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検察庁法改正案、在京各紙の扱いの違いが明確に ※追記「法務委での審議が必要」(産経「主張」)

 前日の記事(「『#検察庁法改正案に抗議します』の報じられ方~衆院委員会審議入り、在京各紙の記録」)の続きです。検察庁法改正案を巡る報道の記録です。
 東京発行新聞各紙の5月12日付朝刊では、この問題の続報を朝日新聞、毎日新聞、東京新聞の3紙が1面トップで報じました。それぞれ総合面や特報面にも関係記事を大きく展開しています。朝日、東京両紙は社説でも取り上げました。
 対して読売新聞は政治面と第2社会面の扱い。産経新聞は総合面に載せた衆院予算委の記事の中で、この問題を巡るやり取りがあったことに触れていますが、見出しに「検察」や「定年延長」の用語はありません。
 ここに来て、検察官の定年延長問題に対する在京紙の報道は、扱いの違いが明確になってきたように思います。

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【写真説明】1面トップでそろった朝日、毎日、東京の3紙

 

 以下に各紙の12日付朝刊に掲載された関連記事の見出しを書きとめておきます。
▼朝日新聞
1面トップ「首相 今国会成立の構え/検察庁法改正案 抗議ツイート急拡大/自民『週内に衆院通過』」
2面・時時刻刻「『火事場泥棒』『後付け』批判/コロナ禍の中 法改正急ぐ政権に/法案束ねる手法 疑問/検察内にも異論『唐突な特例』」
3面「検事長定年延長『正当化』 特例規定 政治介入の恐れ/検察庁法改正案 問題点は/政府答弁 迷走の末」「検察、元首相の逮捕も 独立性が必須/首相『恣意的人事ない』」
4面「検察幹部人事 与野党が論戦/相次ぐ『#検察庁法改正案に抗議します』/衆参予算委 集中審議」/「『ネット上の意見承知。コメントは控える』/会見で菅氏」
第3社会面「『#抗議します』 芸能人も次々ツイート」ニュースQ3
社説「検察庁法改正 国民を愚弄する暴挙だ」

▼毎日新聞
1面トップ「野党、定年延長で修正案/『検事総長68歳』削除」
3面・クローズアップ「恣意的人事に懸念/SNSで抗議 400万件/生活優先されず『怒り』」
3面「『内閣が判断』の新規定」/「日弁連反対声明『急ぐ理由皆無』」

▼読売新聞
4面(政治)「検察『定年延長』野党が攻勢/ツイッターで抗議拡大『火事場泥棒』」
第2社会面「検察定年 議論が過熱/特例延長に法曹界反発」

▼日経新聞
4面(政治)「枝野氏、『恣意的人事』に懸念/首相、定年延長で知見活用/検察庁法改正案巡り論戦」

▼産経新聞
5面(総合)「追加対策 野党に配慮/衆院予算委 首相、家賃・学生支援で」

▼東京新聞
1面トップ「週内採決 自民が方針/定年延長 野党『コロナ悪用』/首相『恣意的 当たらない』」ワッペン・#ウオッチ 検察庁法改正案
1面「ネットでも拡大 法相不在で審議」Q&A
特報面(21、22面)「ツイッターでも 政治・社会動かす?」「コロナ禍で『政治不信』うねり」
第2社会面「『政治的中立性 脅かされる』/検察庁法改正案 日弁連が抗議声明」
社説「検事の定年延長 ツイートの抗議に耳を」

 

※追記 2020年5月13日8時55分
 産経新聞は13日付の社説(「主張」)「検察庁法改正案 疑念もたれぬ説明尽くせ」で、法案の審議手続きの「筋」を説いています。この論旨には同感です。
 https://www.sankei.com/column/news/200513/clm2005130002-n1.html 

 問題は特例として、内閣が「公務の運営に著しい支障が生じる」と認めた場合、引き続き次長検事や検事長を続けられると定めたことだ。これに野党などは「内閣が恣意(しい)的に人事介入できる」と反発している。
 しかもこの特例は、黒川弘務東京高検検事長の定年を半年間延長するという前例のない閣議決定が行われた直後に加えられた。森雅子法相がいくら「東京高検検事長の人事と今回の法案は関係ない。法案自体は数年前から検討されていた内容で問題ない」と強弁しても、疑いは簡単に晴れない。
 そもそも森法相は内閣委の審議に参加していない。「国民の誤解や疑念に真摯(しんし)に説明したい」というなら、検察庁法の改正案は内閣委から分離して法務委員会で審議することが筋である。
 黒川氏の定年延長について森法相は2月、「検察官としての豊富な経験知識等に基づく部下職員に対する指揮監督が不可欠であると判断した」と述べた。
 こうした属人的判断が改正案の特例に反映されるのか否かが問われている。疑念をもたれぬ説明を尽くすには、法務委での審議が必要だろう。