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国民投票は容認でも、安倍政権下での改正には反対が多数?~改憲めぐる世論の動向

 10月4日に開会した第200回臨時国会の冒頭、安倍晋三首相は所信表明演説で、憲法改正に意欲を見せました。演説の最後に、以下のように述べました。

 今を生きる私たちもまた、令和の新しい時代、その先の未来を見据えながら、この国の目指す形、その理想をしっかりと掲げるべき時です。
 現状に甘んずることなく、未来を見据えながら、教育、働き方、社会保障、我が国の社会システム全般を改革していく。令和の時代の新しい国創りを、皆さん、共に、進めていこうではありませんか。
 その道しるべは、憲法です。令和の時代に、日本がどのような国を目指すのか。その理想を議論すべき場こそ、憲法審査会ではないでしょうか。私たち国会議員が二百回に及ぶその歴史の上に、しっかりと議論していく。皆さん、国民への責任を果たそうではありませんか。

 ※首相官邸「第二百回国会における安倍内閣総理大臣所信表明演説」
  https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2019/1004shoshinhyomei.html

 7月の参院選では自ら憲法改正を訴えていた経緯もあり、これまでも「憲法改正の議論は行うべきだというのが国民の声だ」と主張しています。長期政権ではあるのですが、これといった業績が見当たらないようにも見える中で、首相在任中に何としても憲法改正を、という意欲はますます強まっているのでしょう。
 では「国民の声」はどうなのか。それを探る手がかかりの一つとして、最近の世論調査の結果をまとめておきます。9月の内閣改造後にメディア各社が実施した世論調査の中で、直接、憲法改正に触れた設問と回答は以下のものがありました。


■朝日新聞 9月14~15日実施
 安倍政権のもとで憲法改正をすることに、賛成ですか。
 賛成 33%
 反対 44%

■読売新聞 9月13~15日実施
 あなたは、今後、国会の憲法審査会で、憲法改正に向けた議論が活発に行われることを、期待しますか、期待しませんか。
 期待する 56%
 期待しない 34%

■日経新聞・テレビ東京 9月11~12日実施
 安倍首相が2021年9月の党総裁任期までに憲法改正の国民投票をしたいと表明していることに対して
 賛成 58%
 反対 32%

■共同通信 9月11~12日実施 ※前回は8月17~18日
 あなたは、安倍首相の下での憲法改正に賛成ですか、反対ですか。
 賛成 38.8%(前回比3.3ポイント増)
 反対 47.1%(前回比5.1ポイント減)

 朝日新聞調査と共同通信調査が、安倍首相のもとでの憲法改正への賛否を尋ねています。答えはともに、反対が賛成を上回っていますが、過半数には達していません。その一方で、日経新聞・テレビ東京の調査では、安倍首相が2021年9月の党総裁任期までに憲法改正の国民投票をしたいと表明していることに対して、58%が賛成と答えています。安倍首相のもとで国民投票を行うのはいいが、実際に憲法を改正するのは反対ということでしょうか。国会での改憲論議の行方とともに、今後の民意にも注目したいと思います。