長期政権のゆがみ、腐敗が詰まった河井前法相夫妻の買収事件

 新型コロナウイルス感染拡大の第2派への備えが必要と指摘されながら、通常国会は6月17日、会期を延長することなく閉会しました。それを待っていたように、東京地検特捜部は18日、昨年の参議院選での公職選挙法違反(買収)容疑で、自民党衆院議員だった河井克行・前法相と妻の案里参院議員(ともに離党)を逮捕しました。
 前法相は首相補佐官なども務めており、安倍晋三首相に近いと指摘されています。事件の舞台になった参院選広島選挙区では、案里議員擁立を自民党本部が主導し、もう一人の党公認の横手顕正候補との間には、支援態勢にも露骨な差がありました。党本部からは河井陣営に1億5千万円もの資金が支出されていたと報じられています。そして広島地検と東京地検が進めてきた捜査の現場では、黒川弘務・前東京高検検事長の定年延長問題が一貫して「圧」のように感じられたはずです。
 河井夫妻の行為が犯罪に当たるかどうか、刑事手続きは始まったばかりですが、夫妻が地方議員に自ら現金を配って回っていたことは、マスメディアの取材からも明らかです。夫妻は一切の説明を拒否したままであり、少なくともこの点に対しての政治的、道義的な責任は免れません。
 以上のもろもろのことを考え合わせると、この事件には安倍長期政権のゆがみと腐敗がぎっしり詰まっているように思います。選挙違反事件は多くの場合、その地域固有の選挙事情を反映しており、地域的にも政治的にもあまり広がりはありません。しかし河井夫妻の事件は、安倍政権と自民党本部の関与が最大の焦点です。

 夫妻の逮捕翌日の19日付東京発行各紙の朝刊(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)はいずれも1面の扱いでした。ただ、トップで横見出しにした朝日、毎日、読売の3紙と、他の3紙とで大きく二分された印象があります。東京都知事選の告示と重なった事情があるにせよ、各紙1面トップでそろわなかったのはちょっと意外な気がしました。

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 黒川前検事長を巡っては、産経新聞社の記者2人と朝日新聞社の社員1人との賭けマージャンが常態化していたことが明らかになっています。記者たちにとって検察幹部は「取材対象」ではあっても「報道対象」ではなかったのだとすれば、仮に賭けマージャンのような違法行為ではなくても、マスメディアの記者が高位の公権力者と深い関係を作ることに、社会の理解は得られないのではないかと感じます。河井夫妻の事件の報道では、マスメディアの検察取材にも厳しい視線が向けられています。