自民党は杉田水脈議員に何をどう指導したのか

 自民党の杉田水脈衆院議員が7月18日発売の月刊誌「新潮45」に「『LGBT』支援の度が過ぎる」とのタイトルで、性的少数者(LGBT)に対する差別的な論考を寄稿した問題で、自民党が8月1日付で見解をホームページに掲載しました。全文を引用します。

※「LGBTに関するわが党の政策について」
 https://www.jimin.jp/news/policy/137893.html 

LGBTに関するわが党の政策について

2018年8月1日
自由民主党

 わが党のLGBTに関する政策については、「性的指向・性自認に関する特命委員会」において議論され、平成28年5月、「性的指向・性自認の多様なあり方を受容する社会を目指すためのわが党の基本的な考え方」が取りまとめられ、同年7月の参議院選挙及び昨年の衆議院総選挙の公約に明記されたところです。わが党は、公約に掲げたように性的な多様性を受容する社会の実現を目指し、性的指向・性自認に関する正しい理解の増進を目的とした議員立法の制定に取り組んでいます。
 今回の杉田水脈議員の寄稿文に関しては、個人的な意見とは言え、問題への理解不足と関係者への配慮を欠いた表現があることも事実であり、本人には今後、十分に注意するよう指導したところです。
 わが党は、今後ともこの課題について、各国の法制度等を調査研究しつつ、真摯かつ慎重に議論を進め、議員立法の制定を目指していく所存です。
 皆様のご理解とご協力をお願いいたします。 

 「見解」には「基本的な考え方」やそのパンフレットなどのPDFファイルも添付されています。
 共同通信の報道によると、自民党総裁である安倍晋三首相は8月2日、記者団に対し「人権が尊重され、多様性が尊重される社会を目指すのは当然だ」「政府、与党の方針でもある」と述べました。杉田議員は、指導を受けたことを明らかにし「真摯に受け止め、研さんに努めていく」と事務所を通じてコメントしたとのことです。
 このブログの以前の記事(「杉田水脈議員の差別主張を容認する自民党を批判~新聞各紙の社説」)に書きとめたとおり、自民党の二階俊博幹事長は7月24日の記者会見で「党は右から左まで各方面の人が集まって成り立っている。人それぞれ、政治的立場はもとより人生観もいろいろある」と述べ、静観する方針を表明していました。今回の見解の公表は、方針の転換のようにも見えるかもしれませんが、わたしは疑問を感じています。

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 自民党は杉田議員の寄稿の内容を差別ととらえているのかどうかが不明です。寄稿が及ぼす問題の深刻さをどの程度だとみているのかはっきりしません。杉田議員のコメントにも謝罪の文言はなく、寄稿に記した主張の撤回の表明もありません。なかなか批判がやまず、海外のメディアも報じるに至って、とりあえず杉田議員の寄稿の是非には踏み込まずに、自民党が多様性を受容する社会の実現を政策に掲げていることを強調して批判をかわそうとしているのではないか、という風にも思えます。朝日新聞の報道によると、杉田議員は後に削除するものの、自身のツイッターで、党内の「大臣クラスを始め、先輩方」から「間違ったこと言ってないんだから、胸張ってればいいよ」「杉田さんはそのままでいいからね」と声をかけられたとし、「自民党の懐の深さを感じます」と投稿していたとのことです。杉田議員自身、今でも「間違ったことは言っていない」と考えているのではないでしょうか。あいまいなコメントになっているのは、そのためではないでしょうか。
 杉田議員の寄稿に対してなぜ批判がやまないかと言えば、それ自体がLGBT当事者への差別であり人権侵害であることはもちろん、その考え方はLGBT当事者の社会からの排除や抹殺を容認する思考にまで行き着きかねないこと、杉田議員の思考にならうなら対象もLGBTに限らず、同じように「生産性」がない障害者や高齢者にも広がっていくのではないかとの危惧が社会に広がり、共有されているからです。杉田議員の寄稿が差別には当たらないというのであれば、自民党も杉田議員もそう説明するべきです。差別に当たると判断するのであれば、自民党は「指導」というあいまいな措置ではなく、公党としての責任ではっきりした処分を行うべきだと思います。そもそも、自民党は杉田議員に対し、何をどう十分注意するように指導したのでしょうか。

 東京発行の新聞各紙の中では、朝日新聞と東京新聞が自民党の見解を8月2日の夕刊で報じました。ここでは翌3日付朝刊での各紙の扱いを書きとめておきます。1面掲載は朝日新聞と東京新聞。朝日新聞が時時刻刻で取り上げているのが目を引きました。

・朝日新聞
1面「自民、杉田議員に指導/LGBT団体『不十分』」
2面・時時刻刻「LGBTへの理解 進まぬ自民」「『生産性ない』主張 杉田議員に指導/批判2週間 追い込まれ『見解』」「二階氏『大げさに騒がないほうがいい』/内外の潮流 党内と落差」

・毎日新聞
社会面・囲み記事「問題発言 自民火消し/杉田氏を注意指導・HPで『配慮欠いた』/『生産性ない』『趣味みたいなもの』」

・読売新聞
4面(政治面)「自民、杉田議員を指導/HPで公表『理解不足、配慮欠く』/『生産性ない』」/「『自民の潜在的体質』国民・大塚共同代表」

・日経新聞
4面(政治面)「自民、杉田議員を指導/首相『多様性尊重は当然』/『LGBT、生産性ない』発言」

・産経新聞
5面(総合面)「首相『多様性尊重は当然』/自民、『生産性ない』杉田氏指導」

・東京新聞
1面「LGBTに冷たい自民/謝罪、撤回求めず口頭指導/杉田氏『生産性ない』/
谷川氏『同性愛 趣味みたい』」
2面「『指導、遅きに失した』/杉田氏LGBT寄稿 野党が批判」/「『大げさに騒がず』谷川氏発言に二階氏」