「ジャーナリズム信頼回復のための6つの提言」に賛同

 東京高検検事長だった黒川弘務氏の定年延長問題は、週刊文春が新聞記者との賭けマージャンを報じ、黒川氏が辞職することで政治的なイシューとしては立ち消えの形になりました。検察庁法改正案も廃案になっています。しかし、黒川氏と繰り返しマージャンをしていたのが新聞社の記者と社員であったことは、新聞記者と公権力の間合い、マスメディアによる公権力の監視のありよう、さらには新聞記者の仕事と働き方を巡って、さまざまな問題が明るみに出されたように思います。
 この問題を巡って先週、「ジャーナリズム信頼回復のための6つの提言」が公表されました。取りまとめたのは現役の取材記者やジャーナリズム研究者たちです。日本新聞協会に加盟する新聞・通信・放送129社の編集局長・報道局長に送付したとのことです。賛同人には現役の記者らたくさんの方が名を連ねています。この提言の中では五つの問題点を指摘した上で、タイトルにあるように六つの提言を行っています。わたし個人の賛同の意を込めて、それぞれを引用して、ここで紹介します。

 提言の全文は、noteの以下のページで読むことができます。
 ※「ジャーナリズム信頼回復のための6つの提言」
 https://note.com/journalism2020/n/n3b4c1e0648e0

▽五つの問題点
●権力との癒着・同質化:水面下の情報を得ようとするあまり、権力と同質化し、ジャーナリズムの健全な権力監視機能を後退させ、民主主義の基盤を揺るがしていないか。 

●記者会見の形骸化:オフレコ取材に過剰に依存し、記者会見で本来質問すべきことを聞かなかったり、予定調和になったりしていないか。また、情報公開制度の活用を軽視していないか。

●組織の多様性の欠如:早朝夜間の自宅訪問、および公人を囲んだ飲食などを共にする「懇談」形式での取材の常態化が、長時間労働やセクシュアルハラスメントの温床となってはいないか。また、日本人男性会社員記者中心のムラ社会的取材体制を固定化し、視点の多様性を阻害していないか。

●市民への説明不足:どういった原則や手法に基づいて取材・編集しているかが読者・視聴者に伝わらず、ジャーナリズムへの信頼を損ねていないか。取材の難しさ、情報源の秘匿の大切さを含め、可能な限り説明を尽くし、一般市民の信頼を得るための努力をしているか。

●社会的に重要なテーマの取りこぼし:発表情報の先取りに人員を割く結果、独自の視点に基づいた調査報道や、市民の生活実感に根差した報道が後回しになっていないか。

 

▽六つの提言
●報道機関は権力と一線を画し、一丸となって、あらゆる公的機関にさらなる情報公開の徹底を求める。具体的には、市民の知る権利の保障の一環として開かれている記者会見など、公の場で責任ある発言をするよう求め、公文書の保存と公開の徹底化を図るよう要請する。市民やフリーランス記者に開かれ、外部によって検証可能な報道を増やすべく、組織の壁を超えて改善を目指す。

●各報道機関は、社会からの信頼を取り戻すため、取材・編集手法に関する報道倫理のガイドラインを制定し、公開する。その際、記者が萎縮して裏取り取材を控えたり、調査報道の企画を躊躇したりしないよう、社会的な信頼と困難な取材を両立できるようにしっかり説明を尽くす。また、組織の不正をただすために声を上げた内部通報者や情報提供者が決して不利益を被らない社会の実現を目指す。

●各報道機関は、社会から真に要請されているジャーナリズムの実現のために、当局取材に集中している現状の人員配置、およびその他取材全般に関わるリソースの配分を見直す。

●記者は、取材源を匿名にする場合は、匿名使用の必要性について上記ガイドラインを参照する。とくに、権力者を安易に匿名化する一方、立場の弱い市民らには実名を求めるような二重基準は認められないことに十分留意する。

●現在批判されている取材慣行は、長時間労働の常態化につながっている。この労働環境は、日本人男性中心の均質的な企業文化から生まれ、女性をはじめ多様な立場の人たちの活躍を妨げてきた。こうした反省の上に立ち、報道機関はもとより、メディア産業全体が、様々な属性や経歴の人を起用し、多様性ある言論・表現空間の実現を目指す。

●これらの施策について、過去の報道の検証も踏まえた記者教育ならびに多様性を尊重する倫理研修を強化すると共に、読者・視聴者や外部識者との意見交換の場を増やすことによって報道機関の説明責任を果たす。