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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

新元号「令和」発表 東京発行新聞各紙の記録

 現天皇が4月30日をもって退位し、皇太子が5月1日に新天皇に即位するのを前に4月1日、政府が新元号「令和(れいわ)」を発表しました。東京発行の新聞各紙は発表直後に号外を印刷して街頭で配布したほか、1日夕刊、2日付朝刊ではそれぞれ1面トップに「令和」の巨大な見出しを掲げた紙面を作りました。
 色々な意味で歴史的な出来事であり、歴史的な報道であることは間違いがないと思います。取り急ぎ、東京発行の各紙2日付朝刊1面の主な記事の見出しを書きとめておきます。
▼朝日新聞
・「令和」「新元号 万葉集から/5月1日施行」
・「『英弘(えいこう)』『広至(こうじ)』『万和(ばんな)』『万保(ばんほ)』など候補」
・「皇太子さま・陛下へ 閣議決定後に伝達」
・「初の国書 首相のこだわり」連載・平成から令和へ 退位改元1

▼毎日新聞
・「新元号 令和(れいわ)」「初の国書典拠 首相主導/万葉集 中西氏考案か/来月1日施行」
・「漢文で記した『和風』」
・「『特定問題担当』極秘の30年/職員 昨年5月死去」

▼読売新聞
・「『令和』次代へ」「5月1日 平成から改元/万葉集出典 初の国書/中西氏考案か 古典研究」「読み『れいわ』」
・「初春令月 気淑風和/梅の和歌序文」

▼日経新聞
・「令和(れいわ)」「新元号公布 来月1日施行/出典『万葉集』、初の国書」
・「変わる世界に挑む国に」原田亮介・論説委員長

▼産経新聞
・「新元号『令和(れいわ)』」「出典は万葉集 日本古典から初/来月1日施行」
・「日本人の誇り 次世代へ」
・「首相『元号は時代の薫り伝わる』/本紙単独インタビュー」

▼東京新聞
・「令和(れいわ)」「来月1日から新元号/観梅の宴題材 平和な文化象徴/原案6案」
・「初の国書 万葉集出典/中国古典踏まえ」

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 概括的な感想ということになりますが、テレビも含めてこれらの報道に感じたことを少し書きとめておきます。
 報道は圧倒的に祝賀ムードです。新元号を歓迎する人たちの表情を伝えるのは、それはそれでいいのですが、社会にはそうした意見だけではないはずです。
 元号は1945(昭和20)年の日本の敗戦後、法的根拠がなくなりましたが、1979(昭和54)年の元号法によって再び法的根拠が生まれました。1979年当時、わたしは大学1年生でしたが、元号法制化に反対する立て看板がキャンパスに立っていたことを覚えています。当時の元号「昭和」は戦争の記憶と分かちがたく結びついていました。明治以降の「一世一元」を踏襲する形で法制化することが、戦後の国民主権国家のありようとしてどうなのか、学生たちもキャンパスで議論していました。それから40年の今日、元号への消極論、不要論は社会に皆無かと言えば、そんなことはないはずですし、また元号は不要という意見にも、その理由は様々あるはずです。
 今回の改元で社会的に話題になったことの一つに新元号の事前予想があり、新聞各紙も取り上げていました。その中の記事の一つで、「昭和から平成になったときは自粛ムードの中だった。今回は明るい雰囲気の中で元号を自由に語ることができて良かった」との趣旨の声が紹介されているのを目にしました。元号を自由に語るせっかくの機会であるのなら、報道も新元号への歓迎ムードだけでなく、元号不要論、廃止論の声をも紹介してよいのではないかと思います。もちろん、そうした記事が皆無というわけではありませんが、祝賀ムードの中に埋没している観がぬぐえません。
 さらには、元号が社会でどのように受け止められているのかについて、マスメディアのとらえ方は情緒的になっているのではないかと、気になっています。例えば朝日新聞や毎日新聞の2日付の社説を見ても、「国民主権の現憲法の下、国民の間には、西暦との自然な使い分けが定着しているようにみえる」(朝日)とか「象徴天皇制の現代においては、元号は一つの『文化』であろう 」(毎日)と書くだけで、そうとらえる根拠となるデータは示されていません。
 元号への積極的、肯定的な評価が社会にあるのは事実ですし、そうした声を報じていくのもマスメディアとしては当然ですが、あまりに祝賀ムード一色に流れると、異論を口にするのがはばかられる、といった空気を生み出しかねないのではないでしょうか。

※朝日新聞・4月2日付社説
「平成から令和 一人一人が時代を創る」
https://www.asahi.com/articles/DA3S13960809.html?iref=editorial_backnumber

※毎日新聞・4月2日付社説
「新しい元号は『令和』 ページをめくるのは国民」/選定過程を詳細に記せ/時代共有する「文化」に
https://mainichi.jp/articles/20190402/ddm/005/070/094000c

※写真(下)は東京発行各紙の4月1日夕刊

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