「審議は論外 即刻撤回を」「これこそが『不要不急だ』」~検察庁法改正案 各紙の社説、論説

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、特措法に基づいて発せられた緊急事態宣言の5月31日までの延長が同4日、決まりました。先行きが見通せない時間が続きます。マスメディアの報道も引き続き、新型コロナウイルス関連のニュースが大きな比重を占めますが、その中でも見過ごすわけにはいかない動きもあります。その一つが国会に上程されている検察庁法改正案の審議です。
 検察官の定年を63歳から65歳に引き上げる内容ですが、63歳以上の検察官は高検検事長や地検検事正などのポストに就けない「役職定年制」を設けた一方で、内閣の判断で役職を延長できる規定が盛り込まれています。安倍晋三内閣が定年年齢の63歳に達した東京高検の黒川弘務検事長の勤務延長(定年延長)を閣議決定し、検察庁法と国家公務員法の解釈を変更したと後付けのように強弁した出来事とリンクしているのではないかと、野党のほか日弁連や各地の弁護士会が厳しく批判しています。
 検事長の定年延長では、安倍内閣と法務省の釈明を明白に支持する論調は新聞には見当たりません。検察庁法の改変に対しても、最近の社説、論説は「審議は論外 即刻撤回を」(北海道新聞)、「これこそが『不要不急だ』」(西日本新聞)など厳しく批判する内容のものばかりです。
 ネット上で読むことができる、この問題を扱った社説や論説をまとめておきます。

【5月2日付】
▼北海道新聞「検察官定年延長 審議は論外 即刻撤回を」
 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/417771?rct=c_editorial

 まさしく時の政権が検察人事に介入できる法案である。
 そもそも政府は立法すべき具体的事実を示していない。
 1月に閣議決定した黒川弘務東京高検検事長の定年延長を後付けで正当化するものではないのか。
 検事長の定年延長は例がなく、安倍晋三政権が首相官邸に近い黒川氏を検事総長に就かせるための布石との疑念はなお拭えない。
 コロナ禍に乗じて成立させることは許されない。政府が撤回するか、国会で廃案にするべきだ。

▼西日本新聞「検察庁法改正案 これこそが『不要不急』だ」
 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/605469/

 国会審議で野党が国家公務員法の定年延長は検察官には適用されないとした1981年の政府答弁を突き付けると、首相は「今般、解釈を変えた」と答弁した。唐突な説明だった。重大な法解釈の変更なのに、それを明確に裏付ける公文書は示されず、口頭で決裁したという驚きの法相答弁まで飛び出した。 
 そして今回の改正案である。内閣法制局がこの法案原案を審査した昨秋の段階では、従来の解釈通り検察官の定年延長はできないことを前提に検討されていたという。そうだとすれば、今回の改正案は黒川氏の定年延長を後付けで正当化する「つじつま合わせ」ではないのか。 
 政府は黒川氏の定年延長を決めた最初の閣議決定を撤回し、検察庁法の改正も一から出直すべきだろう。改正案に国会審議を急ぐ理由は見当たらない。

【4月30日付】
▼琉球新報「検察庁法改正案 独立性を揺るがす改悪だ」
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1115175.html

 政権にダメージを与える捜査には本気で取り組まず、検察がやいばを向けるのは権力を握る者にとって好ましくない相手だけ、ということにもなりかねない。近年の例を見ても既にその兆候はある。強大な権限を持つ検察官が政治権力の手先と化した社会は想像するだけで恐ろしい。もはや民主国家とは言えまい。
 日弁連のほか、全国の多くの弁護士会が会長声明で黒川検事長の定年延長撤回を求め、特例措置を設けた法改正に反対している。検察官の中立性や独立性が脅かされることへの強い危機感の表れだ。
 このまま改悪を許したのでは将来に禍根を残す。

【4月24日付】
▼新潟日報「検察官定年延長 徹底的な審議が不可欠だ」
 https://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20200424539601.html

 官邸のご都合主義や独善、国会軽視など、検察官の定年延長問題には、「安倍1強」の問題点が凝縮されているように見える。感染拡大を巡り、政権と国民意識とのズレを生んだのも、そうした体質ではないか。
 野党は検察官の定年延長撤回を求めている。これに対して、与党は今国会での法案成立を目指すが、「成立ありき」は許されない。
 国民目線で問題点について徹底的に審議することこそ、国会に課せられた責務のはずだ。

▼中日新聞・東京新聞「検察と政治 独立性を担保せねば」
 https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020042402000179.html

 昨年十月段階で法務省が「定年延長は必要ない」とした理由は「公務運営に支障はない」だった。ところが一転、東京高検検事長の定年延長問題が起きると、「定年延長は必要」に変わり、その理由を法相は「国家公務員法に合わせ考え直した」と述べた。立法事実があまりに乏しい。
 東京高検検事長の定年延長を合法化するためではないのか。何しろ国家公務員法の定年延長規定は「検察官には適用されない」とする一九八一年の政府答弁を法相は知らなかった。昨年五月にも同じ内容の通知が人事院から法務省宛てに発出されている。
 正反対の規定になるのに十分な理由が存在しない。かつ検察の独立性を脅かす内容になる-。これでは法案に賛成とはなるまい。むしろコロナ禍でのどさくさで成立させてはならない法案だ。

【4月21日付】
▼朝日新聞「検察庁法改正 政権の思惑を許すな」
 https://www.asahi.com/articles/DA3S14449476.html

 政府はかねて検察官の定年延長は認められないとの立場をとってきた。ところが東京高検検事長について、一般の国家公務員向けの延長制度を適用したと説明し、過去の国会答弁との矛盾を野党に突かれると、「解釈を変えた」と開き直った。
 唯一の立法機関である国会を無視して法律を変えるに等しい行いだ。加えてこの重大な解釈変更を口頭で決裁したとして、検討の経緯をたどれる記録は残されていない。「法の支配」の何たるかを理解せず、暴走を繰り返してきた政権の体質が、ここでもあらわになった。
 昨秋の時点で、法務省は幹部職に役職定年制を導入する場合も特例は必要ないとの立場で、内閣法制局による改正案の審査もほぼ終わっていたという。それがなぜ一変したのか。東京高検検事長の定年延長と関係があるのか。審議を通じて、ゆがめられた法案作成の過程を解明・検証しなければならない。

【4月20日付】
▼信濃毎日新聞「内閣と検察 人事介入の余地をなくせ」
 https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200420/KT200417ETI090017000.php 

安倍政権は森友・加計問題、桜を見る会、カジノ汚職、元閣僚の公選法違反容疑など数々の疑惑にまみれながら、説明責任を果たそうとしない。首相は「政治的な意図を持って(検察)人事に介入することはあり得ない」と反論するが、信頼できない。

 定年延長が明記された今回の改定案が成立すれば、法解釈を巡る争点はなくなる。それが狙いではないか。成立前に従来の法解釈を変えた違法性は拭えない。
 一般の国家公務員とともに、検察官が65歳まで働けるようにする議論はあっていい。まず、黒川氏の定年延長と独断による法解釈変更を取り消し、改めて是非を国会に問うのが筋だろう。
 内閣が検察上層部の処遇を左右する規定を削除しなければならないのは、言うまでもない。

【4月19日付】
▼沖縄タイムス「[検察庁法改正案審議入り]緊急性がなく撤回せよ」
 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/561831 

 審議入りした同じ日に安倍首相は新型コロナの緊急事態宣言を全都道府県に拡大した。政権挙げて新型コロナ対策に取り組まなければならない中で、どさくさに紛れた審議入りというほかない。
 共同通信社が3月に実施した世論調査で黒川氏の定年延長は「納得できない」が60・5%で、「納得できる」を大きく上回った。法改正すれば、検察に対する国民の信頼が失われるのは間違いない。
 改正案は今ほんとうに必要なのだろうか。緊急性はまったくないはずである。法案はもちろん、定年延長を認めた閣議決定も撤回すべきだ。