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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

沖縄県宮古島の「宮古新報」発行を労組が継続 ※追記:「地域に根ざし、地域とともに歩む新聞」

 沖縄県・宮古島に「宮古新報」という地域紙があります。発行する宮古新報社では、社長が突然、廃刊を言い出し、社員へ全員解雇を通告しました。これに対し社員でつくる「宮古新報労働組合」が紙面発行の継続に乗り出しています。同労組が加盟する新聞労連(日本新聞労働組合連合)が全面的に支援しています。
 新聞労連の説明などによると、宮古新報労組は昨年11月、同社の座喜味弘二社長によるパワハラやセクハラ行為があったとして、社長の退陣を要求しました。社長はパワハラ・セクハラを否定した上で、体調不良などを理由に社長退任と事業譲渡の意向を示し、代理人を立てて会社の売却を検討したものの、1月9日に会社側代理人から解雇通知の予告があり、10日に全社員に対し文書で解雇通知が出されました。理由については、業績不振による赤字経営で事業存続が困難なことを挙げているとのことです。新聞労連は、紙面発行の継続と、しっかりした事業者への新聞発行事業の譲渡に向けて、支援を呼び掛けています。

 座喜味社長が10日、翌11日付の紙面に廃業の社告を出すよう指示したのに対し労組は拒否。12日付の紙面は社員だけで発行しました。その顛末を記したコラムを、同社のサイト上でも読むことができます。
※宮古新報「『社窓風景』① 全国から頑張れ、激励に応えたい」=2019年1月12日
 http://miyakoshinpo.com/news.cgi?no=20747&continue=on

 私たち宮古新報社の社員は座喜味弘二社長から9日に 「10日付での解雇」 を急に通告された。 同社では昨年10月に社長から半ば辞めさせられる形でベテランの編集者が退職したことをきっかけに一致団結した宮古新報労働組合が座喜味社長の退陣を要求し団体交渉を重ねてきたが、 11日の紙面に廃業の社告を出すように言われ断固拒否した。

 東京で開かれた日本新聞労働組合連合の記者会見で、 広く同社の状況を公表。 夜には組合事務所で今後の対応について東京、 沖縄本島、 宮古島をスカイプで繋ぎながら午前0時半まで話し合い、 「宮古新報社の社員が自らの声で愛読してくださる市民の皆さんに現状を伝えることが大切。 記者会見に挑もう」 と決意した。  
 翌11日、 出勤時から社内はまさに緊迫した状況のなかで、 社員らは不安な気持ちを奮い立たせ、 ひっきりなしに鳴り続ける電話の応対をしながら午後2時の記者会見、 並行して編集2人、 制作2人、 印刷2人、 営業2人、 事務1人で12日付の新聞作成にとりかかった。 社員一同、 12日の新聞が発行できたことが何よりの喜び。 「頑張れ」 という励ましの電話やメッセージが大勢の市民や全国の仲間から届き感謝の気持ちでいっぱい。 同組合の伊佐次郎委員長は 「新聞の発行をこれからも続けていけるよう社員一同力を合わせていきたい。 見守ってほしい」 と述べた。

 日本には数多くの新聞があります。全国紙は文字通り全国で発行し、ブロック紙は複数の県にまたがるなど、広い地域で発行しています。一つの県を発行エリアとする地方紙は県紙とも呼ばれます。さらにエリアを限って発行する新聞が地域紙です。それだけ地域に密着したメディアです。そうした様々なメディアが存在していること自体に、絶対的な価値があります。社会に自由な情報流通があり、さまざまな意見や考え方が存在することを担保するためです。離島県のさらに離島の地域社会で、新聞発行を守っていこうとしている宮古新報労働組合の皆さんに、敬意と共感の意を表します。

▼新聞労連のフェイスブックページ
「【#宮古新報、コラム「社窓風景」開始】」「【宮古新報、続けています!】」など

www.facebook.com

https://www.facebook.com/%E6%96%B0%E8%81%9E%E5%8A%B4%E9%80%A3Japan-Federation-of-Newspaper-Workers-Unions-2286242578319544/

▼宮古島にはもう1紙、宮古毎日新聞があります。新聞発行では宮古新報とライバル関係ですが、宮古毎日新聞労組は宮古新報労組を支援しています。以下は宮古毎日新聞労組のフェイスブックページより

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▼琉球新報の報道です
・「社長が清算意向、パワハラ・セクハラ訴えも 宮古新報、全社員に解雇通告 労組は退陣要求」=2019年1月11日
 https://ryukyushimpo.jp/news/entry-859733.html
・「宮古新報 読者不在の清算通告 パワハラ、セクハラ訴えも」=2019年1月11日
 https://ryukyushimpo.jp/news/entry-859825.html
・「『労使信頼関係ない』 宮古新報 座喜味社長、廃刊を強調」=2019年1月12日
 https://ryukyushimpo.jp/news/entry-860413.html

 

【追記】2019年1月14日8時
 新聞労連によると、新聞労連と沖縄県マスコミ労働組合協議会、宮古新報労組は13日(日)、宮古島市内で「新聞続けます」「宮古の新聞を残そう」と題したビラを配り、市民の理解を求めたとのことです。
 ※写真は新聞労連のフェイスブックページから
 宮古島では毎週日曜日の新聞製作がお休みとのこと。宮古新報労組の組合員は現在、賃金の支払いがない状態で自主的に新聞づくりを続けている状態です。週が明けて、会社の経営権や従業員の地位を巡る様々な動きも出てきそうです。このブログでも可能な限りフォローして、ささやかながらも、「宮古新報」の存続に取り組む方々への支援に代えたいと思います。

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 【追記】2019年1月19日17時15分
 このブログのカテゴリーに「沖縄・宮古島の新聞と労組」を新設しました。
 宮古新報労組の自主発行の取り組みを巡るこのブログの続報を検索できます。
 宮古毎日新聞労組について書いた過去記事も、一部を含めています。