倍晋三政権下の不祥事を前に、そして「いつまでモリカケをやっているのか」との批判を前に、マスメディアの内側にいる人間として、この言葉をあらためて胸に刻みたいと思います。