「これは戦争ではない」~緊急事態宣言下 在京紙報道の記録7:4月29日~5月2日付

 新型コロナウイルスの感染拡大防止策を検討する政府の専門家会議が5月1日、新規感染者は減少傾向に転じているものの、引き続き、外出自粛などの行動制限が必要だとの提言を発表しました。安倍晋三首相は、5月6日までとしていた緊急事態宣言を1カ月程度延長することを表明しました。東京発行の新聞各紙も5月2日付の朝刊では、そろって1面で大きく扱っています。
 1日夕方、専門家会議の尾身茂・副座長が記者会見で見解を説明するのを聞いていて「おやっ」と感じることがありました。尾身さんは長期間の行動制限が必要になる、という話の中で、「長丁場の(「長期間の」だったかもしれません)の取り組み」という言葉を使いながら、「戦い」という言葉を使う人もいるけれども、わたしたちは別の言葉はないかと考えて「取り組み」と言うことにしている、という趣旨のことを話していました。
 尾身さんや専門家会議のメンバーがどういう理由で「戦い」を使わないのかは定かではありませんが、「戦い」を使わないこと自体にはわたしは賛同します。海外の政治指導者の中には、新型コロナウイルスへの取り組みを「戦争」に例える例が見られます。そういうこともあって「戦い」や「ウイルスに打ち勝つ」といった用法は、知らずのうちに容易に「戦争」に結び付くように思います。そして「これは戦争なのだ」と考えた瞬間から、いろいろな飛躍が始まってしまうことを危惧します。
 今は緊急事態宣言が発令され、私権の制限が可能な状況になっています。しかしそうであっても憲法の諸規定を上回る効力を持つわけではありません。私権を制限するにしても、例えば憲法29条が定めている補償とのバランス、整合性を取る必要があるはずです。そして、日本の現憲法は戦争を放棄しています。それなのに「今は戦争に等しいのだ」と考えると、現憲法に生かされている75年前の敗戦の教訓が忘れ去られることになりかねません。「これは戦争だ」という発想で、例えば憲法に緊急事態条項を加えるような議論が始まると、公権力を憲法によって縛る、という立憲主義の意義が逆転し、非常時を理由にした市民的な権利のはく奪ばかりが規定されていくことになることを危惧します。
 5月1日は令和改元から丸1年でした。在京各紙は現天皇の近況として、皇后とともに4月10日、先述の尾身さんから新型コロナウイルスについて進講を受けたことを紹介しています。尾身さんに天皇は「私たち皆がなお一層心を一つにして力を合わせながら、この感染症を抑え込み、現在の難しい状況を乗り越えていくことを心から願っています」(朝日新聞の記事)と述べたと報じられています。専門家の進講の場での天皇の発言が公になるのは極めて異例なのですが、「戦い」とか「打ち勝つ」などを使わずとも、の一例として書きとめておきます。

 この世界的なコロナ禍で、ドイツのメルケル首相が折に触れ発する言葉に共感が寄せられています。その中で、ドイツのシュタインマイヤー大統領が4月11日に行ったテレビ演説を、在日ドイツ大使館のホームページで読みました。ほんの一部を引用します。

 この感染症の世界的拡大は、戦争ではないのです。国と国が戦っているわけでも、兵士と兵士が戦っているわけでもないのです。現下の事態は、私たちの人間性を試しているのです。こうした事態は、人間の最も悪い面と最も良い面の両方を引き出します。お互いに私たちの最良の面を示していこうではありませんか。

 ※シュタインマイヤー大統領テレビ演説
  https://japan.diplo.de/ja-ja/themen/politik/-/2333154

 以下は緊急事態宣言下で東京発行の新聞各紙がどのように報じたのか、1面と社会面の記録の続きです。
【5月2日(土)付】=緊急事態宣言26日目・拡大17日目
▼朝刊
・朝日新聞
「外出自粛の継続 提言/専門家会議 感染減少『緩やか』」
「大阪、休業要請解除の意向/知事、段階的に『国の方針、問題』」
社会面「パチンコ店に休業指示/兵庫・神奈川『特措法基づき初』」
・毎日新聞
「コロナ自粛 当面継続提言/解除、地域ごとに判断」
「武漢研究所起源の証拠/米大統領 対中報復を検討」
社会面「9月入学 論点整理へ/早期導入、根強い慎重論」
・読売新聞
「コロナ対策『長丁場に』/新規感染は減少傾向 行動制限で3密回避」
「学校再開へ分散登校/小1・小6・中3優先 文科省通知」
社会面「分散登校に戸惑い/『教育の機会 均等か』『感染 避けられるか』」
・日経新聞
「緊急事態 1カ月程度延長/首相『医療、依然厳しい』」
「逆境が決める未来の形/短期志向の罠をこえて」コロナと資本主義 3
社会面「遠のく日常 ため息/飲食店『経営支援急いで』 小学校『学習状況に格差』」
・産経新聞
「全国で延長1カ月程度/首相表明『4日決定』 緊急事態宣言」
「憲法の不備 コロナで露わ/首相『拘束力がない…』」戦後75年 第1部 憲法改正①
社会面「GW後半 第2波警戒/検体数減 都の感染ペース鈍化も」
・東京新聞
「首相『緊急事態 1カ月程度延長』」「交付金 不足確実/37道府県 休業協力金の財源に 本紙集計」
「流行抑制 期待に届かず/専門家会議『自粛継続を』」
社会面「認可外保育 運営の危機/休園続けば収入ゼロ」

※2日付夕刊を追記しました(2020年5月7日22時20分)

▼夕刊
・朝日新聞
「休園 闘う飼育員/出勤抑制 担当外も世話」
「連休 熱中症に注意/高温予想 外出自粛でリスク増」
社会面「『3密』拘置所 募る不安/人権侵害への懸念も/『マスクなし7人部屋』/面会制限」
・毎日新聞
「マスクして笑おう/手描きシール 広がる投稿」
「心つなぐ大空」読む写真 ※台風19号の被災地・宮城県丸森町のこいのぼり
社会面「聖火ランナー店主死亡/練馬 とんかつ店火災 生前苦悩つづる/『料理続けたい』『自問自答し感染予防』『店やめたい』」
・読売新聞
「客船感染に国際ルール/関係国、責任明確化へ 政府方針」
「出番なし ずらり/5連休始まる」※新幹線車両基地
社会面「舞台 待てど踊れぬ/講演中止で収入源 裏方も」
・日経新聞
「『必要な外出』自転車で/混雑避けたい 体動かしたい」
「米、レムデシビル緊急認可/コロナ重症患者へ使用」
社会面「エサ代や人件費 動物園も苦慮/『園内感染』の予防徹底/飼育員は出勤、腹ペコ800頭に月500万円」
・東京新聞
「忍び寄る『自粛警察』/飲食店に匿名嫌がらせ/識者『善意の私的制裁 陰湿』」
「レムデシビル 日本も承認へ/米が緊急投薬を認可」
社会面「虐待避難の子 届かぬ恐れ/世帯主申請原則の10万円給付/住民票移せないケースも『頼れる大人いない』」

【5月1日(金)付】=緊急事態宣言25日目・拡大16日目
▼朝刊
・朝日新聞
「緊急事態 全国で延長へ/首相『7日から日常に戻るのは困難』」
「25兆円 補正予算成立/一律10万円 中小企業に最大200万円」
社会面「1人10万円 いつ届く/町が先払い 独自上乗せも」
・毎日新聞
「『コロナ対策1年以上』/感染者ゼロ当面困難」
「天皇陛下 即位1年」
社会面「『街角マスク』飽和の怪/中国の業者『売り込み』」
・読売新聞
「緊急事態延長 首相が表明/新型コロナ 4日にも正式決定」
「コロナ克服へ『心一つに』/天皇陛下即位1年」
社会面「暮らしに『令和』/校名や企業名 1年で続々」
・日経新聞
「中堅に資本支援1兆円/官民ファンド、月内にも」
「コロナ対策 知財無償で/トヨタやキヤノン 世界に提供」
社会面「在宅狙う詐欺メール/通販・取引先装う/『10万円』かたる」
・産経新聞
「緊急事態延長 5月末軸/10万円給付 補正成立」
「天皇陛下 ご即位1年/11府県訪問 ご公務着実に」
社会面「『困窮学生救え』大学が生活支援/バイト収入喜恵 授業料・通信費どうする」
・東京新聞
「もらうには住民登録必要/一律10万円給付へ/コロナ対策 補正予算成立」
「緊急事態 全国で延長へ/首相意向、今月末まで軸」
社会面「『入院不要』83歳死亡/続いた症状 遺族『放置と同じ』 埼玉」

▼夕刊
・朝日新聞
「コロナ 長期的な対策強調/専門家会議提言案『緩和なら感染再燃』」
「英、制限緩和計画を来週明示」
社会面「3.11伝えたいのに/現地ツアー中止・施設休館 伝承にコロナの影」
・毎日新聞
「『非正規はテレワーク×』/新型コロナ対策でも格差」
「『行動制限継続を』/専門家会議 感染再拡大懸念」
社会面「『夢の国』と共に街眠る/ディズニー休園2カ月」
・読売新聞
「外出自粛維持 提言へ/専門家会議 感染は減少傾向」
「コロナ禍 安寧祈り/陛下在位1年」
社会面「格安民泊へ駆け込み/帰国者、ネットカフェ難民…」
・日経新聞
「米、ワクチン数億本供給/1月までに体制 企業を支援」
「外出自粛 当面維持を/専門家会議提言 制限緩和 地域別に」
社会面「若い女性に駆け込み先/虐待や貧困 外出自粛でも家には…」
・東京新聞
「緊急事態1カ月延長 一致/『全国で行動制限継続』」
「『コロナ難民』防ぎたい/患者の検体採取・電話回診 川崎・千葉の開業医」
社会面「観光列車 苦境/千葉 台風復旧途上 再び一部運休」

【4月30日(木)付】=緊急事態宣言24日目・拡大15日目
▼朝刊
・朝日新聞
「緊急事態 延長で調整/政府 全国対象 1カ月程度」
「『核の傘』維持 米に求める日本/『削減には、事前協議が不可欠』」日米安保の現在地 変容する同盟
社会面「山積みマスク どこから/都心の金券ショップ・レストラン… 『卸売業者』突然売り込み」
・毎日新聞
「緊急事態宣言 延長へ/1カ月前後 全国視野」
「首相、9月入学『選択肢』/補正予算案 衆院通過」
社会面「公園制限拡大に戸惑い/遊具禁止 嘆く親子」
・読売新聞
「緊急事態宣言 延長へ/政府『全都道府県』念頭」
「米成長マイナス4.8%/リーマン以来の低迷 1~3月」
社会面「介護施設 苦悩の休業/高齢者の集団感染 懸念/国『生活に必須』・利用者家族に負担」
・日経新聞
「緊急事態宣言延長へ/全国で1カ月程度」
「9月入学 検討表明/首相、休校長期化を考慮」
社会面「GW静まる返る観光地/にぎわい消えた温泉街」箱根、那覇、札幌
・産経新聞
「緊急事態解除 首相『厳しい』/1カ月程度の延長案 浮上」
「軽症者死亡『こんな急変するなんて』/看護師語るコロナ最前線」
社会面「給食食材 行き場なく/小松菜 販売半減・牛乳 大量廃棄も」
・東京新聞
「抗体検査5.9%陽性/市中感染の可能性/都内の希望者200人調査」
「9月入学『選択肢に』/首相、特措法改正否定せず」
社会面「理容店 苦渋の判断/営業の店『日常続け 安心感を』」

▼夕刊
・朝日新聞
「3日に一度 どう買う/売り場ごとにメモ/レトルト活用/家の在庫把握を」
「緊急事態 延長へ 全国1カ月程度案」
社会面「うちで始めよう 今だからこそ/写真整理・着物リメイク・夫婦で掃除…」
・毎日新聞
「『バーチャル世界』欧州盛況/クラブ・レース観戦・オーケストラ」
(NEWS FLASH「コロナ対策 補正予算午後成立」など4本)
社会面「心の不調 長期化懸念/続く閉塞感 コロナで相談急増」
・読売新聞
「精算・消費 3月低水準/鉱工業3.7%低下」
「補正予算 午後成立へ/緊急事態 首相、解除困難の認識」
社会面「『コロナ犯罪』相次ぐ/『10万円』巡る詐欺 休業店に侵入 窃盗」
・日経新聞
「米経済『復元に時間』/FRB議長 失業急増で停滞」
「鉱工業生産 3.7%低下/3月、7年2カ月ぶり水準」
社会面「在宅勤務『月末の壁』/請求書の電子化進める契機にも」
・東京新聞
「コロナ禍 働くのは社会のため/店員、配達員、医師、保育士」
「緊急事態 全国で延長検討/政府、1カ月程度を軸」
社会面「北ア 静かな春/八ケ岳も自粛『終息したら来て』」

【4月29日(水)付】=緊急事態宣言23日目・拡大14日目
▼朝刊
・朝日新聞
「コロナ危機 疑心デマ増幅」(「みる・きく・はなす」はいま、社会面へ)
「症状把握 全国システム/軽症者ら対象 迅速な対応図る」
社会面「感染恐れ 誰かを責める/陽性20代 名字・地元・父勤務先も拡散/発信者 デマ判明後は追及の矛先に」
・毎日新聞
「レオパレス改修工期虚偽/施工不良 2年半を1年に」
「首相『家賃』支援 検討/立憲など、補正予算案賛成」
社会面「感染拡大 消えゆく職/ハローワーク利用者調査/『大きく影響』3割」
・読売新聞
「学校『夏休み短縮』半数/63自治体 休校分の授業確保」
「日産11年ぶり最終赤字/20年3月期予測 1500億円超下振れ」
社会面「登園自粛 勤務先に陽性/区『親を休ませて』」コロナ最前線@保育所
・日経新聞
「想定外 備えはあるか/ROE偏重経営 もろさ露呈」コロナと資本主義1
「企業 純利益46%下振れ/3カ月前予想比 日産は最終赤字」
社会面「『病院は戦場』医師疲弊/院内感染発生…緊迫の現場/『すでに医療崩壊に近い』」
・産経新聞
「7都府県 感染減進む/死者4倍、予断許さず/緊急事態3週間」
「日朝膠着 動かぬ拉致/北“瀬戸際”に回帰/首相『無条件会談』表明1年」
社会面「コロナ『想定外』結婚式に影/延期 感染防止なのに… キャンセル料相談続々」
・東京新聞
「中小融資相談に影響/金融機関混雑 感染リスク」
「解雇・雇い止め 急増/1カ月2500人、解雇不安鮮明」
社会面「『37.5℃ 4日間』独り歩き/『必要性 医師の判断で』日医が注意促す」