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「気付きの機会つくろう」(沖縄タイムス) 「平和への一歩刻む日に」(琉球新報)~6月23日「慰霊の日」 沖縄2紙の社説

 6月23日は沖縄の「慰霊の日」です。第2次大戦末期の1945年のこの日、沖縄の地上戦は日本軍の組織的戦闘が終結したとされます。例年、沖縄県糸満市摩文仁の平和祈念公園で、県と県議会主催の沖縄全戦没者追悼式が行われるほか、県内各地で沖縄戦の犠牲者を追悼する催しが営まれます。

 沖縄の地元紙である沖縄タイムスと琉球新報の23日付の社説を一部引用して書きとめておきます。
▼沖縄タイムス
「[慰霊の日に]気付きの機会つくろう」
 http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/271857

 「戦争の時は、健康ほどいいものはないですよ」
 沖縄愛楽園(名護市済井出)の入所者がさりげなく語ったこのひとことは、聞く者に重く突き刺さる。
 日本軍は米軍上陸を控え、在宅のハンセン病患者を強制的に愛楽園に収容した。450人の定員がたちまち913人に膨れ上がる。
 劣悪な環境の下で防空壕づくりに従事させられ、マラリアや栄養失調などで亡くなる者が相次いだ。
 訪れる機会の少ない愛楽園の資料館を見学し、資料や証言などを通して戦争の実相に触れることは、「気付き」に満ちた体験となるだろう。
 平和教育も平和学習も慰霊行進に参加することも「気付き」の第一歩である。
 (中略)
 上からの押しつけによって知識を詰め込むのではなく、ことりと胸に落ちる経験を大切にする。平和教育や平和学習に対するマンネリ感に向き合わなければ若い人たちの「沖縄戦離れ」を食い止めるのは難しい。 

 ▼琉球新報
「慰霊の日 平和への一歩刻む日に」
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-744609.html 

 毎年の慰霊の日に、私たちは沖縄戦の犠牲者を悼み、基地のない平和な沖縄の実現を希求してきた。県民の願いが今年ほど具体性を帯びたことはなかったであろう。
 私たちは沖縄全戦没者追悼式における安倍晋三首相の発言に注目している。米朝首脳会談における共同宣言、米韓合同軍事演習中止を踏まえ、沖縄の米軍基地負担の是正に向けた方策を提示すべきだ。
 残念ながら政府は県民の願いとは逆の方向に突き進んでいる。辺野古新基地に関して沖縄防衛局は8月17日に土砂を投入すると県に通知した。実行に移せば、大浦湾の生物多様性は取り返しがつかないほど破壊される。
 宮古、八重山では住民意思が二分する中で陸上自衛隊配備が進められている。軍事的緊張を高める可能性は十分にある。住民の住環境への影響も出てこよう。
 そして憲法である。憲法9条の改正を目指す安倍首相は今年3月の自民党大会で「憲法にしっかりと自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打とう」と宣言した。灰燼(かいじん)に帰した国土の中から日本国民が手にした財産の一つである平和憲法の条文が改められようとしている。
 朝鮮半島の緊張緩和が現実味を帯びている今、日本はどの方向へ向かうのか。慰霊の日に見定め、沖縄が進むべき道を改めて確認したい。 

 東京発行の新聞各紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)の朝刊紙面では、朝日と読売が1面に写真とともに関連記事を掲載しました。朝日はろうそくの火で「平和」の字が灯された平和祈念公園の写真で見出しは「祈り届け きょう沖縄慰霊の日」。読売は平和祈念公園の前夜祭で、位牌に見立てた5本の青い光線が夜空に放たれている写真で、見出しは「沖縄の祈り 天まで届け」です。東京新聞は2面に「沖縄きょう慰霊の日」の記事と写真を掲載しました。社説の掲載は以下の通りでした。
・朝日新聞「沖縄慰霊の日 苦難の歴史に向きあう」
・毎日新聞「きょう沖縄慰霊の日 本土との溝をどうするか」

 ほかに在京紙では以下の社説が目に止まりました。
・朝日新聞「参考人にやじ 言論の府をおとしめた」
・毎日新聞「参考人への非常識なやじ 品位なき議員には懲罰を」
・読売新聞「陸上型イージス 配備の意義を丁寧に訴えたい」
・産経新聞「ミサイル避難訓練 中止で国民を守れるのか」
・東京新聞(中日新聞)「地上イージス 導入は見直すべきだ」