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辺野古新基地反対の民意変わらず~沖縄県議選で玉城知事与党が過半数

 沖縄県議選が6月7日、投開票されました。定数48のうち、玉城デニー知事を支持する県政与党は25議席を獲得し、改選前(26議席)に続き、過半数を維持しました。県政野党では、自民党が4議席増の17議席を獲得しています。与野党の色分けとは別に、宜野湾市の米軍普天間飛行場の移転先として、名護市辺野古へ新基地を建設することに対しては、反対の当選が沖縄タイムスの集計では27人、琉球新報の集計では29人と報じられています。
 地方議員選挙にはその地域の固有の争点があり、国政と比べても地域により密着した課題が焦点になります。それでも沖縄全県での選挙となると、やはり基地の過剰な集中の問題に対して、どのような民意が示されたのかは、沖縄県外の住民にとっても大きな意味があります。基地の集中は沖縄の人たちが望んだ結果ではなく、民主的な手続きで成立している日本国政府の政策だからです。
 この点について、琉球新報の8日付社説は「新基地反対の民意表れた」との見出しで、以下のように説いています。

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設に対しては、新たな議会でも反対が大勢を占める。改めて多くの県民が「ノー」の意思を突き付けた格好だ。
 政府はこの結果を重く受け止め、辺野古新基地の建設を断念すべきだ。これ以上の民意の無視は許されない。
 新基地建設を巡っては2018年9月の県知事選で玉城氏、19年4月の衆院3区補欠選挙で屋良朝博氏、同年7月の参院選で高良鉄美氏と、反対を掲げた候補者が立て続けに当選している。昨年2月の県民投票では投票者の7割超が埋め立てに反対した。
 今県議選では、新基地反対を訴える与党側に対し、野党の自民党が、一日も早い普天間飛行場の危険性除去のため唯一実現性のある方策だとして「容認」の姿勢を明確に打ち出した。対立軸は鮮明で、最大の争点となった。
 このほか、新型コロナウイルス感染症対策、医療・福祉政策、経済振興策などが争点となり、2年前に発足した玉城県政への中間評価が問われた。現県政は一定程度の信任を得たと言えよう。
 玉城知事は繰り返し示されてきた辺野古新基地反対の民意をてこにして、政府との交渉に臨んでほしい。

 ※琉球新報:社説「県議選・与党過半数 新基地反対の民意表れた」2020年6月8日
  https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1135162.html

 また沖縄タイムスの社説も以下のように指摘しています。

 今回の選挙で自民党県連は普天間飛行場の辺野古移設容認を打ち出し争点を明確にした。辺野古の新基地建設に反対する知事支持派が過半数を得たことは、民意の基調が変わっていないことを示すものである。
 新基地は当初計画から工期も工費も大きく膨らみ、「普天間の一日も早い危険性の除去」は実態の伴わない誇大広告になっている。
 危険性除去の見通しをどうつけるのか。県議会には状況を変える行動を求めたい。

 ※沖縄タイムス:社説「[県議選 与党過半数]知事は成果示すときだ」2020年6月8日
  https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/582506

 東京では8日、安倍晋三首相が自民党役員会で「議席数を大きく伸ばし、善戦できたことは大きな成果だ」(読売新聞)と話し、菅義偉官房長官も記者会見で「辺野古への移設容認を掲げた自民党が議席を伸ばすことができた。かなり(移設容認の)理解が進んできている」(読売新聞)と述べています。分析は自由かもしれませんが、辺野古への新基地建設への賛否ということでは、選挙結果が歴然と示している、と言うべきだろうと思います。
 沖縄の過剰な基地集中の問題を巡っては、ずっと国と地域との関係、あるいは地域の自己決定権が問われ続けてきました。住民の意思は選挙や県民投票を通じて明確に示されているのに、安倍政権は一顧だにしていません。日本でほかにそのような地域がないのだとしたら、沖縄に対する差別と言うほかありません。折しも新型コロナウイルスへの対応を巡って、国と自治体の関係に関心が高まっています。沖縄県外の住民にとっても、他人事ではない、自分事ととらえるべき、あるいは自分事ととらえることができる時機が巡ってきているように思います。今回の選挙結果を含めて、沖縄で何が起きているかが県外(日本本土)で広く知られることには大きな意味があります。

 以下に、東京発行の新聞各紙が、沖縄県議選の結果をどう伝えたか、主な記事の見出しを書きとめておきます。

▼朝日新聞
・9日付朝刊
3面(総合)「県議選 辛勝でも『辺野古ノー』/沖縄・知事与党 過半数を維持」「玉城氏側『民意揺らがず』/移設阻止への姿勢強める」「政権は工事早期再開方針」
社説「沖縄県議選 一貫した民意に応えよ」
・8日付朝刊
社会面準トップ「玉城知事与党が過半数/沖縄県議選 辺野古反対 訴え/県政運営に一定の信任」

▼毎日新聞
・9日付朝刊
1面「沖縄県政与党が辛勝/県議選 知事『一定の評価得た』」
2面(総合)「辺野古工事 週内再開も/沖縄県議選 議席増に自民手応え」
・8日付朝刊
1面「県政与党 過半数維持/沖縄県議選 投票率過去最低」
社会面準トップ「辺野古阻止 父の遺志/翁長前知事次男が初当選」

▼読売新聞
・9日付朝刊
4面(政治)「沖縄県議選 首相『善戦』/議席伸長 自民 知事選に照準」
・8日付朝刊
2面「玉城知事派 過半数維持/沖縄県議選 辺野古で政府と対峙」

▼日経新聞
・9日付朝刊
4面(政治)「辺野古移設『前に進める』 菅官房長官」※短信
・8日付夕刊
3面「沖縄、知事派が過半維持/県議選 辺野古移設、対立続く」
・8日付朝刊
2面「沖縄県議選で開票作業進む/辺野古の進捗左右」

▼産経新聞
・9日付朝刊
5面(総合)「玉城氏 求心力陰り/自民『次の知事選に弾み』/沖縄県議選 知事支持派が議席減」
・8日付朝刊
2面「沖縄県議選 与党勝利/投票率46・96% 前回下回る」
2面「現地入り断念・集会自粛/コロナ禍 異例の選挙戦」

▼東京新聞
・9日付朝刊
3面(総合)「政府、辺野古方針変えず/沖縄県議選 知事支持派過半数」
社説「沖縄県議選 『反辺野古』の民意再び」
・8日付朝刊
1面「辺野古反対 過半数維持 沖縄県議選」
2面・解説「民意 新基地へ疑念強く」